保証協会の経営改善計画書は何を書く?制度・作成・支援の要点
信用保証協会向けの経営改善計画書を求められたとき、条件変更(リスケ)や借換えの局面では「どこまで書けば審査実務に耐えるか」が最初の不安になりがちです。提出の遅れや内容の薄さは、保証の必要性・妥当性の判断や、報告義務等を前提にした支援設計の検討を進めにくくし、資金繰り対応の選択肢を狭める要因になります。とくに提出後の運用まで含め、財務情報の継続提供や、必要に応じて1企業当たり最大5回といった範囲の支援をどう組み合わせるかも、実務では決めどころです。以下では、保証協会に受け入れられる水準を判断する材料として、計画の位置づけ・役割分担・作り方の要点を示します。
保証協会の経営改善計画とは
保証協会での位置づけを押さえる
保証協会向けの経営改善計画書は、保証協会が保証の必要性や妥当性を判断するための、実務上の中核資料です。特に信用保証協会保証付融資の場面では、単に決算が悪いこと自体よりも、取引金融機関が主たる債務者と継続的なリレーションを持ち、事業性評価(事業の稼ぐ力・成長可能性)に基づいて支援できるかが重視されます(経営者保証に関するガイドライン「8-1信用保証協会保証付融資(第1段階対応)」の考え方)。
また、保証協会側のリスク管理として、対象債権者(金融機関)への報告義務等を条件とする停止条件付保証契約など、規律付けを伴う代替的な手法が検討され得ることも踏まえると、計画書には「出したら終わり」ではなく、継続的な報告・モニタリングを前提にした実行計画としての説明力が求められます。
求められる典型場面を整理する
経営改善計画書が求められやすいのは、保証協会付き融資で条件変更(リスケ)や借換え、または追加の資金供給を伴う支援を検討する局面です。保証協会・金融機関側は、返済条件を緩和するだけでなく、将来的に「保証に依存しない融資」も含めた支援の余地を見極めるため、計画の中身と運用(報告体制等)を確認します。
- 返済条件の変更(元金据置・元金減額等)を申請し、継続支援の合理性を説明する必要がある場面
- 借換え(既存の保証付き債務の一本化等)により返済負担を組み替える場面
- 追加資金(真水)の必要性があり、資金使途と改善効果を説明する必要がある場面
- 金融機関から、財務情報を適時適切に提供し継続的に報告する意思があるかを確認される場面(ガイドラインの規律付けの観点)
条件変更・借換え・新規保証で計画の厳しさがどう変わるかを見分ける
同じ「経営改善計画」でも、条件変更・借換え・新規保証で、説明すべきポイントの重みが変わります。実務では、金融機関・保証協会が負担するリスクが大きいほど、数値根拠(返済原資・資金繰り)と実行管理(報告義務等)が厳しく見られます。
| 支援類型 | 計画で特に問われやすい点 | 実務上の補足 |
|---|---|---|
| 条件変更(リスケ) | 足元の資金繰り破綻回避と短期の立て直し手段 | 金融機関への継続報告を条件とする規律付け(停止条件付保証契約等)が論点になり得ます |
| 借換え(一本化等) | 中期の収益・資金繰りの安定と返済原資の蓋然性 | 返済原資の説明は当期純利益+減価償却費の考え方が基本になります(後段参照) |
| 新規保証(真水) | 資金使途が利益・キャッシュに結び付く因果関係 | 外部専門家や公的支援機関による検証・支援を受けているかが考慮され得ます(ガイドライン 8-1(1)3) |
関係者の役割と支援制度
認定支援機関と活性化協議会の役割
認定支援機関(税理士・中小企業診断士等)と、(旧)中小企業再生支援協議会に由来する地域の公的枠組み(活性化協議会等)は、計画の作成支援と関係者調整を分担するのが実務の基本です。
参照される実務資料では、公的支援機関等の支援による計画の磨き上げを通じて、改善計画の内容と実現見通しが考慮されることが示されています(経営者保証に関するガイドライン 8-1(1)3)。また、支援に関連して「経営者保証コーディネーター(CO)」が登場する局面では、COの役割は外形的な条件のチェック・確認に限定され、解除可否の決定主体は金融機関である点、派遣専門家は交渉役ではない点が留意事項として明記されています。
- 認定支援機関:財務分析、損益・資金繰り計画の組立、改善施策の実行可能性の整理を支援します
- 活性化協議会等:複数金融機関がいる場合の調整、合意形成の場づくりを担います
- 経営者保証CO:チェックシート等に基づき要件充足状況の確認や工程管理を行います(ただし決定主体ではありません)
- 派遣専門家:金融機関との目線合わせに同席し助言・情報提供を補助します(交渉代理ではありません)
経営改善計画策定支援の要件を確認
経営改善計画策定支援(公的補助を伴う枠組みを含む)は、「計画が必要な企業に、外部専門家を入れて計画の客観性と実行可能性を高める」ための制度設計です。参照資料の文脈でも、外部専門家や公的支援機関による検証や支援を受け、所要の要件充足に向けて改善に取り組む主たる債務者について、検証結果や改善計画の内容・実現見通しを考慮する旨が示されています(ガイドライン 8-1(1)3)。
また、財務情報の提供体制に関しては、金融機関の求めに応じて財務情報を適時適切に提供できる体制と、継続的に提供する意思が整っていることがポイントになります。計画書には、作成時点の数字だけでなく、提出後に「どの頻度で・何を・誰が」提供するかまで落とし込むと、審査実務に沿った説明になります。
金融機関・保証協会・認定支援機関のどこに先に相談するかを状況別に分ける
相談順序は、資金繰りの緊急度と、計画の客観性(外部検証の必要性)で最適解が変わります。特に、報告義務等を条件とする規律付けや、外部専門家・公的支援の検証を重視する運用(ガイドライン 8-1(1)2・3)を踏まえると、「金融機関に先に言うべきか/計画を整えてから言うべきか」は二者択一ではなく、並走させる設計が実務的です。
- 資金ショートが近い場合は取引金融機関へ早期に相談し、当面の条件変更の方向性と必要資料を確認します
- 1〜2か月程度の猶予がある場合は認定支援機関に先に相談し、試算表・資金繰り・施策を整理した「たたき台」を作ってから金融機関へ提示します
- 複数行調整や合意形成が難航する場合は活性化協議会等の活用を検討し、場の設定と目線合わせを進めます
- 経営者保証が論点になる場合は、経営者保証COによる確認や、必要に応じた専門家同席(最大5回の目線合わせ支援等、制度運用に沿う枠)を視野に入れます
経営改善計画書の構成と書き方
現状分析と課題整理を書き分ける
現状分析は「事実の把握」、課題整理は「事実から導かれる打ち手の設定」です。保証協会・金融機関は、将来の返済可能性を見ますが、その前提として「何が起きているか」を客観的に説明できない計画は信頼されません。
- 決算書・直近試算表の数値推移(損益・貸借・キャッシュのどこが悪化しているか)
- 危機要因がある場合の財務面への影響分析(影響額・影響期間を分けて整理)
- 原価差額の原因分析(値上げ・歩留まり・外注比率など、差額の分解)
- 「誰が・いつまでに・何を変えるか」を施策単位で明確化します
- 報告義務やKPI管理など、継続的なモニタリングを前提とした運用設計を含めます
赤字要因が一過性か構造的かで原因欄の書き方を分ける
赤字理由の書き方は、「一過性」と「構造的」で分け、改善の道筋が異なることを明示します。保証協会・金融機関は、赤字であること自体よりも、返済原資が将来生じる見込みがあるかを確認します。
参照資料では、返済原資の基本的な見方として当期純利益+減価償却費で説明されており、赤字であれば返済原資が見込みづらく、融資審査が出しづらくなるため、将来利益を上げられることを計画書で示す必要があると整理されています。
- 一過性:当期の特殊要因(例:危機による影響)を特定し、影響が剥落する時点と、剥落後の収益・返済原資(当期純利益+減価償却費)の回復筋を示します
- 構造的:市場縮小・固定費過多・不採算構造などの「稼げない理由」を認め、原価差額の原因分析等でボトルネックを特定したうえで、抜本策(撤退・価格改定・生産性改善等)をセットで書きます
社長説明用と金融機関提出用で数値根拠の資料をいつまでに揃えるか
裏付け資料は「社内意思決定用」と「対外説明用」で揃え方が変わります。参照資料の観点でも、金融機関から求められた財務情報を適時適切に提供できる体制と、継続的提供の意思が重視されます。したがって、提出直前に資料を集めるのではなく、モニタリングまで見据えた資料設計にしておくことが重要です。
- 社長説明の時点で、決算書・直近試算表・危機影響分析・原価差額の原因分析など「現状把握に必要な材料」を揃えます
- 金融機関・保証協会の事前相談までに、資金繰り表を整え「不足月が出るか」を見える化します
- 提出版では、財務情報の提供体制(誰が、どの頻度で、何を報告するか)と、提出後のKPI・モニタリング運用まで一体で示します
数値計画と資金繰の作り方
売上利益計画の前提を示す
売上・利益計画は、願望ではなく前提条件の積み上げで作ります。参照資料には、経常利益から逆算して損益計画を立てる「利益計画」の例が示されており、売上・粗利・人件費等の関係を式で分解して説明しています。計画書では、この「分解して置く」作法を採り入れると、保証協会・金融機関に前提が伝わりやすくなります。
| 項目 | 目標 | 計算式(例) |
|---|---|---|
| 経常利益 | 6 | 社長が「これだけの利益を出す」と決定し、ここから逆算します |
| 売上 | 300 | 粗利益額÷粗利益率(%)×100 |
| 粗利益額 | 150 | 売上−仕入 |
| 仕入 | 150 | 売上−粗利益額 |
| 人件費 | 100 | 平均給与×人数 |
| 減価償却費 | 3 | 有形固定資産の15% |
上表は一例ですが、重要なのは「売上○%増」と書くことではなく、粗利率・人員・固定費・減価償却費等の前提が整合していることです。
資金繰計画と返済計画をつなぐ
資金繰りと返済計画は、返済原資の説明で一本につながっている必要があります。参照資料が明示しているとおり、返済原資の基本は当期純利益+減価償却費です。保証協会・金融機関の実務では、この考え方を起点に、そこから運転資金増減や投資支出、税金・社会保険の支払い等を織り込んで「返せる設計」になっているかを見ます。
- 返済原資は当期純利益+減価償却費で説明し、赤字期は原資が薄いことを正面から認めたうえで改善後の姿を示します
- 月次資金繰り表に落とし、いつ資金不足が起きるか(起きないか)を安全余力で説明します
- 金融機関から求められた財務情報を継続的に提供する運用(報告頻度・体制)もセットで示します
返済据置・元金減額・借換えのどれを置くかを月次資金繰で判断する
返済条件の要請は、月次資金繰りで「不足が出る月」を基準に選びます。要請の妥当性が資金繰り表で説明できないと、金融機関・保証協会側の稟議が通りにくくなります。
- 返済据置:資金繰り不足が目前で、まず資金ショート回避が最優先のときに選びます
- 元金減額:一定のキャッシュ創出はあるが、返済額が上回って不足が出るときに選びます
- 借換え(一本化):返済設計を組み替える必要があり、返済期間の再設計で月次不足を解消できるときに選びます
経営改善計画の提出後対応
モニタリング体制とKPIを設計する
保証協会・金融機関向けの計画は、提出後の運用が重要です。参照資料でも、金融機関からの求めに応じて財務情報を適時適切に提供できる体制と、継続的に提供する意思が論点として示されています。したがって、計画書には「KPIを置く」だけでなく、誰が集計し、いつ報告し、どの会議体で是正するかまで含めた体制を書きます。
- 結果KPI:売上高、粗利益額、営業利益、当期純利益など(計画損益と連動)
- 行動KPI:KPIカウントシートの発想で、行動の量と質(例:訪問件数、提案件数、見積提出数、失注理由の分類)を継続計測します
- 財務報告:試算表や資金繰り表を、金融機関の求めに応じて継続提供できる運用(担当者・期限・承認フロー)を定めます
未達時の見直しと報告を考える
未達は起こり得る前提で、早期の原因特定と報告の仕組みを組み込みます。保証協会付き融資の文脈では、規律付けの観点から報告義務等を条件にする設計も想定されているため(停止条件付保証契約等)、未達時に情報が出ないことは、支援継続の判断に直接影響します。
- 未達を検知する基準(例:結果KPIの下振れ、資金繰り不足の予兆)を事前に定義します
- 原因を「販売数量・単価・粗利率・固定費・運転資金」のどこに出たかで分解します
- 対策を「追加施策」か「計画修正」かに切り分け、金融機関・保証協会へ速やかに報告します
- 次回報告までの行動KPI(KPIカウントシート等)で是正の進捗を見える化します
保証制度と費用補助の活用
経営改善サポート保証の特徴を知る
経営改善局面では、保証制度そのものの説明よりも、「どの計画水準なら使えるか」を押さえることが重要です。参照資料(経営者保証に関するガイドライン 8-1)では、主たる債務者との継続的なリレーションに基づく事業性評価や、外部専門家・公的支援機関による検証・支援を受けた改善計画の内容と実現見通しが考慮される旨が示されています。経営改善サポート保証の活用を狙う場合も、この発想に沿って、計画の客観性(外部検証)と、提出後の報告・モニタリングまで含めた運用設計を作り込むことが実務上の近道です。
条件変更改善型借換保証を押さえる
条件変更改善型借換保証のような借換系の制度は、「一本化して月次返済を落とす」だけでなく、改善計画の実行管理とセットで評価されます。参照資料が示す返済原資の考え方(当期純利益+減価償却費)に基づき、借換後に返済原資がどの程度積み上がり、月次資金繰り不足が解消するかを、数値計画と資金繰りで接続して示すことが必要です。
費用補助と自己負担額の考え方
外部専門家を使う局面では、費用対効果の説明に加え、制度の枠組みを理解しておくと不安が減ります。参照資料には、経営者保証COに関する支援運用として、支援申請件数を全国で年1万2000件想定していること、チェックシート充足先に対して希望に応じた専門家派遣による目線合わせ支援を1企業当たり最大5回とすること、全国で年間5000件を想定することが示されています。ここから読み取れるのは、支援は「無制限の丸投げ」ではなく、工程と回数の枠がある伴走支援として設計されている点です。
また、チェックシートをクリアできない場合でも、希望すればよろず支援拠点、ミラサポ、商工会議所等の既存支援機関で磨き上げ支援を受け、改善計画に基づき取り組んだ後に再度チェックを受けられる運用が示されています。自社ドラフトで進める場合も、この「磨き上げ→再提示」の発想を計画書の運用(改定手順)に組み込むと、実務に沿った設計になります。
よくある質問
保証協会に出す経営改善計画は認定支援機関が必要ですか?
必須かどうかは「何の制度・スキームで提出するか」によって変わりますが、保証協会・金融機関が重視するのは、計画が外部専門家や公的支援機関により検証・支援され、実現見通しが合理的に説明できることです(ガイドライン 8-1(1)3)。
また、経営者保証が絡む局面では、経営者保証COがチェックシート等に基づき充足状況を確認し、充足している企業について希望に応じて専門家派遣による目線合わせ支援(1企業当たり最大5回)が運用として想定されています。したがって、自社でドラフトを作る場合でも、最終的には認定支援機関等にレビューを依頼し、数値根拠・体制面(報告・モニタリング)を補強するのが、審査実務に沿った進め方です。
経営改善計画書の様式は保証協会ごとに違いますか?
様式(フォーマット)は協会や制度で差が出ることがありますが、審査で見られる中身の柱は共通しやすいです。特に、ガイドラインの考え方からも、事業性評価(成長可能性を含む)と、外部専門家・公的支援機関による検証、報告義務等の規律付けといった論点は、形式より中身に近い要素です。
- 事業の現状と将来見通し(事業性評価に耐える説明)
- 改善施策(誰が何をいつやるか)
- 数値計画(損益・資金繰り・返済原資の接続)
- 財務情報の継続提供(報告体制・頻度・KPI運用)
経営改善計画策定支援の自己負担額はどの程度ですか?
自己負担額は利用する制度設計で変わりますが、参照資料にある支援運用(経営者保証COの支援)では、希望に応じた専門家派遣による目線合わせ支援が1企業当たり最大5回とされ、支援申請件数は全国で年1万2000件、目線合わせ支援は年間5000件を想定するとされています。ここから、支援は「回数・枠のあるメニュー」として設計されているため、自己負担の検討も「どのメニューをどこまで使うか(自社で作る部分/外部に頼る部分)」に分解して決めるのが現実的です。
赤字でも経営改善計画で借換や保証の活用はできますか?
赤字でも可能性はありますが、ポイントは「将来の返済原資」をどう示すかです。参照資料が明示するとおり、返済原資は当期純利益+減価償却費で説明するのが基本で、赤字の場合は返済原資が見込みづらいと評価されがちです。そのため、赤字要因(一過性か構造的か)を分け、改善後に当期純利益が回復し、減価償却費を含めた返済原資が積み上がる筋を、損益計画と月次資金繰りで整合させて示すことが必要です。
まとめ:経営改善計画書への対応で次にすべきこと
保証協会向けの経営改善計画書は、条件変更(リスケ)・借換え・新規保証のどの局面かで「数値根拠」と「提出後の運用設計」の見られ方が変わる点を押さえる必要があります。判断の軸は、返済原資(当期純利益+減価償却費)の説明が損益計画・月次資金繰り・返済条件の要請と一本でつながっているか、そして財務情報を継続的に提供できる体制やモニタリングが具体化しているかです。次のアクションとしては、まず資金繰りの緊急度に応じて取引金融機関・認定支援機関・活性化協議会等への相談順を決め、必要資料と報告頻度をすり合わせます。経営者保証が論点になる場合は、希望に応じた専門家派遣による目線合わせ支援が1企業当たり最大5回といった枠で想定されていることも踏まえ、どこを自社で作り、どこを外部で補強するかを分解して進めるのが現実的です。個別の制度適用や記載水準の最終判断は、取引金融機関や認定支援機関等の専門家に確認してください。

