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監査役会監査報告書の書き方|記載事項・文例と作成実務の要点

経営リスクナビ編集部

企業の監査役や担当者として、監査役会監査報告書の書き方や文例をお探しではありませんか。この報告書は会社法で定められた重要な法定書類であり、記載すべき項目や法的要件を正確に理解しておく必要があります。不備があると株主への説明責任を果たせない可能性も考えられます。この記事では、監査役会監査報告書の基本構成から、会社法施行規則に基づく具体的な記載事項、項目別の文例、作成スケジュールまでを網羅的に解説します。

監査役会監査報告書の基本

目的と法的根拠(会社法)

監査役会監査報告書は、取締役の職務執行を監査した結果を株主や債権者などのステークホルダーに報告するための法定書類です。会社法第381条などに基づき、監査役および監査役会には監査報告を作成する義務が課せられています。この報告書は、独立した立場から企業統治の実効性を担保し、経営の適法性・妥当性を客観的に示す重要な役割を担います。特に監査役会設置会社(大会社など)では、個々の監査役が作成した監査報告をもとに監査役会で審議し、機関としての統一的な監査報告書を作成したうえで、定時株主総会の招集通知に添付して株主に提供されます。

監査役会非設置会社との違い

監査役会設置会社と非設置会社では、監査報告書の作成プロセスと主体が異なります。監査役会設置会社では、合議体である「監査役会」としての統一見解が示されるのに対し、非設置会社では各監査役の独立した意見が直接示される点が大きな違いです。

項目 監査役会設置会社 監査役会非設置会社
作成主体 監査役会(合議体) 各監査役が個別または連名で作成
作成プロセス 各監査役の監査報告をもとに、監査役会で審議し、統一的な報告書を作成 各監査役が単独で作成するか、複数の監査役が合同で作成
意見形成 組織としての審議を経た統一意見 各監査役の独立した意見が直接表明される
法的義務 監査役会としての報告書作成義務あり 監査役会としての報告書作成義務はなし
監査役会設置の有無による監査報告書の違い

会計監査報告書との関係性

監査役会監査報告書と会計監査報告書は、いずれも会社の経営状況を外部に示す重要な書類ですが、作成者や監査の対象領域が異なります。監査役会は、会計監査人が実施した監査の方法と結果が妥当であったかを評価し、その旨を自らの監査報告書に記載する義務を負います。両者は相互に補完し合うことで、企業の財務報告の信頼性を多角的に担保する仕組みとなっています。

項目 監査役会監査報告書 会計監査報告書
作成者 監査役会(または監査役) 公認会計士または監査法人(会計監査人)
監査対象 取締役の職務執行全般(業務監査+会計監査) 計算書類およびその附属明細書(会計監査)
主な役割 経営全般の適法性・妥当性を監査し、会計監査人の監査の相当性を評価 独立した第三者の立場から財務情報の適正性について意見を表明
関係性 会計監査報告書の内容を評価・検証し、その結果を含めて作成される 監査役会監査報告書を作成するための重要な基礎情報となる
監査役会監査報告書と会計監査報告書の比較

主な記載事項(会社法施行規則)

監査の方法及びその内容

監査報告書には、監査役がどのような方法で監査を実施したかを具体的に記載する必要があります。これは会社法施行規則第129条で義務付けられており、監査プロセスの透明性と信頼性を確保することが目的です。単なる形式的な記述ではなく、監査の実態が理解できるような具体的な行動事実を記載することが求められます。

「監査の方法及びその内容」の主な記載例
  • 監査役会で定めた監査方針、計画、および業務分担の概要
  • 取締役会や経営会議など、社内の重要な会議への出席状況
  • 取締役や従業員から職務執行状況を聴取した事実
  • 重要な決裁書類や契約書などを閲覧した状況
  • 本社および主要な事業所における業務・財産の調査内容
  • 子会社の取締役や監査役との連携状況、子会社から受けた事業報告の内容
  • 内部監査部門および会計監査人との連携状況

事業報告等が法令等に適合するかの意見

事業報告およびその附属明細書の内容が、法令および定款に準拠し、会社の状況を正しく示しているかについての意見を明確に記載します。監査役は、取締役から提出された事業報告の内容を会社の実際の業務や財産状況と照合し、虚偽や誤りがないかを確認します。その上で、「会社の状況を正しく示しているものと認める」といった形で意見を表明することで、事業報告の信頼性を保証する役割を果たします。

会計監査人の監査の相当性

会計監査人が実施した監査について、その方法と結果が相当であると認められるかどうかを記載します。監査役会は、会計監査人の独立性や専門性、品質管理体制を監視・検証する責任を負っています。会計監査人から監査計画や実施状況について報告を受け、その内容を吟味した上で「相当であると認める」または「相当でないと認める」旨の意見を表明します。相当でないと判断した場合は、その理由も具体的に記載する必要があります。

取締役の職務執行に関する不正行為等

監査の過程で、取締役の職務執行に関して不正な行為や、法令・定款に違反する重大な事実を発見した場合には、その内容を具体的に記載しなければなりません。これは、会社法施行規則第129条で定められた監査役の重要な責務です。もしそのような事実が認められなかった場合は、「不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実は認められない」と記載することで、取締役の職務執行が適法であったことを示します。

その他法務省令で定める事項

上記のほかにも、会社法施行規則等で定められた特定の事項について記載が求められる場合があります。特に大会社などでは、以下のような項目に関する監査役会の意見を記載する必要があります。

法務省令で定める主な特記事項
  • 内部統制システムの構築・運用状況が相当であるかどうかの意見
  • 会社が導入している買収防衛策が、株主共同の利益を害するものでないかどうかの意見
  • その他、特定の取引や子会社に関する事項など

【項目別】書き方と文例

監査方法・内容の記載例

監査方法や内容を記載する際は、定型文を並べるだけでなく、その事業年度に実際に行った監査活動が具体的に伝わるように記述することが重要です。これにより、監査の実効性と信頼性を株主に対して示すことができます。

記載すべき具体的な監査活動の例
  • 監査役会が定めた監査方針・計画に基づき、各監査役が分担して監査を実施したこと
  • 取締役、執行役員、内部監査部門等との間で緊密な意思疎通を図ったこと
  • 取締役会をはじめとする重要な会議に出席し、意見を述べたこと
  • 取締役等から職務執行状況の報告を受け、必要に応じて説明を求めたこと
  • 重要な決裁書類等を閲覧し、本社および主要な事業所の業務・財産状況を調査したこと

事業報告に関する意見の文例

事業報告およびその附属明細書に関する意見は、結論を簡潔かつ明確に記載することが一般的です。これにより、株主は事業報告の内容が適正であることを端的に理解できます。多くの場合、以下の趣旨の定型的な文言が用いられます。

「当監査役会は、当該事業年度に係る事業報告及びその附属明細書について上記の方法により監査いたしました。その結果、事業報告及びその附属明細書は、法令及び定款に従い、会社の状況を正しく示しているものと認めます。また、取締役の職務の執行に関する不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実は認められません。」

会計監査人の相当性に関する文例

会計監査人の監査の相当性については、監査役会が会計監査人の独立性や監査プロセスを適切に監視・検証した上で、その方法と結果が妥当であると判断した旨を記載します。客観的な根拠を示すために、会計監査人から受けた報告内容などを併記することが一般的です。

「当監査役会は、会計監査人である〇〇監査法人からその職務の執行状況について報告を受けるとともに、その独立性の保持及び品質管理体制について説明を受けました。その上で、会計監査人の監査の方法及び結果は相当であると認めます。」

不祥事発生時の特記事項の書き方

事業年度中に不祥事が発生した場合、監査報告書でその事実関係や会社の対応について言及する必要があります。これは、株主に対する重要な情報提供であると同時に、経営陣への監視機能が適切に働いていることを示すためです。記載にあたっては、客観的な事実に留め、会社の対応状況に対する監査役会の評価を付記します。

「事業報告に記載のとおり、〇〇の件(不祥事の概要)が発生いたしましたが、当監査役会としては、原因究明及び再発防止策の策定・実施状況を継続的に監視してまいりました。現時点において、取締役会の対応に特段指摘すべき事項はないものと判断しております。」

作成から提出までの実務

作成スケジュールの組み方

監査役会監査報告書の作成は、法定期限を遵守するために、株主総会の日程から逆算して計画的に進める必要があります。関係者との連携が不可欠であり、余裕を持ったスケジュール管理が重要です。

作成スケジュールの策定手順
  1. 定時株主総会の開催日を確定させる。
  2. 株主総会招集通知の発送日から、監査報告書を含む添付書類の印刷・準備期間を確保する。
  3. 計算書類等の取締役会承認日を設定する。
  4. 会計監査人による会計監査報告書の受領予定日を確認する。
  5. 会計監査報告書の受領後、監査役会で審議・決議する日を複数設定する。

各監査役の監査報告の集約

監査役会設置会社では、まず個々の監査役が自身の監査結果をまとめた監査報告を作成します。その後、監査役会において各監査役の報告内容を持ち寄り、審議を通じて監査役会としての統一的な意見を形成します。もし監査役間で意見が一致しない場合は、少数意見を監査報告書に付記することも可能です。

取締役への提出期限と方法

完成した監査役会監査報告書は、法令で定められた期限内に、代表取締役などの特定取締役へ通知・提出する必要があります。提出期限は、原則として会計監査報告書を受領した日から1週間後、または取締役と監査役が合意した日のいずれか遅い日となります。提出方法は書面のほか、電子署名を付した電磁的記録(PDFファイルなど)も認められています。

株主総会での報告義務

監査役は、株主総会に提出された議案や書類に法令違反や著しく不当な事項があると認める場合、その調査結果を株主総会で報告する義務があります(会社法第384条)。監査報告書で適正意見を表明している場合は、総会での口頭報告は省略されることも多いですが、問題を発見した際には株主に対して直接説明する重要な役割を担います。

会計監査人の「相当性」判断における実務上の着眼点

会計監査人の監査の「相当性」を判断する際には、単に監査結果の報告を受けるだけでなく、監査プロセスの妥当性を多角的に検証することが求められます。監査役としては、以下のような点に注意して会計監査人とコミュニケーションを図ることが重要です。

会計監査人の相当性を判断する際の着眼点
  • 独立性: 監査対象企業との間に利害関係がなく、独立した立場が保たれているか。
  • 品質管理体制: 監査法人が適切な品質管理基準を整備・運用しているか。
  • 監査計画: 企業のリスクを適切に評価し、効果的な監査計画が立てられているか。
  • 専門性: 監査チームが企業の事業内容を理解する上で十分な専門性を有しているか。
  • コミュニケーション: 監査の過程で発見された重要な事項について、監査役会と十分な協議が行われているか。

監査報告に関するよくある質問

Q. 監査報告書への押印は不要ですか?

はい、現行の会社法では監査報告書への押印は義務付けられていません。記名または署名があれば法的に有効です。ただし、日本の商慣習上、信頼性を担保する目的で署名に加えて押印することが一般的です。近年では、電子署名を利用して電磁的記録として作成・提出することも認められています。

Q. 子会社の不祥事は記載が必要ですか?

子会社の不祥事であっても、親会社の財政状態や経営成績に重大な影響を及ぼす場合や、親会社の内部統制システムの不備に起因する場合には、監査報告書への記載を検討する必要があります。監査役は企業集団全体のガバナンスを監視する責務を負っているため、子会社の問題であっても、それが親会社の取締役の監督義務違反などにつながる可能性があれば、適切に言及することが求められます。

Q. 監査役が1名でも監査報告は必要ですか?

はい、必要です。監査役会を設置していない会社であっても、監査役設置会社である限り、監査役には監査報告を作成する義務があります。この場合、監査役会の審議は経ませんが、監査役個人が単独で監査報告書を作成し、法令で定められた期限内に取締役へ提出しなければなりません。

Q. 重大な法令違反ではないが、改善すべき指摘事項はどう扱いますか?

取締役の不正行為や重大な法令違反には至らないものの、業務プロセスの改善点や軽微な規程違反などの指摘事項は、通常、監査報告書には記載しません。これらの事項は、日常の監査活動や取締役会などの場を通じて、経営陣に対して口頭または別途書面で提言・勧告し、内部統制の向上を促すのが一般的です。監査報告書は、株主の投資判断に影響を与えるような重要な事項を報告するためのものであるため、内部で解決すべき課題と使い分けることが実務的です。

まとめ:監査役会監査報告書の書き方と実務ポイント

本記事では、監査役会監査報告書の目的、法的根拠、具体的な記載事項と文例について解説しました。この報告書は、取締役の職務執行が適法かつ妥当に行われたかを株主に報告する重要な役割を担います。会社法や会社法施行規則に基づき、監査の方法、事業報告への意見、会計監査人の相当性、不正行為の有無などを漏れなく記載する必要があります。作成にあたっては、ひな形を参考にしつつも、単なる形式的な記述に終わらせず、当該年度に実際に行った監査活動を具体的に示すことが、監査の実効性と信頼性を高める上で重要です。まずは株主総会の日程から逆算してスケジュールを立て、会計監査人や内部監査部門との連携を密にしながら準備を進めましょう。なお、本記事の内容は一般的な解説であり、個別の事案、特に不祥事対応など複雑な判断を要する場合は、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。


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