人事労務

退職勧奨の退職金相場|上乗せ額と税務・合意条件を確認

経営リスクナビ編集部

退職勧奨(退職推奨)で退職金・解決金の提示水準を決めたいのに、就業規則の根拠や社内の公平性、税務の説明可能性まで同時に整理する必要があり、判断が止まりやすい局面があります。ここで基準が曖昧なまま交渉に入ると、相手の要求に引きずられて「不相当に高額」と見られうる設計になったり、未払賃金の論点が混ざって紛争が長期化したりしかねません。たとえば賃金請求権の時効が2年と整理されている点も踏まえ、金額だけでなく手続・証拠・合意書まで一体で設計することが重要です。以下では、退職勧奨の判断材料として退職金・解決金の考え方と実務上の統制ポイントを示します。

目次

退職勧奨と退職金の基本整理

退職勧奨・退職金・解決金の違い

退職勧奨(退職推奨)は、会社が労働者に対して自主的な退職(合意退職)を提案する行為であり、合意が成立すれば雇用契約を合意解約する関係になります。退職勧奨それ自体は、法律上ただちに金銭支払義務を発生させるものではなく、あくまで「合意形成のための働きかけ」です。

一方で退職金は、就業規則・退職金規程・労働契約・労働協約などの「退職金の支給基準の定め」に基づいて発生し得る金銭で、紛争化した場合には当該定めや過去の支給明細などが重要な証拠になります。実務で「未払退職金」を整理する局面では、少なくとも次の事実の立証が必要と整理されています。

退職金請求が争点になった場合に問題となりやすい立証対象
  • 雇用契約の存在
  • 退職の事実
  • 退職金の定め(就業規則・退職金規程・過去の退職金明細書等)

解決金(特別退職金・退職勧奨金など呼称は様々)は、退職勧奨に応じてもらうための任意の上乗せ条件として提示されることが多く、退職金規程が薄い/制度がない場合でも、合意の対価や紛争予防のために設定されます。ただし、労働者から過剰な退職金等の支払いを強く要求された場合に、他の従業員との均衡を欠く水準まで漫然と応じると、社内の公平性だけでなく税務・ガバナンス面の説明困難も生じ得るため、社内基準と決裁統制を先に固めておくことが重要です。

会社都合退職と離職理由の扱い

退職勧奨により合意退職となった場合、雇用保険の実務では「事業主からの働きかけにより離職した」類型として整理されることが多く、離職理由の記載は実態に合わせて行う必要があります。離職理由の体系上も「希望退職の募集又は退職勧奨」には「事業の縮小又は一部休廃止に伴う人員整理」など、具体理由を記載する欄が用意されています。

離職証明(離職票の元となる書面)には「具体的事情記載欄(事業主用)」があり、例えば参照例として「会社の廃業により令和2年3月20日付で残存社員離職」のように、日付を含めて具体事情を記載する運用が示されています。退職勧奨でも同様に、組織改編・業務縮小・配置転換困難など、該当する事情を具体化して整合的に記載します。

会社側が助成金等を意識して自己都合へ誘導したり、形式的に「本人都合(労働者の個人的事情)」に寄せると、ハローワークで事情確認が入る可能性があるほか、後日「強要があった」などの主張を招きやすくなります。実務では、離職理由の区分と合意書の退職理由(退職勧奨による合意退職)を揃え、労働者にも記載内容を説明して認識齟齬を潰しておくことが紛争予防になります。

退職金規程と支払根拠を確認

就業規則と退職金規程の確認点

退職勧奨に入る前提として、就業規則・退職金規程(または労働契約・労働協約)に退職金の支給基準の定めがあるか、あるならその適用条件と計算方法を確定させます。後から「退職金の定めがあった/慣行があった」と争点化すると、会社側は説明資料の整合性を求められ、交渉の主導権を失いやすくなります。

参照整理では、退職金請求の局面で提出が想定される資料として、就業規則・退職金規程に加え「過去の退職金明細書等」が挙げられており、また退職金規程から請求金額を算定可能な資料の提出が必要とされています。したがって、社内確認では次をセットで揃えるのが実務的です。

退職金規程の有無・内容を固めるために最低限確認する資料
  • 就業規則・退職金規程(最新版と改定履歴)
  • 対象者の職種・勤続年数・役職等(規程上の計算要素)
  • 過去の支給事例(退職金明細書等)

規程が存在するのに計算を誤ると、退職後に差額請求を受ける余地が残ります。逆に制度がない場合は「未払退職金」の前提が欠けるため、合意条件としての解決金設計(名目・税務・支払方法)に議論の軸足が移ります。

規程外の上乗せ提示が許される範囲

規程外の上乗せ(特別加算、解決金、再就職支援の提供など)自体は、合意退職の条件として任意に設定できます。ただし「過剰に(他の従業員よりも多く)支払うことがないようにすべき」との実務上の注意があり、個別の交渉圧力だけで水準が跳ねる運用は避ける必要があります。

また税務面では、退職金が「不相当に高額」だと評価されると、法人税上、損金算入できない部分が生じ得ます(法人税法36条(法人税法第36条)の「過大な使用人退職金」)。不相当に高額かどうかの判定要素として、法人税法施行令72条の2の枠組みとして次が挙げられています。

税務上「不相当に高額」かの判断で参照される要素(使用人退職金)
  • その使用人の業務従事期間
  • その使用人の退職の事情
  • 同種同規模法人における使用人退職金の支給状況

実務では、個別交渉の前に「上乗せの目的(紛争予防・生活保障・早期離職合意)」と「上限・算定要素」を社内決裁で決め、例外が必要なときは例外理由を記録しておくことが、後日の説明責任(税務調査・株主説明・社内不公平感)に耐える運用になります。

退職金規程に自己都合・会社都合の差がある会社で、退職勧奨をどちらで処理するかの判断基準

退職金規程で自己都合/会社都合の支給率差がある場合、退職勧奨による合意退職をどちらで計算するかは、離職の実態と規程文言の整合で判断します。雇用保険の離職理由体系でも「希望退職の募集又は退職勧奨」は独立類型として整理され、事業縮小等の事情がある場合には会社側事情が明確になりやすいことから、退職金の計算区分も会社都合側で設計するほうが紛争予防上安全なことが多いです。

他方、問題行動や成績不良など本人側事情が濃い場合、会社が自己都合水準を前提に提示したくなる場面がありますが、ここで区分を無理に押し込むと合意形成が壊れやすく、結果として紛争コストが増えます。実務上は、

区分差がある会社での安全寄りの設計手順
  • 退職金は規程上の会社都合計算をベースに試算して説明可能にする
  • 調整が必要なら退職金区分をいじらず解決金(任意上乗せ)で調整する
  • どうしても自己都合区分を使うなら根拠条文・適用場面・過去運用を文書で揃える

加えて、労働者が退職金を請求する局面では、就業規則・退職金規程・過去明細等が立証資料として想定されているため、会社側は「規程の読み方」と「過去の運用」の一貫性を崩さない設計が重要です。

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退職勧奨の退職金相場を決める

上乗せ相場の見方と算定枠組み

上乗せ(解決金)の水準に法定の相場はありません。したがって実務では、(1)社内の公平性、(2)紛争化した場合の損失見込み, (3)税務上の説明可能性、の3点から「会社として出せる枠」を組み立てます。

参照整理では、解雇時の労働債権計算として解雇予告手当は平均賃金の30日分で計算する運用が明示されています(解雇予告手当の趣旨・計算枠組みは労働基準法20条(労働基準法第20条))。退職勧奨は解雇ではありませんが、比較軸として「解雇に移行した場合に最低限発生し得る金額」を社内試算に入れておくと、上乗せ額の説明が組み立てやすくなります。

上乗せ額の社内試算に入れておくと説明しやすい要素
  • 規程退職金(自己都合・会社都合の区分別に試算)
  • 解雇に移行した場合の解雇予告手当(平均賃金30日分)
  • 未消化の年次有給休暇の取り扱い(消化・退職日調整)
  • 再就職支援(求人情報提供、設備・備品の安価譲渡、事業譲渡支援等)の有無

相手から「過剰な退職金等の支払い」を強く要求された場合でも、他従業員との均衡を欠く水準で漫然と応じないという統制が必要です。交渉のゴールを「金額の多寡」だけにせず、支払時期・有休消化・就業免除・支援策をパッケージ化して合意に近づけます。

勤続年数・役職・年齢で調整する

最終水準の調整は、勤続年数・役職・年齢など「生活影響」と「社内均衡」に直結する要素で行います。ただし、税務面では「不相当に高額」かどうかの説明において、少なくとも業務従事期間(勤続年数)や退職事情、同種同規模法人の支給状況が要素として挙げられているため、社内基準を作る際も同じ切り口で整理しておくと整合します(法人税法36条(法人税法第36条)・施行令72条の2)。

金額差をつける際に説明に使いやすい調整要素
  • 勤続年数(業務従事期間)と社内での貢献度
  • 退職の事情(組織縮小・職務消滅・適応困難など)
  • 役職・職責(引継ぎ負担、社内影響)
  • 再就職の見通し(年齢等に伴う難易度)

特に「同種同規模の支給状況」は、税務面の説明にもつながるため、可能なら同業他社の公表情報や社内の過去事例を根拠として整理しておくと、恣意的運用と見られにくくなります。

再就職期間と有休を織り込む

再就職期間の見通しは個別差が大きいため、統計の平均値を断定的に置くよりも、会社側として「支援策」を具体化して合意の納得感を作る方が安全です。参照整理には、再就職支援として次のような実務案が示されています。

金銭以外で提示し得る再就職支援の具体例
  • 同業他社の求人情報を収集して従業員に提供する
  • 起業する従業員に対し会社の設備・備品を安価で譲渡する
  • 会社の事業そのものを譲渡する支援を検討し取引先へ説明して取引継続を働きかける

また、未消化の年次有給休暇は、退職日設定や就業免除(出勤不要)期間と合わせて設計すると、会社の追加キャッシュアウトを抑えながら労働者側の安心感を作れます。ここはトラブルになりやすいので、退職合意書に「退職日までの有休取得方針」「最終出勤日」「貸与物返却日」まで落とし込み、事後の認識相違を防ぎます。

解決金の交渉と提示の進め方

提示タイミングと交渉の順序

退職勧奨は「任意の合意」が大前提のため、面談の順序設計が重要です。いきなり金額を提示すると買収的・強制的に見え、かえって防御的な反応を招きます。初回は事実と評価を整理し、次回以降で条件をパッケージ提示する方が実務的です。

解雇に至る可能性がある事案では、参照整理に「解雇時の諸手続チェックリスト(資料53)」として、解雇通知書の交付、給料・退職金・解雇予告手当の計算、雇用保険の離職証明書・資格喪失届、社会保険の資格喪失届など、周辺手続の作業が列挙されています。退職勧奨でも同様に、交渉が進んだ段階で手続きの見通しを提示できるよう、社内で順序立てて準備します。

退職勧奨の面談〜提示の実務順序(社内準備を含む)
  1. 初回面談は課題の事実関係と会社方針(退職の打診)を伝え金額提示は急がない
  2. 人事は就業規則・退職金規程・給与データ・有休残・離職手続書類の見通しを揃える
  3. 2回目以降で退職日・最終出勤日・有休・金銭(退職金+解決金)・支払時期を一体で提示する
  4. 回答期限は置きつつ持ち帰り検討の時間を確保し面談回数を漫然と増やさない

断られた場合の選択肢と解雇リスク

拒否された場合、同じ説得を反復すると退職強要やハラスメント評価の火種になります。配置転換・指導育成に戻る、条件を再設計して再提示する、法的に解雇可能性を検討する、という「次の一手」を冷静に選びます。

解雇を視野に入れる場合でも、参照整理のチェックリストにあるとおり、解雇には賃金・退職金・解雇予告手当等の計算、解雇通知書(受領証付き)の作成・保管、雇用保険・社会保険・所得税(源泉徴収票)など周辺実務が広く発生します。解雇無効リスクも踏まえると、退職勧奨での合意解決を目指すこと自体は合理的ですが、拒否後の対応は「冷却」と「証拠整理」を優先させるべきです。

また、参照整理では「過剰な退職金等の支払いを要求してきた場合には、当該過剰要求行為を解雇理由の1つとして解雇することも考えられる」とされています。ただし実務では、それ単体で直ちに解雇が正当化されるとは限らず、要求態様(脅迫的言動等)や業務への支障、これまでの指導・注意の経緯など、総合評価の素材が必要です。安易に解雇へ飛ぶのではなく、専門家と事実整理をしてから判断します。

初回面談前に誰が何を揃えるか|人事・現場・法務で分ける社内準備資料

初回面談前の準備は、後戻りコストを大きく左右します。参照整理の「解雇時の諸手続チェックリスト(資料53)」には、賃金・退職金・解雇予告手当の計算資料として就業規則、給与規程、退職金規程、賃金台帳、タイムカード、従業員名簿等が挙がっており、退職勧奨でも同水準の証拠力が必要になり得ます。

担当 揃えるもの 参照整理に沿ったポイント
現場(直属上長) 指導記録、具体的なミス・成果不足の事実メモ、面談記録の下書き 事実の特定が弱いと「評価の押し付け」になり交渉が迷走します
人事労務 就業規則・給与規程・退職金規程、賃金台帳、タイムカード、従業員名簿、有休残、提示可能な予算枠 チェックリスト上も計算根拠資料の整備が前提です
法務(外部弁護士含む) 想定問答、合意書ひな形、清算条項案、秘密保持条項案、リスク評価 合意内容の固定(蒸し返し防止)を文案で担保します
退職勧奨の社内準備で揃える資料(役割分担)

準備資料が揃っているほど、金額の説明・手続の説明・質問対応が一貫し、相手の不信感を増幅させずに進めやすくなります。

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退職勧奨の法的リスクを抑える

低額提示や不払いが招く紛争リスク

低額提示や不払いは、合意形成に失敗しやすいだけでなく、争点を増やして企業側コストを増幅させます。特に未払賃金が絡むと、参照整理のとおり賃金請求権の時効は2年で、最大2年分の遡及払いリスクが現実化し得ます(現行法では期間の議論がありますが、少なくとも参照整理の運用上の注意として「2年」が明示されています)。

さらに未払賃金問題は、法令違反リスクに加えて、対外的に露見した場合のレピュテーションリスク、従業員の士気・モチベーション低下リスクなどの副次的損害が挙げられています。退職勧奨では「清算して終わる」設計が重要で、未払賃金・立替金等の精算も同時に片付けるべきです。

低額提示より先に潰しておくべき金銭争点
  • 給与の最終月の計算(日割計算の要否を就業規則・給与規程で確認)
  • 実費・立替金の精算(領収書等の確認)
  • 退職金制度の有無と支給基準に基づく退職金計算
  • 時間外労働の未払の有無(タイムカード等の記録確認)

裁判移行時の想定額で水準を検討

解決金水準は、裁判に移行した場合の想定損失(バックペイ、付随費用、社内工数)との比較で決めるのが実務的です。参照整理のチェックリストでは、解雇に伴い解雇予告手当は平均賃金30日分で計算することが示されており、これだけでも「最低限の追加負担」の目安になります(労働基準法20条(労働基準法第20条))。

また、未払残業代が争点化すると、参照整理の注意のとおり時効2年の範囲で遡及払いの可能性があり、解決金を渋って紛争が長期化するほどコストが膨らみます。したがって、

水準検討のための社内シミュレーション手順
  1. 現時点での争点(解雇理由の強弱、未払賃金の有無、退職金規程の適用)を棚卸しする
  2. 解雇に移行した場合の最低限コスト(解雇予告手当=平均賃金30日分等)を試算する
  3. 争点が残るなら清算条項で終局化できる範囲と、終局化できないリスクを分けて評価する
  4. 上乗せ額は「紛争予防コスト」として社内決裁し、例外は理由を記録する

同種事案で金額差をつけるときの説明方法|不公平感から別件紛争に広げないための整理

同種事案で金額差を付けるなら、後日の説明可能性(社内・税務・監査)を確保する必要があります。参照整理の税務枠組みでは、退職金が不相当に高額かどうかの判断要素として「業務従事期間」「退職事情」「同種同規模法人の支給状況」が挙げられているため、金額差の説明もこの切り口に寄せると一貫します(法人税法36条(法人税法第36条)・施行令72条の2)。

金額差の説明を文書化するときの整理軸(例)
  • 勤続年数(業務従事期間)と役割の重さ
  • 退職に至った事情(事業縮小・配置転換困難・本人希望の強さ等)
  • 同種同規模の社内外水準(社内過去事例、同業の一般的運用など)
  • 再就職支援の提供内容(求人情報提供、設備譲渡等)

秘密保持条項・口外禁止条項を入れること自体はリスクヘッジになりますが、それに過度に依存せず、そもそも「説明可能な差」にしておくことが、別件紛争への延焼を防ぐ本質的対策です。

退職合意と税務を仕上げる

退職合意書と清算条項の確認事項

合意後は、条件を合意書で固定し、蒸し返しを封じる設計が要です。参照整理でも、解雇・退職局面では手続書面(解雇通知書、離職証明書等)や計算根拠資料の整備が重視されており、口頭合意だけで進めるのは危険です。

退職合意書に最低限落とすべき事項(実務)
  • 退職日・最終出勤日・有休取得方針
  • 退職理由(退職勧奨による合意退職である旨)
  • 退職金・解決金の金額、支払期日、支払方法(振込先、手数料負担)
  • 清算条項(本合意書に定めるほか債権債務がない旨)
  • 貸与物返還、秘密保持・誹謗中傷禁止等(必要な範囲で)

未払残業代が懸念される場合、参照整理の注意にあるとおり時効2年の遡及リスクが示されているため、清算条項の書き方(どの範囲を清算するか)と、そもそも未払がないかの事前確認(タイムカード等)が重要になります。

退職金・解決金の課税と源泉徴収

税務は「名目」より「実態」に引きずられますが、合意書の書き方で実務上の誤解・不満が起きやすいため、源泉徴収を含めて事前に説明しておくべきです。

参照整理には、退職金の税引後残額の一定割合を弁済原資とする整理(例:残額の4分の1、別類型では2分の1、かつ月額44万円/66万円を超える場合に33万円控除等)が示されており、実務では「税・社会保険控除後の手取り」を前提に議論が動く場面があることが分かります。退職勧奨でも、提示額が総額(源泉前)なのか手取り見込みなのかが曖昧だと、振込後に齟齬が出ます。

そのため、合意書・支給明細では次を明確化します。

税務処理で齟齬を出さないための明確化ポイント
  • 退職金・解決金が源泉徴収前の総額であること(総額提示か手取り提示かを統一)
  • 「退職に基因して支払う一時金」であること(退職所得の整理に寄せる)
  • 未払賃金の精算と混在する場合は内訳(賃金部分と一時金部分)を区分する

また、金額が不相当に高額と評価されると損金不算入となり得る点は、税務調査対応の観点からも押さえるべきです(法人税法36条(法人税法第36条))。

一括払いと分割払いのどちらにするか|資金繰り・未払いリスク・合意書記載の分かれ目

支払いは原則として一括が管理しやすい一方、資金繰りの制約で分割を選ぶなら「未払いリスク」を契約で制御します。参照整理のチェックリストでも、支払の記録を残すこと、一部未払いになる場合に「どの労働債権が未払いになるか検討」することが注意されています。分割払いはまさに未払い(遅延)争点を作りやすいため、合意書での詰めが重要です。

分割払いを採る場合に合意書へ明記する項目
  • 各回の支払期日・金額・振込先・振込手数料負担
  • 遅延時の取り扱い(期限の利益喪失、遅延損害金の定め等)
  • 支払管理の担当と証憑(振込記録、明細)の保存方法

加えて、雇用保険・社会保険・所得税(源泉徴収票交付)など退職周辺手続は別立てで確実に進むため、金銭支払だけが分割で残っている状態を作ることの管理負担も織り込んで決める必要があります。

よくある質問

退職金制度がない会社でも退職金名目で支払えますか?

退職金制度がない会社でも、退職勧奨の合意条件として一時金を支払うこと自体は可能です。ただし参照整理では、未払退職金を「確定」する前提として法人に退職金制度が存在する必要があるとされており、制度がないのに「既存の退職金債権の支払い」と誤解される説明は避けるべきです。

実務上は、今回の支給が規程に基づく退職金なのか、合意条件としての解決金(特別退職金)なのかを合意書で区分し、過去の退職金明細等と矛盾しない形で整理します。税務上も、不相当に高額な部分は損金不算入となり得るため(法人税法36条(法人税法第36条))、社内基準と決裁記録を残しておくと安全です。

問題社員にも上乗せの退職金は必要ですか?

法律上、問題社員に上乗せ(解決金)を必ず支払う義務があるわけではありません。一方で参照整理には「自主退職を促し、応じられればそれがよい」「金銭要求があっても過剰に(他の従業員よりも多く)支払うことがないようにすべき」とあり、実務の着地点は「支払う/支払わない」の二択ではなく、過剰にならない統制のもとで合意を取りに行く発想になります。

また、要求が過剰である場合には「当該過剰要求行為を解雇理由の1つとして解雇することも考えられる」との整理もありますが、解雇は周辺手続と証拠整理の負担が大きい(解雇通知書、解雇予告手当の計算、雇用保険・社会保険手続等)ため、拙速に解雇へ振れず、事実関係と要求態様を整理したうえで対応方針を決めるのが安全です。

退職勧奨を断られた後に解雇へ進めますか?

退職勧奨を断られたこと自体を理由に、直ちに解雇へ進めるのは危険です。解雇を検討するなら、参照整理の「解雇時の諸手続チェックリスト」にあるとおり、解雇通知書(受領証付き)の作成・保管、解雇予告手当(平均賃金30日分)の計算、賃金・退職金の精算、雇用保険・社会保険の資格喪失手続、源泉徴収票の交付など、実務負担が一気に増えます。

したがって、拒否後は一度クールダウンし、配置転換・指導の再設計、証拠の整備、専門家との協議を挟んだ上で、退職勧奨の継続か、別手段(解雇を含む)かを判断するのが現実的です。

合意後に未払い残業代を請求されたらどうなりますか?

清算条項があると争いの蒸し返しを抑止できますが、万能ではありません。参照整理でも、時間外労働の未払賃金が万一発生した場合、賃金請求権の時効は2年で最大2年分の遡及払いの可能性があるとされており、そもそも未払がないかの事前確認(賃金台帳・タイムカード等)が重要です。

実務では、合意書で清算対象(未払賃金を含むのか、含むならどの期間・範囲か)を明確にし、退職時の精算(実費・立替金、最終給与、未消化有休の整理)を同時に完了させます。併せて、支払記録(明細・振込記録)を保存し、後日の事実関係争いに備えることが安全です。

退職勧奨への対応で次にすべきこと

退職勧奨での退職金・解決金は、まず就業規則・退職金規程の有無と計算根拠を固め、規程退職金と任意上乗せ(解決金)を切り分けて設計することが出発点です。上乗せ水準は法定の相場に頼れないため、社内の公平性・紛争化した場合の損失見込み・税務上の説明可能性(法人税法36条(法人税法第36条)等)を軸に「会社として出せる枠」を社内決裁で先に決めておくと、交渉でブレにくくなります。金額試算では、解雇に移行した場合の解雇予告手当(平均賃金30日分)や、未払賃金があれば時効2年の範囲での遡及リスクも比較材料に入れ、清算条項で何を終局化するかまで含めてパッケージ化します。次の実務アクションとしては、人事・現場・法務で資料(規程類、賃金台帳・タイムカード、有休残、面談記録案)を揃えたうえで、離職理由の記載と合意書の退職理由を整合させ、説明の一貫性を確保してください。個別事案の適法性や金額の妥当性は事情により変わるため、最終判断は弁護士や社会保険労務士、税務面は税理士等の専門家と事実整理をして進めるのが安全です。



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