手続

2回目の自己破産、免責の可否を分ける条件と実務上の注意点

経営リスクナビ編集部

過去に自己破産を経験された方が、再び2回目の自己破産を検討する際、「今回は免責が許可されるのか」という不安は切実です。1回目とは異なり、裁判所の審査は格段に厳しくなるため、正しい知識がなければ手続きを進めることは困難です。この記事では、2回目の自己破産で免責を得るための2大要件や1回目との手続きの違い、そして万が一免責が困難な場合の代替手段まで、実務的な視点から解説します。

2回目の自己破産は原則可能か

法律上の回数制限はない

結論として、2回目の自己破産を申し立てることは法律上可能です。破産法には、自己破産の申立て回数を制限する規定が存在しません。そのため、理論上は2回目でも3回目でも手続きを開始できます。

自己破産制度は、債務者の経済的な再生を支援するための救済措置です。病気や予期せぬ失業など、本人の努力だけでは避けられない事情で再び多重債務に陥るケースも想定されています。このような状況にある人の再生の機会を完全に奪うことは、法の趣旨に反します。

したがって、過去に自己破産の経験があるという事実のみで、申立てが裁判所に却下されることはありません。回数にかかわらず、客観的に支払い不能の状態にあれば、誰でも手続きの申立てが可能です。

焦点は「免責許可」が下りるか

2回目の自己破産において最大の焦点は、裁判所から「免責許可」を得られるかどうかです。免責許可とは、裁判所が借金の支払い義務を法的に免除する決定のことです。申立て自体が可能でも、この免責許可を得られなければ借金はゼロになりません。

自己破産手続きの開始と免責の許可は、全く別の基準で判断されます。特に2回目の申立てでは、一度借金の免除を受けたにもかかわらず再び債務超過に陥った経緯について、裁判所は非常に厳しい目で審査します。安易な借り入れを繰り返していないか、制度を濫用していないかといった点が徹底的に問われます。

そのため、2回目の手続きでは、申立てを行うことよりも、いかにして裁判所から免責許可を得るかが極めて重要かつ困難な課題となります。

免責許可を得るための2大要件

要件1:前回の免責から7年以上経過

2回目の自己破産で免責許可を得るための第一の要件は、前回の免責許可決定が確定した日から7年以上が経過していることです。破産法では、前回の免責から7年以内の再申立てを、原則として免責を許可しない「免責不許可事由」の一つとして定めています。

短期間に何度も借金の免除を認めると、債権者に過度な不利益を強いるだけでなく、社会的なモラルハザードを引き起こす危険があるためです。この7年という期間は、債務者が生活を立て直し、経済的に更生するための期間として設定されています。

注意すべきは、この期間の起算点です。起算日は、前回の自己破産を申し立てた日ではなく、裁判所の免責許可決定が法的に確定した日となります。通常、この確定日は、免責許可決定が官報に公告された後、即時抗告期間(通常1週間)が経過した日となります。この起算日から計算して7年が経過していなければ、原則として免責は認められません。

要件2:免責不許可事由に非該当

第二の要件は、今回の借金の原因が免責不許可事由に該当しないことです。免責不許可事由とは、破産法に定められた、借金の免除を認めるべきでないと判断される特定の事情を指します。破産制度の悪用を防ぎ、債権者間の公平性を保つために設けられています。

2回目の自己破産では、1回目と同じ過ちを繰り返していないかが特に厳しく審査されます。例えば、1回目も2回目もギャンブルが原因であれば、反省が見られないと判断され、免責が許可される可能性は極めて低くなります。

主な免責不許可事由の例
  • ギャンブルや著しい浪費によって多額の借金を作った
  • 財産を隠したり、他人に譲渡したり、意図的に価値を下げたりした
  • クレジットカードで購入した商品をすぐに換金する行為
  • 特定の債権者にだけ優先的に返済する(偏頗弁済)
  • 裁判所や破産管財人に対して嘘の報告や説明をする

裁量免責の重要性と判断基準

免責不許可事由が存在する場合でも、裁判所の判断によって例外的に免責が認められる「裁量免責」という制度があります。2回目の自己破産では、この裁量免責を得られるかが実務上の鍵となります。

裁判所は、破産法の目的である債務者の経済的再生の観点から、破産に至った経緯や現在の生活状況など、あらゆる事情を総合的に考慮して裁量免責の可否を判断します。特に2回目の手続きでは、過去の行動を深く反省し、更生に向けて具体的な努力をしているかが厳しく評価されます。

裁量免責で重視される主なポイント
  • 破産に至った経緯を真摯に反省しているか
  • 経済的更生に向けた具体的な努力(家計簿の作成など)を行っているか
  • 破産管財人が行う調査に誠実に協力しているか
  • 依存症が原因の場合、専門機関での治療など再発防止策を講じているか

1回目との手続き上の主な違い

裁判所の審査が厳格化する傾向

2回目の自己破産では、1回目と比較して裁判所の審査が著しく厳しくなります。一度借金の免除を受けたにもかかわらず、再び債務超過に陥った事実に対し、裁判所が制度濫用の可能性を疑うためです。

具体的には、なぜ再び借金を作ったのか、前回の破産後に生活をどう改善しようとしたのかといった点について、詳細な報告が求められます。提出書類の量が増え、家計収支の報告や借金経緯を記した反省文の提出が必須となることがほとんどです。少しでも不審な点があれば厳格な説明が求められ、1回目のように簡単な説明では審査を通過できません。

管財事件になりやすい理由

2回目の自己破産は、手続きが簡易な「同時廃止事件」ではなく、破産管財人が選任される「管財事件」として処理される可能性が極めて高くなります。同時廃止事件は、めぼしい財産がなく、免責不許可事由もないことが明らかな場合にのみ適用される例外的・簡易的な手続きです。

しかし2回目では、裁判所が財産状況や免責不許可事由の有無をより慎重に調査する必要があると判断するため、第三者である破産管財人の調査が不可欠とされます。管財人は、破産者の財産や借金の経緯を客観的な立場から調査し、裁判所に報告する役割を担います。このため、原則として管財事件となり、手続きがより複雑になります。

破産管財人との面談内容

管財事件になると、破産者は必ず破産管財人と面談を行います。この面談は、管財人が裁判所に対して免責を許可すべきかどうかの意見をまとめるための重要な調査の場です。書面だけでは分からない、破産者の反省の度合いや生活再建への意欲を直接確認する目的があります。

面談では、虚偽の説明をしたり不誠実な態度をとったりすると、免責が不許可となる致命的な結果を招くため、誠実な対応が絶対条件です。

管財人面談で主に確認される事項
  • 自己破産に至った詳細な経緯と原因
  • 現在の収入および支出の状況(家計簿の内容など)
  • 過去の銀行口座の取引履歴に関する説明
  • ギャンブルや浪費が原因の場合、具体的な再発防止策
  • 今後の生活再建に向けた計画と意欲

費用が高額になる可能性

2回目の自己破産は、手続きにかかる総費用が1回目よりも大幅に高額になる傾向があります。最大の理由は、管財事件として扱われることで、裁判所に納める引継予納金が追加で必要になるためです。

同時廃止事件なら裁判所費用は数万円程度ですが、管財事件では最低でも20万円以上の予納金がかかります。これに弁護士費用が加わるため、総額で50万円から100万円近い資金が必要になるケースも珍しくありません。この高額な費用負担は、2回目の手続きにおける大きな障壁の一つです。

2回目の自己破産で高額になりやすい費用
  • 裁判所への引継予納金: 最低20万円から。負債額や事案の複雑さにより50万円以上になる場合もある。
  • 弁護士費用: 審査が厳格化し業務量が増えるため、1回目よりも高額に設定される傾向がある。

破産管財面談で問われる事業の経緯と経営責任

個人事業主や会社の代表者が2回目の破産をする場合、管財人面談では事業の経緯と経営責任が特に厳しく問われます。事業関連の資金の流れは複雑で、会社財産と個人財産の混同や、債権者を害する不当な資金移動が起こりやすいためです。

事業者が管財人面談で特に問われる点
  • 事業が破綻に至った直接的な原因
  • 経営判断における重大な過失の有無
  • 倒産直前の特定の取引先への偏頗弁済の有無
  • 法人資産の不当な処分や財産隠しの有無
  • 帳簿や決算書など、客観的な資料との整合性

免責が困難な場合の代替手段

個人再生という選択肢

2回目の自己破産で免責を得ることが困難な場合、個人再生が有力な代替手段となります。個人再生は、裁判所の認可を得て借金を大幅に圧縮し、減額後の金額を原則3年間で分割返済していく手続きです。

自己破産と異なり、借金の原因がギャンブルや浪費であっても手続きを利用でき、前回の自己破産から7年以内という期間制限もありません。また、「住宅ローン特則」を利用すれば、マイホームを手放さずに借金を整理できる可能性があります。ただし、手続きの利用には継続的かつ安定した収入が見込めることが絶対条件となります。

任意整理という選択肢

もう一つの代替手段が、裁判所を介さない任意整理です。弁護士が代理人となり、各債権者と直接交渉して、将来利息のカットや返済期間の延長(通常3年~5年)を求めます。

裁判所を通さないため、自己破産のような法的な制限(免責不許可事由や7年ルール)は一切ありません。また、保証人がいる借金や自動車ローンを除外するなど、整理する対象を柔軟に選べるメリットがあります。ただし、任意整理は元本そのものを減額する効果は弱いため、負債総額が比較的少ない場合に適した解決策です。

よくある質問

自己破産は生涯で何回までできますか?

法律上、自己破産の申立てに生涯の回数制限はありません。しかし、回数を重ねるごとに裁判所の審査は飛躍的に厳しくなり、免責許可を得るハードルは格段に上がります。実務上、3回以上の免責が認められるケースは極めて稀であり、そのハードルは非常に高いと認識しておくのが現実的です。

7年未満でも免責される可能性はありますか?

前回の免責確定から7年未満であっても、裁量免責によって借金が免除される可能性はゼロではありません。例えば、重い病気による就労不能や会社の倒産など、本人に責任がない同情すべき事情がある場合です。ただし、これは極めて例外的なケースであり、裁判所の審査は通常よりも格段に厳しくなります。

破産原因が1回目と同じだと不利ですか?

破産原因が1回目と全く同じ場合、審査において極めて不利に働きます。特にギャンブルや浪費が繰り返されたケースでは、反省が全く活かされていないと判断され、免責が不許可となるリスクが非常に高まります。この場合、依存症治療の受診記録を提出するなど、具体的な改善行動を客観的に示すことが不可欠です。

2回目でも同時廃止になりますか?

2回目の自己破産が同時廃止事件として処理される可能性は非常に低いです。裁判所は、再度の破産に至った経緯や財産状況を厳格に調査する必要があるため、原則として破産管財人が選任される管財事件として扱います。これにより、手続きの費用と期間は1回目より増大します。

個人事業の失敗や個人保証が原因でも免責されますか?

個人事業の失敗や連帯保証人になったことが破産の原因である場合、免責が認められる可能性は十分にあります。これらは浪費やギャンブルのような免責不許可事由とは性質が異なるためです。ただし、事業運営において悪質な財産隠しや特定の債権者を優遇する偏頗弁済など、不誠実な行為が発覚した場合は、免責不許可の対象となります。

まとめ:2回目の自己破産で免責を得るための要件と注意点

2回目の自己破産は法律上可能ですが、焦点となる免責許可を得るためには厳しい要件があります。特に「前回の免責確定日から7年以上経過していること」と、浪費や財産隠しといった「免責不許可事由に該当しないこと」が重要な前提となります。手続きは1回目より格段に厳格化し、原則として費用が高額な管財事件となるため、十分な準備が必要です。裁量免責を得るには、破産に至った経緯を真摯に反省し、管財人の調査に誠実に協力する姿勢が不可欠です。ご自身の状況が免責の条件を満たすか、また個人再生など他の選択肢はないか、まずは弁護士などの専門家に相談して客観的な判断を仰ぐことをお勧めします。本記事の内容は一般的な情報提供であり、個別の事案については専門家への相談が必須です。

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