法務

背任罪の刑事告訴|手続きの流れから証拠収集、受理のポイントまで解説

経営リスクナビ編集部

役員や従業員による不正なリベート受領など、会社に損害を与える背任行為を疑い、刑事告訴を検討している担当者の方もいるでしょう。しかし、背任罪での告訴は、単なる経営判断の失敗との区別がつきにくく、証拠が不十分な場合は警察に受理されないことも少なくありません。放置すれば被害が拡大するだけでなく、会社の信用を損なうリスクもあります。この記事では、背任罪で刑事告訴するための具体的な手続きの流れ、成立要件、告訴状の書き方、そして受理の可能性を高める証拠収集のポイントについて、実務的な観点から詳しく解説します。

背任罪の成立要件と類似犯罪

背任罪を構成する4つの要件

背任罪とは、他人のために事務を処理する者が、自己や第三者の利益を図る、または本人に損害を与える目的(図利加害(とりかがい)目的)をもって、その任務に背く行為(任務違背(にんむいはい)行為)をし、本人に財産上の損害を与えることで成立する犯罪です。これは、委託者からの信頼を裏切り、与えられた権限を濫用する行為を処罰することを目的としています。

背任罪が成立するには、以下の4つの要件をすべて満たす必要があります。

背任罪の成立要件
  • 事務処理者であること: 他人のために財産管理などに関する事務を処理する地位にあること。
  • 図利加害目的があること: 自己もしくは第三者の利益を図る目的、または本人に損害を加える目的があること。
  • 任務違背行為をすること: 誠実な事務処理者として法的に期待される行為に反すること。
  • 財産上の損害を加えること: 本人に現実的な財産上の損害を発生させること。

例えば、銀行の融資担当者が、十分な審査を行わず返済見込みのない企業に無担保で融資を実行し、銀行に回収不能な損害を与えるケースが典型例です。これらの要件が一つでも欠ければ背任罪は成立せず、他の犯罪や民事上の問題として扱われることになります。

特別背任罪との相違点

特別背任罪は、株式会社の取締役など、特に大きな権限を持つ役職者が会社に重大な損害を与えることを防ぐために、会社法で定められた犯罪です。通常の背任罪と比較して、行為者の身分が限定され、刑罰が非常に重く設定されています。

比較項目 背任罪(刑法) 特別背任罪(会社法)
対象者 他人のために事務を処理する者全般 株式会社の取締役、監査役、発起人などの特定の役員等
根拠法 刑法 第247条 会社法 第960条
刑罰 5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方
背任罪と特別背任罪の比較

このように、強い権限と影響力を持つ役員による背任行為は、株主などのステークホルダーに甚大な損害をもたらすため、より重い責任を問われる特別背任罪として厳しく処罰されます。

業務上横領罪との区別

背任罪と業務上横領罪は、どちらも信頼関係を裏切る財産犯罪ですが、行為の性質と目的によって明確に区別されます。横領が他人の財物を直接自分のものにする「着服行為」であるのに対し、背任は権限を濫用して本人に損害を与える「背信行為」を処罰の対象とします。

比較項目 背任罪 業務上横領罪
行為の性質 権限を濫用し、任務に背いて本人に損害を与える行為 業務上、自己が占有する他人の財物を不法に着服・費消する行為
目的(意思) 自己・第三者の利益または本人への損害目的(図利加害目的) 他人の財物を自分の物として扱う意思(不法領得の意思)
具体例 不当に高額な仕入れ契約を結び、取引先からリベートを受け取る 会社の預金を自分の口座に送金して着服する
背任罪と業務上横領罪の区別

会社の財産を直接自分のものにすれば業務上横領罪、与えられた権限を不正に行使して会社に財産的損害を与えれば背任罪、という違いがあります。

刑事告訴の手続きと流れ

相談から捜査開始までの手順

刑事告訴を円滑に進めるためには、事前の準備と警察との連携が不可欠です。警察は多数の事件を抱えており、証拠が不十分な事案や犯罪事実が不明確な事案は受理を保留することが多いため、計画的な手順を踏む必要があります。

刑事告訴の一般的な流れは以下の通りです。

刑事告訴から捜査開始までの流れ
  1. 社内調査と証拠収集: 不正行為の客観的な証拠を集め、事件の全体像を正確に把握します。
  2. 警察への事前相談: 管轄の警察署に連絡をとり、事件の概要を説明して捜査機関の見解や助言を求めます。
  3. 告訴状と証拠の提出: 事前相談でのフィードバックを基に告訴状を作成・修正し、収集した証拠一式と共に正式に提出します。
  4. 告訴の受理と捜査開始: 警察が内容を確認し、事件性があると判断すれば告訴状が受理され、本格的な捜査が始まります。

証拠を十分に揃え、警察との事前相談を通じて内容を詰めていくことが、スムーズな告訴受理と捜査開始につながります。

告訴状に記載すべき必須項目

告訴状には法的に定められた厳格な書式はありませんが、捜査機関が事件を迅速かつ正確に理解するために、実務上記載すべきとされる必須項目があります。これにより、誰が誰に対し、どのような処罰を求めているのかを明確に伝えます。

告訴状の主な記載項目
  • 告訴人の情報: 法人の場合は、会社名、所在地、代表者名を記載します。
  • 被告訴人の情報: 氏名、住所、勤務先の役職など、個人を特定できる情報を記載します。
  • 告訴の趣旨: 被告訴人の行為がどの犯罪に該当するかを指摘し、厳重な処罰を求める意思を明記します。
  • 犯罪事実: いつ、どこで、誰が、何を、どのように行ったかという事実関係を具体的に記述します。
  • 立証方法: 犯罪事実を裏付ける証拠資料の一覧を記載し、本文と関連付けます。

これらの項目を論理的に、かつ過不足なく記載することが、質の高い告訴状の条件となります。

犯罪事実を具体的に示す書き方

犯罪事実は、捜査機関が犯罪の成否を判断する上で最も重要な部分です。そのため、「いつ、どこで、誰が、誰に対して、何を、どのように」といった要素を、証拠に基づいて客観的かつ具体的に記述する必要があります。

背任罪の場合、4つの構成要件に沿って事実を整理すると、捜査機関に伝わりやすくなります。

犯罪事実に記載する構成要件ごとの内容
  • 事務処理者の地位: 被告訴人が会社でどのような役職にあり、どのような職務権限を持っていたかを明記します。
  • 図利加害目的: 被告訴人が自己や第三者の利益を図る目的があったことを、利益相反関係などの状況から説明します。
  • 任務違背行為: いつ、どのような不当な契約を、いくらで締結したかなど、具体的な日時や金額を挙げて記述します。
  • 財産上の損害: 任務違背行為によって会社が被った具体的な被害額とその算定根拠を明確に示します。

感情的な表現は避け、証拠と結びつく客観的な事実のみを淡々と記述することが、信頼性の高い告訴状を作成する上で重要です。

告訴が受理された後の捜査協力と社内体制

告訴状が受理されても、それで終わりではありません。捜査の進展には、会社の継続的な協力が不可欠です。警察による関係者の事情聴取や追加の証拠提出依頼などに迅速かつ的確に対応できる社内体制を整えておく必要があります。

告訴受理後に会社に求められる捜査協力
  • 事情聴取への対応: 会社の担当者や役員が警察署に出向き、捜査員の質問に対して詳細な説明を行います。
  • 追加資料の提出: 捜査の過程で必要となる会計資料や電子データなどを速やかに提出します。
  • 社内窓口の設置: 捜査機関との連絡を一本化するため、専任の担当者を決めておくと円滑な連携が図れます。

捜査に全面的に協力する姿勢と、それに対応できる体制を構築しておくことが、事件の早期解決につながります。

告訴に不可欠な証拠の集め方

背任行為を立証する証拠の種類

背任行為は、行為者の正当な権限の範囲内で行われる外形をとることが多いため、通常の業務と不正行為の境界線を客観的に証明することが重要です。そのため、改ざんの疑いがなく、多角的な視点から集められた客観的証拠が不可欠となります。

犯罪の構成要件を立証するために、以下のような証拠を収集します。

背任行為の立証に必要な証拠の例
  • 事務処理者の地位を証明する証拠: 雇用契約書、職務分掌規程、取締役会議事録など。
  • 任務違背行為と損害を証明する証拠: 稟議書、契約書、会計帳簿、銀行の取引履歴、請求書など。
  • 図利加害目的を推認させる証拠: 取引先との私的なメール、SNSのやり取り、関係者の証言記録など。
  • 本人の自白に関する証拠: 本人が任意で作成した自認書や始末書(ただし、任意性が重要)。

書類やデータ、通信履歴まで、犯罪の全体像を裏付ける多様な証拠を網羅的に収集することが、立証の成功に直結します。

証拠を収集する際の注意点

社内調査で証拠を収集する際は、調査の事実を行為者に察知されないよう、秘密裏かつ適法な手段で進めることが鉄則です。調査が発覚すれば、証拠隠滅や関係者との口裏合わせが行われ、真相解明が著しく困難になるおそれがあります。

証拠収集における注意点
  • 調査の隠密性を保つ: 本人に直接事情を聞くことは避け、まずはアクセスログやメール履歴などの周辺証拠から保全します。
  • プライバシー権を侵害しない: 本人の同意なく私物のPCやスマートフォンを調べる行為は違法収集証拠となるリスクがあります。
  • ヒアリングは慎重に行う: 関係者への聞き取りは、他の従業員に知られない場所と時間を選び、中立的な立場で実施します。

隠密性と適法性を両立させながら慎重に調査を進めることが、法的に有効な証拠を確保するための鍵となります。

収集した証拠の保全方法

収集した証拠は、後の捜査や裁判でその価値が認められるよう、原本性を担保した状態で厳重に保全する必要があります。証拠の完全性が疑われれば、証拠能力を否定される可能性があるため、管理には細心の注意が求められます。

証拠の保全方法
  • 紙媒体の証拠: 原本は鍵付きのキャビネットなどで保管し、警察への提出や日常の確認にはコピーを使用します。
  • デジタルデータ: 専門的な技術(デジタル・フォレンジック)を用いてデータを抽出し、改ざんが不可能な状態で保全します。
  • アクセス管理の徹底: 保全した証拠には限られた担当者しかアクセスできないよう、物理的・システム的に管理します。

証拠の原本性と機密性を確保する適切な保全管理が、法的手続きの成否を分ける重要な基盤となります。

社内調査における証拠隠滅のリスクと対策

背任行為を行うような権限を持つ人物は、システムの操作に詳しかったり、部下に指示して記録を抹消したりする力を持っているため、証拠隠滅のリスクは常に考慮しなければなりません。迅速な初動対応と専門技術の活用が、このリスクへの有効な対策となります。

証拠隠滅への対策
  • アクセス権限の即時停止: 不正の疑いが浮上した直後に、行為者の業務用PCやアカウントへのアクセス権を停止または制限します。
  • 削除されたデータの復元: 専門業者によるデジタル・フォレンジック調査を依頼し、削除されたファイルやメールの復元を試みます。
  • 対象機器の保全: 証拠隠滅を防ぐため、対象となるPCやサーバーにはむやみに触れず、そのままの状態で専門家に引き渡します。

迅速な権限の遮断と専門的なデータ復元技術を組み合わせることで、意図的な証拠隠滅のリスクを最小限に抑えることが可能です。

告訴状を警察に受理させるには

なぜ背任罪の告訴は受理されにくいか

背任罪の告訴は、他の犯罪と比較して警察に受理されにくい傾向があります。これは、警察が遵守する「民事不介入の原則」と、背任罪特有の立証の難しさが主な原因です。

背任罪の告訴が受理されにくい理由
  • 民事トラブルとの見分けがつきにくい: 背任行為は業務の一環として行われるため、単なる経営判断の失敗や契約不履行との区別が曖昧です。
  • 犯罪の証明が難しい: 会社に損害を与える意図(図利加害目的)があったことを客観的証拠のみで立証するのは非常に困難です。
  • 損害額の算定が複雑: 直接的な金銭の減少だけでなく、得べかりし利益の喪失など、損害額の計算が難しい場合があります。

これらの曖昧な要素が多いことから、警察は犯罪の嫌疑が不十分と判断し、告訴の受理に慎重な姿勢を示すことが少なくありません。

受理の可能性を高めるための対策

告訴状を受理させるためには、この事案が単なる民事トラブルではなく、明確な犯罪行為であることを捜査機関に説得する必要があります。そのためには、構成要件を満たす事実を論理的に主張し、それを裏付ける客観的証拠を体系的に整理することが不可欠です。

受理の可能性を高めるための具体的対策
  • 論理的な告訴状の作成: 背任罪の4つの構成要件に沿って事実関係を整理し、犯罪が成立する理由を法的に説明します。
  • 証拠の体系化: 添付する全証拠に通し番号を振り、告訴状の本文中で引用することで、事実と証拠の対応関係を明確にします。
  • 警察との事前相談の徹底: 管轄の警察署に事前に相談し、指摘された点に基づいて証拠を補強したり、記述を修正したりします。

構成要件に基づき論理的に作成された告訴状と、体系化された証拠を用意し、捜査機関との対話を重ねることが、受理の可能性を飛躍的に高めます。

弁護士に依頼する具体的な役割

背任罪のような複雑な経済犯罪の告訴では、法律と捜査実務に精通した弁護士の協力が極めて有効です。弁護士は、告訴状の作成から受理に向けた警察との折衝までを一貫して担い、高い専門性で手続きを強力にサポートします。

告訴における弁護士の役割
  • 質の高い告訴状の作成: 収集された証拠を法的に評価し、犯罪構成要件を満たす事実を的確に抽出して、隙のない告訴状を作成します。
  • 捜査機関との交渉・折衝: 警察との事前相談や提出時に同行し、法的な根拠や判例を示して事件性を説明し、「民事不介入」の壁を越える交渉を行います。
  • 代理人としての一貫した対応: 告訴受理後も、捜査の進捗確認や追加の資料提出などを代理人として一手に引き受け、会社の負担を軽減します。

専門的知見と交渉力を備えた弁護士に依頼することが、難易度の高い背任罪の告訴を成功に導くための最も確実な手段と言えます。

刑事告訴と民事訴訟の関係

刑事告訴で得られるメリット

刑事告訴の直接的な目的は加害者への処罰を求めることですが、副次的に会社にとって多くのメリットをもたらします。特に、捜査機関の強制力を背景とした真相究明や被害回復の促進が期待できます。

刑事告訴のメリット
  • 強制捜査による真相究明: 社内調査では限界のあった証拠(個人の銀行口座など)を、捜査機関が強制的に収集し、事件の全容解明が期待できます。
  • 被害回復の促進: 加害者は逮捕や実刑判決を回避するため、被害弁償や示談交渉に積極的に応じる可能性が高まります。
  • 再発防止への抑止力: 会社として不正を許さないという断固たる姿勢を示すことで、他の従業員への強力な牽制となり、再発防止につながります。

公的な捜査機関の介入は、当事者間の交渉だけでは得られない強力な効果を生み出します。

刑事告訴に伴うデメリットとリスク

刑事告訴はメリットばかりではありません。事件が公的な手続きに乗ることで、会社がコントロールできない様々な負担やリスクが生じる可能性も十分に理解しておく必要があります。

刑事告訴のデメリットとリスク
  • 捜査対応による業務負担の増大: 役員や従業員が、警察からの度重なる事情聴取に対応する必要があり、通常業務に支障が出る場合があります。
  • レピュテーションリスク(評判低下): 事件が報道されることで、会社の内部管理体制の不備が露呈し、社会的信用を損なうおそれがあります。
  • 費用倒れのリスク: 弁護士費用が、最終的に回収できた被害額を上回ってしまう可能性があります。

刑事告訴に踏み切る際は、これらのデメリットを総合的に勘案し、慎重に判断することが求められます。

民事での損害賠償請求との違い

刑事告訴と民事訴訟は、目的も手続きも全く異なるものです。刑事告訴が国家に刑罰を科してもらう手続きであるのに対し、民事訴訟は当事者間で金銭的な損害を回復する手続きです。

比較項目 刑事告訴 民事訴訟(損害賠償請求)
目的 加害者の処罰を求める 金銭的な損害の回復
手続きの主体 捜査機関(警察・検察) 裁判所(当事者間の争い)
得られる結果 懲役や罰金などの刑罰 損害賠償金の支払い命令
刑事告訴と民事訴訟の比較

両者は別の手続きですが、実務上は並行して進めることが多くあります。刑事手続きで加害者にプレッシャーをかけ、民事での損害賠償交渉を有利に進めるという戦略的な活用が可能です。

よくある質問

背任罪の公訴時効は何年ですか?

背任罪の公訴時効は、犯罪の重大性に応じて定められており、罪名によって期間が異なります。公訴時効は犯罪行為が終わった時から進行し、この期間が過ぎると検察官は起訴できなくなります。

犯罪名 根拠法 公訴時効
背任罪 刑法 5年
特別背任罪 会社法 7年
背任罪の種類と公訴時効

背任行為は長期間にわたって発覚しにくい性質があるため、不正の疑いが生じたら、時効の完成を念頭に置いて速やかに調査を開始することが重要です。

背任罪は親告罪にあたりますか?

背任罪は、原則として親告罪ではありません。親告罪とは、被害者からの告訴がなければ起訴できない犯罪(名誉毀損罪など)を指しますが、背任罪はこれに該当しません。したがって、理論上は被害者である会社の告訴がなくても、捜査機関が捜査・起訴することが可能です。

ただし、実務上は、会社の内部事情が複雑に絡む経済犯罪であるため、会社からの詳細な情報提供や証拠提出がなければ、捜査機関が自発的に事件を認知して捜査に乗り出すことは極めて稀です。そのため、加害者の処罰を求めるのであれば、事実上、会社からの刑事告訴が不可欠となります。

刑事告訴の弁護士費用はどのくらいですか?

刑事告訴を弁護士に依頼する場合の費用は、事案の複雑さ、証拠の量、弁護士の稼働時間などによって大きく変動するため、一概には言えません。背任罪のような経済犯罪は、証拠の精査や法的な論点整理に専門的な知見を要するため、費用は高額になる傾向があります。

一般的に、弁護士費用は以下の要素で構成されます。

弁護士費用の一般的な内訳
  • 着手金: 依頼時に支払う費用。結果にかかわらず返還されないのが通常です。
  • 報酬金: 告訴の受理や加害者の起訴など、成功の度合いに応じて支払う費用。

具体的な金額は法律事務所によって異なりますが、着手金と報酬金を合わせて数十万円から百万円を超えることも珍しくありません。依頼前には複数の弁護士事務所の無料相談などを活用し、費用の見積もりを確認することをおすすめします。

提出した告訴状を取り下げることは可能ですか?

はい、一度提出した告訴状でも、検察官が事件を起訴する前であれば、いつでも取り下げることが可能です。告訴を取り下げる場合は、「告訴取消書」といった書面を作成し、捜査機関に提出します。実務では、加害者との間で示談が成立し、被害弁償がなされたことを理由に取り下げるケースが多く見られます。

ただし、告訴の取り下げには重要な注意点があります。

告訴取り下げ時の注意点
  • 再告訴の禁止: 一度取り下げた告訴は、同じ犯罪事実について再度行うことはできません。
  • 取り下げのタイミング: 示談金の分割払いを約束された段階で安易に取り下げると、残金が支払われないリスクがあります。必ず全額の支払いを確認してから手続きを行うべきです。

告訴の取り下げは不可逆的な手続きであるため、弁護士と相談の上、慎重に判断する必要があります。

告訴状が受理されなかった場合の対処法は?

警察に告訴状が受理されなかった場合でも、すぐにあきらめる必要はありません。不受理となった理由を正確に分析し、対策を講じることで、再度受理を目指すことが可能です。

告訴状が不受理となった場合の対処フロー
  1. 不受理理由の詳細な確認: 警察の担当者に、どの部分の証拠や説明が不足しているのかを具体的にヒアリングします。
  2. 告訴状の修正と証拠の補強: 指摘された点に基づき、追加調査を行って証拠を補強し、告訴状の法的構成を練り直して再提出を試みます。
  3. 検察庁への直接告訴: 警察署での受理がどうしても難しい場合、検察庁に直接告訴状を提出する「直告(じかこく)」という方法もあります。
  4. 民事訴訟への方針転換: あらゆる手を尽くしても刑事事件としての立件が困難な場合は、刑事告訴には固執せず、民事での損害賠償請求に切り替える判断も必要です。

不受理の理由を的確に把握し、専門家の助言を得ながら粘り強く対応することが、解決への道を開きます。

まとめ:背任罪の刑事告訴を成功させるための実務ポイント

本記事では、背任罪で刑事告訴するための手続きと要点について解説しました。背任罪の告訴は、単なる民事トラブルと見なされやすく、警察も「民事不介入の原則」から受理に慎重な姿勢を示すことが多いのが実情です。告訴を成功させるには、任務違背行為や図利加害目的といった成立要件を客観的な証拠で裏付け、論理的に構成された告訴状を作成することが不可欠です。不正の疑いが生じた場合は、まず証拠隠滅を防ぐため、秘密裏に調査を進め、契約書や会計記録、メールなどの証拠を保全することが最初のステップとなります。刑事告訴は会社の評判や業務負担にも影響するため、そのメリットとデメリットを十分に比較検討し、複雑な法的手続きを適切に進めるためにも、早い段階で経済事件に精通した弁護士へ相談することをおすすめします。

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