法務

給与差し押さえは個人再生で停止できる?いつ止まるか、手続きの流れと期間を解説

catfish_admin

給与差し押さえの通知を受け、個人再生でこの状況を止められるのか不安に感じている方もいるでしょう。このままでは手取り額が減り続け、生活の再建が困難になるおそれがあります。個人再生は、この強制執行を法的に停止させるための有効な手続きです。この記事では、個人再生で給与差し押さえを停止する具体的な流れ、必要な期間、会社への影響や注意点について詳しく解説します。

個人再生で給与差し押さえは停止可能

強制執行を止める法的な仕組み

個人再生を申し立てると、強制執行(給与差し押さえなど)を停止できる仕組みが民事再生法に定められています。給与差し押さえは、債権者が裁判所の許可を得て、債務者の給与から直接債権を回収する手続きです。

個人再生の手続きでは、段階的に差し押さえの効力を弱めていきます。まず、申立てに伴い裁判所が強制執行の中止命令を出すことができます。次に、個人再生手続の開始決定が下されると、進行中の強制執行は法律上、当然に中止されます。中止された差し押さえ分の給与は、債権者には支払われず、会社に保管されるか供託されます。

最終的に再生計画の認可決定が確定すると、強制執行そのものが効力を失い(失効)、差し押さえは完全に解除されます。このように、個人再生は給与差し押さえを法的に止め、生活再建を支援する強力な制度です。

差し押さえ停止までの期間の目安

差し押さえが停止するまでの期間は、手続きの進め方で異なります。

申立てと同時に「強制執行中止命令」を申し立てた場合、裁判所が認めればおおむね数日で中止命令が発令されます。その命令書を執行裁判所に提出すれば、速やかに差し押さえは停止します。

一方、中止命令を申し立てずに「個人再生手続の開始決定」を待つ場合は、申立てから開始決定まで1ヶ月程度かかるのが一般的です。開始決定後に執行裁判所へ上申することで、差し押さえが中止されます。

ただし、いずれの場合も差し押さえが完全に「失効」し、給与を全額受け取れるようになるのは、再生計画の認可決定が確定する約半年後になります。

申立て前の「受任通知」で差押えを回避できる可能性

弁護士に依頼し、債権者へ「受任通知」を送付することで、差し押さえを未然に防げる可能性があります。受任通知を受け取った貸金業者などは、債務者が法的な整理に入ったことを認識します。差し押さえには費用と手間がかかるため、無駄なコストを避ける目的で、強制執行の申立てを見合わせる実務上の対応が期待できます。

給与差し押さえの危険が迫っている場合、一刻も早く弁護士に依頼し、受任通知を発送してもらうことが重要です。

差し押さえ停止までの4ステップ

ステップ1:弁護士への相談と依頼

給与差し押さえを止めるには、まず弁護士に相談・依頼することが不可欠です。強制執行の停止には、専門的な法的知識と迅速な対応が求められます。弁護士に依頼すれば、直ちに債権者へ受任通知が送付され、直接の督促が止まります。弁護士は、債務状況を分析して個人再生が最適か判断し、差し押さえを止めるための手続きを並行して進めます。個人で複雑な手続きを行うのは極めて困難なため、差し押さえの兆候が見えたらすぐに専門家へ相談することが解決への第一歩です。

ステップ2:申立てと強制執行中止命令

次に、地方裁判所へ個人再生の申立てと同時に「強制執行中止命令」の申立てを行います。個人再生を申し立てただけでは、すぐに差し押さえは止まりません。申立てから手続き開始決定までの間に給与が差し押さえられ続けるのを防ぐため、この中止命令が必要になります。裁判所が中止命令を認め、その命令書を執行裁判所に提出することで、会社から債権者への支払いが一時的に停止します。この段階では差し押さえの効力は凍結されているだけであり、消滅したわけではない点に注意が必要です。

ステップ3:再生手続開始決定で中止

個人再生の申立てから約1ヶ月後、裁判所が要件を満たしていると判断すると「再生手続開始決定」を出します。この決定により、それまで行われていた給与差し押さえは、法律の規定によって当然に中止されます。ステップ2の中止命令を申し立てていなかった場合でも、この開始決定によって差し押さえの進行はストップします。この決定後、開始決定の正本を添付した上申書を執行裁判所に提出し、正式に中止の手続きを行います。

ステップ4:再生計画認可決定で失効

最終ステップとして、裁判所による「再生計画認可決定」が確定すると、給与差し押さえの効力は完全に失われます(失効)。認可決定の確定は、申立てから約半年後が目安です。差し押さえが失効した後、執行裁判所に対して差押命令の取り消しを求めることで、会社に保管されていた給与が債務者に返還されます。これ以降は、給与を満額受け取れるようになり、差し押さえの制約から完全に解放されます。

差し押さえ停止に関する注意点

中止後も給与はすぐには受け取れない

強制執行が「中止」されても、差し押さえ対象の給与をすぐに受け取れるわけではありません。中止は手続きの一時停止に過ぎず、差し押さえの効力自体は残っているためです。会社から債権者への支払いは止まりますが、差し押さえ分の給与は債務者にも支払われず、会社内で保管されるか、法務局に供託されます。この保管された給与が手元に戻るのは、再生計画認可決定が確定し、差し押さえが「失効」した後です。

申立てから開始決定までの期間

個人再生の申立てから実際に「開始決定」が出るまでには、通常1ヶ月程度の期間があります。この期間は、裁判所が提出書類を審査するために必要です。この「空白期間」に債権者が差し押さえを実行するリスクがあるため、申立てと同時に強制執行中止命令を申し立てることが、生活を守る上で重要になります。

差押禁止債権の範囲は変わらない

個人再生手続きを行っても、法律で定められた差し押さえ禁止の範囲は変わりません。差し押さえが可能なのは、原則として民事執行法で定められた以下の範囲です。

項目 差し押さえ対象額
手取り月額が44万円以下の場合 手取り額の4分の1
手取り月額が44万円を超える場合 33万円を超えた全額
給与の差し押さえ対象範囲

個人再生は、この差し押さえの執行を止める手続きであり、差し押さえ可能な金額の計算基準自体を変更するものではありません。

プールされた給与を早期に受け取るための方法はあるか

例外的な制度として、会社に保管された給与を早期に受け取るための「強制執行取消命令」があります。再生手続開始決定後、差し押さえの継続が生活や再生計画の遂行に著しい支障をきたす場合に、裁判所に申し立てることができます。ただし、これが認められる要件は非常に厳しく、生活が困窮するなどの切迫した事情を証明する必要があります。制度はありますが、利用のハードルは高いと認識しておくべきです。

個人再生でも止められない債務

税金や社会保険料などの公租公課

税金や社会保険料などの公租公課の滞納は、個人再生手続きでは止められません。これらは「一般優先債権」とされ、裁判所の手続きとは別に、役所が独自の権限で給与などを差し押さえる「滞納処分」が可能です。個人再生の開始決定や中止命令をもってしても、この滞納処分を止める効力はありません。また、税金などが減額されることもないため、役所の窓口で直接、分割納付などの相談をする必要があります。

養育費や婚姻費用など

離婚に伴う養育費や婚姻費用の未払いも、個人再生では減額されません。これらは「非減免債権」として法律で保護されており、支払い義務は継続します。養育費などを理由とする給与差し押さえは、手取り額の2分の1までが対象となり、一般の借金よりも差し押さえ範囲が広くなっています。この差し押さえを止めるには、個人再生とは別に、家庭裁判所での減額調停などを検討する必要があります。

会社への影響と適切な対処法

会社に個人再生が知られる経緯

個人再生の手続き自体は会社に通知されませんが、以下のような経緯で知られる可能性があります。

会社に知られる主なケース
  • 裁判所からの「債権差押命令」が会社に届いた場合
  • 会社から借金(従業員貸付など)があり、会社が債権者となる場合
  • 申立てに必要な「退職金見込額証明書」の発行を会社に依頼した場合

差し押さえを理由とした解雇の可否

給与の差し押さえや個人再生を理由に従業員を解雇することは、法律上認められていません。借金は私生活上の問題であり、労働契約法が定める「客観的に合理的な理由」に該当しないためです。差し押さえによって経理担当者に事務負担が生じても、それが解雇の正当な理由にはなりません。不当な解雇や退職勧奨を受けた場合は、弁護士に相談して法的に対抗することが可能です。

会社への説明で伝えるべきこと

会社に事実が知られた場合は、誠実に対応することが重要です。隠したり嘘をついたりせず、以下の点を伝えましょう。

会社への説明のポイント
  • 迷惑をかけたことへの謝罪を率直に伝える
  • 弁護士に依頼し、個人再生という法的手続きで解決を図っていることを説明する
  • 弁護士の介入により、今後会社側の手続き負担が軽減される見込みを伝える
  • 業務に支障をきたさないこと、仕事に真摯に取り組む姿勢を明確に示す

給与担当者への具体的な説明と協力依頼のポイント

給与担当者には、今後の事務処理について具体的に説明し、協力を依頼する必要があります。まず、弁護士を通じて法的手続きを進めていることを伝え、近日中に裁判所から強制執行中止の通知が届く見込みであることを伝えます。その上で、中止後は差し押さえ分の給与を会社で保管してもらう必要がある旨を説明し、理解と協力を求めます。事前に情報共有することで、社内での実務対応がスムーズになります。

よくある質問

差し押さえられた給与は返還されますか?

はい、返還されます。個人再生の再生計画認可決定が確定すると、差し押さえの効力が完全に失われます。その後、裁判所での手続きを経て、会社に保管されていた給与は全額債務者に返還されます。ただし、手元に戻るまでには申立てから半年程度の期間がかかります。

弁護士に依頼せず自分で手続きできますか?

個人で手続きを行うことは極めて困難です。個人再生や強制執行停止の申立てには、複雑な書類作成と高度な法的知識が要求されます。特に、差し押さえが迫る状況で迅速かつ的確な対応をとることは難しく、不備があれば給与差し押さえを止められません。確実な解決のためには、弁護士への依頼が事実上必須となります。

手続き中にボーナスも差し押さえられますか?

はい、ボーナスも給与と同様に差し押さえの対象となります。法律上、ボーナス(賞与)も給与債権の一部として扱われるため、差し押さえの効力が及んでいる期間に支給されれば、毎月の給与と同じ基準(原則、手取り額の4分の1)で差し押さえられます。

家族に内緒で手続きを進められますか?

同居家族に内緒で手続きを完了させることは非常に困難です。個人再生の申立てでは、家計全体の収支を明らかにする必要があり、裁判所から配偶者の収入証明書(給与明細など)の提出を求められることが一般的です。また、手取り額の減少から家族に知られる可能性もあります。円滑な手続きのためには、事前に家族に事情を説明し、協力を得ることが望ましいです。

まとめ:個人再生で給与差し押さえを停止し、生活再建を目指す

本記事では、個人再生による給与差し押さえの停止手続きについて解説しました。個人再生を申し立て、「強制執行中止命令」を得ることで迅速に差し押さえを止めることが可能です。最終的に再生計画が認可されれば差し押さえは完全に解除され、会社に留保されていた給与も返還されます。ただし、税金や養育費といった一部の債務は個人再生手続きでは止められない点に注意が必要です。給与差し押さえの通知を受け取った場合、一刻も早い対応が生活を守る鍵となります。まずは弁護士などの専門家に相談し、ご自身の状況に合った最適な解決策を見つけることが重要です。本稿で解説した内容は一般論であり、個別の事情に応じた対応は必ず専門家にご確認ください。

Baseconnect株式会社
サイト運営会社

本メディアは、「企業が経営リスクを正しく知り、素早く動けるように」という想いから、Baseconnect株式会社が運営しています。

当社は、日本最大級の法人データベース「Musubu」において国内1200万件超の企業情報を掲げ、企業の変化の兆しを捉える情報基盤を整備しています。

加えて、与信管理・コンプライアンスチェック・法人確認を支援する「Riskdog」では、年間20億件のリスク情報をAI処理、日々4000以上のニュース媒体を自動取得、1.8億件のデータベース等を活用し、取引先の倒産・不正等の兆候の早期把握を支援しています。

記事URLをコピーしました