QRMとは医薬品で何か|ICH Q9とGMP対応の進め方を整理
QRM(品質リスクマネジメント)は、医薬品の製造・品質システムの中で「どこまでを、どの深さで」運用に組み込むべきかが判断しづらく、ICH Q9やGMP要件との関係整理が追いつかないまま現場対応が先行しがちです。位置づけが曖昧なままだと、逸脱・変更・CAPAや査察対応で説明可能性が不足し、過剰管理と重大リスクの見落としが同時に起きやすくなります。特に、2018年6月5日付の調査報告書で示されたような「品質保証を優先する」方針を、判断基準・会議体・記録へ落とし込めるかが運用の分岐点になります。以下では、QRMの判断材料として定義・位置づけ・GMPへの接続点を示します。
QRMとは医薬品で何か
品質リスクマネジメントの定義と目的
品質リスクマネジメント(QRM)は、医薬品の品質と患者安全に影響する可能性のある危害(ハザード)を、入手可能な科学的知見とデータに基づき特定し、評価し、管理し、見直すための枠組みです。問題が起きてから個別に対処するのではなく、組織としてPDCAサイクルで回し、意思決定の再現性を高める点に実務上の価値があります。
また、評価作業にはどうしても判断が入り込みます。例えば「複数の見積手法や仮定、データがある場合、その選択・適用に経営者の判断を伴う」ことがあり、その解釈と選択が与える影響の程度まで含めて検討すべき、という整理が実務指針として示されています。したがってQRMの目的は、単なる文書整備ではなく、限られたリソースを重大リスクへ優先配分する合理的な判断(何を厚く管理し、何を簡素化できるか)を継続的に実行することにあります。
- 患者安全に直結するリスクを早期に見つけて優先的に低減します。
- 品質(Q)・コスト(C)・納期(D)を同時に見える化し、品質を最優先にした判断を可能にします。
- リスクの大小に応じて管理の深さを調整し、形式主義や過剰管理を避けます。
- 「どのデータ・仮定を採用したか」を記録し、説明可能性を高めます。
患者と製品ライフサイクルでみる位置づけ
QRMは、研究開発、技術移管、商業生産、市販後までの製品ライフサイクル全体を貫いて患者を守るための判断軸です。研究開発で得られた知識が、技術移管・工場立上げで途切れると、工程条件の取り違えや想定外の変動要因により、逸脱や供給停止につながり得ます。
参照事例では、量産時の工程能力指数を製造部門だけでなく開発・技術・品質保証・営業までが共有・分析し、顧客との受注交渉にも用いるべきだと提言されています(2018年6月29日付 株式会社寺岡製作所 品質問題調査委員会作成 調査報告書36頁)。医薬品でも、製造可能性・管理可能性を、部門横断で同じデータに基づき判断することは、患者安全だけでなく安定供給(計画生産、在庫化、平準化)にも直結します。
- 研究開発で重要品質特性(CQA)に影響する要因を仮説立てし、後工程の設計前提として残します。
- 技術移管でスケール差・設備差に起因するリスクを洗い出し、移管条件と管理戦略に落とし込みます。
- 商業生産で逸脱・変更・CAPAの優先度付けに使い、データに基づいて見直し続けます。
- 顧客要求が実施困難な水準の場合でも、品質保証を優先する方針を顧客と共有できる関係性を構築します(2018年6月5日付 宇部興産株式会社 調査委員会作成 調査報告書130頁)。
ICH Q9と国内ガイドライン
ICH Q9(R1)の基本原則と構成
ICH Q9(R1)は、品質リスクマネジメントを「患者保護」と「科学的根拠に基づく意思決定」のもとで運用する考え方として整理し、評価から見直しまでの一連のプロセスを示しています。実務上は、評価者の経験だけに依存した「それっぽい点数付け」や、結論ありきの形式的な資料作成に陥ると、重要リスクを見逃す原因になります。
- リスクアセスメント:危害の特定・分析・評価を行います。
- リスクコントロール:低減策を選択し、残留リスクの受容可否を判断します。
- リスクコミュニケーション:部門間・階層間で前提、判断理由、残課題を共有します。
- リスクレビュー:新データや逸脱傾向に応じ、判断の妥当性を定期的に見直します。
なお、リスクマネジメントは単発のイベントではなく、PDCAサイクルとして回すことが目的である点を明確にしておくと、運用の形骸化を防ぎやすくなります。
厚労省・PMDAの位置づけと適用範囲
国内の医薬品規制では、QRMはGMPの運用と切り離せない実装要素として扱われ、当局対応(適合性調査、査察、承認審査)でも、手順書の有無だけでなく運用実態と説明可能性が問われます。したがって、製造所内の作業管理に限定せず、品質システムとして広い範囲に適用する前提で設計する必要があります。
にある「事象・原因・対策」を品質(Q)・コスト(C)・納期(D)で整理する枠組みは、医薬品の現場でも、変更・逸脱の検討をMECEに整理し、真因(根本原因)へ到達するための補助線として利用できます。
- Q(品質):規格外、交差汚染、データインテグリティ、バリデーション逸脱など患者安全に直結する論点を優先します。
- C(コスト):対策コストや廃棄損などを見える化しますが、品質判断を置き換えない前提で扱います。
- D(スケジュール):出荷・納期の影響を評価しつつ、品質保証が優先されるべきという共通認識を社内外で徹底します(宇部興産の提言:2018年6月5日付 調査報告書130頁)。
ICH Q9(R1)改訂で判断が分かれるバイアス管理と主観の扱い方
ICH Q9(R1)で重要性が増した論点の一つが、評価者の主観性(バイアス)を前提にした管理です。実務では、同じデータを見ても、担当者の経験、立場、組織の空気により結論が揺れます。複数の仮定・データがあるときの選択には経営者の判断が伴い、その解釈・選択が与える影響の程度まで検討する必要がある、と整理されています。
- 使用可能だった選択肢(見積手法、仮定、データ)と、採用・不採用の理由を残します。
- 判断に影響した前提条件(適用範囲、対象バッチ・設備、データ期間など)を明記します。
- 影響の程度(患者安全・製品品質への寄与)を、評価尺度に沿って説明できる形にします。
- 経営判断を要した論点は、誰がどの情報を見てどう決めたかを追跡可能にします。
GMPでのQRMの組み込み方
GMPと品質保証で果たす役割
GMP運用にQRMを組み込む目的は、すべてを一律に厳格化することではなく、患者安全と製品品質に影響する領域へ管理資源を集中させることです。現場では、品質(Q)だけでなくコスト(C)や納期(D)の制約が常にあるため、意思決定の整理軸を持たないと、判断が属人化したり、納期優先の圧力に引きずられたりします。
参照事例では「納期の遵守よりも品質保証が優先されるべきことを社内の共通認識として徹底し、顧客とも認識を共通にする」ことが提言されています(宇部興産:2018年6月5日付 調査報告書130頁)。医薬品のQAとしては、この優先順位をQRMの判定基準・会議体・記録様式に織り込むことが、GMPの実効性を上げます。
- 重要工程・重要管理点は管理を厚くし、低リスク領域は手順を簡素化するという比例性を明文化します。
- 逸脱・変更・CAPAの判断で、Q/C/Dのうち品質(Q)を最上位に置くルールを運用に埋め込みます。
- 工程能力や逸脱傾向などのデータを、製造・開発・QA間で共有し、判断の再現性を確保します(寺岡製作所の提言:2018年6月29日付 調査報告書36頁)。
逸脱管理・変更管理・CAPAへの反映
逸脱管理・変更管理・CAPAは、QRMの結果を「次の行動」に変換する主要な仕組みです。ここで重要なのは、リスクの大小に応じて調査深度と対策優先度を決め、不要な手続き増大と重大リスクの見落としを同時に避けることです。
にある「事象・原因・対策」の枠は、逸脱票や変更申請の記載品質を上げるのに有効です。論点をMECEに整理し「真因を見つける」ことを手順に組み込むと、CAPAが表層対策で終わりにくくなります。
- 事象を定義し、品質(Q)への影響可能性を中心に一次評価(トリアージ)します。
- 原因仮説を複数立て、データで支持できるものと不確実なものを切り分けます。
- 対策案を並べ、対策が新たなリスクを生まないかを再評価したうえで優先順位を決めます。
- 実施後に有効性確認を行い、レビューで残留リスクの受容可否を再判定します。
査察で説明しやすいQRM記録にするために誰が何を承認して残すか
査察で問われやすいのは、結論そのものよりも「なぜその結論に至ったのか」を再現できるかです。したがって、QRM記録は、評価の前提・選択・承認の流れが追跡可能であることが重要です。
が示す通り、複数の見積手法・仮定・データがある場合、その選択には経営者の判断が伴い得ます。このタイプの論点は、現場レベルの評価記録だけで完結させず、誰が解釈し選択したかまで残すことで、説明可能性が上がります。
- 作成者:評価の目的、スコープ、使用したデータ、事象・原因・対策の整理、採点根拠を1つの筋で記載します。
- 参加部門:製造・QC・QA・技術等の観点差を記録し、合意形成の過程を残します。
- QA責任者:低減策の妥当性と残留リスク受容の判断を最終承認として明記します。
- 経営層:仮定やデータ選択が事業判断を伴う場合に、解釈と選択、その影響の程度をレビューし承認します。
QRMプロセスの進め方
リスク特定からリスク評価まで
リスクアセスメントは、リスク特定・リスク分析・リスク評価を区別して進めることが、後工程の意思決定の質を左右します。特に「どの事象を対象とし、何を原因候補として扱い、どんな対策に結び付けるか」を曖昧にすると、評価結果が運用に接続しません。
の実務的な整理例(事象/原因/対策、カテゴリをMECEに、真因を見つける)は、医薬品の逸脱解析や変更影響評価でもそのまま有効です。
| 観点 | 実務での確認内容 | アウトプット例 |
|---|---|---|
| 事象 | 何が起きた/起き得るかを具体化します。 | 逸脱内容、想定不具合、発生工程 |
| 原因 | 真因候補をMECEに出し、データで絞ります。 | 設備、手順、原料、環境、人、測定系 |
| 対策 | 是正・予防・検出強化などを並べ、二次リスクも確認します。 | 手順改訂、教育、追加試験、設備改修 |
リスクコントロールとレビューの回し方
リスクコントロールは、低減策の選択と残留リスク受容の判断を行い、レビューで妥当性を継続確認するプロセスです。ここで重要なのは、運用を「やりっぱなし」にしないことです。
にある通り、リスク管理はPDCAサイクルで回すことが目的として整理されています。医薬品品質システムの中では、逸脱傾向、変更の蓄積、市販後情報などで前提が変わり得るため、レビューの場を明確にし、判断の更新を前提にしておく必要があります。
- 逸脱・不適合の傾向が変化したとき(頻度増加、パターン変化)。
- 変更管理で工程・設備・原料・試験法が変わったとき。
- 顧客要求や受託条件が変化し、品質(Q)・コスト(C)・納期(D)の前提が動いたとき。
- 工程能力の共有・分析により、管理戦略の過不足が見えたとき(寺岡製作所の提言:2018年6月29日付 調査報告書36頁)。
初回導入でつまずきやすい『評価対象が広すぎる』会社の切り分け基準
初回導入で対象が広がりすぎる場合、QRMが「全部を同じ深さで評価する作業」になって失速しがちです。切り分けの基本は、患者安全・製品品質に直結する領域から着手し、段階的に広げることです。
250人未満の事業場に関する記述として、計画的生産や在庫化により業務平準化が可能であること、また作業の難易度を下げて新人を早期に戦力化する設計が有効であることが示されています。医薬品でも、対象範囲を無理に広げるより、まずは「その日から回せる評価単位」に分解し、運用の定着を優先する考え方が現実的です。
- 重要品質特性(CQA)へ影響する工程・パラメータを最優先にします。
- 過去に逸脱が頻発した工程、品質苦情があった製品群を初期スコープに入れます。
- 手順が定型で難易度を下げられる作業は、簡易評価に留め、重点領域へ人を回します(小規模事業場の運用設計の示唆)。
- 受託・納期圧力が強い領域ほど、品質優先を担保する判断点(会議体・承認点)を先に置きます(宇部興産の提言:2018年6月5日付 調査報告書130頁)。
QRMで使う評価手法
FMEA・FTA・HACCPの特徴と使い分け
FMEA・FTA・HACCPは、どれもリスクを扱う枠組みですが、視点が異なるため「何を明らかにしたいか」で選びます。いずれの手法でも、事象・原因・対策を混同すると結論がぶれるため、にあるような整理枠(事象/原因/対策、MECE、真因)を手法の運用ルールとして併用すると安定します。
| 手法 | 主な狙い | 医薬品での使いどころ(例) |
|---|---|---|
| FMEA | 工程・要素ごとの故障モードを網羅し、優先度を付けます。 | 新工程立上げ、変更前後のリスク比較 |
| FTA | 重大なトップ事象から原因を論理的に掘り下げます。 | 重大逸脱の真因解析、再発防止の論理検証 |
| HACCP | 危害要因と重要管理点を定め、継続監視に接続します。 | 交差汚染・混入の管理点設計、衛生管理の監視体系 |
製造プロセスと研究開発での選び方
研究開発と製造では、データ量と意思決定の目的が違うため、同じ手法を同じ粒度で適用すると無理が出ます。開発初期は仮説駆動で粗い評価を回し、製造段階では実績データ(逸脱履歴、傾向、工程能力など)を使って精度を上げる設計が現実的です。
参照事例では、量産の工程能力指数を部門横断で共有・分析し、顧客との受注判断に用いるべきと提言されています(寺岡製作所:2018年6月29日付 調査報告書36頁)。医薬品の受託製造でも、工程能力や管理余力を踏まえた判断は、無理な受託による品質事故を避ける観点で重要です。
- 研究開発:定性的なスクリーニングで論点を絞り、実験データが揃うにつれて詳細化します。
- 技術移管:スケール差・設備差の「事象/原因/対策」を整理し、移管条件に反映します。
- 商業生産:逸脱傾向や工程能力などの実績を使い、FMEAの優先度付けやFTAの真因解析を強化します。
スコア化する場合に先に決めたい重大性・発生確率・検出性の採点基準
スコア化(例:重大性・発生確率・検出性の組合せ)は便利ですが、採点基準が曖昧だと主観が増幅されます。が指摘するように、複数の見積手法や仮定、データがある場合、その選択に判断が入ります。したがって、スコアの前に「どのデータを採用し、どの仮定を置いたか」を固定するルールが必要です。
- 重大性は、患者影響と品質規格適合性への影響を切り分け、どちらを優先するか(通常は患者)を明文化します。
- 発生確率は、手元にある実績データ(逸脱履歴、傾向、工程能力等)を採用する優先順位を決めます。
- 検出性は、検出手段(工程内監視、試験、レビュー)の限界を前提条件として記録します。
- 採点に使う見積手法・仮定・データの候補が複数ある場合、採用理由と不確実性を残します(主観性の管理)。
QRMを定着させる運用体制
研究開発・技術移管での活用ポイント
研究開発・技術移管でQRMを使う狙いは、工場に問題を持ち込まないことと、持ち込む場合も「どのリスクをどの管理で受けるか」を合意した状態で移すことです。
参照事例では、量産時の工程能力指数を、製造だけでなく開発・技術・品質保証・営業が共有・分析すべきとされています(寺岡製作所:2018年6月29日付 調査報告書36頁)。医薬品の技術移管でも、工程の成立性(capability)をデータで共有しないと、受託条件・生産計画・品質保証のいずれも不安定化します。
- 工程能力や逸脱傾向など、判断に使うデータを部門間で同じ版で共有します。
- 「事象/原因/対策」の形でスケールアップリスクを整理し、移管後の監視項目に落とします。
- 顧客要求が過大な場合に、品質保証を優先した対応を顧客と共有できる関係づくりを行います(宇部興産:2018年6月5日付 調査報告書130頁)。
教育・文書管理・責任体制の整え方
QRMを定着させるには、教育・文書管理・責任体制をセットで整えないと、ツールだけが残って形骸化します。特にスコアリングや評価書式は、ルールがないと主観で埋まりやすく、後から説明できなくなります。
にある小規模事業場の運用設計の示唆(計画生産・在庫化による平準化、決まったことを確実に実行させ短期で戦力化する)は、QRM教育にも応用できます。初期は高度な分析技法を一気に教えるより、まず「決めたルールで同じように判断・記録できる」状態を作る方が、現場実装に有効です。
- 教育:自社事例を使い、「事象/原因/対策」整理とMECEでの原因出し、真因特定の型を反復します。
- 文書管理:採用した仮定・データ・見積手法の版管理を行い、改訂差分が追えるようにします。
- 責任体制:評価の作成責任、QAの最終承認、経営判断が必要な論点(データ選択等)の承認点を分けます。
経営層・QA責任者・薬事担当で異なる関与範囲と会議体の分け方
QRMを機能させるには、経営層・QA責任者・薬事担当の役割を分け、会議体も目的別に設計する必要があります。特に、仮定やデータ選択が変わると結論が動く領域では、誰が最終的に選択したかを明確にしないと、判断の責任が宙に浮きます。
が示す通り、複数の見積手法・仮定・データがある場合の選択は経営者の判断を伴い得ます。したがって「現場で完結するQRM」と「経営判断を要するQRM」を切り分け、上程基準を運用ルールとして持つことが重要です。
| 役割 | 主な関与 | 会議体・承認の考え方 |
|---|---|---|
| 経営層 | データ・仮定の選択が事業判断を伴う論点、資源配分、品質優先の方針徹底 | 見積手法や前提が複数ある場合の選択と影響度のレビューを行います(主観性の管理)。 |
| QA責任者 | 個別の逸脱・変更・CAPAの技術的妥当性、残留リスク受容、出荷判定 | 品質(Q)を最優先とする判断基準で承認し、記録の一貫性を担保します。 |
| 薬事担当 | 承認書記載事項への影響確認、当局手続き要否の判断 | 変更による規制影響を整理し、必要な手続きを遅滞なく進めます。 |
よくある質問
医薬品のQRMは小規模製造所や受託製造会社にも必要ですか?
必要です。規模や受託形態にかかわらず、患者に届く医薬品の品質を守る責任は同じであり、QRMはその意思決定の型になります。
には「250人未満の事業場」の運用に関する示唆として、計画生産や在庫化により業務の平準化が可能であること、また作業難易度を下げて新人を早期に戦力化できることが述べられています。小規模製造所でも、最初から高度な手法に偏らず、運用可能な範囲で手順化し、PDCAで回しながら拡張する設計が現実的です。
- 重要工程に絞ったQRMから始め、業務平準化(計画生産・在庫化等)と両立させます。
- 顧客要求が過大な場合でも品質保証を優先する認識を社内外で共有します(宇部興産:2018年6月5日付 調査報告書130頁)。
- 工程能力などのデータを、製造・開発・QA・営業を含め共有し、無理な受託判断を避けます(寺岡製作所:2018年6月29日付 調査報告書36頁)。
品質リスクマネジメントの記録はどこまで文書化すべきですか?
第三者が後から追跡して、判断の妥当性を再現できる水準まで文書化します。結論だけではなく、前提と根拠が分かることが重要です。
が示す「複数の見積手法・仮定・データがある場合の選択は経営者の判断を伴い得る」という点は、査察・監査で質問になりやすい論点です。したがって、選択肢が複数あった場合は、採用理由と影響度の評価まで含めて残す運用が有効です。
- 目的・スコープ・参加者(部門と役割)を明記します。
- 事象/原因/対策の整理と、原因候補をMECEに扱った形跡を残します。
- 採用したデータ、仮定、見積手法と、その選択理由・不確実性を記載します(主観性の管理)。
- 低減策、残留リスク受容理由、承認者(QA・必要に応じ経営層)を紐づけます。
FMEAとFTAはどの場面で使い分けますか?
予防的に漏れなく洗い出して優先順位付けをしたい場面ではFMEA、特定の重大事象について原因を論理的に掘り下げたい場面ではFTAが適しています。
にある「事象/原因/対策」整理や「真因を見つける」という考え方は、どちらの手法でも共通して重要です。FMEAでは事象(故障モード)を増やしすぎない整理が、FTAでは原因をMECEに出し切る整理が、分析品質を左右します。
- FMEA:工程・要素ごとの事象を並べ、優先度付けして未然防止へつなげます。
- FTA:重大事象を頂点に置き、原因をMECEに分解して真因候補を絞ります。
逸脱管理や変更管理にQRMを後付けできますか?
可能です。QRMは独立した別システムというより、逸脱・変更・CAPAの判断をデータに基づいて一貫させるための骨格として後付けできます。
にある「事象/原因/対策」の枠を、逸脱票・変更申請・CAPA様式に組み込むと、後付けでも運用が揃いやすくなります。また、複数の仮定・データがある場合の選択が経営判断を伴い得る点を踏まえ、上程基準を決めておくと混乱を防げます。
- 逸脱・変更様式に「事象/原因/対策」と一次リスク判定(品質影響中心)の欄を追加します。
- 原因候補のMECE整理と真因特定を必須手順として明文化します。
- 仮定・データ選択が複数ある場合の承認点(QAで完結/経営上程)を設定します。
- 運用結果をPDCAでレビューし、基準や様式を改訂していきます。
QRMへの対応で次にすべきこと
医薬品分野のQRMは、定義や手法の理解に留まらず、ICH Q9(R1)の考え方をGMPの意思決定(逸脱・変更・CAPA、査察対応)へ一貫して接続できるかが要点です。運用設計では、品質(Q)を最上位に置く判断基準を明文化し、2018年6月5日付の提言にあるような「品質保証を優先する」方針が、会議体・承認点・記録に反映されているかを確認してください。あわせて、主観性(バイアス)を前提に、複数の見積手法・仮定・データがある場合に誰が何を根拠に選択したかを追跡できる形で残すことが、説明可能性の底上げにつながります。次のアクションとしては、自社の逸脱票・変更申請・CAPA様式が「事象/原因/対策」を同じ骨格で扱えるかを点検し、QA責任者と経営層の関与範囲(上程基準)をすり合わせるのが実務的です。個別案件の受容可否や当局対応の要否は事情で変わるため、必要に応じて社内の薬事・品質保証、または専門家に相談して判断してください。

