財務

類似業種比準価額の計算方法|業種目判定と算式の使い分け

経営リスクナビ編集部

類似業種比準価額方式で自社株(取引相場のない株式)を評価しようとすると、業種目の決め方や比準要素の作り方、株価期間の選択など、社内で前提を固める論点が一気に増えます。ここを曖昧なまま進めると、50円換算や株主区分の整理ミスが評価額のブレにつながり、事業承継・相続の検討や税務上の説明が難しくなります。先に「どの方式を軸に試算し、どの資料で根拠を残すか」を決めておくと、税理士等に依頼する前でも株価水準と評価リスクを把握しやすくなります。実務で最初に押さえるべきは株主区分と会社規模区分です。そこから見ていきます。

目次

類似業種比準価額の位置付け

非上場株式評価での役割を整理

類似業種比準価額は、取引相場のない株式の評価で「評価会社の数字」を「上場会社(類似業種)の公表データ」に比準(ひじゅん:基準に合わせて比例計算すること)して株価水準を求める考え方です。実務では、上場株価そのものを当てはめるのではなく、配当・利益・純資産といった指標で「似ている業種の平均値」を参照し、評価会社の継続収益力や事業実態を株価に反映させます。

参照する指標は、財産評価基本通達の枠組みで用いられる配当金額・利益金額・純資産価額の3要素です。一方で、「似た企業で考える」手法は万能ではなく、比較対象の取り方や入手できる情報に制約がある点も前提に置く必要があります。たとえば、同じビジネスモデルの会社が2か月前に投資を受けて企業価値2億円と評価され、相手の売上が1.5億円、自社の売上が3億円なら「売上が倍なので4億円でもよいのでは」という発想が類似企業比準の直観的な例ですが、税務の類似業種比準でも「何を似ているとみるか」の説明可能性が重要になります。

類似業種比準価額が実務で担う機能
  • 上場企業の株価水準と財務指標を参照し、取引相場がない株式評価に客観性を持たせます。
  • 解散価値寄りになりやすい純資産価額方式と比べ、継続的な収益力を反映しやすい設計です。
  • 業種目選定や比準要素の補正根拠を残すことで、税務調査時の説明可能性を高めます。

なお、ベンチャー企業のように「そのものズバリの類似企業」が見つかりにくい局面では、配当を出していない会社も多く、配当要素が比較に使いにくいという限界があります(配当しているベンチャー企業が少ないという指摘があります)。この場合でも、上場企業データを「完全な類似」としてではなく、例えば「1人当たり売上」や原価・経費構造などの部分的なベンチマークとして用いて、社内試算の妥当性チェックに活かす整理が有効です。

株主区分と特定会社の影響をみる

類似業種比準価額の適用可否や、最終的にどの評価方式を使うかは、(1)株主区分(同族株主等か否か)と、(2)評価会社の性質(特定会社等に該当するか)で大きく変わります。特に株主区分は、誰が取得する株式かで評価方式が切り替わり得るため、初期の論点として切り分けが必要です。

の「株主の仕訳」例のように、判定基準となる株主等の明細は住所・氏名(法人名)・株式数・議決権数を並べて整理します。例えば、明細の例では「鈴木 太郎(本人)」の株式数が500と記載されており、こうした一覧化が同族関係者の集計や議決権割合の確認の基礎になります。

また、会社法上の「大会社」は、最終事業年度の貸借対照表で資本金の額が5億円以上または負債の合計金額が200億円以上の会社と定義されています(会社法第2条)。ここでいう会社法上の大会社(会社法2条6号)と、非上場株式評価で用いる「会社規模区分(大会社・中会社・小会社)」は概念が別であるため、用語が同じでも混同しない運用が重要です。

初期スクリーニングで整理する観点
  • 株主ごとに株式数・議決権数を集計し、同族株主等に該当するかを判定します。
  • 会社法上の大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上)と、評価上の会社規模区分を区別して管理します。
  • 類似業種比準が適用しにくい会社性質(資産構成の偏り等)がないかを早期に確認します。

類似業種比準方式の選択基準

会社規模区分の判定基準を確認

会社規模区分の判定は、類似業種比準価額と純資産価額の併用割合(L)を決める前提作業です。実務でまず押さえるべきは、評価上の「大会社・中会社・小会社」は、会社法上の大会社定義(資本金5億円以上または負債200億円以上:会社法第2条)とは別体系であり、同じ語でも別の判定軸だという点です。

規模判定では、従業員数・売上高・総資産価額など複数指標を用い、直前事業年度末の数値を基礎に区分します。従業員数については、労務の実務解釈として「常時使用する労働者数」には正社員だけでなく、契約社員、パート、アルバイト等の臨時労働者、派遣社員、出向社員も含める扱いが示されています(労働安全衛生法施行通達 昭47.9.18発基第91号の考え方)。したがって、単に人事台帳の正社員数だけで判定すると、境界企業で誤りやすくなります。

規模判定で「数え方」がブレやすいポイント
  • 従業員数の集計では、正社員に限らずパート・アルバイト・派遣・出向等も含めた常時使用の範囲を前提に整えます。
  • 本社が管理部門のみの場合でも、事業場の業種の考え方では本社は「その他の業種」と整理されることがあるため、事業実態の把握資料を揃えます。
  • 「会社法の大会社」と「評価の会社規模区分」は別物なので、社内資料で用語定義を明示して混同を避けます。

比準方式と純資産価額方式を使い分ける

類似業種比準方式と純資産価額方式は、企業の価値を「収益力中心でみるか」「保有資産中心でみるか」という観点が異なります。類似業種比準は、上場会社の財務データ等を参照して比準するため、全体として似ていなくても、営業のやり方が近い部分をベンチマークして「自社の数値が常識外れになっていないか」を検証する用途にも意味があります。

一方、純資産価額方式は貸借対照表の資産・負債の価値に寄るため、内部留保や含み益の影響を強く受けます。どちらが有利かは会社の状態で変わるため、規模区分に応じたルールの範囲で、試算により比較して判断します。

観点 類似業種比準方式 純資産価額方式
基本発想 「似ている業種の平均」に比準して株価水準を決める 保有資産・負債の価値に基づく
強く反映されやすい要素 利益・配当等の収益力の要素 内部留保、含み益等を含む資産価値
留意点 「何が似ているか」の説明、データ入手可能性 資産の時価評価・調整項目の精度
類似業種比準と純資産価額の見え方(実務上の整理)

試算段階で原則方式と容認方式の両方を並べるべき会社の見分け方

原則方式と容認方式の両建て試算が特に有効なのは、評価額がどちらに振れやすいかが「会社の構造」で概ね読める会社です。類似の考え方は、の例のように「売上が相手の2倍(1.5億円→3億円)なら企業価値も2倍(2億円→4億円)で評価してよいのでは」という比例発想ですが、税務評価では売上だけで決まらないため、利益・純資産も含めた複眼で比較する必要があります。

両方式を並行試算しやすい会社の典型
  • 内部留保や不動産等の含み益が積み上がり、純資産価額方式が高く出やすい会社です。
  • 配当をほとんど出していない会社で、配当要素が比準に与える影響が小さくなりやすい会社です(配当を出しているベンチャー企業が少ないという指摘があります)。
  • 参考にできる比較データの入手に制約がある会社で、複数の前提で説明可能性を確保したい会社です(非上場の比較対象は計数が公表されないことが多いという指摘があります)。
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類似業種と業種目を判定する

業種目の決め方と対比表の使い方

業種目の選定は、業種目別株価等一覧表のどの行を使うかを決めるための前提です。ここでの実務上の注意は、社内外で「業種」の分類体系が複数存在し、同じ会社でも分類結果が変わり得る点です。例えば労働安全衛生法の行政解釈では、事業場の業種は業態に応じて個別に決し、経営・人事等の管理事務をもっぱら行う本社は、管理する系列事業場の業種とは無関係に決定するとされています(労働安全衛生法施行通達 昭47.9.18発基第91号)。

したがって、税務の業種目判定では、日本標準産業分類との対比表等を使うとしても、登記目的やパンフレット等の「名目」だけで決めず、実際の提供価値(何を誰にどう提供して収益化しているか)を資料で説明できる形に落とし込みます。

業種目判定で根拠に使いやすい社内資料
  • 事業の内容がわかる対外資料(会社案内、ウェブ掲載資料、事業報告書相当の説明資料)。
  • 主要取引の契約書・発注書・請求書明細(役務内容や商品内容が特定できるもの)。
  • 部門別売上の集計表(売上台帳、勘定科目内訳明細書の補助資料)。

複数事業の評価会社での判定手順

複数事業がある場合、業種目判定は「どの事業が主か」を客観的に示すことが重要です。実務では、直前事業年度の売上高を事業別に集計し、売上構成比で判断します。

複数事業の業種目を決める基本フロー
  1. 直前事業年度の売上を事業(商品・サービスライン)別に区分して集計します。
  2. 各事業の売上高が全売上高に占める割合(構成比)を算出します。
  3. いずれかの事業が全体の50%を超える場合は、その事業に対応する業種目を採用します。
  4. 50%超の事業がない場合は、より上位の分類(中分類・大分類相当)で類似性が高い業種目を検討します。
  5. 判定の根拠となる集計表と、売上区分の定義(どの取引をどこに入れたか)を保存します。

売上区分と会計科目が一致しない会社で、業種目判定のために誰がどの資料を突き合わせるか

売上区分が会計科目と一致しない典型例として、不動産賃貸業の「賃貸収入」、建設業の「完成工事高」など、売上高以外の勘定科目名称で営業収益を計上するケースがあります。この場合、損益計算書の科目名だけでは業種目判定に必要な「取引の実態」が見えないため、社内で突合体制を作ることが重要です。

また、売上の計上は実現主義に基づく整理が前提とされ、収益認識については企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」が2018年3月に公表され、2021年4月1日以後開始する事業年度から適用とされています。役務提供型のビジネスでは「一定期間で認識」する取引もあり得るため、売上台帳の区分と契約条件(検収・履行義務など)を合わせて確認しないと、事業別売上の集計がズレることがあります。

突き合わせの担当と資料(実務の最小単位)
  • 財務担当者は勘定科目内訳明細書・売上台帳・請求データを起点に事業別売上集計表を作成します。
  • 法務担当者は主要契約書・発注書・利用規約等から提供内容と対価の発生条件を特定します。
  • 両者で「科目名(賃貸収入・完成工事高等)=売上区分」になっているかを取引単位で検証します。

類似業種比準価額の算式を読む

算式の全体像と50円換算を押さえる

類似業種比準価額の算式は、「類似業種(上場)の株価水準」に対し、評価会社の配当・利益・純資産を比準させる枠組みです。ここで重要なのは、比準という考え方が本質的に「比例の発想」を含む点で、の例(2か月前に評価2億円の会社に対し、売上が1.5億円→3億円で倍なら4億円で評価してもよいのでは)と同じく、まずは何を基準に比例させるかを明確にする必要があります。

また、評価実務では「1株当たり」を揃えるために50円換算が登場します。これは、評価会社の発行済株式数そのものではなく、資本金等の額を50円で除した仮想株式数を基準にして、配当金額・利益金額・純資産価額を「50円換算の1株当たり」に直す発想です。

算式理解のための要点
  • 比準は「似ている業種の平均指標」と比較して比例計算する考え方で、何を似ていると置くかが説明の核になります。
  • 50円換算は、資本金等の額÷50円で仮想株式数を作り、1株当たり指標の比較土台を揃える手続きです。
  • 類似の比較は万能ではなく、比較対象が存在しない・配当データが意味を持ちにくい等の限界があります。

業種目別株価等一覧表の見方を知る

業種目別株価等一覧表は、類似業種比準価額で参照する「類似業種(上場)の平均値」を提供する前提資料です。比較アプローチ自体は、上場企業の財務データを部分的に活用してベンチマーキングすることに意味があるという整理と親和的で、評価においても「業種目が正しいか」「数値がどの期間のものか」を丁寧に揃えることが実務の品質を左右します。

一覧表の数値を拾う作業では、(1)業種目の行、(2)株価の選択期間、(3)配当・利益・純資産の参照値(50円換算の前提)をセットで管理し、転記のクロスチェックを行います。

一覧表の転記でミスになりやすい点
  • 業種目番号の取り違え(似ているように見えるが分類が違う)。
  • 株価の期間選択の取り違え(課税時期の月・前月・前々月と平均値の区別)。
  • 50円換算の前提を理解しないまま自社側の1株当たり数値と比較してしまう。

3か月最安値・前年平均・2年平均のどれを採るかを、株価変動と説明可能性で判断する

株価選択は、単に「低いものを選ぶ」だけでなく、なぜその期間を選んだのかを後から説明できる形にする必要があります。類似の比較は、情報入手や比較可能性に限界があるという指摘があるため、選択の理由付けを資料として残しておくことが、結果的に実務上のリスクを下げます。

株価選択の実務手順(説明可能性を残す)
  1. 課税時期の月・前月・前々月の各月平均株価を並べ、最安値と変動幅を把握します。
  2. 前年平均株価と過去2年平均株価も同じ表に並べ、直近高騰・急落の影響を受けにくい選択肢があるか確認します。
  3. 採用した株価と採用しなかった株価について、採否理由(市場環境や一時的変動の有無)を明細書作成メモとして残します。
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評価会社の比準要素を計算する

利益金額と欠損金の扱いを確認する

利益金額(1株当たり利益)の算定では、会計利益ではなく、法人税計算の所得金額を起点に、継続的な収益力を示すように補正します。ここでの実務的な注意は、比較(比準)の前提となる数値が「入手できる・検証できる」形になっていることです。非上場の比較対象は増資時の企業価値や売上・利益が公表されないことが多いとされており、自社側の利益金額も、税務申告書に基づいて再現可能であることが重要になります。

欠損がある年度の扱いは、利益金額の振れ方に直結します。単年度・複数年度平均など、通達上選択できる枠がある場合は、算出過程と前提資料を揃え、後から追試できる形で残します。

利益金額の計算で確認する資料
  • 法人税確定申告書の所得金額に関する資料(別表類)を起点に、利益金額の出発点を特定します。
  • 固定資産売却損益や保険金等の非経常項目があれば、継続収益力の観点から補正の要否を検討します。
  • 欠損がある年度は、単年度と複数年度平均の両方を計算し、採用根拠を残します。

純資産価額と資本金等を計算する

純資産価額の算定では、会計上の純資産をそのまま使うのではなく、税務評価の考え方に沿って調整し、さらに50円換算の基礎となる資本金等の額を整えます。資本金等の額の把握は、税務申告書の「資本金等の額の計算に関する明細書」といった別表情報に基づいて再現可能にしておくことが重要です。

また、売上や利益の比較と同様に、数値の定義がブレると比準の前提が崩れます。収益認識の影響で売上計上が期間配分される取引がある会社では、純資産の増減(利益剰余金の増減)にも影響し得るため、決算書の数字がどう作られているかを理解したうえで、評価用の調整に入ります。

純資産・資本金等の計算での実務上の注意
  • 会計上の資本金と税務上の資本金等の額は一致しないことがあるため、税務別表で金額根拠を固定します。
  • 50円換算の株式数は資本金等の額を基礎に置くため、資本取引の履歴を踏まえて整合性を確認します。
  • 収益認識(一定期間認識・一時点認識)の違いが決算数値に影響する場合、売上台帳と契約条件の整合も併せて確認します。

自己株式・種類株式・期中の資本異動がある会社で、50円換算の株式数を誤りやすい場面

50円換算株式数は、比準要素(配当・利益・純資産)を「1株当たり」に直す基礎になるため、ここでの誤りは全ての比準割合に波及します。特に、自己株式・種類株式・期中の資本異動がある会社は、株式数や資本金等の額の前提が複雑になり、誤りやすくなります。

「様々な種類の株式」という記載があるとおり、種類株式は権利内容が異なるため、形式的な株数だけで整理すると評価の前提が崩れます。さらに、株主の税務処理(みなし配当の把握は支払通知書から、など)と同様に、株式数の変動も通知書・株主名簿・別表情報で突合して履歴を固定する必要があります。

50円換算株式数でつまずきやすい典型
  • 自己株式を発行済株式総数から控除すべきかの整理が曖昧で、株数が過大計上になる。
  • 期中に増資・減資・株式分割等があり、課税時期に整合する資本金等の額と株式数に揃えられていない。
  • 種類株式の権利差(配当優先・議決権制限等)を無視して同一株式として1本で割ってしまう。

類似業種比準価額を修正する

斟酌率と比準割合を反映する

最終段階では、(1)配当・利益・純資産の比準割合を統合し、(2)会社規模に応じた斟酌率で市場性のなさを調整します。ここでの実務品質は「計算の正しさ」だけでなく、「比準という発想が成立する前提が整っているか」を含みます。が指摘するように、比較対象が存在しない・配当が出ない・非上場で情報が取れない、といった制約がある場面では、比準の前提(業種目、数値定義、資料の入手経路)をより丁寧に固める必要があります。

また、比準の考え方そのものは比例比較であるため、たとえば「会員数100万人のトップ企業と20万人の企業」のように、単純に5分の1と置けないケースがあるという指摘も踏まえ、数字の意味(KPIの質、収益化モデルの差)を説明できる資料化が重要です。

斟酌率・比準割合の適用で残すべき記録
  • 3要素(配当・利益・純資産)の各「自社側の1株当たり」の算出根拠(50円換算の前提を含む)。
  • 類似業種側の数値の転記根拠(業種目の選定理由と期間選択理由をセットで保存)。
  • 比準が妥当と言える理由(何をもって「似ている」と判断したか)を短文メモで残す。

持株割合と株主区分で修正をみる

株主区分は、評価方式の切替に直結するため、最終評価に入る前に「株主の一覧(誰が・何株・議決権いくつ)」を確定させる必要があります。の株主等の明細例のように、住所・氏名(法人名)・株式数・議決権数を並べ、判定基準となる株主等を特定していきます。例として、明細では「鈴木 太郎(本人)」が500株と整理されており、この粒度のデータが区分判定の出発点になります。

また、株主の税務処理の場面では「みなし配当は支払通知書から把握」といった実務手順が示されています。これは株主側課税の論点ですが、株主区分の整理でも、株主名簿や通知書等の一次資料で裏取りし、名寄せ・関係者整理を行うという意味で同じ発想が有効です。

株主区分の整理で揃える一次資料
  • 最新の株主名簿(株式数と議決権数が追える形)。
  • 株式移動があった場合の譲渡契約書・払込関係資料・議事録等。
  • みなし配当等が絡む場合の支払通知書(株主側課税の整理に必要)。

計算明細書の確認点と資料保管

計算明細書は、単なる「提出書類」ではなく、計算過程が追試できるようにするための監査証跡(エビデンス)です。にも、有価証券報告書の記載事項として「事業の内容」「従業員の状況」などが列挙されていますが、評価会社が非上場であっても、類似の発想で「事業内容が説明できる資料」「従業員数等の根拠」「売上区分の根拠」を内部資料として揃えておくと、業種目判定や規模判定の説明が通しやすくなります。

さらに、売上の科目名が業種により「賃貸収入」「完成工事高」等となることがあるため、明細書上の売上区分の根拠は、会計データだけで完結させず契約・請求の実態で補強する必要があります。

明細書作成・保管のチェック手順
  1. 業種目の選定理由を、対外資料・契約類・売上台帳のいずれで説明するかを明確にします。
  2. 事業別売上集計(50%超判定に使った表)と、集計定義(どの取引をどこに入れたか)を保存します。
  3. 従業員数の根拠資料(常時使用の範囲にパート・派遣等を含めた集計表)を保存します。
  4. 資本金等の額・50円換算株式数の根拠(別表、資本取引履歴、株主名簿)を一式で保存します。

よくある質問

類似業種比準価額方式と純資産価額方式はどのように使い分けるべきですか?

会社の状態を「何で価値が説明できるか」で整理し、規模区分と株主区分に従って試算比較するのが実務的です。類似業種比準は「似ている業種の平均」に比準するため、上場企業の財務データを部分的にベンチマークして、計画や前提の妥当性確認に活かせる一方、非上場の比較対象は計数が入手できないことが多いという制約があります。

使い分けの判断軸(実務目線)
  • 収益力で説明しやすい会社は類似業種比準との整合が取りやすい一方、何をもって「類似」とするかの根拠が必要です。
  • 内部留保や含み益が大きい会社は純資産価額が高く出やすく、併用評価の試算価値が高くなります。
  • 配当がほとんどない会社では配当要素の比較が効きにくいことがあるため、他要素の説明を厚くします。

複数の事業を行っている評価会社の業種目は、どのように判定すればよいですか?

直前事業年度の事業別売上高構成比で判定し、50%超の事業があればその事業の業種目を採用します。50%超がない場合は、より上位の分類(中分類・大分類相当)で類似性が高い業種目を検討し、最終的に「その他」整理も含めて一貫した根拠を作ります。

また、売上科目の名称は業種により「賃貸収入」「完成工事高」等となることがあるため、勘定科目名だけで分類せず、契約書・請求明細で役務内容や商品内容を確認してから売上区分を確定させます。

赤字決算や欠損金がある場合、利益金額の計算にどのような影響がありますか?

赤字年度があると、利益金額の算定は「単年度で見るか」「複数年度平均で平準化するか」により見え方が変わります。ここでも重要なのは、利益金額が会計利益ではなく税務申告に基づく所得金額を起点に補正して作る数値である点で、非上場の比較対象は売上・利益が公表されないことが多いという制約があるからこそ、自社側の算定根拠を申告書類で追試できる形にしておく必要があります。

固定資産売却損益など一過性の要素がある場合は、継続収益力としての利益金額からの調整要否を検討し、調整した場合は理由と計算過程を残します。

類似業種比準価額を社内で試算する際、最低限そろえる資料は何ですか?

社内試算でも、後から追試できる資料セットを揃えることが重要です。特に、売上区分が「売上高」以外の勘定科目になり得る点(賃貸収入、完成工事高など)や、収益認識の適用(企業会計基準第29号は2018年3月公表、2021年4月1日以後開始事業年度から適用)で売上計上の考え方が変わり得る点を踏まえ、会計データと契約実態を突合できる形にします。

最低限の資料セット(試算の再現性を優先)
  • 直近2〜3期の決算書一式と、法人税確定申告書一式(資本金等の額が追える別表を含む)。
  • 勘定科目内訳明細書・売上台帳・請求データ(事業別売上の区分ができるもの)。
  • 主要契約書・注文書・請求書明細(売上区分と提供内容を裏取りできるもの)。
  • 最新の株主名簿(株式数・議決権数の整理に必要)。

類似業種比準価額への対応で次にすべきこと

類似業種比準価額方式は、業種目の選定、株価期間の選択、配当・利益・純資産の3要素の作り方を「追試できる形」で揃えることで、試算のブレと説明負担を抑えやすくなります。判断の軸としては、株主区分と会社規模区分を先に確定し、類似業種比準と純資産価額のどちらが自社の実態を説明しやすいかを、併用割合(L)も含めて比較する運用が現実的です。まずは、50円換算の前提(資本金等の額と株式数)と、複数事業がある場合の50%超判定に使った事業別売上集計表を整え、転記ミスや定義ブレを潰すところから着手します。株式移動や種類株式、期中の資本異動がある場合は、株主名簿・議事録・別表情報など一次資料で履歴を突合し、社内での前提固定を優先してください。個別の適用可否や補正の要否は事情で変わるため、最終判断は税理士等の専門家にも確認するのが安全です。



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