手続

更生債権届出書の書き方|失権を避ける期限と記載事項を確認

経営リスクナビ編集部

更生債権届出書(債権届出書)は、会社更生手続の開始後に裁判所から案内文とともに届くことが多く、取引先・自社いずれの立場でも「何を、いくら、どの根拠で出すか」を短期間で整理する必要が出てきます。届出を放置すると、会社更生法134条3項(会社更生法第134条)の趣旨に沿って強制執行等が止まる一方で、手続内で調査・確定され更生計画に反映されるルートから外れ、弁済(配当)や議決権の前提が崩れかねません。届出対象となる債権の見分け方、担保付・無担保の区分、開始決定日前後の切り分け、認否・異議対応までを理解しておくと、期限管理と社内分担を実務として組み立てやすくなります。以下では、更生債権届出書の判断材料として届出の位置付け・対象債権の整理・記載方法・期間管理を示します。

更生債権届出書の位置付け

会社更生手続での役割

更生債権届出書は、会社更生手続において更生債権者として手続に参加し、弁済(配当)を受ける前提となる届出書面です。会社更生では、更生債権は原則として更生計画に定められなければ弁済を受けられず、手続開始後は強制執行等が禁止・中止されるなどの制約にも服します(会社更生法134条3項(会社更生法第134条)の趣旨)。

届出が実務上決定的に重要なのは、届出内容が更生管財人による調査・認否の対象となり、その後の更生計画(弁済条件・支払時期等)と議決権の基礎になるためです。更生債権の概念自体も、会社更生法2条8項が、(i)開始前原因に基づく財産上の請求権で更生担保権・共益債権に当たらないもの、(ii)開始後原因でも共益債権・開始後債権に当たらないもの、と整理しています(会社更生法第2条)。

実務では、届出書に「債権の種類・発生原因・金額(元本/利息・遅延損害金等)・支払期・弁済状況」を特定し、疎明資料(契約書、請求書、納品書、通帳記録等)を添付して、管財人の認否判断に耐える形にします。更生債権は内部的に、優先的更生債権/一般の更生債権/約定劣後更生債権に区分され得て、更生計画では一般の更生債権との間に公正かつ衡平な差を設けることが予定されています(会社更生法168条1項2号、会社更生法43条4項1号の枠組み:会社更生法第168条、会社更生法第43条)。このため、届出段階から自社債権がどの区分に近いか(一般の売掛金なのか、一般先取特権が付くのか、劣後合意があるのか)を意識して資料整理しておくと、後工程での齟齬を減らせます。

更生債権と更生担保権の違い

更生債権と更生担保権は、同じ「開始前原因」に根拠を持つ請求権でも、担保の有無と手続内での位置付けが異なります。更生債権は、更生会社に対し更生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権で、更生担保権および共益債権に該当しないもの等をいいます(会社更生法2条8項:会社更生法第2条)。

更生担保権は、開始時点で更生会社財産に存在する担保権(特別の先取特権、質権、抵当権および商事留置権に限る)により担保される被担保債権で、開始前原因に基づくもの等のうち、担保目的財産の価額を開始時の時価とみた場合に、その価額の範囲で担保される部分をいいます(会社更生法2条10項:会社更生法第2条)。

参照実務では、形式が担保権でなくても更生担保権に含まれ得るものとして、留保所有権(所有権留保売買の売主の権利)、仮登記担保権、各種の譲渡担保権が挙げられています。したがって、契約書の題名や社内の担保管理台帳だけで機械的に判断せず、「実質的に担保として機能する合意か」を見直したうえで区分します。

観点 更生債権 更生担保権
法的定義の根拠 開始前原因の財産上請求権で担保権・共益債権等を除外(会社更生法第2条 開始時に存在する担保権で担保された範囲(特別先取特権・質権・抵当権・商事留置権)(会社更生法第2条
価額との関係 価額評価は基本的に前提でない 開始時の時価評価を前提に「担保される範囲」を画する(会社更生法第2条
実務で見落としやすい例 劣後合意の有無(約定劣後更生債権:会社更生法第43条 所有権留保、仮登記担保、譲渡担保などの実質担保
更生債権と更生担保権の実務上の区分

担保目的財産の時価を超える債権額がある場合、その超過部分は担保ではカバーされないため、無担保部分として更生債権側の扱いになり得ます。届出実務では「担保で担保される部分」と「無担保部分」を分けて説明できるよう、担保契約・被担保債権の計算根拠・評価資料(社内評価でもよいが根拠が必要)をセットで準備することが重要です。

届出が必要な債権の見分け方

売掛金と貸付金の判断

届出対象かどうかは、会計科目よりも、会社更生法上の発生原因(開始前原因か/担保付か/共益か)で判定します。更生債権は「開始前原因に基づく財産上の請求権で、更生担保権・共益債権に該当しないもの」を基本とします(会社更生法2条8項:会社更生法第2条)。

売掛金(売買代金等)は、注文・納品・検収・請求の連鎖で発生するため、取引の特定(どの納品分が未払か)が中心になります。貸付金は、金銭消費貸借等に基づき元本・利息・遅延損害金が派生し得るため、約定(利率・期限の合意)と入出金実績が中心になります。

売掛金で届出額を固める確認点
  • 注文書・発注書と納品書(検収書)が対応しているかを突合します。
  • 請求書の締日単位ではなく、開始決定前に給付が完了しているかで切ります。
  • 相殺・値引・返品・手形受領などの減額要素を反映した残高にします。
貸付金で届出額を固める確認点
  • 金銭消費貸借契約書等で元本・弁済期・利率・遅延損害金条項を確認します。
  • 振込記録や通帳で実行日・返済日・残元本を確定させます。
  • 利息・遅延損害金は「どこまでを届出対象にするか」を法務と合意して計上根拠を残します。

利息・遅延損害金については、民事再生では開始後利息損害金も再生債権に含め得る一方(民事再生法84条1項・2項)、実務書式では開始決定日以降は全額免除扱いとする運用が多い、と整理されています。会社更生での届出方針を決める際も、裁判所・管財人の運用(案内文や書式の注意書き)を必ず確認し、開始前分と開始後分を分けて記載できるよう計算表を作っておくと、認否段階のやり取りが減ります。

保証債務と損害賠償の扱い

保証債務や損害賠償請求権は、売掛金よりも偶発性(条件付き)や金額不確定が強く、届出時点の整理の仕方が認否結果に影響しやすい類型です。会社更生法上の更生債権は、開始前原因に基づく請求権を基本に据えて整理されるため(会社更生法2条8項:会社更生法第2条)、保証契約の締結や債務不履行の発生が開始前にあるか、という起点の確認が重要です。

保証債務(求償・履行請求)での整理ポイント
  • 更生会社が保証人か主債務者かを契約書で確定します。
  • 代位弁済前でも、条件付・将来の請求として発生原因と条件を明記します。
  • 主債務の残高資料(残高証明、返済表等)を添付して算定根拠を示します。
損害賠償・違約金での整理ポイント
  • 契約条項(解除・違約金・損害賠償予定)と、違反行為の発生日を対応付けます。
  • 損害額は見積りの場合でも算定過程(単価、期間、数量、代替調達差額等)を1枚で説明します。
  • 社内文書(議事録、メール、報告書)を「発生原因の疎明」として時系列で束ねます。

なお、疎明資料の例として、債務の疎明方法には「債務者から送信されたファクシミリ書面」等も挙げられており、形式的な契約書がなくても、取引当事者間のやり取りを証拠化して組み立てることが実務上可能です。金額不確定の部分は、確定部分と不確定部分を区分したうえで、どこまでが確定し、どこからが条件・見積りかを明確に書くのが安全です。

開始決定前後の取引が混在するときは請求書を分けて整理する

開始決定日をまたいで取引が継続しているときは、開始前原因の更生債権と、開始後の取引から生じる共益債権等を混在させないことが最重要です。更生債権は開始前原因を基本とする一方(会社更生法2条8項:会社更生法第2条)、共益債権は手続運営のために随時弁済され得る枠に置かれるため、社内の請求・入金管理も二重線で運用する必要があります。

開始決定日前後の混在取引を切り分ける手順
  1. 裁判所の開始決定通知で「開始決定日(必要があれば時刻)」を原本で確定します。
  2. 納品書・検収書・役務完了報告書の日時を突合し、開始決定前に給付が完了した範囲を抽出します。
  3. 抽出分のみを更生債権届出書に計上し、締日処理ではなく発生原因(給付完了日)で説明します。
  4. 開始決定後に発生した請求は、管財人の指示に従い共益債権等として別請求に分離します。

開始決定前分と開始決定後分を同一請求書にまとめると、管財人側で処理が止まり、結果として「共益として払われるべき部分」まで入金が遅れるリスクがあります。請求書番号・案件番号・社内債権台帳も、開始前(届出対象)と開始後(運転資金回収対象)で採番体系を分けるなど、後から監査可能な形で整理しておくと安全です。

広告

更生債権届出書の書き方

債権者情報と債権額の記載

債権者情報は「誰が権利者か」を確定する部分であり、届出後の認否通知・議決権行使・弁済の受領に直結します。法人の場合は、商号・本店所在地・代表者資格を登記事項に合わせ、社名変更や本店移転があるときは商業登記事項証明書で連続性を示します。

債権額は「開始前原因に基づく更生債権」としての計上が基本で(会社更生法2条8項:会社更生法第2条)、内訳(元本/利息/遅延損害金/違約金等)を可能な範囲で分解して記載します。利息・遅延損害金の取扱いは手続類型や運用で差が出やすいため、案内文の記載や管財人の指示に従い、少なくとも「どの期間の分か」を明示できる計算表を添付するのが無難です。

金額欄で管財人に伝わる書き方の型
  • 元本は取引単位(請求書番号、貸付実行日等)で積み上げ、総額だけを置かないようにします。
  • 利息・遅延損害金は約定根拠(契約条項)と起算日・算定式を1行で示します。
  • 相殺・値引・一部入金等の控除は、控除日と金額が追える形で併記します。

発生原因と弁済状況の書き方

発生原因欄は、管財人が帳簿・契約・現物資料と照合して認否を決めるための「索引」です。会社更生法上、開始前原因に基づく請求権かどうかが基本線になるため(会社更生法2条8項:会社更生法第2条)、発生原因は「契約(名称・締結日)→個別取引(発注・納品・検収)→請求」の順に、第三者が追える粒度で書きます。

弁済状況欄は、残高の正当性を示す欄です。過大届出は否認の典型原因になるため、総額主義ではなく、充当事実が分かる形で減算過程を示します。

弁済状況欄に入れるべき控除要素
  • 一部入金(入金日・金額・充当先)
  • 相殺(相殺合意や相殺通知の有無と対象債権)
  • 手形・小切手(受領日・期日・決済/不渡りの別)
  • 値引・返品・再請求(発生日と金額)

契約書がなくても届出できるか――受発注メール・納品書・通帳で疎明を組み立てる基準

基本契約書がない取引でも、取引の合意と履行の事実を合理的に示せれば、届出自体は組み立てられます。疎明の発想は「単体資料で完璧を狙う」ではなく、「複数資料の組合せで取引の全体像をつなぐ」です。

参照実務では、疎明方法の例として、債務者(更生会社)から送信されたファクシミリ書面が挙げられており、契約書以外のコミュニケーション記録も重要資料になり得ます。また、添付書類の例として「証拠資料写し各1通」「商業登記事項証明書1通」といった形で、証拠の束ね方が示されています。

契約書なしで疎明を組み立てる実務手順
  1. 受発注メール等で合意内容(品目・単価・数量・納期・支払条件)が読み取れる箇所を抽出します。
  2. 納品書・受領書・検収記録で履行(引渡し/役務完了)を時系列で並べます。
  3. 請求書控えと入出金記録(通帳、振込明細)で代金決済の履歴をつなぎ、未払残を計算します。
  4. 更生会社側発信のFAXやメールがある場合は、発注・受領・不具合対応等の「相手方の認識」を補強資料として添付します。
  5. 1枚の説明書に「資料番号→事実→届出計算への反映」を対応付け、管財人が追える形にします。

届出先と期間の管理

裁判所と更生管財人の関係

会社更生手続では、裁判所が手続を主宰し、管財人を監督します。更生事件は地方裁判所の職分管轄に属します(会社更生法5条:会社更生法第5条)。この枠組みの中で、届出は「裁判所に提出する」ことになっていても、実質的な確認・照会・認否の実務対応は更生管財人(および代理人弁護士)が担うのが通常です。

裁判所と更生管財人の役割分担(届出実務の観点)
  • 裁判所は開始決定や更生計画認可等の裁判を行い、関係人集会の指揮をします。
  • 更生管財人は届出債権の調査・認否、計画案作成に必要な情報整理を主導します。
  • 債権者の照会・追加資料提出・記載補正の実務窓口は管財人側になることが多いです。

届出期間と失権の基本

届出期間は裁判所が定め、期間内に届出しないと手続内での権利主張が困難になります。会社更生では、開始後は弁済等を原則として受けられず、強制執行等も禁止・中止されるなどの制約を受けるため(会社更生法134条3項:会社更生法第134条)、債権者側の実務は「期限内に届出して、調査・確定のレールに乗せる」ことが最優先になります。

追完届出等が問題になる局面はありますが、要件判断は手続の進行状況(調査の段階、計画案の段階)と密接に連動します。したがって、案内文で指定された届出期間(起算日・末日)と、一般調査期間・特別調査期日などのスケジュールを、受領当日に社内で固定し、逆算工程で動く必要があります。

社内で誰がいつ何を確認するか――届出初日から一般調査期間末日までの実務分担

届出実務は「法務だけ」「経理だけ」では完結しません。一般調査期間末日までのどこで認否が確定し得るかを前提に、部門横断でタスクを割り振るのが実務的です。

タイミング 法務 経理・財務 営業・購買
通知受領当日 開始決定通知と届出期間・調査期間を読み込み、社内通達を出します 該当先の残高・未決済手形・入金予定を凍結し一覧化します 取引停止・出荷停止の判断材料(受注残、納品状況)を提出します
届出準備期間 法的発生原因(契約・注文・瑕疵等)を類型化し届出書の骨子を作ります 元本残・利息損害金・控除要素(相殺、入金等)を計算表にします 証拠(メール、納品書、検収、議事録)を回収し資料番号を付けます
届出提出後〜調査期間 管財人照会の窓口を一元化し補正・追加資料を整理します 入金や相殺の新事実が出た場合に即時反映できるよう更新します 取引継続がある場合は開始前・開始後を分けた請求運用に切替えます
届出初日から一般調査期間末日までの社内分担(例)

民事再生の枠組みでは、調査期間末日から1カ月の査定申立期間が定められている(民事再生法105条)など、調査期間末日が「次の期限の起点」になり得ます。会社更生でも、調査期間末日が次工程の実務判断を急がせる点は同様なので、末日を単なる締切ではなく、異議・査定等の準備開始日として管理しておくと事故が減ります。

広告

認否書と更生計画への影響

認否書作成と債権調査の流れ

認否書は、届出債権の内容(存否・金額・議決権の基礎)を整理して、手続内での扱いを固めていくための中核資料です。参照整理では、再生手続において再生債務者等が、届出のあった債権届出書の内容および議決権、さらに届出はないが自認する内容等を記載した認否書を作成するとされています。会社更生でも、届出内容が管財人の調査対象になり、帳簿・取引履歴・証拠と照合されて、認めるか否かが整理される、という実務構造は同じです。

認否までの実務的な流れ(届出側の視点)
  1. 届出期間の終了後、管財人が届出書と添付資料を更生会社の帳簿・取引履歴と照合します。
  2. 不明点があれば照会が来るため、資料番号で即答できるよう整理しておきます。
  3. 認否書の備置・開示後、自社の「認め/否認(全部・一部)」を確認します。
  4. 否認があれば、理由(発生原因、金額計算、控除漏れ、担保区分等)を切り分けます。

異議申立てと査定申立ての期限

否認された場合は、手続上の期限管理が全てです。参照整理では、民事再生において、再生債務者等が認めず、または異議が出た届出債権を届出債権者が争うとき、調査期間の末日から1カ月の査定申立期間内に再生債権の査定申立てを行うとされています(民事再生法105条)。会社更生でも、否認に対抗するために裁判所手続へ進む場合、調査期間末日等を起点とする不変期間が実務上の分岐点になるため、通知受領時点で「いつまでに何を出すか」を逆算で決める必要があります。

否認通知を受けた直後に行うべき期限対応
  • 否認理由を類型化し、追加で出せる資料の有無を当日中に棚卸しします。
  • 調査期間末日や特別調査期日など、起算点になり得る日付を社内カレンダーに固定します。
  • 裁判所提出が必要な手続に移る可能性がある場合は、申立書面の作成担当と決裁ルートを確定します。

議決権と更生計画案への反映

更生計画案は、認否を経て整理された債権額を基礎に、権利変更と弁済条件を設計します。更生債権は内部的に、優先的更生債権/一般の更生債権/約定劣後更生債権に区分され得て(会社更生法168条1項2号、会社更生法43条4項1号:会社更生法第168条、会社更生法第43条)、更生計画ではこれらの間で公正かつ衡平な差を設けることが予定されています。この区分は、議決権行使の場面でも「どの組に属するか」「どの条件で扱われるか」という形で実務影響が出ます。

また、担保付の債権は更生担保権として、更生手続開始時の時価を前提に担保される範囲が画されるため(会社更生法2条10項:会社更生法第2条)、担保評価の資料整備が不十分だと、計画案上の回収見通しが読みにくくなります。議決権を適切に行使するためにも、認否書で確定した額が自社の理解と一致しているか、担保区分が正しいかを確認し、必要なら早い段階で補正・争点整理に入ることが重要です。

一部否認されたときの分かれ目――満額主張を続けるか、認められた範囲で回収確度を優先するか

一部否認は、届出実務で最も起きやすい分岐です。争う場合は裁判所手続(査定等)に移行し得ますが、手続には期限があり、民事再生では調査期間末日から1カ月の査定申立期間という整理が示されています(民事再生法105条)。会社更生でも同様に、期限徒過が実務上致命的になるため、「争うか受けるか」の判断は、否認理由と立証可能性を短期間で評価して決める必要があります。

方針判断のための実務チェックポイント
  • 否認理由が「資料不足」か「法的評価(担保・相殺・劣後)」かで、補強難易度が変わります。
  • 追加資料の入手可能性(社内メール、相手方発信FAX、通帳、納品受領等)を棚卸しします。
  • 更生計画での区分(優先的更生債権、約定劣後更生債権等)に影響する争点かを確認します(会社更生法第168条、会社更生法第43条)。

他手続との違いと留意点

民事再生と破産との違い

会社更生と民事再生はいずれも再建型ですが、制度設計と権利制約の出方が異なります。民事再生は、原則として債務者が財産の管理処分権を持ったまま進められ、株式会社以外の形態の会社や中小企業、個人も利用できると整理されています。一方、会社更生は、裁判所が手続を主宰し(会社更生法5条:会社更生法第5条)、開始後は強制執行等が禁止・中止されるなどの制約が強く(会社更生法134条3項:会社更生法第134条)、手続内での統一処理色が強いのが特徴です。

また、利息・遅延損害金の扱いについて、民事再生では開始後利息損害金も再生債権とされ得る(民事再生法84条1項・2項)一方で、再生計画案書式では開始決定日以降を全額免除とする運用が多い、という実務整理があります。更生手続で届出書を作る際も、類似の論点(開始前分と開始後分の分け方、計画での扱い)で誤解が起きやすいので、案内文の注意書きと管財人の運用を優先して整合させる必要があります。

保全管理人がいる場面は?

保全管理人は、開始決定前の段階で、財産散逸や偏頗弁済のリスクに対応するため裁判所が選任し得る機関です。裁判所は更生手続開始決定などの裁判を行い手続を主宰する立場にあるため(会社更生法5条:会社更生法第5条)、開始決定前の保全局面でも、裁判所の指示・通知文言を起点に動くことになります。

保全管理人が就いた局面では、正式な届出期間が始まっていないことが多い一方で、開始決定後の届出に備えて準備できる時間でもあります。特に、担保が絡む場合は、更生担保権の定義が「開始時の時価を前提に担保される範囲」となるため(会社更生法2条10項:会社更生法第2条)、担保関係資料(担保契約、対象財産の特定、実質担保の有無)をこの段階で点検しておくと、開始後の届出作業を短縮できます。

よくある質問

更生債権届出書を出さないとどうなりますか?

更生債権は、会社更生法2条8項が定義する枠内で手続に組み込まれる権利であり(会社更生法第2条)、開始後は強制執行等が禁止・中止されるなどの制約のもとで処理されます(会社更生法134条3項:会社更生法第134条)。この構造の中で届出をしないと、少なくとも手続内で「届出債権として調査・確定され、計画に反映される」ルートから外れ、結果として弁済を受ける機会を大きく損ねます。

実務上は、相手方(更生会社)が帳簿上で債務を認識していても、債権者側の届出・疎明が弱いと認否整理に乗らず、議決権や配当の前提が整いません。例外的な救済(追完等)が問題になる場面もありますが、要件判断は厳格になりやすいため、「届出期間内の届出」を前提に社内体制を組むのが安全です。

届出後に金額の誤りへ気づいたら訂正できますか?

届出後の修正可否は、届出期間内かどうか、そして認否作業がどこまで進んでいるかに左右されます。民事再生の枠組みでは、調査期間内の異議の有無で内容・議決権が確定する(民事再生法104条1項)など、調査フェーズに入ると「後からの変更」が難しくなる整理があります。会社更生でも、管財人が照合・認否を進める以上、誤りに気づいたら早期に連絡し、訂正の要否と方法(訂正届、追加資料提出、計算表差替え等)を確認するのが実務的です。

特に、利息・遅延損害金や相殺・入金の反映漏れは、否認や一部否認の原因になりやすいので、訂正時は「何を、どの根拠で、どれだけ動かすのか」を1枚で説明できる形にして提出すると、管財人側の再計算負担を減らせます。

更生担保権は更生債権と別に届出が必要ですか?

更生担保権は、更生債権と定義・扱いが異なるため(会社更生法2条10項と2条8項:会社更生法第2条)、同一取引から生じる債権であっても、担保で担保される範囲と、担保を超える無担保部分を区分して整理する必要があります。更生担保権の担保権は「特別の先取特権、質権、抵当権および商事留置権」に限られる点も、届出書の区分判断で重要です。

また、実務上は、所有権留保、仮登記担保、譲渡担保といった実質担保が「担保権」に含まれ得るという整理があるため、担保設定の有無を形式だけで判断せず、取引条件を点検してから届出区分を決めることが重要です。

更生計画案はいつ出され、議決権はどう使いますか?

更生計画案は、届出と調査・認否の進行を踏まえて作成されます。更生債権は優先的更生債権/一般の更生債権/約定劣後更生債権に区分され得て(会社更生法168条1項2号、会社更生法43条4項1号:会社更生法第168条、会社更生法第43条)、更生計画では一般の更生債権との間に公正かつ衡平な差を設けることが予定されています。この区分と確定額が、計画条件と議決権に実務上影響します。

議決権行使の前提としては、認否書等で自社債権がどの額・どの区分で整理されたかを確認し、担保評価(更生担保権は開始時の時価を前提に担保範囲が画されます:会社更生法2条10項(会社更生法第2条))に齟齬がないかも点検します。そのうえで、送付される計画案の権利変更・弁済条件が、自社の回収見込みと整合するかを評価し、賛否の意思決定に落とし込みます。

更生債権届出書への対応で次にすべきこと

更生債権届出書は、届出の有無と内容が、その後の認否・議決権・更生計画での弁済条件に直結するため、まずは「開始前原因か」「担保付か(更生担保権か)」「開始決定日前後で混在していないか」を軸に棚卸しします。届出では、金額を総額で置かず、元本・利息・遅延損害金・控除要素を分解し、発生原因と弁済状況を資料番号で追える形にして、管財人の調査に耐える構成に整えます。否認や一部否認が出た場合は、調査期間末日を起点に「調査期間の末日から1カ月の査定申立期間」(民事再生法105条)のような不変期間が実務上の分岐点になり得るため、社内カレンダーと決裁ルートを先に固定しておくことが重要です。次のアクションとしては、案内文で指定された届出期間と提出先の運用を確認しつつ、法務・経理・営業で証拠と計算表を突合し、照会対応の窓口を一元化します。個別案件で担保評価や相殺、利息損害金の扱いが争点になり得る場合は、早い段階で専門家に相談し、期限徒過や過大・過少届出のリスクを避けるのが安全です。



Baseconnect株式会社
サイト運営会社

本メディアは、「企業が経営リスクを正しく知り、素早く動けるように」という想いから、Baseconnect株式会社が運営しています。

当社は、日本最大級の法人データベース「Musubu」において国内1200万件超の企業情報を掲げ、企業の変化の兆しを捉える情報基盤を整備しています。

加えて、与信管理・コンプライアンスチェック・法人確認を支援する「Riskdog」では、年間20億件のリスク情報をAI処理、日々4000以上のニュース媒体を自動取得、1.8億件のデータベース等を活用し、取引先の倒産・不正等の兆候の早期把握を支援しています。

記事URLをコピーしました