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経営改善計画策定支援事業は使える?対象者・費用補助・申請の流れを整理

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資金繰りの悪化や過剰債務に直面し、金融機関の協力が不可欠な経営改善に取り組む中小企業の経営者にとって、「経営改善計画策定支援事業」は有効な選択肢です。この制度を活用することで、専門家の支援を受けながら、費用の3分の2の補助を受けて本格的な事業再生に着手できます。自社だけで金融機関を納得させる計画を策定するのは容易ではありませんが、本制度はそのプロセスを強力に後押しします。この記事では、経営改善計画策定支援事業の対象者、支援内容、費用補助、申請手続きの流れについて詳しく解説します。

経営改善計画策定支援事業とは

専門家と経営改善を目指す制度

経営改善計画策定支援事業とは、財務上の課題を抱える中小企業が、国から認定を受けた専門家(認定経営革新等支援機関)の支援を受け、実効性の高い経営改善計画を策定するための公的制度です。資金繰りの悪化や過剰債務に直面した企業は、自社単独で金融機関が納得する水準の再建計画を立てることが難しくなります。そこで、税理士や公認会計士、コンサルタントなどの専門家が、客観的な視点から企業の状況を分析し、事業再生を全面的にサポートします。

本制度は、単なる計画書の作成代行ではありません。企業の再生プロセス全体を包括的に支援するフレームワークとして機能します。

主な支援内容
  • 現状分析と課題抽出: 専門家が企業の財務状況や事業内容を詳細に調査(デューデリジェンス)し、根本的な課題を特定します。
  • 実効性のある計画策定: 分析結果に基づき、具体的な数値目標と行動計画(アクションプラン)を含む経営改善計画を作成します。
  • 金融機関との合意形成: 作成した計画をもとに、金融機関からの金融支援(リスケジュールなど)を得るための交渉を支援します。
  • 実行段階の伴走支援: 計画策定後も、専門家が定期的に進捗を確認(モニタリング)し、計画が頓挫しないよう継続的にサポートします。

利用できる中小企業の条件

本制度は、借入金の返済負担軽減といった金融支援を必要としており、自力での経営改善計画の策定が困難な中小企業・小規模事業者が対象です。限られた国の予算を、再生の可能性があるものの窮境にある企業へ重点的に配分することを目的としています。

利用を検討する際は、以下の条件を満たしているかを確認する必要があります。

主な利用条件
  • 対象者: 中小企業基本法に定める中小企業・小規模事業者(個人事業主も含む)。
  • 財務要件: 借入金の返済に支障が生じており、リスケジュール等の金融支援を必要としていること。
  • 対象外の例: 社会福祉法人、特定非営利活動法人(NPO法人)などは原則として対象外です。
  • 利用不可のケース: 金融機関からの借入がない、または取引金融機関が一行のみで金融調整が不要な場合。
  • 再利用について: 原則として一度利用した企業は再度利用できませんが、コロナ禍やウクライナ情勢等の影響で業況が悪化した場合は、例外的に認められることがあります。

支援内容と費用補助

計画策定から伴走支援まで

本事業の支援は、計画を立てる「計画策定支援」と、計画の実行を支える「伴走支援」の二段階で構成されています。計画を立てるだけでは事業再生は成功せず、実行段階での継続的な進捗管理と軌道修正が不可欠であるため、このような体制がとられています。

支援の二つのフェーズ
  • 計画策定支援: 専門家が企業の事業・財務状況を詳細に調査(デューデリジェンス)し、収益改善に向けたアクションプランを策定します。これにより、金融機関に対して合理的な返済計画を提示する土台を築きます。
  • 伴走支援(モニタリング): 計画策定後、最長3年間にわたり、専門家が定期的に業績をモニタリングします。計画と実績に乖離が生じた場合は速やかに対応策を講じ、その状況を金融機関にも報告することで、継続的な信頼関係を構築します。

費用の補助率と上限額(通常枠)

本事業を利用する際、専門家に支払う費用の一部が国によって補助されます。通常枠では、企業の自助努力を促しつつ、専門家活用のハードルを下げるために、費用の3分の2が補助されます。

補助上限額は費用の種類ごとに定められています。

費用区分 補助上限額 備考
デューデリジェンスおよび計画策定支援費用 200万円 企業の現状分析と計画策定にかかる費用
伴走支援費用(モニタリング費用) 100万円 計画実行後の定期的な進捗確認にかかる費用
金融機関交渉費用 10万円 経営者保証の解除を目指す交渉を行う場合
合計 310万円 すべての枠を最大限活用した場合の上限額
通常枠の補助内容

企業の自己負担は費用の3分の1です。例えば、計画策定費用が総額300万円だった場合、200万円が補助され、自己負担は100万円となります。補助額は申請時に提出する見積額が基準となり、実績が見積額を上回っても補助額は増えません。

中小企業版GL枠の補助内容

「中小企業の事業再生等に関するガイドライン(中小企業版GL)」に基づき、複数の金融機関が関わる複雑な再生案件など、より本格的な事業再生に取り組む企業向けに「中小企業版GL枠」が設けられています。これは、専門家の業務量が通常枠よりも増大することに対応するための手厚い補助枠です。

補助率は通常枠と同じく3分の2ですが、補助上限額が大幅に引き上げられています。

費用区分 補助上限額
デューデリジェンス費用等 300万円
計画策定支援費用 300万円
伴走支援(モニタリング)費用 100万円
合計 700万円
中小企業版GL枠の補助上限額

この枠組みでは、事業再生ADRなどの私的整理手続きで選任される第三者支援専門家の費用も補助対象となるため、大規模な事業再編を伴う再生スキームを検討する際に極めて有効です。

注意:補助金の対象とならない費用の具体例

本事業の補助対象は、認定支援機関が提供する経営改善計画の策定・伴走支援に関するコンサルティング費用(役務費)に限定されています。事業の実行や法的手続きに直接かかる費用は対象外となります。

補助対象外となる費用の例
  • 会社分割や不動産登記にかかる登録免許税などの手数料
  • 特別清算などの法的手続きに要する弁護士費用
  • M&Aを進める際のスポンサー探索費用や仲介手数料
  • 事業継続のために直接雇用する従業員の人件費

早期経営改善計画との違い

目的と対象者の相違点

経営改善計画策定支援事業(通称:405事業)と似た制度に「早期経営改善計画策定支援事業(通称:プレ405)」がありますが、両者は目的と対象者が異なります。企業の財務状況のフェーズに合わせて適切な支援を提供するため、二つの制度が用意されています。

項目 経営改善計画策定支援事業(405事業) 早期経営改善計画策定支援事業
目的 金融支援を前提とした抜本的な事業再生 経営悪化の予防、早期の経営課題の把握と改善
対象者 借入金の返済が困難で、リスケジュール等の金融支援が必須の企業 金融支援は不要だが、資金繰り管理や採算管理に課題を抱える企業
405事業と早期経営改善計画の目的・対象者の違い

自社の状況が、深刻な経営危機にあるのか、まだ予防的な対応で改善可能なのかを見極めることが、適切な制度選択の第一歩となります。

費用補助と支援内容の比較

両制度は、求められる計画の深度が異なるため、支援内容や補助上限額にも大きな違いがあります。405事業は本格的な事業再生を、早期経営改善計画は基礎的な経営見直しを目的としています。

項目 経営改善計画策定支援事業(405事業) 早期経営改善計画策定支援事業
補助率 費用の3分の2 費用の3分の2
補助上限額(合計) 最大310万円(通常枠) 最大35万円
主な作成書類 財務三表(PL/BS/CF)を連動させた詳細な計画書、金融支援依頼書 資金実績計画表、ビジネスモデル俯瞰図、アクションプラン
405事業と早期経営改善計画の支援内容・費用の違い

405事業では金融機関を納得させるための緻密な財務計画が求められるのに対し、早期経営改善計画では自社の経営状況を可視化するための基本的な書類作成が中心となります。

どちらの制度を選ぶべきか

どちらの制度を選択すべきかは、資金繰りの切迫度金融機関への支援要請の有無によって判断します。目的に合わない制度を選ぶと、不要なコストと時間がかかり、再建のタイミングを逃すリスクがあります。

制度選択の判断基準
  • 経営改善計画策定支援事業(405事業)を選ぶべきケース: 現在の収益力では借入金の返済が困難で、資金ショートの恐れがある場合。金融機関にリスケジュール等を要請する必要がある。
  • 早期経営改善計画策定支援事業を選ぶべきケース: 現時点では返済に問題はないが、将来の資金繰りに不安がある、または自社の経営課題を客観的に把握したい場合。

申請から実行までの手順

①認定支援機関への相談

本制度の利用は、自社に合った認定経営革新等支援機関(認定支援機関)を選び、相談することから始まります。税理士、公認会計士、中小企業診断士などが所属するコンサルティング会社などの中から、自社の業界に知見のある専門家を探します。初回の相談では、直近の決算書や資金繰り表などを持参し、経営状況を率直に伝えることが重要です。支援内容や費用について合意できれば、正式に業務委託契約を締結します。

②申請と計画策定

認定支援機関との契約後、計画策定のプロセスが本格的に始まります。この段階では、金融機関との連携が重要になります。

計画策定までの主なステップ
  1. 金融機関への事前相談: メインバンクなどの主要取引金融機関に、本制度を利用する旨を事前に伝え、協力の意向を確認します。
  2. 利用申請: 金融機関から事前相談書等を取得した後、認定支援機関と連名で、地域の「中小企業活性化協議会」に利用申請書を提出します。
  3. デューデリジェンスの実施: 協議会の承認後、認定支援機関が事業や財務の詳細な調査・分析(デューデリジェンス)を行います。
  4. 経営改善計画の作成: 分析結果に基づき、今後5年程度の損益計画、資金繰り計画、具体的な行動計画(アクションプラン)を策定します。

③金融機関との合意形成

完成した経営改善計画の原案をもとに、すべての取引金融機関から金融支援に関する同意を取り付けます。一部の債権者だけが不利益を被ることがないよう、全債権者の合意形成が原則となります。

金融機関との合意形成の主なステップ
  1. バンクミーティングの開催: 全ての取引金融機関の担当者を集め、計画内容や具体的な金融支援案(リスケジュール等)を説明します。
  2. 計画の修正・調整: 金融機関から計画の実現可能性について厳しい審査を受け、質疑応答や修正依頼に対応します。
  3. 同意書の取得: 認定支援機関が調整役となり、すべての金融機関から書面による同意書を取得します。この時点で計画が正式に成立します。

④計画実行とモニタリング

金融機関の同意を得た後は、計画に盛り込まれたアクションプランを実行に移します。計画倒れを防ぐため、実行と同時に定期的なモニタリングが行われます。

計画実行とモニタリングの主な流れ
  1. アクションプランの実行: 策定した行動計画に基づき、コスト削減や売上増加などの施策を実行します。
  2. 定期的モニタリング: 認定支援機関が、四半期に一度などの頻度で業績や資金繰りの状況を確認し、計画と実績の差異を分析します。
  3. 金融機関への報告: モニタリング結果を定期的に金融機関へ報告し、情報の透明性を保ち、継続的な支援関係を維持します。
  4. 自律的な経営管理の確立: 伴走支援期間(最長3年)が終了するまでに、企業が自力で経営を管理・改善できる体制を整えることを目指します。

申請準備と相談窓口

申請に必要な書類の準備

本事業の利用には、各段階で多くの書類準備が必要です。書類に不備があると審査が遅れ、スケジュール全体に影響が出るため、慎重な準備が求められます。

利用申請時に必要な主な書類
  • 利用申請書(認定支援機関との連名)
  • 申請者の概要書、業務別見積明細書
  • 履歴事項全部証明書(法人の場合)、開業届の写し(個人事業主の場合)
  • 直近3期分の確定申告書・決算報告書一式
  • 金融機関からの事前相談書
費用支払申請時に必要な主な書類
  • 経営改善計画書の原本
  • 全取引金融機関の同意書の写し
  • 専門家への費用請求明細書、業務日誌
  • 企業が自己負担分を支払った証明(振込受付書など)

認定支援機関の探し方

自社に適した認定支援機関を探すには、いくつかの方法があります。最も確実なのは、国の公式データベースを活用することです。

認定支援機関の探し方
  • 中小企業庁の検索システムを利用する: 中小企業庁のウェブサイトにある「認定経営革新等支援機関検索システム」で、地域や支援内容を絞って検索できます。
  • 顧問税理士や取引金融機関に相談する: 日頃から付き合いのある専門家や金融機関が認定支援機関である場合、スムーズに相談を進められます。
  • 直接面談して相性を見極める: 候補を見つけたら必ず面談し、担当者の専門性や熱意、自社との相性を確認することが重要です。

経営改善支援センターの役割

「経営改善支援センター」は、かつて「中小企業再生支援協議会」の事業として各都道府県に設置されていましたが、現在は「中小企業活性化協議会」に統合され、事業再生に関する総合的な窓口となっています。

協議会は、経営改善の初期段階から抜本的な事業再生まで、切れ目のない支援体制を構築する公的機関です。

中小企業活性化協議会の主な役割
  • 本事業の利用申請の受付、審査
  • 認定支援機関への補助金の支払い管理
  • 提出された経営改善計画の妥当性の確認
  • 認定支援機関に対する指導・助言

認定支援機関選びで失敗しないための視点

良い認定支援機関を選ぶことは、事業再生の成否を左右します。単に実績が豊富というだけでなく、自社の状況に合ったパートナーを見つけることが重要です。

認定支援機関選びのチェックポイント
  • 業界への知見: 自社の業界特有の商習慣や課題を深く理解しているか。
  • 交渉能力: 金融機関との厳しい交渉を粘り強く進めるコミュニケーション能力があるか。
  • 伴走する熱意: 計画策定だけでなく、その後の実行段階まで責任を持って支援してくれるか。

よくある質問

補助金はいつ支払われますか?

補助金は、各支援フェーズが完了し、成果物と費用支払いの証拠書類を提出した後、中小企業活性化協議会の審査を経て支払われます。一括で支払われるわけではありません。

補助金の支払いタイミング
  • 計画策定支援費用: 経営改善計画が完成し、全取引金融機関の同意を得た後、支払申請を行い、審査を経て認定支援機関に支払われます。
  • 伴走支援費用: 四半期ごとなどの定期モニタリングが完了する都度、報告書を提出して申請し、審査を経て支払われます。

モニタリングでは何を行いますか?

モニタリングは、策定した計画が「絵に描いた餅」で終わらないように、実行状況を定期的に点検・評価するプロセスです。計画と実績のズレを早期に発見し、軌道修正を図ることを目的とします。

モニタリングの主な内容
  • 進捗確認: 売上や利益などの財務データが計画通りに進捗しているかを確認します。
  • アクションプランの実行状況評価: コスト削減などの具体的な行動計画が実行されているかを検証します。
  • 課題分析と改善策の提案: 計画との間に乖離が生じた場合、その原因を分析し、新たな改善策を経営者と共に検討します。
  • 金融機関への報告: モニタリング結果をレポートにまとめ、定期的に金融機関へ報告します。

個人事業主も対象ですか?

はい、法人だけでなく個人事業主も対象となります。事業規模にかかわらず、財務上の課題を抱える事業者を救済するという制度の趣旨に基づいています。申請の際は、開業届の写しや直近の確定申告書の控えなど、事業の実態を証明する書類が必要です。もちろん、金融支援を必要としているという基本要件を満たす必要があります。

黒字経営でも利用できますか?

損益計算書上は黒字であっても、利用できる場合があります。会計上の利益と手元の資金(キャッシュフロー)は必ずしも一致しないためです。例えば、過去の多額の設備投資により、営業キャッシュフローを上回る借入金返済が発生している「黒字倒産」のリスクがある場合です。このような状況では、返済負担を軽減するためのリスケジュールが必要となるため、本事業の対象となり得ます。

他の補助金と併用できますか?

本事業の補助対象は専門家費用そのものであり、その自己負担分(3分の1)に対して、地方自治体などが実施する他の補助金や助成金を充当することは、制度によっては可能です。これにより、企業の資金負担をさらに軽減できる可能性があります。ただし、各補助金制度の要件をそれぞれ満たす必要があり、手続きも別々に行う必要があります。併用を検討する際は、各制度の窓口に事前に確認することが重要です。

まとめ:経営改善計画策定支援事業を理解し、専門家と事業再生を目指す

経営改善計画策定支援事業は、資金繰りに窮する中小企業が、国の認定を受けた専門家の支援を受け、費用補助(原則3分の2)を得ながら抜本的な事業再生に取り組むための公的制度です。本制度の利用を検討する際は、借入金の返済条件変更(リスケジュール)といった金融支援が不可欠な状況かどうかが重要な判断基準となります。自社の状況が対象となるかを見極めた上で、まずは中小企業庁の検索システムや取引金融機関を通じて、信頼できる認定支援機関に相談することから始めましょう。計画策定から実行後のモニタリングまで、専門家と二人三脚で取り組むことが、再生の成功確率を高める鍵となります。本記事で解説した内容は一般的な情報であり、実際の申請にあたっては、個別の状況に応じて専門家や中小企業活性化協議会へご確認ください。

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