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【グラフで解説】後継者不在率の動向と事業承継の次の一手

経営リスクナビ編集部

自社の事業承継を考え始めた経営者の方にとって、後継者不足の現状を客観的なデータで把握することは不可欠です。感覚的な理解だけでは、最適な承継計画の立案や関係者への説明は困難です。この記事では、帝国データバンクの最新調査結果を基に、後継者不在率の推移や原因、そして具体的な解決策をグラフやデータを交えて多角的に解説します。

最新データで見る後継者不在率

後継者不在率の全体推移

日本の中小企業における後継者不在率は改善傾向にあり、帝国データバンクの最新調査(2024年1月公表)では53.9%と過去最低水準を記録しました。これは、官民一体となった事業承継支援の浸透が背景にあります。しかし、企業の規模や取引金融機関によって課題の深刻度には依然として大きな差があり、二極化の様相を呈しています。

企業規模別の後継者不在率(最新調査)
  • 大企業: 30.6%
  • 中小企業: 54.9%
  • 小規模企業: 61.2%
主要取引金融機関別の後継者不在率(最新調査)
  • メガバンク・政府系金融機関がメインの企業: 40.5%
  • 信用金庫・信用組合がメインの企業: 58.7%

このように、全体的な数値は改善しているものの、特に小規模企業や地域密着型の金融機関を取引先とする企業においては、事業継続に向けた支援体制の強化が喫緊の課題となっています。

経営者の年代別に見た傾向

経営者の年代別に後継者不在率を見ると、年齢が上がるにつれて不在率は低下しますが、高齢層における事業承継の頓挫リスクに注意が必要です。若年層は事業承継までの時間的猶予があるため不在率が高い一方、高齢層は事業承継の計画が頓挫するリスクが相対的に高い傾向にあります。

帝国データバンクの最新調査(2024年1月公表)によると、年代別の傾向は以下の通りです。

経営者の年代別に見る後継者不在率(最新調査)
  • 30代未満: 83.2%
  • 50代: 58.3%
  • 80代以上: 22.2%

80代以上の不在率は全年代で最も低いものの、依然として2割以上の企業で後継者が未定です。さらに深刻なのは、一度決まった後継者との計画が頓挫する割合です。

経営者の年代別に見る計画頓挫の割合
  • 70代: 3.3%
  • 80代以上: 4.7%

高齢の経営者ほど、急な体調不良や死亡によって引き継ぎが間に合わず「後継者難倒産」に陥るリスクが高まります。また、老朽化した設備や収益力の低下を理由に、後継者へ負担をかけたくないという心理から計画を撤回するケースも見られます。不測の事態に備え、早期に計画を策定することが不可欠です。

都道府県別の状況と比較

後継者不在率は全国的に改善傾向にありますが、都道府県ごとの地域差は依然として大きく、特に地方部における構造的な課題が浮き彫りになっています。地域金融機関の支援体制に加え、若年層の人口流出や同族経営へのこだわりが事業承継の選択肢を狭めています。

帝国データバンクの最新調査(2024年1月公表)では、地域ごとの特徴が明確に表れています。

後継者不在率が高い地域(秋田県: 73.7%など)の特徴
  • 昔ながらの同族経営を重んじ、第三者承継への心理的抵抗が強い。
  • 若年層の都市部への流出により、親族内・社内での後継者確保が困難。
後継者不在率が低い地域(三重県: 33.9%など)の特徴
  • 地域金融機関が企業に密着し、早期の事業承継準備を支援する体制が機能している。
  • 商圏が比較的安定しており、円滑な承継が進みやすい環境がある。

このように、地域経済の環境や支援ネットワークの充実度が後継者不在率に直接影響を与えており、それぞれの地域特性に合わせたきめ細かな支援策が求められています。

業種別の動向と特徴

業種別の後継者不在率は全体として低下傾向にあるものの、業界特有のビジネスモデルや構造的な要因によって改善ペースには大きな差が見られます。特定の技術や資格の継承が不可欠な業種では後継者育成に時間がかかる一方、サプライチェーン全体で支援体制が整っている業種では承継が進みやすい傾向があります。

帝国データバンクの最新調査(2024年1月公表)では、業種ごとの課題が鮮明になりました。

後継者不在率が特に高い業種(最新調査)
  • 建設業(57.3%): 熟練技術の伝承や許認可要件を満たす人材確保が壁となっている。
  • 小売業・職別工事業: 依然として60%を超える高い水準で推移している。
後継者不在率が低い業種(最新調査)
  • 製造業(42.4%): サプライチェーン維持のため、取引先や金融機関が一体で承継を支援する体制がある。

後継者に求められる資質や引き継ぐべき経営資源は業種によって大きく異なります。そのため、各業界の特性に即した専門的なサクセッションプラン(後継者育成計画)の策定が不可欠です。

後継者の就任経緯(親族・非同族)

事業承継における後継者の就任経緯は、伝統的な親族への引き継ぎから、役員や従業員といった非同族への引き継ぎへと急速にシフトしています。これは、家業を継ぐという価値観の変化と、事業存続のための現実的な手段として社内外の優秀な人材を登用する「脱ファミリー経営」が加速しているためです。

帝国データバンクの最新調査(2024年1月公表)では、この変化が明確に数字で表れています。

後継者の就任経緯の内訳(最新調査)
  • 内部昇格(役員・従業員): 36.1%
  • 同族承継(親族): 32.3%
  • M&Aなど(外部招聘): 20.6%

内部昇格が同族承継を上回り、最も多い就任経緯となりました。また、後継者候補の段階でも、非同族を選ぶ割合は41.0%に達しています。血縁よりも経営能力を重視する実力主義的な事業承継が定着し、企業の存続に向けた柔軟な選択が進んでいます。

後継者不足が深刻化する主な原因

少子高齢化と候補者の減少

後継者不足の最も根本的な原因は、日本社会全体で進行する少子高齢化です。これにより、経営の次世代を担う候補者の絶対数が減少しています。特に地方では、若年層が就職や進学を機に大都市圏へ流出するため、親族内はもちろん、社内従業員からも後継者を見出すことが極めて困難な状況です。たとえ子どもがいても、都市部で生活基盤を築いている場合、家業を継ぐために地元へ戻るという選択をしてもらうのは容易ではありません。社会構造の変化が、中小企業の後継者選びを物理的に難しくしています。

経営環境の変化と先行き不安

原材料価格の高騰、デジタル化への対応、深刻な人手不足など、激しく変化する経営環境と将来への不確実性が、後継者候補に事業を引き継ぐことへの心理的な抵抗感を生み出しています。従来のビジネスモデルを維持するだけでは成長が難しく、事業を引き継ぐ側は代表者としての重い責任や従業員の生活を守ることへの強いプレッシャーを感じます。自社の事業に明確な成長戦略や将来性を見出せない状態では、リスクを背負ってまで経営トップに就きたいと考える人材は現れにくいのが実情です。

親族による承継意欲の低下

親族内承継が減少している背景には、価値観の変化があります。職業選択の自由が尊重される現代において、親の事業を引き継ぐよりも自らの希望するキャリアを優先する若者が増えています。かつて当然とされた「長男による家業継承」という考え方は薄れています。また、中小企業の経営者自身が、資金繰りの苦労や長時間労働といった過酷さを知っているため、我が子に同じ苦労をさせたくないと考えるケースも増加しています。親子双方の意識の変化が、伝統的な事業継続の道を狭めているのです。

事業承継に向けた準備の遅れ

経営者が日々の業務に追われ、事業承継に向けた計画的な準備を先送りにしてしまうことも、後継者不在を招く大きな原因です。事業承継は、後継者の選定・教育、株式の移転など複雑なプロセスを経るため、完了までに5年から10年程度の長期間を要します。多くの中小企業経営者は、健康なうちは引退を現実的に考えられず、準備が遅れがちです。しかし、準備期間が不足したままでは、経営ノウハウの伝達や取引先との関係構築が不十分となり、承継が失敗に終わるリスクが高まります。

後継者決定後の計画頓挫リスク

後継者候補が一度決まっても、その後のプロセスで計画が頓挫するリスクがあります。主な原因は、現経営者と後継者の間で事業方針を巡る認識の食い違いが生じることや、現経営者が権限の移譲をためらうことです。後継者を指名した後も、現経営者が経営の第一線から退くことを躊躇し、実質的な意思決定権を渡せないケースは少なくありません。また、業績悪化や多額の負債を知った後継者が、直前になって引き継ぎを辞退することもあります。後継者決定後も、継続的な対話と計画のすり合わせが不可欠です。

後継者不足問題への解決アプローチ

親族内承継の可能性を再検討する

後継者不在の解決策として、まずは親族内承継の可能性を再検討することが重要です。親族への承継は、企業の理念や文化を自然な形で引き継ぎやすく、従業員や取引先からの理解も得やすいという利点があります。子どもが事業に無関心に見えても、会社の財務状況や将来性への不安が原因かもしれません。現経営者が借入金の圧縮など経営改善を進め、後継者が安心して引き継げる環境を整えることが求められます。また、生前贈与や遺言を活用して自社株式を後継者に集中させるなど、法的な準備も不可欠です。

従業員など親族外への承継を進める

親族内に適切な後継者が見当たらない場合、社内の役員や従業員に事業を引き継ぐ従業員承継が有効です。社内の実務や企業文化に精通しているため、経営体制の移行をスムーズに行えます。この手法の最大の課題は、後継者による自社株式の買取資金の調達経営者保証の引き継ぎです。従業員個人の資金力には限界があるため、金融機関の融資制度などを活用することが求められます。専門家の支援を受けながら資金面や法務面の課題を解決できれば、従業員承継は事業継続の強力な手段となります。

第三者承継(M&A)を視野に入れる

親族や社内に後継者が見つからない場合、外部の企業に会社を売却する第三者承継(M&A)を積極的に検討すべきです。M&Aを活用することで黒字廃業を防ぎ、従業員の雇用や取引先との関係を維持したまま事業を存続させることができます。買い手企業の資金力や販売網を取り込むことで事業の成長が期待でき、現経営者は事業価値に見合った対価を得られるほか、長年の重荷であった個人保証からも解放されます。近年は小規模事業者でもM&Aマッチングサービスを利用しやすくなっており、企業の新たな成長機会を創出する有効な選択肢として定着しています。

国や自治体の支援制度を活用する

事業承継に伴う税務や資金調達の課題を解決するため、国や自治体が提供する公的な支援制度を最大限に活用することが重要です。代表的な制度である事業承継税制の特例措置を活用すれば、後継者が株式を引き継いだ際の贈与税や相続税の納税が猶予され、経済的負担を大幅に軽減できます。

項目 一般措置 特例措置(10年間の時限措置)
対象株式数 発行済み株式数の3分の2まで 全株式
納税猶予割合 80%(贈与は100%) 100%
後継者の人数 1人のみ 最大3人まで
雇用確保要件 承継後5年間、平均8割の雇用維持が必要 8割未達でも理由報告書提出で猶予継続
事前の計画策定 不要 特例承継計画の提出が必要
適用期限 なし 令和9年12月31日までの承継が対象
事業承継税制の一般措置と特例措置の比較

このほか、専門家への相談費用を補助する制度や、事業承継・引継ぎ支援センターなどの公的な無料相談窓口もあります。各種制度を漏れなく活用することが、承継の成功につながります。

M&Aにおける注意点:望まない相手への売却を避けるために

外部企業への売却を進める際は、自社の理念に合わない相手や、悪質な買い手への売却を避けるための慎重な見極めが不可欠です。売却先を誤ると、買収後に従業員の不当な解雇や、約束されていた経営者保証の解除が反故にされるといった深刻なトラブルに発展する危険性があります。譲渡価格の高さだけで安易に決定せず、以下の点に注意して相手企業を評価する必要があります。

M&Aにおける買い手企業の見極めポイント
  • 買い手企業の財務状況、過去の買収実績、経営方針を詳しく調査する。
  • 従業員の雇用維持や取引先との契約継続といった条件を契約書に明記する。
  • 信頼できるM&A仲介会社や弁護士などの専門家を間に入れ、相手方の実態調査(デューデリジェンス)を徹底する。

企業文化と従業員を守るため、専門家の助言を得ながら多角的な視点で慎重に買い手企業を評価することが重要です。

よくある質問

後継者不在率の正確な定義とは?

後継者不在率とは、信用調査機関などの調査において、事業を引き継ぐ後継者が「いない」または「未定」であると回答した企業の割合を示す指標です。この数値は、日本国内の企業が抱える事業承継の進捗状況や、将来的な休廃業リスクの大きさを客観的に把握するために用いられます。経営者の年代別や業種別、都道府県別など様々な切り口で分析され、企業の存続危機を示す重要なマクロ経済のバロメーターとして機能しています。

「黒字廃業」とはどのような状況ですか?

黒字廃業とは、事業自体は利益を出しているにもかかわらず、経営者が自主的に事業をたたんで会社を解散・廃業することを指します。十分な収益性があっても後継者が見つからないことが主な原因ですが、帳簿上は黒字でも手元の現金が不足する資金繰りの悪化が引き金になることもあります。優良な技術や取引基盤を持つ企業が消滅することは、地域経済全体にとっても大きな損失となります。黒字廃業は、業績とは無関係に後継者不足がもたらす深刻な問題の象徴です。

後継者が見つからない場合の相談先は?

後継者が見つからず事業承継に悩む場合、経営者単独で判断するのは大きなリスクを伴います。税務や法務などの専門知識が不可欠なため、以下のような専門機関に相談することが解決への第一歩です。

主な相談先
  • 事業承継・引継ぎ支援センター(各都道府県に設置された公的相談窓口)
  • 商工会議所・商工会
  • 顧問税理士・公認会計士
  • 弁護士
  • 取引先の金融機関
  • M&A仲介会社・アドバイザリー会社

適切な専門家の知見を借りることで、企業の状況に応じた最良の事業継続の形を見出すことができます。

まとめ:後継者不足のデータを理解し、自社に最適な事業承継計画を立てる

後継者不在率は全体で改善傾向にありますが、小規模企業や地方では依然として深刻であり、課題の二極化が進んでいます。承継形態も、伝統的な親族内承継から従業員やM&Aといった第三者への引き継ぎが主流へと変化しています。自社の状況を踏まえ、親族、従業員、第三者のいずれの選択肢が最適かを多角的に検討することが重要です。後継者の育成には時間がかかるため、長期的な視点でサクセッションプランを策定し、早期に準備を始めることが求められます。具体的な計画を進める際は、株式の集約や経営者保証の引き継ぎといった専門的な課題が生じるため、事業承継・引継ぎ支援センターなどの公的機関や専門家に相談しながら進めましょう。

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