経営

非公開会社で取締役会設置会社にするには|要件と機関設計の選び方を確認

経営リスクナビ編集部

非公開会社の取締役会は、譲渡制限株式を発行して「株主総会+取締役のみ」で運営している(または設立予定の)段階でも、将来の外部株主受入れや事業拡大を見据えて検討テーマになりやすい機関設計です。取締役会を置くと取締役を三人以上選任する必要があるほか、原則として監査役設置も絡み、会議運営や議事録整備などの実務負担が増えます。逆に、前提条件を曖昧にしたまま進めると、資金調達や機関変更の局面で手続不備・設計の不整合が表面化し、説明や登記対応に時間を取られがちです。以下では、取締役会設置の判断材料として要件・権限配分・実務負担を示します。

目次

非公開会社と取締役会の前提

非公開会社と公開会社の違い

非公開会社と公開会社の区分は、株式の譲渡制限の有無で決まります。

会社法上の「非公開会社」とは、発行するすべての株式について「譲渡による取得には会社の承認が必要」とする旨を定款で定めている株式会社をいいます。一方、「公開会社」は、発行する株式の全部または一部について譲渡制限を設けていない株式会社です。

非公開会社は、株式の外部流出を抑え、想定しない第三者による経営関与を防ぎやすいため、身内企業・同族経営などで広く採用されています。他方、公開会社は株式の自由譲渡性により投資回収が容易になる反面、経営陣の意図しない人物に株式を取得されるリスクを常に抱える点に、構造上の違いがあります。

譲渡制限が機関設計に与える影響

株式の譲渡制限は、会社の機関設計(ガバナンス体制)に直結します。

公開会社は株式が広く流通し得るため、株主や取引先の保護の観点から、取締役会の設置が法律上義務付けられています。また、取締役会を設置する公開会社では、原則として監査役の設置も強く要請されます。

これに対し非公開会社は、株主構成が固定化しやすいことから、機関設計の選択肢が広く認められています。たとえば、取締役会を置かず取締役のみで運営する形、取締役が一人の体制、監査役を置かない形も取り得ます。譲渡制限を設けることで、自社の実情に合った簡素で合理的な組織運営を設計しやすい点が、実務上の大きなメリットです。

取締役会設置会社の機関設計

株式会社の基本機関と選択肢

株式会社で法律上必須となる機関は、株主総会と取締役の二つです。

その上で、会社法では、定款の定めにより次の機関を任意に設け、組み合わせることができます。

任意に追加できる代表的な機関(例)
  • 取締役会(取締役間の合議体として重要事項を決定し、業務執行を監督する機関)
  • 監査役(取締役の職務執行を監査する機関)
  • 会計参与(公認会計士・税理士等が取締役と共同で計算書類を作成する機関)
  • 会計監査人(公認会計士・監査法人が計算書類等の会計監査を行う機関)

非公開会社では、取締役一人のみの最小構成から、取締役会+監査役といった体制まで幅があります。意思決定の迅速性、監督機能の強さ、役員人材の確保可能性(2〜3名体制で回るか)を踏まえ、成長段階に応じて設計することが重要です。

非公開会社で取締役会を置ける場合

非公開会社は、法律上の設置義務がない場合でも、定款に定めることで任意に取締役会を設置できます。意思決定の手続きを明確にし、業務執行への監督(チェック)を強めたいときに、取締役会は選択肢になります。

ただし、非公開会社で取締役会を設置する場合は、少なくとも次を満たす必要があります。

非公開会社が取締役会を設置する際の基本要件
  • 取締役を三人以上選任すること
  • 原則として監査役を設置すること(ただし公開会社でない会計参与設置会社には監査役を置かない特例がある)

取締役会を置くと、会議運営・決議・議事録整備などの実務負担が増える一方、権限分配と監督の枠組みが明確になります。経営管理の方針と、確保できる役員リソースを合わせて検討し、機関構成を固めることが重要です。

監査役と会計監査人の組合せ要件

機関設計では、会計監査人を置くかどうかが、監査体制の設計に大きく影響します。

会社法上、会計監査人を設置する株式会社は、原則として監査役を置かなければなりません。会計監査人は計算書類等の会計監査を専門に担当する一方、監査役は取締役の職務執行(業務面の監査も含む)を担うため、制度として併存が要請される整理です。

非公開会社でも、計算書類の外部信用を高める目的で、公認会計士や監査法人を会計監査人として置く場合には、同時に監査役を選任することが法的な前提になります。会計監査と業務監査を組み合わせることで、統治構造の適正性を高めやすくなります。

会計参与を置くなら監査役を省略できるか|非公開会社で分かれる設計条件

非公開会社が取締役会を設置する場合、監査役を省略できるかは、会計参与の設置有無で分かれます。

取締役会設置会社は原則として監査役を置く必要がありますが、公開会社でない会計参与設置会社については、例外として監査役を置かない機関設計が認められています。

会計参与は、公認会計士や税理士などの会計専門家が、取締役と共同して計算書類を作成する機関です。非公開会社では、会計参与により財務計算の正確性が担保されることを前提に、監査役の選任負担を軽減できるよう特例が設けられています。実務では、定款変更と専門家との契約関係の整備をセットで進め、スリムな体制を目指すことになります。

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取締役会設置会社の権限配分

取締役と代表取締役の人数要件

取締役会設置会社の員数要件は、会社法上明確です。

取締役会設置会社の人数要件(基本)
  • 取締役会を設置する株式会社では取締役を三人以上選任すること
  • 取締役会は取締役の中から代表取締役を一人以上選定すること

代表取締役の人数に上限はなく、二人以上を選定して、それぞれが代表権を行使する体制も可能です。

一方で、取締役会を置かない非公開会社では取締役は一人で足り、代表取締役の選定方法も、定款・互選・株主総会決議など、比較的柔軟に設計できます。自社の規模と統治目的に応じて、必要な人員と役割分担を先に決めることが実務的です。

取締役会の決議事項と業務執行

取締役会設置会社では、業務執行の決定権限が、取締役会と個々の取締役に整理されます。取締役会が担う中核は、会社全体の重要な意思決定と監督です。

取締役会の基本的な役割
  • 会社全体の業務執行の決定
  • 取締役の職務執行の監督
  • 代表取締役の選定と解職

また、重要な財産の処分、多額の借財、重要な使用人の選任・解任などは、取締役に決定を委任することができず、取締役会自身の決議事項とされています。

代表取締役や業務執行取締役は、取締役会の決議に基づいて具体的な業務を決定・執行します。さらに、業務執行を担当する取締役は、三か月に一回以上、自己の職務執行状況を取締役会へ報告する義務があります。こうした枠組みにより、透明性のある運営と、牽制(チェック)が働きやすくなります。

株主総会で代表取締役を選ぶ定款にするか|オーナー会社で権限併存を検討する分かれ目

代表取締役を「誰が選ぶか」は、オーナー色の強い非公開会社では実務上重要な論点です。

原則として、取締役会設置会社では、代表取締役は取締役会決議で選定されます。他方で、非公開会社では、オーナー株主の意思をより直接に反映させたい事情もあるため、定款の定めにより株主総会で代表取締役を選任する設計が検討対象になります。

また、定款に別段の定めを置くことで、株主総会と取締役会の双方に、代表取締役の選定・解職の権限を持たせる(権限併存)設計も可能です。創業者・大株主が支配権を維持したい局面では有効になり得ますが、将来の株主構成変化や紛争リスクも踏まえ、条項設計は慎重に行う必要があります。

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非公開会社で取締役会を置く判断

取締役会を置くメリット

非公開会社が任意で取締役会を設置するメリットは、意思決定の仕組み化と対外的信用の向上に集約されます。

非公開会社が取締役会を置く主なメリット
  • 重要事項を複数取締役で協議することで経営判断の偏りを抑え、合意形成の精度を上げやすい
  • 業務執行に対する監督の枠組みが明確になり、役員間の相互牽制が働きやすい
  • 取引先・金融機関に対してガバナンス体制が整っている印象を与え、信用力を高めやすい
  • 将来の資金調達、事業承継、外部株主受入れを見据えた権限整備として先行投資になり得る

とくに、外部資本の受入れを想定する場合には、「誰が何を決め、誰が監督するか」を説明しやすくなる点が実務上の利点です。

取締役会を置くデメリット

取締役会を設置すると、制度対応と運用の負担が増えます。効果とコストが見合うかを事前に検討する必要があります。

取締役会設置による主なデメリット(実務負担)
  • 取締役を三人以上確保する必要があり、選任難度や役員報酬負担が増える
  • 原則として監査役の設置も必要になり、人件費・管理コストが増える
  • 招集手続、議事録作成、備置書類の管理など、法令に沿った事務が増える
  • 重要事項が取締役会決議事項となるため、意思決定が機動的に進まない場面が出る

オーナー経営でスピードを重視するほど、形式運用が負担になることがあります。運用しきれない取締役会は形骸化し、かえってリスク(手続不備・紛争時の説明困難)になり得るため注意が必要です。

規模と株主構成からみる判断基準

非公開会社で取締役会を置くかは、主に「規模」と「株主構成(外部株主の有無)」で整理すると判断しやすくなります。

状況 取締役会を置かない方向が合いやすい 取締役会を置く方向が合いやすい
創業初期・少人数 取締役一人など最小構成で迅速に決めたい 複数取締役で役割分担と監督を明確にしたい
株主構成 株主が経営者本人のみ等で外部の利害調整が小さい ベンチャーキャピタル等の外部株主が入り、チェックや合意形成が必要
運用体制 議事録・招集などの運用リソースを割けない 会議体運営を回せる人員・事務体制がある
規模・株主構成別の考え方(目安)

外部株主が増えるほど、所有と経営の関係が複雑になり、組織的な意思決定と監督の仕組みが求められやすくなります。

創業時は置かず資金調達前に切り替えるか|外部株主受入れの何か月前に動くべきか

創業時は取締役会を置かずに開始し、外部株主からの資金調達の前後で機関設計を切り替える運用は一般的です。初期はスピードと低コストを優先し、事業が一定規模に乗った段階で取締役会設置会社へ移行します。

切替えでは、定款変更・役員選任・登記がまとまって発生するため、資金調達のスケジュールと並行して逆算する必要があります。

取締役会設置会社へ切り替えるときの実務の流れ(概要)
  1. 株主総会の特別決議により定款変更を行う
  2. 取締役を三人以上とするため追加選任を行う
  3. 原則として監査役設置を前提に機関構成を整える(特例を使う場合は会計参与設置も含めて検討する)
  4. 必要な登記手続を行う
  5. 出資者との協議や、登記の法務窓口で提出書類・手続を事前確認する

どの程度前から動くべきかは、出資者側が求めるガバナンス水準、役員人材の確保難度、定款条項の調整内容によって変わります。実務では「短期間での切替えが難しい」こと自体がリスクになり得るため、早めに論点出しをしておくことが重要です。

大会社と機関設計変更の実務

大会社該当性と追加で必要な機関

大会社に該当すると、株式会社には追加の機関設置が法律上義務付けられます。会社法上、大会社とは、最終事業年度の貸借対照表で、資本金が五億円以上または負債の部の合計額が二百億円以上のいずれかに該当する会社です(会社法第2条)。

非公開会社であっても、大会社に該当した場合は、会計監査人を置かなければなりません。また、公開会社でない大会社が会計監査人を設置する際は、同時に監査役の設置が必要となります。

事業の急成長や資本金の増額で要件を満たした場合は、速やかに定款変更や役員選任を含む必要手続を行い、法令に適合する機関構造へ移行することが求められます。

取締役会の設置と廃止の定款変更

取締役会の設置・廃止はいずれも、定款変更が必要です。定款変更には、株主総会の特別決議(議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の三分の二以上の多数など)が求められます。

取締役会を新設するときに併せて検討する事項
  • 取締役を三人以上に増やす(員数要件を満たす)
  • 原則として監査役を置く前提で定款条項を整備する
取締役会を廃止するときに併せて検討する事項
  • 取締役の員数要件が緩和される前提で、役員構成を組み直す
  • 監査役を廃止するか、存置するかを含めて機関構成を見直す
  • 業務執行権限や代表権に関する定めを整理し直す

手続不備や登記漏れを防ぐには、議案作成(定款条文案を含む)と登記書類の準備を事前に固め、社内の決裁手順も含めて段取りを組むことが重要です。

設置後に取締役が2名以下になったらどうするか|欠員・辞任時に先に確認すべき登記と定款

取締役会設置会社で、辞任・死亡等により取締役が二人以下になった場合、取締役が三人以上必要という要件を満たせなくなり、法定の員数欠缺となります。

この場合、退任した取締役が、後任が就任するまでなお取締役としての権利義務を有することがあります。実務では、まず次を確認します。

欠員発生時に最初に確認するポイント
  • 現在の登記情報(取締役・代表取締役の登記状況)
  • 定款の員数規定や補欠規定(欠員に備えた規定があるか)

その上で、速やかに方針を決めます。

取り得る対応方針(典型例)
  • 後任取締役を選任して三人体制を回復する
  • 株主総会を開催し、取締役会を廃止する定款変更を行う

状況によっては裁判所による仮取締役の選任手続も検討対象になり、期限意識をもった対応が必要です。欠員を放置すると、意思決定・対外手続(契約締結, 金融機関対応等)に支障が出やすく、リスク管理上の重要論点になります。

譲渡承認機関を取締役会にした会社が廃止する場合の見落とし|株式譲渡の承認条項をどこまで直すか

取締役会を廃止する際に見落としやすいのが、株式の譲渡承認機関に関する定款条項です。

取締役会設置会社では、定款で「株式譲渡の承認機関は取締役会」と定めていることが多くあります。この状態で取締役会を廃止すると、定款上「存在しない機関」が承認することになり、規定の不整合が生じます。

そのため、取締役会廃止の定款変更と同時に、譲渡承認機関の条項も見直し、整合する機関へ付け替える必要があります。

譲渡承認機関条項の見直しの方向性(例)
  • 譲渡承認機関を株主総会に変更する
  • 譲渡承認機関を代表取締役など他の機関に変更する

定款全体の記載の整合性を確保し、将来の株式譲渡手続での混乱を防ぐことが、実務担当者の重要なチェックポイントです。

よくある質問

非公開会社でも上場を見据えて最初から取締役会を置くべきですか?

将来の上場を目指す場合でも、創業時点から取締役会を置くことが必須とは限りません。創業初期は取締役一人の構成で意思決定のスピードを優先し、事業モデルや組織基盤が固まった段階で取締役会設置会社へ移行する運用も有効です。

上場準備は段階的にガバナンスを求められるため、成長フェーズに合わせて機関設計を切り替えることで、初期の管理コストや運用負担を抑えつつ準備を進めやすくなります。

一人会社のまま取締役会設置会社にできますか?

株主が一人である一人会社のままでも、取締役会設置会社にすることは可能です。ただし、取締役会を設置するには取締役が三人以上必要となるため、株主以外の人物を二人以上取締役として選任しなければなりません。

「株主が一人」であることと、「取締役が三人以上必要」であることは両立しますが、役員人材の確保や報酬負担が増える点は、事前に織り込む必要があります。

取締役会設置会社では代表取締役を複数選べますか?

取締役会設置会社で代表取締役を複数選定することは、法令上問題ありません。会社法上、取締役会が取締役の中から代表取締役を選定しますが、選定人数に上限は設けられていません。

複数代表にすると、部門別の責任明確化や対外対応の分担がしやすくなる一方、各代表取締役が会社を代表して契約締結できるため、社内の意思決定ルールや対外的な表示(権限の使い分け)を整備しておくことが重要です。

機関設計は誰に相談すると進めやすいですか?

機関設計の変更や定款見直しは、企業法務に詳しい弁護士、または登記実務に強い司法書士に相談すると進めやすくなります。機関の組合せの可否判断、定款条項の整備、株主総会決議、登記まで一連の対応が必要になるためです。

また、登記については本店所在地を管轄する法務局が申請先となるため、提出書類や手続の流れは事前に確認しておくと実務が安定します。自社の経営計画や株主構成を前提に、必要なガバナンス水準をすり合わせながら進めることが重要です。

非公開会社の取締役会への対応で次にすべきこと

非公開会社は任意で取締役会を設置できますが、設置するなら取締役三人以上や(原則として)監査役設置など、機関構成が連動して増える点を先に押さえる必要があります。判断の軸は、外部株主の受入れ可能性や取引先への説明必要性と、会議運営・議事録整備を継続できる運用リソースが釣り合うかです。次のアクションとしては、①予定する取締役人数と代表取締役の選び方、②監査役を置くか(会計参与の特例を検討するか)、③株式譲渡承認機関を含む定款条項の整合性を、資金調達や組織変更のスケジュールと並べて棚卸しします。大会社要件(資本金が五億円以上または負債の部の合計額が二百億円以上)に近づく見込みがある場合は、会計監査人設置を含む将来の追加負担も織り込むことが実務上重要です。個別の設計・条文案・登記の可否は事情で変わるため、弁護士や司法書士等の専門家に前提整理を共有したうえで確認してください。



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