財務

予測キャッシュフロー計算書の作り方|3表連動と精度管理の手順を把握

経営リスクナビ編集部

予測キャッシュフロー計算書(予測C/F)は、資金繰りや投資計画を進める一方で、銀行交渉や与信管理の説明資料も求められる現場で「まず自社で回せる形」を作りたいときに必要になります。月次資金繰り表は向こう6か月〜1年、日次資金繰り表は向こう2〜3か月といった時間軸を誤ると、月中の資金不足や手当ての遅れが起きやすく、黒字でも資金ショートの見落としにつながります。P/L・B/Sと整合する予測C/Fを組めれば、前提条件の置き方、更新の頻度、符号ミスの防止まで含めて「どこに手当てを打つか/いつ資金調達を相談するか」を決めやすくなります。実務で最初に押さえるべきは期間設計です。月次・日次・三表連動の位置付けから見ていきます。

目次

予測キャッシュフロー計算書の基本

予測財務諸表での位置付けを押さえる

予測キャッシュフロー計算書(予測C/F)は、一定の会計期間における現金・現金同等物の収支(キャッシュフロー)を、企業活動の区分ごとに整理して将来推移を示すものです。キャッシュ・フロー計算書は「営業活動・投資活動・財務活動」に区分して表示する報告書であり、予測財務諸表(予測P/L・予測B/S)とセットで作ることで、利益計画が「資金として回るか」を検証できます。

損益計算書(P/L)の利益は発生主義の結果で、売掛金など未回収の売上債権や、買掛金など未払いの仕入債務を含みます。そのため、売上が伸びて黒字でも、入金が遅い一方で支払いが先に来れば、口座残高が尽きて黒字倒産(資金ショート)に至ることがあります。

予測C/Fを最上位に置くべき理由は、予測B/Sの科目増減(売上債権・たな卸資産・仕入債務など)を通じて、P/Lの利益を「現金の増減」へ橋渡しできるからです。最終的には、C/Fの「現金及び現金同等物の期末残高」と、B/Sの「現金預金」が一致する状態まで整合させ、事業計画の実行可能性(資金が尽きないか)を確認します。

営業・投資・財務CFの構造を理解する

キャッシュ・フロー計算書は、資金の流れを営業活動・投資活動・財務活動の3区分で表示します。資金繰り表の文脈では、これと同趣旨の区分として「経常収支・設備収支・財務収支」に分けて管理する考え方もあり、いずれも「本業・投資・調達(返済)」の循環を可視化します。

3区分の意味(予測で見る観点)
  • 営業活動によるキャッシュ・フローは企業の中心的な事業がいくら資金を生み出しているかを示し、プラスなら事業が資金を生みマイナスなら事業が資金を食いつぶしていると判断します。
  • 投資活動によるキャッシュ・フローは有形固定資産等の取得による支出や売却による収入などを総額で示し、成長のためにマイナスになる局面もあります。
  • 財務活動によるキャッシュ・フローは長期借入による収入や返済による支出、株式発行による収入、配当金支払などを総額で示し、資金不足を埋める調整弁になります。

営業CFがマイナスの計画になっている場合、投資や返済以前に「本業が資金流出構造になっていないか」を疑う必要があります。参照される打ち手としては、在庫圧縮、売掛金の回収サイト短縮、買掛金の支払条件見直し(支払延期の交渉)など、運転資本のコントロールが典型です。

予測キャッシュフロー計算書の前提整理

期間とタイムスケールを決める

予測C/Fは、目的に応じて「いつまで」「どの粒度で」見るかを最初に決めます。資金繰り管理では、将来の資金不足を早期に察知し、早い時期に資金調達して資金繰りを安定させることが狙いになります。

期間設定の実務目安(目的別)
  • 月次資金繰り表は向こう6か月〜1年の資金繰り予定を月ごとに見て、各月末の予想現金残高(「月末現金残高」)がマイナスになる月を早期に発見します。
  • 日次資金繰り表は向こう2〜3か月を日ごとに見て、月中の資金不足(支払日前の残高不足)まで含めて予防します。
  • 予測キャッシュフロー計算書は投資計画や借入計画を含む中長期の整合性確認に使い、P/L・B/Sと論理的に連動させます。

「予測期間が長いほど良い」ではなく、日次で見るべき問題を月次で見てしまう、あるいは中長期の投資・返済判断を短期表だけで行う、といったズレが精度と実効性を落とします。

売上と支出の項目を洗い出す

予測の精度は、最初の「項目洗い出し」で決まります。ポイントは、P/Lの勘定科目を写すのではなく、現金が動く原因(入金・出金のイベント)に分解して拾い切ることです。

入金(売上側)で最低限そろえる情報
  • 売上の前提条件は市場規模・顧客数・シェア・単価などのドライバーに分解して、売上計画の根拠として固定します。
  • 売上債権(受取・売掛金、受取手形など)がいつ現金化するかを、取引先別に回収条件と入金予定日で整理します。
出金(支出側)で最低限そろえる情報
  • 売上原価(仕入・外注等)はコストや販売数量などから計算し、支払タイミング(締め・支払日)で出金化します。
  • 人件費は平均給与×人数などの前提で置き、給与・社会保険・賞与など支払日の違いを分けて反映します。
  • 賃料や広告費・販売促進費、福利厚生費などは「いつ支払うか」に寄せて月別に配置します。
  • 法人税等や借入金利息など営業外費用・税金は、予測しづらい項目は粒度を上げすぎず、支払の見込み時期だけは落とさないようにします。

資金繰りの実務では、将来の現金残高推移を見て「現金が最も落ち込む月(または日)」を先に特定し、そこに向けて手当ての優先順位を決めます。

月次予測と日次資金繰り表をどう分けるか|1〜3か月・6〜12か月・1年以上の使い分け

時間軸が違う資料を混ぜると、管理が形骸化しやすくなります。参照される資金繰り管理の整理に従うと、「月次資金繰り表」と「日次資金繰り表」を併用し、さらに中長期の整合性確認として予測C/F(3表連動)を位置付けるのが実務的です。

期間帯 使う資料 粒度 主なチェック 必要な入力の中心
向こう2〜3か月 日次資金繰り表 日次 月中の資金不足(支払日前の残高不足)を避ける 入金予定表・支払予定(確定見込み)
向こう6か月〜1年 月次資金繰り表 月次 月末現金残高がマイナスになる月を早期発見し資金調達を前倒し 月別の入出金予測・税金や賞与などの偏り
1年以上 予測キャッシュフロー計算書(3表連動) 月次/四半期など 投資・借入・返済を含む財務構造の持続性 予測P/L・予測B/S・投資計画・借入返済計画
期間別に見る資料とチェック対象

また、現金保有水準の考え方として「最低でも月商に比べてせめて1か月分の現金を保有」「理想は月商3か月分の現金を常に保有」という目線が示されています。自社の季節性・取引条件・資金調達力に応じて、月次・日次の表で下限水準を割り込むタイミングを検知できる設計にします。

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3表から予測キャッシュフロー計算書を作る

予測損益計算書から営業利益を置く

三表連動で予測C/Fを作る場合、実務で最も説明しやすいのは間接法です。間接法は、損益計算書の「税金等調整前当期純利益(税引前利益)」を起点に、減価償却費などの非資金項目と、売掛金・たな卸資産・買掛金などの増減(運転資本の増減)を調整して、営業活動によるキャッシュ・フローを表示します。

間接法の営業CFが「利益」とズレる主因
  • 税金等調整前当期純利益は発生主義であり売上債権や仕入債務の期末残高を含むため、現金の増減と一致しません。
  • 減価償却費は費用計上されても現金支出を伴わないため、営業CFでは足し戻し(加算)で調整します。
  • 売上債権の増加額やたな卸資産の増加額は現金を固定化するため、営業CFではマイナス調整になります。
  • 仕入債務の増加額は支払が後ろ倒しになり現金が残るため、営業CFではプラス調整になります。

P/Lの作成時点で、売上・売上原価・人件費・賃料・販売促進費・減価償却費・営業外費用(支払利息等)・法人税等といった主要項目を前提条件から組み上げておくと、その後のC/F調整(足し戻し・増減調整)の根拠が明確になります。

予測貸借対照表で売掛金と買掛金をつなぐ

予測C/Fの精度は、予測B/Sの運転資本(営業債権・棚卸資産・営業債務)を、C/Fの調整項目に正しく結び付けられるかで大きく変わります。参照されるC/Fの例でも、営業CFの調整項目として「売上債権の増加額」「たな卸資産の増加額」「仕入債務の増加額」が明示されています。

間接法の設計では、当期の予測B/Sと前期の実績B/S(または前期予測B/S)を並べ、差額(増減)をそのまま調整に使える形にします。ここで重要なのは、C/F上の「売上債権」は、B/S上の「受取及び売掛金」等に対応し、「仕入債務」は「支払手形及び買掛金」等に対応する、という対応関係をあらかじめ決めておくことです。

また、B/Sの基本公式である「資産=負債+資本(純資産)」が成立していること、C/Fの期末残高とB/Sの現金預金が一致していることを、毎回の更新でエラーチェックとして確認します。

符号を逆にしやすい運転資本項目をどう判定するか|売掛金・在庫・買掛金の増減の見分け方

運転資本の符号ミスは、予測C/Fで最も多い事故の一つです。間接法の表示では「売上債権の増加額」「たな卸資産の増加額」が△(マイナス)、「仕入債務の増加額」が+(プラス)として例示されており、ここが基準になります。

項目(B/S) 増加した場合の意味 営業CFでの調整 よくある誤り
売上債権(受取・売掛金等) 未回収が増え現金化していない マイナス(売上債権の増加額として△) 「売上が増えたからプラス」と誤解する
たな卸資産(在庫) 現金が在庫に化けている マイナス(たな卸資産の増加額として△) 在庫増を成長と同一視して符号を誤る
仕入債務(買掛金等) 支払が後ろ倒しで現金が残っている プラス(仕入債務の増加額として+) 負債増を悪化と見てマイナスにしてしまう
運転資本の増減とキャッシュフロー符号(間接法)

Excelで作る場合は、B/S増減(当期末−前期末)を1行で計算し、その増減に対して「資産は増加=マイナス、負債は増加=プラス」と機械的に符号変換する列を用意すると、属人的な判断ミスを減らせます。

営業・投資・財務キャッシュフローの予測方法

営業キャッシュフローの計算方法

営業活動によるキャッシュ・フローは、間接法で「税金等調整前当期純利益」を起点として、非資金損益と運転資本増減、税金・利息の支払などを調整して算出します。参照される例でも、営業CFは次のような要素で構成されています(会社によって「その他の資産及び負債の増減額」「利息及び配当金の受取額」等が加わります)。

間接法での営業CF(モデル設計の並べ方)
  1. 税金等調整前当期純利益(税引前利益)を最上段に置きます。
  2. 減価償却費を加算し、利益に含まれる非資金費用を戻します。
  3. 売上債権の増加額を控除(△)し、未回収分を現金ベースに直します。
  4. たな卸資産の増加額を控除(△)し、在庫に滞留した分を現金ベースに直します。
  5. 仕入債務の増加額を加算(+)し、未払による現金留保分を反映します。
  6. 法人税等の支払額を控除(△)し、税金支払の資金流出を反映します。

この並びを固定しておくと、P/L・B/Sが更新されたときも、差し替えるのは「税引前利益」「減価償却費」「B/S増減」「税金支払」の入力だけになり、更新運用が回しやすくなります。

投資キャッシュフローと減価償却費を整合させる

投資活動によるキャッシュ・フローは、原則として総額表示で、設備投資の「有形固定資産等の取得による支出」や、売却した場合の「有形固定資産の売却による収入」などを計上します。ここでの重要点は、投資CF(現金支出)と、P/Lの減価償却費(非資金費用)、B/Sの固定資産残高(ストック)が三点セットでつながるようにすることです。

設備投資と三表のつながり(最低限のルール)
  • 設備を取得するために支払った現金は投資活動によるキャッシュ・フローでマイナス(「有形固定資産等の取得による支出」)になります。
  • 減価償却費は現金流出を伴わないため、P/Lでは費用として利益を減らす一方、営業CFでは足し戻しで加算されます。
  • 固定資産残高(B/S)は、取得(増)と減価償却(減)などの結果として期末残高が決まるため、投資計画と減価償却の整合が崩れるとB/SとC/Fが一致しなくなります。

参照される「利益+減価償却費−設備投資」がフリーキャッシュフローのイメージという整理は、概算の説明には有効です。ただし、与信説明や投資判断での精度を上げるには、運転資本(売上債権・たな卸資産・仕入債務など)の増減も含めて、3表連動で確認する運用が安全です。

借入を増やす前にどの指標で説明するか|DSCR・返済原資・手元流動性の見せ方

銀行への説明では、会計上の利益よりも「返済期日に資金があるか」を中心に見られます。参照される資金繰り管理の観点でも、経常収支(=本業相当)をプラスにすることが最重要で、財務収支(借入)で補っている状態が続くと「借入で赤字を埋めている構図」になりやすい点が指摘されています。

そのため、指標を出す場合も、まずは予測C/F上の営業CF(本業キャッシュ創出)を核に置き、借入・返済(財務CF)がそれをどう補完しているかを示します。

銀行説明での「見せ方」チェックポイント(数値を作らずに示す要素)
  • 営業活動によるキャッシュ・フローがプラスか(マイナスなら在庫圧縮・回収サイト短縮・支払条件見直し等の手当をセットで説明します)。
  • 財務活動によるキャッシュ・フローで「長期借入による収入」と「長期借入金の返済による支出」を並べ、返済スケジュールの実行可能性を示します。
  • 月次資金繰り表の「月末現金残高」で、将来マイナスとなる月がないかを先に見せ、マイナスが出るなら早めの資金調達を行う計画であることを説明します。
  • 現金保有の目線として「最低でも月商に比べてせめて1か月分、理想は月商3か月分」を自社の基準として採用するか、採用できない場合は代替の安全余裕(コミット枠・追加担保余力等)を説明します。

DSCR(元利金返済カバー率)を用いる場合も、分子(営業CFなど)と分母(元本返済+支払利息)が予測C/F・借入返済表と一致していることが前提になります。

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予測キャッシュフロー計算書の運用と活用

予実管理と更新頻度で精度を高める

予測C/Fは一度作って終わりではなく、前提条件が崩れた瞬間に使えなくなるため、予実管理(予測と実績の差分管理)が中心業務になります。特に資金繰り表の運用思想では「将来資金不足になりそうなら早い時期に資金調達して安定化する」ことが目的なので、資金不足の兆候を早く見つける更新サイクルが必要です。

月次更新で最低限やる差分チェック
  • 月次資金繰り表の「月末現金残高」の実績と予測の差分を確認し、差分の原因(回収遅延・支払前倒し・在庫増等)を特定します。
  • 営業活動の結果(経常収支に相当)がマイナス基調なら、借入で埋めていないかを同時に確認し、事業面の対策(収支改善)と資金面の対策(調達)の順序を分けます。
  • 売上債権・たな卸資産・仕入債務の増減が想定どおりかを、B/S増減と営業CFの調整(売上債権の増加額等)が連動しているかで点検します。

短期については、向こう2〜3か月の日次資金繰り表を併用し、月次では見えない「月中の資金不足」も予防します。

資金繰り・銀行交渉・与信管理に活用する

予測C/F(または月次・日次の資金繰り表)は、資金繰りの安定化だけでなく、銀行交渉や取引先の与信管理にも直接効きます。特に景気悪化局面では取引先倒産リスクが高まり、倒産情報が出回ってからでは手遅れになりやすいため、日頃から取引先の業績や経営者交代、事業内容の変化などの情報に注意する必要があるとされています。

与信管理の「兆候」を資金繰り予測に反映する観点
  • 回収状況が思わしくない取引先や回収条件の変更を頻繁に求める取引先は、取引縮小等を早めに検討し不良債権化を防ぎます。
  • 入金予定表の入金日・金額が変わった時点で日次資金繰り表(向こう2〜3か月)を更新し、支払不能日が出ないかを即確認します。

また、不測の事態への資金手当として、中小企業基盤整備機構が運営する経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)では、取引先倒産時に「無担保・無保証人で掛金の10倍(最高8,000万円)まで借入れができる」とされており、セーフティネットの一つとして検討対象になります。

営業・経理・購買のどこで予測が崩れるか|入金予定表・発注計画・借入返済表の集め方

予測C/Fや資金繰り表の破綻原因は、ロジックよりも「入力(前提条件・現場情報)が集まらない/遅れる」ことにあります。資金繰り表の作り方としても、まず経営計画を作り、1か月ごとの損益計画を立て、その入金予想と出金予想をもとに資金繰りを作る流れが示されています。

部門横断で集めるデータ(最低限の回収ルール)
  1. 営業が取引先別の入金予定表を提出し、回収条件変更や入金遅延を発生時点で共有します。
  2. 購買が発注計画(支払確定見込み)を提出し、計画外の仕入や支払条件変更を即時反映します。
  3. 経理が借入返済表(金融機関別)と税金・社会保険等の支払予定を管理し、月次・日次の資金繰り表に落とします。
  4. 財務(または経理)が月次資金繰り表(向こう6か月〜1年)と日次資金繰り表(向こう2〜3か月)の両方を更新し、「月末現金残高」と「月中の不足」の両面で警戒ラインを監視します。

この回収ルールが固まると、予測の更新が属人化しづらくなり、銀行説明用の予測C/F(3表連動)の前提も一貫させやすくなります。

キャッシュフロー予測のリスク管理

不備が招く黒字倒産と資金ショートを知る

黒字倒産の本質は、P/Lが黒字でも、C/F(現金・現金同等物)が枯渇することです。参照されるC/Fの説明でも、営業活動によるキャッシュ・フローがプラスなら事業が資金を生み、マイナスなら事業が資金を食いつぶしていると整理されており、黒字倒産はまさに「事業が資金を食いつぶしているのに、利益だけ見てしまう」ことで起こります。

特に受注増・売上増の局面では、売上債権(受取・売掛金)の増加や、たな卸資産の増加が先に立ち、営業CFでは「売上債権の増加額」「たな卸資産の増加額」が△として効いてきます。ここを織り込まない予測は、期末や支払日の現金不足を見逃しやすく、突然の資金ショートにつながります。

失敗例から最低限の管理基準を定める

予測を運用に乗せるには、「どの状態になったら、何をするか」の基準が必要です。参照される資金繰り管理の目線では、現金残高が最も落ち込む月(または日)でも「月商に比べてせめて1か月分は現金を保有したい」、理想は「月商3か月分の現金を常に保有」とされています。

最低限の管理基準(ルール化の例)
  • 月次資金繰り表(向こう6か月〜1年)の「月末現金残高」が将来マイナスになる月が出たら、早めに資金調達を開始します。
  • 日次資金繰り表(向こう2〜3か月)で月中の資金不足が見える場合は、支払順序・支払条件交渉・短期資金の手当を即時に検討します。
  • 監視ラインとして「最低でも月商1か月分、理想は月商3か月分」の現金保有を基準に置き、割り込み見込みが出た時点で打ち手(回収条件、在庫、支払条件、調達)を決めます。

また、財務面の警戒シグナルとして「継続的な営業損失の発生または営業キャッシュ・フローのマイナス」「債務超過」などが挙げられており、C/FとB/Sの両面から悪化を早期に検知する設計が必要です。

大口取引先への依存が高い会社ほど何を織り込むべきか|回収遅延・貸倒れ・支払条件変更の反映方法

大口取引先への依存が高い場合、予測は「正常シナリオ」だけでは不足し、与信悪化の兆候を前提条件として織り込む必要があります。与信管理の注意点として、取引先の業績・経営者交代・事業内容の変化に注意すること、回収状況が悪い/回収条件の変更を頻繁に求める先には取引縮小などの処置を早めに行うことが示されています。

予測シートへの反映手順(シナリオ分け)
  1. 正常シナリオでは、取引先別の入金予定表どおりに売上債権が回収される前提で売上債権残高と入金時期を置きます。
  2. 遅延シナリオでは、入金予定表の入金日を後ろ倒しにし、日次資金繰り表(向こう2〜3か月)で支払不能日が出ないかを確認します。
  3. 条件変更シナリオでは、回収条件の変更(回収サイト延長など)に応じて「売上債権の増加額」がどれだけ増え営業CFが悪化するかを可視化します。
  4. 貸倒れを想定する場合は、B/Sの「貸倒引当金」等(売上債権の評価)も含めて影響を見える化し、資金手当として経営セーフティ共済などのセーフティネット(掛金の10倍・最高8,000万円の借入枠)も含めて耐久力を点検します。

このように、取引条件の変化を「売上債権(回収時期)」「営業CF(売上債権の増加額)」「日次の残高不足」の3点に落とすと、交渉上の論点(どの条件変更が致命的か)を数字で説明できます。

よくある質問

予測キャッシュフロー計算書は何年分作成するのが一般的ですか?

目的により使い分けます。資金繰り管理の実務目安としては、月次資金繰り表は向こう6か月〜1年日次資金繰り表は向こう2〜3か月を予測する整理が示されています。

一方で、投資計画・借入計画・返済計画を含む中長期の検証では、P/L・B/Sと連動した予測C/Fを別途作り、月次や四半期などの粒度で更新していく形が実務的です。年数を固定して考えるより、「短期は日次・中期は月次・長期は三表連動」と役割分担を明確にするほうが運用に乗りやすくなります。

直接法と間接法のどちらで予測すべきでしょうか?

営業活動によるキャッシュ・フローには、直接法と間接法の2つの表示方法が認められています。直接法は、営業収入、仕入支出、人件費支出、その他営業支出といった主要取引ごとのキャッシュ・フローを総額で表示する方法です。間接法は、損益計算書の税金等調整前当期純利益をベースに、減価償却費などの非資金項目や、売掛金・買掛金等の資産負債の増減額などを調整して表示する方法です。

予測の実務では、P/LとB/Sから機械的に接続しやすい間接法が運用に乗りやすく、投資活動・財務活動も原則として総額で表示するルールと整合します。

会計ソフトだけで予測キャッシュフロー計算書を作成しても問題ありませんか?

会計ソフトは実績集計には有効ですが、予測については「前提条件の置き方」が肝になります。参照される損益計画の前提条件として、市場規模・顧客数・シェア・単価などの前提、売上、売上原価(コストや販売数量)、広告費・販売促進費、人件費(平均給与×人数)、賃料、減価償却費(固定資産投資から計算)、営業外費用や法人税等、貸借対照表項目、キャッシュフロー(投資など)といった項目が挙げられています。

これらの前提条件は、事業の意思決定により変わるため、会計ソフトの自動推計だけでは反映しきれないことがあります。少なくとも、月次資金繰り表(向こう6か月〜1年)と日次資金繰り表(向こう2〜3か月)に落とせる形で、入金予定表・支払予定・投資計画・返済計画を自社で更新できる設計にしておくと、実務での耐久性が上がります。

予測キャッシュフロー計算書と月次の資金繰り表はどう使い分けますか?

使い分けは「期間」と「目的」で整理するとブレません。資金繰り管理では、資金繰り表により将来の資金繰りを予測し、将来資金不足になる時があれば早い時期に資金調達して安定化させる、という目的が明確です。

使い分けの要点
  • 月次資金繰り表は向こう6か月〜1年の毎月末の予想現金残高(「月末現金残高」)を見て、マイナスとなる月があれば早めに資金調達等の手当を検討します。
  • 日次資金繰り表は向こう2〜3か月の1日ごとの資金繰りを見て、月中の資金不足まで含めて予防します。
  • 予測キャッシュフロー計算書は営業・投資・財務の3区分で資金の流れを構造的に示し、P/L・B/Sと連動させて投資・借入・返済を含む計画全体の整合性を検証します。

現金の安全余裕の目線として「最低でも月商1か月分、理想は月商3か月分」をどの表でも共通の警戒基準として持っておくと、短期管理と中長期計画がつながりやすくなります。

予測キャッシュフロー計算書への対応で次にすべきこと

予測キャッシュフロー計算書(予測C/F)は、利益計画を資金の増減に橋渡しし、黒字でも起こり得る資金ショートを事前に点検するための基礎資料です。まずは時間軸を分け、向こう6か月〜1年は月次資金繰り表、向こう2〜3か月は日次資金繰り表で「不足が出る日/月」を先に特定したうえで、三表連動の予測C/Fに接続すると運用に乗りやすくなります。作成と更新では、間接法の営業CFの並びを固定し、運転資本(売掛金・在庫・買掛金)の符号ミスや、C/F期末残高とB/S現金預金の不一致をエラーチェックとして毎回確認するのが判断軸になります。次のアクションとしては、営業・購買・経理から入金予定表・発注計画・借入返済表を揃え、銀行説明が必要な局面は財務担当や顧問の専門家に相談しながら前提条件と整合性を詰めてください。個別の取引条件変更や与信悪化の影響は会社ごとに異なるため、最終判断は自社の実態に即して専門家と検討するのが安全です。



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