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大会社の取締役会設置義務とは?公開/非公開別に会社法の要件を解説

経営リスクナビ編集部

事業規模が拡大し、自社が会社法上の「大会社」に該当する場合、取締役会の設置義務の有無は重要な関心事です。会社法では、会社の規模だけでなく「公開会社」であるか否かによって、機関設計に関するルールが大きく異なります。この点を正しく理解しないまま放置すると、法令違反による過料などのリスクに繋がる可能性があります。この記事では、会社法における大会社の定義を明確にした上で、公開会社・非公開会社それぞれのケースにおける取締役会設置義務の有無と、具体的な機関設計パターンを解説します。

会社法における「大会社」の定義

資本金または負債総額が基準

会社法における「大会社」とは、会社の規模を示す資本金または負債総額が一定の基準を超える株式会社を指します。会社の利害関係者(株主や債権者など)が多いことが想定されるため、その保護を目的として会計監査人の設置など、より厳格な規制が課されます。

具体的には、以下のいずれかの要件を満たす株式会社が「大会社」に該当します。両方を満たす必要はありません。

会社法上の「大会社」の定義要件
  • 最終事業年度の貸借対照表において、資本金として計上した額が5億円以上である
  • 最終事業年度の貸借対照表において、負債の部に計上した額の合計が200億円以上である

資本金が大きいことは多数の株主の存在を、負債総額が大きいことは多数の債権者の存在を示唆します。これらの会社で粉飾決算などが行われると社会的な影響が甚大になるため、会社法は特別な規定を設けているのです。

根拠条文:会社法第2条6号

大会社の法的な定義は、会社法第2条6号に明確に定められています。この条文が、株式会社の規模に応じた規律を適用する際の基礎となります。

現行の会社法では、会社の規模による区分は「大会社」と「大会社以外の会社」というシンプルな二元論で構成されています。これにより、大会社に該当する場合には、より高度なガバナンス体制の構築が法的に求められることが明確化されています。なお、旧商法では大会社・中会社・小会社という段階的な区分が存在しましたが、会社法への移行に伴い廃止されました。

判断基準となる貸借対照表の時点

大会社に該当するかどうかは、「最終事業年度に係る貸借対照表」に基づいて判断されます。これは、事業年度末日時点の貸借対照表そのものではなく、事業年度終了後に開催される定時株主総会において承認または報告された貸借対照表を指します。

例えば、期中に増資を行い資本金が5億円以上になったとしても、その事業年度が終了し、その後の定時株主総会で計算書類が承認されて初めて大会社として扱われます。したがって、大会社に該当するかどうかの判定タイミングは、定時株主総会の終結時となる点に注意が必要です。

大会社になった場合の機関設置の移行期間

大会社に該当することになった場合、会計監査人の設置義務などを満たすための特別な猶予期間はありません。大会社の要件を満たす貸借対照表が承認または報告される定時株主総会が終結した時点で、その会社は法的に大会社となります。

そのため、実務上は、大会社になることが見込まれる定時株主総会において、会計監査人を設置するための定款変更決議と、会計監査人の選任決議を同時に行うのが一般的です。事前に監査法人等との間で監査契約の準備を進めておくことが不可欠です。

取締役会設置義務の原則

分岐点は「公開会社」であるか否か

取締役会の設置義務の有無を判断する原則的な分岐点は、その会社が「公開会社」であるか否かです。「公開会社」とは、発行する株式の全部または一部について、譲渡による取得に会社の承認が不要な株式会社を指します。

公開会社は株式が自由に売買されるため、株主が不特定多数かつ流動的になりやすく、株主自身が経営を直接監督することが困難です。そこで、会社法は取締役の業務執行を監督する機関として、取締役会の設置を義務付けています。

一方、すべての株式に譲渡制限がある「非公開会社」では、株主が比較的固定されているため、取締役会の設置は義務ではなく、会社の判断で任意に設置することができます。

根拠条文:会社法第327条

取締役会などの機関設置に関する基本的なルールは、会社法第327条に定められています。この条文は、会社の特性に応じてどのような機関を設置しなければならないかを規定する、機関設計の根幹となる条文です。

取締役会の設置が義務付けられる会社(会社法第327条1項)
  • 公開会社
  • 監査役会設置会社
  • 監査等委員会設置会社
  • 指名委員会等設置会社

また、同条では、取締役会を設置する会社は原則として監査役を置かなければならないことなども定められており、株式会社が必要とする最低限の機関構成がこの条文によって決まります。

機関設置義務を怠った場合のリスク

会社法で定められた取締役会や会計監査人などの機関設置義務を正当な理由なく怠った場合、会社およびその代表者には重大なリスクが生じます。

機関設置義務を怠った場合のリスク
  • 代表者個人への過料: 義務付けられた機関の設置やその登記を怠ると、代表者個人に100万円以下の過料が科される可能性があります。これは刑事罰ではありませんが、会社の経費としては処理できません。
  • 社会的信用の失墜: 法令違反の事実は、取引先や金融機関からの信用を著しく損ない、事業活動に深刻な悪影響を及ぼす可能性があります。

【公開会社】大会社の機関設置義務

取締役会の設置は必須

公開会社であり、かつ大会社に該当する株式会社は、取締役会を必ず設置しなければなりません。これは、会社法第327条第1項により、公開会社には例外なく取締役会の設置が義務付けられているためです。

特に、社会的な影響力が大きい大会社においては、複数の取締役から構成される取締役会が経営の基本方針を決定し、取締役相互の業務執行を監督する体制を築くことが、経営の透明性と健全性を確保する上で不可欠とされています。

会計監査人の設置も必須

公開会社である大会社は、会計監査人の設置も必須です。会社法第328条第1項は、公開会社である大会社に対して、監査役会および会計監査人を設置する義務を課しています。

大会社は事業規模が大きく、多数の株主や債権者が存在するため、作成される計算書類の信頼性確保が極めて重要です。そのため、会社の内部者から独立した外部の専門家(公認会計士または監査法人)である会計監査人による厳格な会計監査を受けることが法的に要請されます。

監査役会または委員会の設置義務

公開会社かつ大会社は、経営監督体制を強化するため、監査役会または特定の委員会のいずれかを設置する義務があります。会社法が定める主な選択肢は以下の3つです。

公開会社かつ大会社が選択可能な監査・監督体制
  • 監査役会を設置する: 3名以上の監査役(半数以上は社外監査役)で構成される伝統的な監督機関です。
  • 監査等委員会を設置する(監査等委員会設置会社): 取締役会内に、過半数が社外取締役で構成される監査等委員会を置き、取締役の職務執行を監査します。
  • 指名委員会等を設置する(指名委員会等設置会社): 指名・監査・報酬の3委員会を設置し、経営の監督と業務執行を明確に分離する体制です。

これらのいずれかの高度なガバナンス体制を選択し、構築する必要があります。

【非公開会社】大会社の機関設置義務

取締役会の設置は任意

非公開会社の場合、たとえ資本金や負債総額が基準を超えて大会社に該当したとしても、取締役会の設置は法律上の義務ではなく任意です。

非公開会社は株主が特定されており、株主による直接的な経営監視が機能しやすいと考えられているため、取締役会を設置しないシンプルな機関設計も法的に認められています。ただし、実際には事業規模の大きい大会社では、業務の複雑化に対応し、迅速な意思決定を行うために、自主的に取締役会を設置するケースが多く見られます。

会計監査人の設置は必須

非公開会社であっても、大会社に該当する場合には会計監査人の設置が必須となります。これは会社法第328条第2項に明確に規定されています。

株式が公開されていなくても、負債総額が200億円以上になるなど、多数の債権者や取引先が存在するため、これらの利害関係者保護の観点から、会計の専門家による財務諸表の監査が義務付けられています。この点は、公開会社である大会社と何ら変わりありません。

監査役会・委員会の設置は不要

非公開会社である大会社には、公開会社の大会社と異なり、監査役会や監査等委員会、指名委員会等を設置する義務はありません

ただし、取締役会を設置する非公開大会社は、会社法第327条第2項により、原則として監査役を置かなければなりません。この監査役は、業務監査権限と会計監査権限の両方を持つことになります。監査役を複数名置く必要はなく、社外監査役を選任する義務も課されません。

大会社の機関設計パターン例

公開会社・大会社の典型パターン

公開会社かつ大会社は、会社法によって厳格な機関設置が求められるため、選択できる機関設計は限られます。代表的なパターンは以下の3つの類型です。

公開会社かつ大会社の代表的な機関設計パターン
  • 監査役会設置会社: 取締役会+監査役会+会計監査人という、日本の大企業で広く採用されてきた伝統的な形態です。
  • 監査等委員会設置会社: 取締役会+監査等委員会+会計監査人という形態で、取締役会による監督機能の強化を目的とし、近年採用が増加しています。
  • 指名委員会等設置会社: 取締役会+指名委員会等+会計監査人という、経営の監督と執行を分離する欧米型のガバナンス体制です。

非公開会社・大会社の典型パターン

非公開会社かつ大会社は、公開会社に比べて機関設計の自由度が高く、経営の実態に合わせて柔軟な構成が可能です。代表的なパターンとして、取締役会の設置の有無によって以下の2つが考えられます。

非公開会社かつ大会社の機関設計パターン例
  • 取締役会を設置しない場合: 取締役+監査役(任意)+会計監査人というシンプルな構成です。株主総会が最高意思決定機関として強く機能します。
  • 取締役会を設置する場合: 取締役会+監査役+会計監査人という構成です。業務執行の意思決定を効率化できます。監査役は1名で足り、監査役会を設置する必要はありません。

もちろん、自主的に監査役会を設置するなど、より高度なガバナンス体制を構築することも可能です。

よくある質問

Q. 負債200億円以上なら資本金に関わらず大会社?

はい、その通りです。負債総額が200億円以上であれば、資本金の額にかかわらず会社法上の「大会社」に該当します。

会社法第2条6号の定義は「資本金が5億円以上であることまたは負債の合計額が200億円以上であること」と規定しており、いずれか一方の条件を満たせば大会社となります。これは、多額の負債を抱える会社は多数の債権者が存在し、経営破綻した場合の社会的影響が大きいことから、資本金の規模とは無関係に厳格な会計監査を義務付ける必要があるためです。

Q. 非公開の大会社が取締役会を置かない場合の業務執行は?

非公開の大会社が取締役会を設置していない場合、会社の業務執行に関する意思決定は、取締役が複数いる場合はその過半数によって行われます(会社法第348条第3項)。正式な取締役会のような会議体を開く必要はなく、より柔軟な方法での決定が可能です。

取締役が1名しかいない場合は、その取締役が単独で会社の業務執行に関する全ての意思決定を行います。いずれの場合も、株主総会は会社のあらゆる事項を決議できる万能の機関として位置づけられます。

Q. 会社法327条と328条の関係性は?

会社法第327条と第328条は、株式会社の機関設計ルールを定める上で、相互に補完し合う関係にあります。

  • 会社法第327条: 公開会社かどうかといった会社の性質に着目し、取締役会や監査役の設置義務といった機関設計の基本原則を定めています。
  • 会社法第328条: 大会社かどうかという会社の規模に着目し、会計監査人や監査役会の設置義務といった大会社に特化した上乗せルールを定めています。

したがって、ある会社の機関設計を考える際には、まず第328条で大会社に該当するかを確認し、その上で第327条の基本原則を適用して、最終的に設置が必要な機関を確定させることになります。

まとめ:大会社の取締役会設置義務は「公開会社」か否かで決まる

本記事では、大会社の取締役会設置義務について解説しました。会社法上の大会社とは、資本金5億円以上または負債総額200億円以上の株式会社を指し、会計監査人の設置が義務付けられます。取締役会の設置義務については、会社の規模だけでなく「公開会社」であるか否かが重要な判断基準となります。公開会社であれば大会社であるか否かにかかわらず取締役会の設置が必須ですが、非公開会社の場合はたとえ大会社であっても取締役会の設置は任意です。まずは自社が貸借対照表上の基準で大会社に該当するのか、そして株式譲渡制限の有無から公開会社・非公開会社のどちらに分類されるのかを確認することが第一歩です。機関設計の変更には定款変更や登記手続きが伴うため、具体的な対応を進める際は、必ず弁護士や司法書士などの専門家にご相談ください。

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