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税務調査後の「再調査」とは?2つのケースの違いと対応法

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税務調査の「再調査」という言葉に戸惑っていませんか。この言葉は、税務署が新たに行う「再度の税務調査」と、納税者が処分に不服を申し立てる「再調査の請求」という全く異なる2つの意味で使われます。両者を混同すると初動対応を誤る可能性があるため、その違いを正確に理解しておくことが不可欠です。この記事では、それぞれの法的根拠、手続き、そして取るべき対応について具体的に解説します。

税務調査の「再調査」が指す2つの意味

ケース1:再度の税務調査

税務調査における「再調査」の1つ目の意味は、一度終了した税務調査と同一の課税期間・税目に対して、税務署が再び実地調査を行うことです。これは「再度の税務調査」と呼ばれます。

原則として、同じ期間・税目に対する調査は一度きりですが、税務署が新たに申告内容の誤りを疑うに足る情報を入手した場合には、例外的に再度の調査が認められています。例えば、取引先への調査(反面調査)をきっかけに、自社の申告内容との矛盾が発覚した場合などが該当します。頻繁に行われるものではありませんが、経営上のリスクとして正しく認識しておくことが重要です。

ケース2:不服申立ての「再調査の請求」

「再調査」の2つ目の意味は、税務署長などが行った更正処分といった行政処分に不服がある場合に、納税者がその見直しを求める不服申立て手続きのことです。これは「再調査の請求」と呼ばれます。

この制度は、違法または不当な処分から納税者の権利や利益を救済し、行政の適正な運営を確保することを目的としています。税務調査の結果として受けた更正処分や決定処分に納得できない場合、納税者は処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内に、処分を行った税務署長に対して請求を行うことができます。この手続きにより、税務署内で処分の妥当性が改めて審理されます。

まず自身の状況がどちらかを確認する

「再調査」という言葉に直面した際は、まずそれが税務署主導の「再度の税務調査」なのか、納税者主導の「再調査の請求」なのかを正確に区別することが不可欠です。両者は目的も手続きも全く異なります。

項目 ケース1:再度の税務調査 ケース2:再調査の請求
主体 税務署 納税者
目的 新たな情報に基づく申告内容の誤りの確認 課税処分などに対する不服申立て
根拠法 国税通則法(調査権限) 国税通則法(不服申立て)
対応 証拠書類の準備、専門家の立ち会い 不服理由の整理、請求書の提出
「再調査」の2つの意味の比較

自身の状況がどちらに該当するかを正しく把握し、税理士などの専門家と相談しながら、適切な初動対応をとることが重要です。

ケース1:再度の税務調査への対応

再調査の法的根拠と要件

税務署が再度の税務調査を行う法的根拠は、国税通則法第74条の11第5項に定められています。一度終了した調査を安易に再開することは、納税者に過大な負担を強いることになるため、法律で厳格な要件が設けられています。

法律では、税務署が再度の調査を行えるのは「新たに得られた情報に照らし非違があると認めるとき」に限られています。つまり、前回の調査では把握していなかった新たな情報があり、それによって申告内容に誤りがあると合理的に判断される場合にのみ、再調査が許されるのです。単なる確認や見直しのための調査は認められません。

根拠となる「新たに得られた情報」とは

再調査の要件である「新たに得られた情報」とは、前回の税務調査が終了した時点では、調査担当者が把握していなかった客観的な事実や証拠を指します。すでに調査済みの情報に基づいて、解釈を変えて再調査を行うことはできません。

「新たに得られた情報」の具体例
  • 取引先への反面調査によって判明した、売上計上漏れや架空経費を示唆する証拠
  • 第三者(元従業員など)からの具体的な情報提供や告発
  • 税務署が収集した法定調書や資料せんから見つかった、申告内容との矛盾点
  • 外国の税務当局との租税条約に基づく情報交換によって、後日入手した情報

これらの情報が申告内容の誤りを直接証明するものでなくても、他の情報と合わせることで合理的な疑いが生じる場合も、再調査の根拠となり得ます。

再調査が行われる主なきっかけ

再度の税務調査は、主に外部からもたらされる情報が引き金となります。特に、自社だけではコントロールできない要因がきっかけになることがほとんどです。

再調査の主なきっかけ
  • 取引先への税務調査からの波及: 取引先の調査で発見された帳簿や資料との不整合から、自社の申告漏れなどが疑われるケース。
  • 過去の調査対象外期間での問題発覚: 直近の年度の調査で重大な不正が見つかり、その結果として、すでに調査済みの過去の年度にも同様の不正があったことを示す新たな情報や証拠が発見されたケース。
  • 内部告発: 社内の事情に詳しい元従業員や関係者から、具体的な不正に関する情報が税務署に提供されるケース。

再調査の通知を受けた際の対応

再度の税務調査の通知を受けた場合、税務署はすでにある程度の確証を得ている可能性が高いと考えられます。そのため、慌てずに冷静かつ誠実に対応することが極めて重要です。

再調査通知を受けた際の対応手順
  1. 速やかに税理士に相談する: まずは顧問税理士などの専門家に連絡し、状況を正確に共有して対応方針を協議します。
  2. 調査対象と前回調査内容を確認する: 今回の調査対象となっている取引や期間を正確に把握し、前回の調査でどのようなやり取りがあったかを確認します。
  3. 求められた資料を誠実に提出する: 調査官から求められた帳簿や証拠書類は、隠したりせず誠実に提出します。不当な提出拒否は状況を悪化させる可能性があります。
  4. 曖昧な回答や虚偽の説明を避ける: 記憶が曖昧な点や不明な点については、その場で即答せず、確認してから後日回答する姿勢が重要です。虚偽の説明は重加算税の対象となるリスクを高めます。

再調査で指摘されやすい論点と事前準備のポイント

再調査では、前回の調査で見過ごされていた可能性のある論点や、特に不正が行われやすい項目が重点的に確認されます。

再調査で指摘されやすい主な論点
  • 現金で支払われた外注費や交際費などの妥当性
  • 記録に残りにくい現金売上の計上漏れの有無
  • 前回の調査で指摘・指導された事項の改善状況
  • 事業主のプライベートな支出と会社の経費の混同

指摘を受けやすい論点を踏まえ、以下の点を中心に事前準備を進めることが有効です。

事前準備のポイント
  • 前回の調査での指摘事項が、その後の経理処理や社内規程に正しく反映されていることを証明する資料を準備する。
  • すべての取引について、契約書、請求書、領収書などの客観的な証拠書類が揃っているかを再点検する。
  • 事業用の資金と個人の資金が明確に区分管理されていることを、通帳などで確認しておく。

ケース2:不服申立てとしての再調査請求

「再調査の請求」制度の概要と目的

「再調査の請求」は、税務署長などが行った課税処分や滞納処分に対し、納税者が不服を申し立て、その処分の見直しを求める行政上の救済制度です。この制度は、納税者の権利利益を簡易かつ迅速に救済するとともに、税務行政の適正な運営を確保することを目的としています。

税務調査の結果、更正処分などを受け、その内容に納得できない場合に、処分を行った税務署長など(原処分庁)に対して請求を行います。請求が受理されると、原処分庁内部で、処分に関与していない担当者が改めて処分の適法性や妥当性を客観的に審理します。標準的な審理期間はおおむね3か月とされており、比較的早期の紛争解決が期待できます。

請求の対象となる処分とならない処分

再調査の請求は、納税者の権利や利益を侵害する「不利益な処分」に対してのみ行うことができます。納税者に有利な処分や、そもそも行政処分に当たらないものは対象となりません。

請求の対象となる主な処分
  • 申告内容を否認し税額を増額させる更正処分
  • 無申告者に対して税額を決定する決定処分
  • 過少申告加算税や重加算税などの加算税の賦課決定
  • 青色申告の承認取消処分
  • 財産の差押えなどの滞納処分

一方で、以下のようなものは請求の対象となりません。

請求の対象とならないものの例
  • 税額が減額される更正処分など、納税者に有利な処分
  • 納税者が自発的に行った修正申告(行政処分ではないため)

手続きの流れと期限・必要書類

再調査の請求は、法律で定められた期限内に、必要な書類を提出して行わなければなりません。期限を過ぎると請求する権利を失ってしまうため、厳格な管理が求められます。

再調査請求の手続きの流れ
  1. 期限内に請求書を提出する: 処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内に、処分を行った税務署長などに対して「再調査の請求書」を提出します。
  2. 税務署内で審理される: 請求書が受理されると、税務署の審理担当者が納税者の主張や提出された証拠を基に、処分の妥当性を再検討します。
  3. 再調査決定書が送達される: 審理が終わると、その結果が「再調査決定書」として納税者に送付されます。主張が認められれば、処分の全部または一部が取り消されます。
主な必要書類
  • 再調査の請求書: 処分の内容、請求の趣旨・理由などを具体的に記載します。
  • 証拠書類: 主張を裏付ける契約書や領収書などの写しを添付します。
  • 委任状: 税理士などの代理人が手続きを行う場合に必要です。

なお、請求中であっても税金の納付義務は原則として停止しないため、延滞税の発生を防ぐために一旦納付しておくのが一般的です。

再調査請求のデメリットと社内での検討プロセス

再調査の請求は納税者の権利ですが、利用する際にはデメリットも理解しておく必要があります。処分を下した税務署自身が審理するため、一度下した判断を覆すことは容易ではなく、認容率(納税者の主張が認められる割合)はおおむね10%程度と低い水準にあります。

再調査請求の主なデメリット
  • 結論が覆る可能性が低い: 処分庁自らが審理するため、客観的な判断が得られにくい傾向がある。
  • 時間と労力がかかる: 請求書の作成や証拠の整理に相応の手間と時間がかかる。

社内で請求を検討する際は、これらのデメリットと、勝訴の見込み、そして勝訴した場合に得られる経済的利益を冷静に比較衡量することが重要です。あえて再調査の請求を利用して税務署側の主張を詳細に引き出し、次のステップである「審査請求」への布石とする戦略も考えられます。

「再調査の請求」と「審査請求」の違い

審理機関と手続きの違い

納税者の不服申立て制度には、「再調査の請求」のほかに「審査請求」があります。両者の最大の違いは、審理を行う機関の独立性と手続きの専門性です。

項目 再調査の請求 審査請求
審理機関 処分を行った税務署長など(原処分庁) 国税不服審判所
客観性 内部での見直し 税務署から独立した第三者的な機関による審理
手続き 比較的簡易・迅速 口頭意見陳述の機会が与えられるなど、より専門的・厳格
請求先 税務署長など 国税不服審判所長
「再調査の請求」と「審査請求」の主な違い

「再調査の請求」が税務署組織内での自己是正を促す簡易な手続きであるのに対し、「審査請求」は独立した専門機関がより客観的・法的な観点から判断を下す、本格的な手続きと言えます。

どちらを選択すべきかの判断基準

納税者は、税務署の処分に対して、再調査の請求を経ずに直接、審査請求を行うことも可能です(選択主義)。どちらの手続きを選択すべきかは、事案の性質や争点によって判断します。

再調査の請求が適しているケース
  • 処分に単純な事実誤認や計算ミスがあり、新たな証拠を示せば税務署が誤りを認める可能性が高い場合。
  • 税務署の処分理由をより詳細に把握し、本格的な争いとなる審査請求に備えるための情報収集を目的とする場合。
審査請求が適しているケース
  • 法令解釈そのものが争点であり、税務署の見解が強固で覆る見込みが低い場合。
  • 最初から税務署から独立した、中立・公正な第三者の判断を求めたい場合。
  • 早期解決よりも、徹底的に争うことを優先する場合。

再調査決定後の選択肢

再調査の請求を行った結果、主張が認められず棄却された場合でも、まだ救済の道は残されています。 その決定に不服がある場合は、次のステップとして国税不服審判所に対して「審査請求」を行うことができます。

ただし、審査請求を行える期間は「再調査決定書の謄本を受け取った日の翌日から1か月以内」と非常に短いため、注意が必要です。再調査の結果を待つ間に、次の手を打つ準備を進めておくことが肝心です。また、再調査の請求から3か月が経過しても決定が出ない場合は、決定を待たずに審査請求へ移行することも可能です。

税務調査の再調査に関するよくある質問

2回目の税務調査は珍しいことですか?

はい、一度調査が完了した課税期間・税目に対して、2回目の税務調査(再度の税務調査)が行われることは極めて珍しいです。税務署は限られた人員で効率的に調査を行う必要があり、一度完了した調査をやり直すには、脱税を強く疑わせるような明確で新たな証拠が必要となるため、統計的にも発生頻度は非常に低くなっています。

再調査の請求で決定が覆る可能性は?

残念ながら、再調査の請求で納税者の主張が全面的または部分的に認められる(認容される)可能性はおおむね10%程度です。これは、処分を行った税務署自身が再度審理を行うという制度の構造上、自らの判断を覆す決定が下されにくいためです。 ただし、事実認定に明らかな誤りがある場合など、確実な証拠を示せば決定が覆る可能性はゼロではありません。

再調査の請求は自分でもできますか?

法律上は、納税者自身で再調査の請求を行うことは可能です。しかし、請求書には処分のどの部分が法的に誤っているのかを、客観的な証拠に基づいて論理的に記載する必要があり、高度な税務・法務知識が求められるため、実務上は極めて困難です。勝率を高めるためにも、不服申立てに精通した税理士や弁護士に依頼することを強く推奨します。

相続税調査でも再調査はありますか?

はい、あります。再度の税務調査に関する国税通則法の規定は、法人税や所得税だけでなく、相続税にも適用されます。例えば、相続税の調査が終了した後に、金融機関への照会などから申告漏れの名義預金が発覚した場合など、新たな非違の情報が見つかれば、相続税についても再度の税務調査が行われる可能性があります。

再調査の請求にかかる費用は?

再調査の請求手続きそのものに、印紙代などの手数料はかからず、無料で行うことができます。これは、行政に対する不服申立てが国民の権利として保障されているためです。 ただし、請求書の作成や代理手続きを税理士や弁護士に依頼する場合は、その専門家に対する報酬が別途発生します。

再調査の請求は途中で取り下げできますか?

はい、再調査の請求は、税務署長による決定が出る前であれば、いつでも取り下げることが可能です。不服申立ては納税者本人の意思に基づく権利であるため、取り下げるのも自由です。取り下げを行う場合は、その旨を記載した書面(取下書)を税務署長に提出する必要があります。取り下げた場合、その請求は初めからなかったものとして扱われます。

まとめ:税務調査の「再調査」が指す2つの意味と正しい対応

本記事で解説した通り、「再調査」という言葉は、税務署主導の「再度の税務調査」と、納税者主導の不服申立てである「再調査の請求」という全く異なる2つの意味を持ちます。両者は目的も手続きも大きく異なるため、まずは自身の状況がどちらに該当するのかを正確に把握することが不可欠です。再度の税務調査の通知を受けた場合は、税務署が新たな情報を得ている可能性を念頭に置き、速やかに税理士へ相談しましょう。一方、処分に不服があり再調査の請求を検討する際は、認容率がおおむね10%程度と低い現実も理解した上で、専門家と戦略を練ることが重要です。いずれの状況においても、専門的な知識と客観的な判断が求められるため、自己判断で対応を進めるのではなく、まずは信頼できる専門家に相談することをお勧めします。

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