法務

アルバイト給料差し押さえ|会社の義務と上限額を把握する

経営リスクナビ編集部

給料差し押さえ(給与差押え)は、アルバイト・パートを多く雇用する企業や、副業をしている従業員がいる企業でも、ある日「裁判所からの送達」で突然実務対応が始まる論点です。対応を誤ると、控除のし過ぎ・控除不足や支払先の取り違えにより、債権者への未払や二重払いリスク、社内情報の過共有によるコンプライアンスリスクが生じ得ます。特に「控除後残額の4分の1」や「月額44万円/33万円」といった基準、通勤手当の扱い、送達日以降の将来分に及ぶ点を押さえないと、給与計算や現場対応が混乱します。以下では、会社が第三債務者として判断するために必要な基礎知識と実務フローを示します。

目次

給料差し押さえの基本

アルバイト賃金も差押え対象か

アルバイト・パートの賃金も、給料(給与)として差押えの対象になります。裁判所から会社(第三債務者)へ送達される債権差押命令では、差押債権目録に「給料(基本給と諸手当。ただし通勤手当を除く。)」のように記載され、雇用形態(正社員・パート・アルバイト)や支払方法(振込・手渡し)で除外されません。

特に実務では、命令書の「通勤手当を除く」という記載のとおり、通勤手当(通勤交通費)は差押え対象から外れる前提で、給与計算の基礎から切り分けます(差押債権目録の記載に沿った取扱い)。

また、差押えの効力は「本命令送達日以降支払期の到来する」給与等に及ぶのが通常で、会社は命令の送達後、差押え対象となる部分を従業員本人へ全額支払う処理を続けることはできません(将来分にも及ぶ包括差押えの考え方:民事執行法第151条)。

差押えに至る手続と発令主体

給料差押えは、債権者が申立てを行い、裁判所が債権差押命令を発令・送達して初めて会社に法的な義務が生じる手続です。実務上、命令書には差押えの対象が「給料・賞与・退職金」等として列挙され、差押債権目録により、差押えの範囲が明確化されています。

また、案件によっては、差押命令がいきなり出るのではなく、先行して「債権仮差押命令申立事件からの本執行移行」である旨が記載されることがあります(差押債権目録の記載例)。この場合でも、会社が実務対応を開始する起点は、あくまで本命令の送達です。

一方、債権者からの私的な督促や通知(裁判所名義でない文書)が届いた段階では、会社は第三債務者としての「支払先変更」や「差押控除」を開始できません。必ず、裁判所から送達された命令書(事件番号等の記載があるもの)に基づいて処理します。

給与差押え額の計算

差押可能額の上限と44万円基準

給与差押えの計算は、差押債権目録に典型的に記載されるとおり、「税金・社会保険料控除後の残額(いわゆる手取り相当額)」を基準に行います。原則として、給料(通勤手当を除く。)から所得税・住民税・社会保険料を控除した残額の4分の1が差押可能です(差押債権目録の定型)。

ただし、残額が月額44万円を超えるときは、差押禁止として保護される金額は33万円で頭打ちとなり、差押可能額は「残額−33万円」に切り替わります(差押債権目録の定型)。

原則(一般の金銭債権)の差押可能額(給与・賞与)
  • 給料(基本給+諸手当、通勤手当除く。)は、所得税・住民税・社会保険料控除後残額の4分の1(ただし月額44万円超は残額−33万円)
  • 賞与(期末手当・勤勉手当など賞与の性質を有するものを含む。)も、所得税・住民税・社会保険料控除後残額の4分の1(ただし44万円超は残額−33万円)

また、扶養義務等債権(養育費など)を請求債権として差し押さえる場合は上限が異なることがあり、差押禁止の特例として「控除後残額が166万円以下は2分の1相当額まで」「266万円超は残額−33万円まで」といった枠組みが示されています(差押禁止債権の範囲に関する整理)。会社側は、命令書・差押債権目録に「扶養義務等債権」である旨の手掛かりがあるかを確認し、判断に迷う場合は執行裁判所への確認を優先します。

手取り額に含む範囲を確認

差押え計算の基礎となる「残額」は、差押債権目録の定型どおり、原則として所得税・住民税・社会保険料を控除した後の金額です。実務上は、給与明細の控除項目のうち、どれが「法定控除」で、どれが「任意控除(労使協定・社内制度)」かを切り分けたうえで、差押えの基礎額を確定します。

とくに差押債権目録では、給料の範囲を「基本給と諸手当(ただし通勤手当を除く。)」と記載する運用が一般的です。このため、通勤手当(通勤交通費)は、給与計算上「課税・非課税」いずれの処理であっても、差押え対象から外す前提で、まず別建てで管理するのが安全です。

給与担当がまず確認する差押え計算の前提
  • 差押えの基礎は「給料(通勤手当除く。)や賞与」から所得税・住民税・社会保険料を控除した残額であること
  • 差押債権目録に「通勤手当を除く」とある場合は通勤手当を基礎額から外して計算すること
  • 控除後残額が月額44万円を超えると「残額−33万円」に切り替わること

日払いや週払いのアルバイトで月内に複数回支給があるとき、どの支給単位で上限計算するか

日払いや週払いのように支払期が「毎日」「毎週」「毎旬」などの場合、差押禁止額は民事執行法施行令の枠組みにより、支払期(支給サイクル)ごとに政令額が定められています。したがって、月内の合計額で一律に上限計算するのではなく、各支払期ごとに基礎額と差押可能額を判定します。

支払期 政令で定める額
毎月 330,000円
毎半月 165,000円
毎旬 110,000円
月の整数倍の期間ごと 330,000円に当該倍数を乗じて得た金額に相当する額
毎日 11,000円
その他の期間 11,000円に当該期間に係る日数を乗じて得た金額に相当する額
支払期ごとの政令で定める額(差押禁止額の基準)

たとえば日払いの場合は「毎日:11,000円」を基準に、週払い等の「その他の期間」は「11,000円×当該期間日数」の考え方で基準額を置き、各支給ごとに差押可能額の算定を行います。給与担当者は、命令書に記載された差押範囲(給料・諸手当・賞与等)と支給サイクルを突合し、支給単位ごとに処理する運用を整備しておく必要があります。

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会社の対応と法的義務

差押命令送達後の時系列フロー

債権差押命令が会社に送達されたら、会社は第三債務者として、命令の範囲に従って支払方法を切り替える必要があります。差押えの効力は、差押債権目録に典型的にあるとおり「本命令送達日以降支払期の到来する」給与等に及び、将来の給付にも及ぶ包括差押えが前提です(民事執行法第151条)。

送達後に最低限行う時系列対応
  1. 命令書・差押債権目録で対象を特定する(給料・賞与・退職金、通勤手当除外の有無、頭書金額に満つるまでの記載)
  2. 対象従業員の在籍・所属(例:○○支店勤務などの記載)と支払期(毎月/毎週等)を確認し、差押計算の前提を確定する
  3. 陳述催告が同封されている場合は、事実に基づき第三債務者として陳述書を作成し提出する
  4. 給与計算を切替え、控除後残額の4分の1(44万円超は残額−33万円)等を基準に差押相当額を分離管理する
  5. 取立て(債権者への支払)または競合時の供託など、命令・手続の指示に従い処理し、必要に応じて記録を残す

なお、差押債権者が第三債務者から支払を受けた場合、支払を受けた額の限度で弁済があったものとみなされ、債権者は執行裁判所へ書面で届け出る運用が整理されています(いわゆる取立届取立完了届)。会社としては、債権者側の届出の有無を理由に自己判断で処理を止めず、裁判所・債権者からの正式な書面に基づいて対応します。

第三債務者の陳述書と支払変更

陳述催告に対する陳述書は、第三債務者として「雇用・支払の有無」「差押えにかかる債権の存否」等を明らかにするための実務書面です。差押債権目録の定型(給料・賞与・退職金、通勤手当除外、控除項目、4分の1/44万円・33万円基準)に照らして、会社が実際に支払う金員の範囲を、事実ベースで整理して回答します。

陳述書でズレが出やすいポイント(差押債権目録の定型と突合)
  • 給料の範囲が「基本給と諸手当(通勤手当を除く。)」になっているか
  • 控除が「所得税・住民税・社会保険料」に限られている前提で基礎額を作れているか
  • 残額が月額44万円を超える場合に「残額−33万円」へ切替えているか
  • 賞与が「期末手当・勤勉手当など賞与の性質を有するものを含む。」として対象に入っているか

支払変更後は、差押禁止として残すべき金額(たとえば4分の3相当や33万円相当)を従業員へ支払い、差押相当額は債権者への支払・供託まで分離保管します。現場の独断で「本人が困るから」と差押相当額を上乗せ支給すると、会社が二重払いリスク(本来支払うべき相手=債権者への未払)を負うおそれがあるため、必ず統制されたルートで処理します。

送達時点で退職予定・休職中・未払い賃金がある従業員は、会社が何を陳述しどこまで支払うか

差押債権目録の定型では、差押えの対象は「本命令送達日以降支払期の到来する」給料・賞与等であり、在籍・無給休職・退職済みなどの事実により、会社の支払義務(=差押えの対象となる給与債権の有無)が変わります。

送達時点の状態別に、陳述と支払範囲を整理する観点
  • 退職済みで今後支払期の到来する給料がない場合は「対象債権なし」としてその事実を陳述する
  • 休職中で無給(支払期に支払う給料が発生しない)場合は「当該期間は支払なし」として陳述する
  • 未払い賃金があり支払期に支払う予定がある場合は「給料(通勤手当除く。)から所得税・住民税・社会保険料控除後残額」を基礎に4分の1(44万円超は残額−33万円)で差押相当額を分離する
  • 退職前に弁済が完了しない場合は、目録記載のとおり退職金から所得税及び住民税を控除した残額の4分の1(場合により2分の1類型もあり得る)を、給料・賞与と合計して頭書金額に満つるまで充当する旨の記載があるか確認する

特に「退職金が対象に含まれるか」は、差押債権目録に「退職したときは退職金から…」という形で明記されることが多く、送達後に退職予定が判明した場合は、退職金計算(税控除後残額の算定)も含めて、早期に社内で段取りを組みます。

賞与・退職金・交通費精算が混在する月に、差押え対象と対象外を給与担当が切り分ける基準

混在月の切り分けは、差押債権目録の「記載どおりに分解する」ことが基本です。目録では、給料(基本給+諸手当)については「通勤手当を除く」とされ、賞与は「期末手当、勤勉手当(その他の賞与の性質を有するものを含む。)」として扱われ、退職時には退職金も対象化する構造が一般的です。

混在月の実務上の切り分け基準(差押債権目録の定型に沿う)
  • 通勤手当(通勤交通費の実費補填)は「通勤手当を除く」の記載により差押え対象から外す
  • 給料(基本給+諸手当、通勤手当除く。)は所得税・住民税・社会保険料控除後残額の4分の1(44万円超は残額−33万円)を差押相当額として分離する
  • 賞与(期末手当・勤勉手当など賞与の性質を有するものを含む。)も同様に控除後残額の4分の1(44万円超は残額−33万円)を分離する
  • 退職金は、目録に記載がある場合に限り、所得税・住民税控除後残額の4分の1(類型により2分の1の記載もあり得る)を分離し、頭書金額に満つるまで充当する

なお、支払期が同日の「最終回分」について、給料→賞与→(役員報酬等)→退職金のように記載順序が指定されることがあります(「上記記載の順序による」との記載)。同日に複数名目が発生する場合は、目録の順序指定の有無を確認し、指定があればその順に処理します。

副業給与と複数差押え

複数勤務先の給与はどう扱うか

従業員が副業・兼業で複数の勤務先から賃金を得ている場合でも、会社が差押えに対応する範囲は、自社が第三債務者として特定され、命令が送達された給与等に限られます。命令書・差押債権目録の文言も「債務者が第三債務者から支給される、本命令送達日以降支払期の到来する…」という形で、第三債務者を特定して記載されます。

したがって、自社に命令が届いた場合は、自社給与について、控除後残額の4分の1(残額が月額44万円超なら残額−33万円)等を基準に処理し、他社の給与を合算して上限判定することはしません。副業先の給与まで差し押さえるには、債権者が副業先を第三債務者として別途特定し、別の送達を受ける必要があります。

また、労災保険では令和2年9月1日以降の事故について「すべての勤務先の賃金を合算」する改正がありますが(労災保険法20条の3ないし20条の8)、給与差押えの上限計算はあくまで差押命令の送達を受けた第三債務者単位で処理する点を混同しないよう注意が必要です。

重複差押えの優先順位を整理

同一の従業員給与について複数の差押命令が競合した場合、会社は特定の債権者に恣意的に優先弁済せず、法定の手続に従って処理する必要があります。民事執行法上、差押えにより取り立てた場合の弁済の取扱い(支払を受けた額の限度で弁済とみなす:民事執行法第155条)や、競合時の供託義務(民事執行法第156条)の枠組みに沿って対応します。

競合(重複差押え)が起きたときの会社側の基本線
  • 差押可能額の範囲(控除後残額の4分の1、44万円超は残額−33万円等)自体は変えず、第三債務者としては超過控除しない
  • 競合して受領先が確定しない場合は、民事執行法第156条に基づき供託を検討し、裁判所へ事情届等の手続を行う
  • 債権者への配当は裁判所の配当手続に委ね、会社が独自に按分計算して直接送金しない

本業先と副業先のどちらに命令が来たかで変わる、勤務先同士が照会できる範囲とできない範囲

本業先・副業先のどちらに命令が来た場合でも、勤務先同士が相互に連絡して給与額や差押状況を照会・共有する運用は、個人情報・雇用管理情報の取扱いとして慎重であるべきです。差押命令の処理は「第三債務者ごと」に完結し、命令書・差押債権目録に記載された範囲(たとえば「○○支店勤務」「本命令送達日以降支払期の到来する給料」など)を前提に、各社が個別に対応します。

一方、債権者側は、法令上の手続により第三者情報の取得を行い得る場面があり、結果として本業先・副業先の双方が特定されれば、それぞれに個別の命令が送達され、各社で並行処理になります。会社としては「他社にも命令が来ている前提」で動くのではなく、自社に届いた命令書の記載を起点に、必要最小限の事実のみを陳述して処理します。

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税金滞納と債務整理の関係

税金・住民税の滞納処分との違い

税金・住民税等の滞納による差押えは、民事執行(裁判所の差押命令)ではなく、行政庁による滞納処分として行われ、手続の入口が異なります。民事差押えでは、給料差押えの効力が将来分にも及ぶ扱い(民事執行法第151条)で、差押債権目録に「控除後残額の4分の1(44万円超は残額−33万円)」といった定型が置かれることが一般的です。

他方、滞納処分では、国税徴収法76条に基づく別の控除設計(生活扶助相当等を考慮)で計算されるため、同じ「給与差押え」でも控除方法・社内処理(通知書の形式、送達主体、納付先)が変わります。会社としては、文書が「裁判所の債権差押命令」なのか、「税務署・自治体の差押通知」なのかを最初に見分け、適用法令と計算ロジックを取り違えないことが重要です。

任意整理・個人再生・自己破産の影響

従業員が債務整理をした場合の差押えへの影響は手続により異なり、会社側は「停止・失効が起きる類型か」「起きるなら、いつ、何の書面で確認できるか」を軸に対応します。

また、差押命令の効力は、差押債権者の請求債権と執行費用の額を限度として、差押え後に受ける給付にも及ぶ仕組みです(民事執行法第151条)。そのため、会社が独自判断で天引きをやめると、債権者への支払義務が残る一方で従業員へ支払ってしまう二重払いリスクが生じ得ます。

会社が実務で押さえるべき「差押え停止・失効」の確認線
  • 任意整理は裁判所手続ではないため、差押命令の効力を当然に止める書面が出ない前提で扱う
  • 個人再生・破産は裁判所手続であり、開始決定等により強制執行に影響が出る場面があるため、会社は開始決定等の写しなど客観資料で確認する
  • いずれの類型でも、会社は「債権差押命令の送達後支払期到来分」という目録記載の射程を踏まえ、正式な根拠書面が確認できるまで処理を維持する

時効援用が差押え回避に使えるか

会社に債権差押命令が送達されている局面では、会社は第三債務者として、命令の記載に従って支払先を変更する義務を負います。差押命令の効力は将来給付にも及ぶため(民事執行法第151条)、従業員から「時効だから止めてほしい」と申告があっても、会社がそれを実体判断して差押控除を止めることはできません。

時効の成否は、請求の根拠(判決・支払督促等)や更新(時効の更新)を含む法的評価が必要となり、会社の給与担当の権限・立場で判断する性質のものではありません。会社としては、差押取消や取下げ等の公的手続により差押命令の効力が解消されたことを示す書面が確認できるまで、命令に従った処理を継続します。

会社への影響と社内整備

解雇や懲戒の可否と就業規則

給料差押えの事実のみを理由に解雇・懲戒を行うことは、慎重であるべきです。解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は権利濫用として無効となります(労働契約法第16条)。差押えは私的債務に関する手続であり、直ちに業務上の非違行為と同視できないことが多いため、就業規則に形式的な条項があっても、個別事情の検討なしに処分をすると紛争化リスクが高まります。

また、実務負担が増えること自体は、差押債権目録に沿った控除計算(たとえば「控除後残額の4分の1」「月額44万円超は残額−33万円」「通勤手当除外」など)を継続して行う必要があるためで、第三債務者としての法的義務の範囲と整理されます。処分よりも、社内フロー・権限分掌・情報管理の整備でリスクを下げる設計が現実的です。

継続期間と終了時の実務確認

給与差押えは、差押命令の効力が将来給付にも及ぶため(民事執行法第151条)、原則として、請求債権および執行費用の範囲で、継続的に控除・支払(または供託)が続きます。

終了の見極めでは、債権者が第三債務者から支払を受けた場合に、執行裁判所へ書面で届け出る運用(取立届、全額弁済に至った場合の取立完了届)が整理されています。会社としては、従業員の申告だけで終了処理をせず、債権者・裁判所側の書面(差押取消・取下げ等)で客観的に確認できるまでは、命令に従った控除を継続します。

また、差押債権目録に「退職したときは退職金から…」という記載がある場合、退職により給与が発生しなくなっても、退職金支給があればその範囲で差押処理が残ることがあります。退職=即終了と決めつけず、目録記載の射程を確認してから手当てします。

人事・給与・店舗責任者の誰がいつ共有されるか、社内連携を最小限にする運用ルール

差押えは機微情報であり、社内共有は「処理に必要な最小限」に限定します。差押命令や差押債権目録には、所属(例:○○支店勤務)や差押範囲(給料、賞与、退職金、通勤手当除外、44万円・33万円基準等)が具体的に書かれているため、共有範囲が広いほど漏えいリスク・不適切取扱いリスクが増えます。

最小限共有のための運用ルール例(実務担当向け)
  • 受領・保管は人事労務または法務の責任者が一元管理し、命令書・差押債権目録の写しの配布を最小限にする
  • 給与担当には「通勤手当除外」「控除後残額の4分の1」「月額44万円超は残額−33万円」など計算に必要な要素のみを伝達する
  • 現場(店長・シフト管理者)には原則として差押えの事実を共有せず、賃金控除の質問が出た場合は本社人事で対応する導線を徹底する
  • 分離保管金(差押相当額)は入出金記録を残し、取立て・供託・競合の有無を後から追跡できる状態にする

よくある質問

アルバイトの給料も本業の給与と合算して差し押さえられますか?

原則として合算されません。差押命令は「債務者が第三債務者から支給される、本命令送達日以降支払期の到来する…」という形で、送達を受けた会社(第三債務者)ごとに効力が及びます(差押債権目録の定型)。

したがって、本業先にのみ命令が届いているなら、本業先は自社給与について、所得税・住民税・社会保険料控除後残額の4分の1(残額が月額44万円超なら残額−33万円)を基準に処理し、副業(アルバイト)先の給与を足し合わせて上限判定することはしません。副業先にも差押えを及ぼすには、債権者が副業先を第三債務者として別途特定し、別途送達を受ける必要があります。

住民税や健康保険料を滞納した場合もアルバイト代は差し押さえられますか?

差押えの対象になり得ますが、手続は「裁判所の債権差押命令」ではなく、行政庁の滞納処分として進む点に注意が必要です。民事差押えのように差押債権目録で「控除後残額の4分の1(44万円超は残額−33万円)」という定型で処理するのではなく、国税徴収法76条の枠組みで差押可能額を判断します。

会社としては、届いた文書が裁判所発行なのか、自治体・税務署等の行政庁発行なのかをまず確認し、適用法令と計算方法(控除の前提、納付先、期限)を取り違えないように運用します。

複数の債権者から同時に給料差し押さえが来た場合の扱いはどうなりますか?

競合(重複差押え)で差押可能額の範囲内で誰に支払うべきか確定しない場合、第三債務者は供託によって処理するのが基本です。民事執行法は、競合時の供託義務を定めています(民事執行法第156条)。

会社が行うべき実務処理の骨子
  • 差押可能額は、控除後残額の4分の1(残額が月額44万円超なら残額−33万円)等の枠内に収める
  • 競合して支払先を独断で決められないときは供託を行い、裁判所所定の手続(事情届等)で経緯を報告する
  • 債権者への配当は裁判所の配当手続に委ね、会社は中立的に記録管理と期限遵守を徹底する

給料差し押さえへの対応で次にすべきこと

給料差し押さえでは、アルバイト賃金を含めて命令書・差押債権目録の記載どおりに対象範囲を特定し、「通勤手当を除く」前提や「控除後残額の4分の1(残額が月額44万円超なら残額−33万円)」といった計算基準をぶらさずに処理することが中心になります。実務の判断軸は、①裁判所からの送達か(私的通知ではないか)、②差押えの射程が「本命令送達日以降支払期の到来する」将来分に及ぶか、③支払期(毎月・毎日等)に応じた上限判定が必要か、の3点です。次のアクションとしては、送達後の時系列フローに沿って、対象名目(給料・賞与・退職金)と控除項目を確定し、陳述催告があれば事実に基づいて陳述書を作成します。競合(重複差押え)や扶養義務等債権などで判断に迷う場合は、命令書の記載を起点に執行裁判所への確認を優先し、現場判断で控除停止・上乗せ支給をしない運用が重要です。個別事案では労務・法務・税務の論点が交差し得るため、処理の根拠書面を揃えたうえで専門家にも相談してください。



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