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任意整理における過払い金請求|借金との相殺や返金の流れを解説

catfish_admin

借金の返済負担を軽くするために任意整理を検討している中で、「自分にも過払い金があるかもしれない」と気づく方は少なくありません。もし過払い金が発生していれば、任意整理の手続きを有利に進められる可能性がありますが、具体的にどのように借金が減り、お金が戻ってくるのかは気になるところでしょう。この記事では、任意整理における過払い金の基本的な扱い方から、発生条件、請求手続きの流れ、そして信用情報への影響に至るまで、詳しく解説します。

目次

任意整理と過払い金請求の基本的な関係性

任意整理とは:貸金業者と交渉し将来利息のカットを目指す手続き

任意整理は、裁判所を介さずに弁護士や司法書士が代理人となり、貸金業者と直接交渉して借金の返済負担を軽減する債務整理手続きの一種です。この手続きの主な目的は、和解後の将来利息をカットしてもらうことにあります。

任意整理の主な交渉内容
  • 将来利息の免除:和解成立後の利息をゼロにし、支払いのすべてを元本の返済に充てる。
  • 遅延損害金の免除:支払いが遅れた際に発生する賠償金も交渉により免除を目指す。
  • 返済期間の再設定:原則として3年~5年程度の長期分割払いで無理のない返済計画を立てる。

弁護士が債権者に「受任通知」を送付した時点で、債権者からの直接の督促や取り立てが停止します。これにより、精神的な平穏を取り戻しながら、生活の再建に集中できる環境が整います。

過払い金請求とは:法律の上限を超えて支払った利息の返還を求める手続き

過払い金請求とは、過去に貸金業者が利息制限法の上限を超えて徴収していた利息(いわゆるグレーゾーン金利)を、不当な利益として返還するよう求める法的な手続きです。これは民法上の「不当利得返還請求権」に基づく正当な権利行使です。

かつて、多くの貸金業者は利息制限法の上限(年15~20%)と出資法の上限(年29.2%)の間の「グレーゾーン金利」で貸付を行っていましたが、最高裁判所の判決により、この金利での利息の受け取りは原則として無効とされました。この判決を根拠に、払い過ぎた利息を再計算し、元本に充当してもなお余りがある場合にその返還を求めます。

この手続きは、すでに借金を完済している場合はもちろん、現在返済中の場合でも行うことが可能です。ただし、最終取引日から10年の時効が経過していたり、貸金業者が倒産していたりすると請求が困難になるため、早めの対応が重要です。

両者の違いは「目的」と「信用情報への影響」

任意整理と過払い金請求は、どちらも借金問題に関連する手続きですが、「目的」と「信用情報への影響」に明確な違いがあります。

項目 任意整理 過払い金請求(完済後)
目的 現在の借金の返済負担を軽減すること(守りの手続き) 払い過ぎた利息を現金として取り戻すこと(攻めの手続き)
信用情報への影響 事故情報(ブラックリスト)として登録される 信用情報への影響は一切ない
任意整理と過払い金請求の比較

任意整理を行うと、信用情報機関に事故情報が登録され、一定期間は新たな借入れやクレジットカードの作成が難しくなります。一方、完済した業者への過払い金請求は、正当な権利行使とみなされるため、信用情報に影響はありません。

ただし、返済中に過払い金請求を行い、再計算後も借金が残ってしまった場合は、任意整理と同様の扱いとなり事故情報が登録される点に注意が必要です。

任意整理の手続き中に過払い金の発生が判明するケースが多い

任意整理を専門家に依頼すると、まず貸金業者から取引履歴を取り寄せ、利息制限法の上限金利で再計算する「引き直し計算」を行います。この過程で、長年にわたり高い金利で取引を続けていた場合、過払い金が発生していることが判明するケースは少なくありません。

特に2010年6月以前から取引を継続している場合、残債務があると思っていたものが、引き直し計算によって大幅に減額されたり、逆に過払い金が発生してプラスの資産に転じたりすることがあります。

このように、任意整理の手続きは単に利息カットの交渉を行うだけでなく、隠れた過払い金を発見し、債務の正確な実態を明らかにするという調査の側面も持っています。判明した過払い金は他の借金の返済に充当できるため、生活再建を大きく後押しする可能性があります。

過払い金調査の結果、任意整理に移行する場合の注意点

過払い金の調査を行い、発生した金額を現在の借金に充当してもなお債務が残る場合は、そのまま任意整理の手続きに移行します。この際には、以下の点に注意が必要です。

過払い金充当後の任意整理における注意点
  • 信用情報への影響:充当後も借金が残るため、個人信用情報機関には「任意整理」として事故情報が登録されます。
  • 有利な和解交渉:過払い金の充当によって元本が減っているため、当初の想定よりも月々の返済額を下げたり、返済期間を短縮したりといった有利な条件で和解できる可能性が高まります。

過払い金の発生は、たとえ借金がゼロにならなくても、その後の任意整理を有利に進めるための重要な要素となります。

任意整理で過払い金が発生している場合の条件

過払い金が発生する仕組み:グレーゾーン金利での借入れ

過払い金が発生する根本的な原因は、過去に存在した「グレーゾーン金利」にあります。これは、二つの法律が定める上限金利の差によって生じていました。

グレーゾーン金利を構成した2つの法律
  • 利息制限法:貸付額に応じて年15%~20%を上限と定める法律。これを超えた金利は民事上無効。
  • 旧出資法:年29.2%を上限とし、これを超えると刑事罰の対象となる法律。

多くの貸金業者は、刑事罰を受けない範囲で利息制限法の上限を超える高い金利(グレーゾーン金利)で貸付を行っていました。しかし、最高裁判所の判例により、このグレーゾーン金利部分の支払いは原則として無効と判断されました。

引き直し計算」では、この無効な利息の支払いを過去に遡って元本の返済に充当します。その結果、元本が完済された後も支払いを続けていた部分が「過払い金」として蓄積される、という仕組みです。

2010年6月以前に消費者金融やカード会社から借入れを開始している

過払い金が発生している可能性が高いのは、法改正によりグレーゾーン金利が撤廃された2010年6月18日より前に借入れを開始した取引です。これ以降に始まった取引は、当初から適法な金利が適用されているため、過払い金は発生しません。

過払い金発生の対象となる取引
  • 取引開始時期:2010年6月18日よりも前に開始した借入れ(多くの業者は2007年頃から金利を是正)。
  • 取引の種類:消費者金融からの借入れや、クレジットカードのキャッシング枠での利用が対象。
  • 対象外の取引:クレジットカードのショッピング利用分は、立替金扱いのため過払い金の対象外。

ご自身の借入れがいつから始まったものか、また取引の種類がキャッシングであるかを確認することが重要です。

過払い金請求権の時効が成立していないこと(最終取引日から10年以内)

過払い金を請求する権利には消滅時効があり、一定期間が経過すると権利が失われてしまいます。

過払い金請求の時効に関するポイント
  • 原則の時効:最後に取引(借入れまたは返済)を行った日から10年が経過すると時効が成立します。
  • 返済中の場合:現在も返済を続けている場合は、時効のカウントは開始されていません。
  • 民法改正後の時効:2020年4月1日以降に発生した権利には、「権利を行使できることを知った時から5年」という時効も適用されます。
  • 取引の分断:一度完済し、再度同じ業者から借りた場合、取引が「一連」か「分断」かによって時効の起算点が変わり、判断が複雑になることがあります。

時効が迫っている場合は、内容証明郵便の送付などで時効の完成を一時的に猶予させ、迅速に法的手続きに着手する必要があります。

任意整理における過払い金請求のメリットと手続きの流れ

メリット1:過払い金と残りの借金を相殺し返済額を減らせる

任意整理において過払い金が発生していた場合の最大のメリットは、その過払い金を現在の借金と相殺できる点です。相殺とは、法的に双方の債権・債務を対当額で消滅させることで、これにより返済すべき元本そのものを大幅に圧縮できます。

例えば、引き直し計算前の借金が100万円あっても、調査の結果50万円の過払い金が判明すれば、残りの借金は50万円にまで減ります。この結果、月々の返済額を無理のない範囲に引き下げたり、返済期間を短縮したりすることが可能となり、より有利な条件で和解できる可能性が高まります。

メリット2:過払い金額が借金残高を上回れば手元にお金が戻る

引き直し計算の結果、発生している過払い金の額が現在の借金残高を上回るケースもあります。この場合、借金はすべて消滅し、さらに超過した分の金額を現金として取り戻すことができます。

戻ってきた現金は、生活費や専門家への費用支払いに充てたり、任意整理の対象外とした他のローンの返済に充当したりと、自由に活用できます。借金整理のために始めた手続きが、結果的に手元に資金を生み出す資産回収へとつながる点は、過払い金が発生した場合の特有の大きなメリットです。

任意整理と過払い金請求の手続きは、以下の流れで進められます。

手続きの流れ①:弁護士・司法書士へ相談し受任通知を送付

  1. 専門家への相談と依頼
  2. まず弁護士や司法書士に相談し、借入状況から過払い金発生の可能性などを診断してもらいます。正式に依頼すると、専門家は貸金業者へ「受任通知」を発送します。これにより、債権者からの直接の督促が停止し、返済も一時的にストップします。

手続きの流れ②:貸金業者から取引履歴を取り寄せ引き直し計算を行う

  1. 取引履歴の開示請求と引き直し計算
  2. 受任通知を受け取った貸金業者は、これまでの全取引記録である「取引履歴」を代理人へ開示します。専門家はこの履歴に基づき、利息制限法の上限金利で再計算する「引き直し計算」を行い、正確な債務額や過払い金の有無・金額を確定させます。

手続きの流れ③:貸金業者と過払い金返還・債務額について和解交渉

  1. 貸金業者との和解交渉
  2. 引き直し計算の結果に基づき、代理人が貸金業者と具体的な交渉を開始します。過払い金が発生していれば返還額や返還時期を、借金が残る場合は将来利息のカットや分割返済の条件などを協議し、双方の合意(和解)を目指します。

手続きの流れ④:和解内容に基づき返済または過払い金の返還を開始

  1. 和解内容の履行
  2. 交渉がまとまると「和解書」を取り交わし、その内容に従って手続きを進めます。借金が残った場合は分割返済を再開し、過払い金が戻ってくる場合は指定口座への入金を待ちます。和解内容を誠実に履行することで、手続きは完了となります。

複数の借入先がある場合の戦略的な進め方

複数の貸金業者から借入れがある場合、すべての業者を画一的に整理するのではなく、戦略的に進めることが有効です。例えば、過払い金が発生していそうな業者への請求を優先的に行い、回収した現金を他の借金の返済に充てることで、全体の借金を効率的に減らすことができます。

また、過払い金によって完済が見込める業者は、信用情報への影響を避けるために任意整理の対象から外すといった判断も可能です。専門家と相談し、各社の状況に応じた最適なプランを立てることが、多重債務問題の解決に向けた鍵となります。

任意整理完了後に過払い金請求を行う際のポイント

任意整理の和解後でも過払い金請求は可能

過去に任意整理を行いすでに完済した場合や、現在返済中の場合でも、後から過払い金請求を行うことは法的に可能です。特に、以前の任意整理で引き直し計算を行わず、単に将来利息のカットのみで和解していた場合、過払い金が潜在している可能性があります。

ただし、一度和解という法的な合意をしているため、貸金業者側が交渉に応じず、裁判(訴訟)での解決が必要になるケースが多くなります。以前の和解がどのような根拠で行われたかを精査し、改めて請求の可否を慎重に判断する必要があります。

和解書に「清算条項」が含まれている場合の注意点

任意整理の和解書には、「本件和解に定めるほか、当事者間には何らの債権債務も存在しないことを相互に確認する」といった趣旨の「清算条項」が含まれていることがほとんどです。この条項に合意していると、後から過払い金が見つかっても、請求権を放棄したとみなされ、返還請求が極めて困難になる可能性があります。

しかし、判例では、和解当時に過払い金の存在を当事者が認識していなかった場合など、特定の条件下では清算条項の効力が過払い金請求権に及ばないとするケースもあります。和解書の文言を法的に精査し、請求の余地がないか専門家による詳細な検討が必要です。

請求権の時効は進行し続けるため早めの対応が必要

任意整理の手続き中や和解後の返済中であっても、過払い金請求権の時効(最終取引日から10年)は進行し続けます。手続きが完了したからといって、時効のカウントが止まるわけではありません。

過去の任意整理から時間が経っている場合、気づいたときには時効が完成してしまっているリスクがあります。過去の取引で高い金利を支払っていた記憶がある場合や、以前の整理内容に疑問がある場合は、時効が完成する前に速やかに再調査を依頼することが重要です。

任意整理と過払い金請求が信用情報(ブラックリスト)に与える影響

任意整理の手続き自体は信用情報に登録される

任意整理の手続きを開始すると、その事実は「債務整理」として信用情報機関に登録されます。これが、いわゆる「ブラックリストに載る」状態です。

この情報は和解後の返済を終えてから約5年間保持され、その間は新たな借入れやクレジットカードの作成、ローン契約などが非常に難しくなります。これは将来利息のカットといったメリットを得るための代償ですが、この期間を家計を見直すためのリセット期間と捉えることもできます。なお、この情報が戸籍に載ったり、勤務先に知られたりすることはありません。

調査の結果、過払い金で借金が完済できた場合の扱い

任意整理の手続き中に過払い金が判明し、その金額で借金を全額返済(完済)できた場合、信用情報上の扱いは大きく変わります。最終的に借金がゼロになったことが確認されれば、貸金業者は信用情報機関に対し、債務整理としての事故情報を登録しないか、または登録済みの場合は抹消する対応をとることが一般的です。これにより、「債務整理」というネガティブな情報が登録されない、または登録されてもその影響が最小限に抑えられる可能性が高まります。

完済済みの業者に対する過払い金請求は信用情報に影響しない

すでに借金を完済している貸金業者に対して過払い金請求を行う場合は、信用情報に一切影響はありません。これは、債務の整理ではなく、過去に不当に支払った自分のお金を取り戻す正当な権利行使とみなされるためです。

したがって、完済後の請求であれば、現在利用中の他のクレジットカードが停止されたり、将来の住宅ローン審査で不利になったりする心配なく、安心して手続きを進めることができます。

任意整理と過払い金に関するよくある質問

調査の結果、過払い金が発生しなかった場合はどうなりますか?

引き直し計算の結果、過払い金が発生していなかった場合でも、手続きは無駄にはなりません。そのまま通常の任意整理に移行し、将来利息のカットや分割返済の和解交渉を継続します。引き直し計算によって、貸金業者が主張する残高よりも法律上の正しい残高が減っていることもあり、その分有利に交渉を進められます。また、過払い金がないことが確定することで、自己破産や個人再生といった他の手続きを検討すべきかどうかの的確な判断材料にもなります。

返還される過払い金に利息は付きますか?

法律上、貸金業者が悪意(法律の上限を超える金利と知りながら受領していたこと)の受益者とみなされる場合、過払い金の元本に加えて、発生時から年率3%(2020年3月31日までは5%)の利息を付けて請求できます。しかし、交渉段階で業者が利息の支払いに応じることは稀です。利息を含めた満額の回収を目指す場合は、裁判(訴訟)を提起する必要があります。訴訟には時間がかかりますが、回収額が大幅に増える可能性があるため、専門家と相談の上で方針を決定します。

借入先の貸金業者が倒産している場合、過払い金は請求できませんか?

借入先の貸金業者がすでに倒産(破産など)して法人格が消滅している場合、残念ながら請求先が存在しないため、過払い金を取り戻すことはできません。ただし、他社に吸収合併されたり、事業が譲渡されたりしている場合は、その承継会社に対して請求できる可能性があります。社名が変わっていても諦めず、その業者の現在の法的な状況を調査することが重要です。

弁護士や司法書士に依頼した場合の費用はどのくらいかかりますか?

専門家に依頼する際の費用は、事務所の方針によって異なりますが、一般的には基本報酬と成功報酬の組み合わせで構成されます。多くの事務所では、初期費用無料の完全成功報酬制を採用しており、戻ってきた過払い金の中から費用を支払うことが可能です。

費用の目安
  • 相談料:無料の事務所が多い
  • 基本報酬(着手金):1社あたり0円~5万円程度
  • 成功報酬(過払い金返還):回収額の20%~25%(税別)程度
  • 減額報酬(借金が減った場合):減額できた金額の10%(税別)程度

契約前には必ず費用体系について詳細な説明を受け、手元にいくら残るのかをしっかり確認することが大切です。

戻ってきた過払い金に税金はかかりますか?

取り戻した過払い金のうち、元本部分は非課税です。これは、もともと自分の財産であったものが返還されたに過ぎないため、所得とはみなされません。しかし、訴訟などを通じて回収した過払い利息の部分については「雑所得」として扱われ、課税対象となります。給与所得者の方で、この利息を含む雑所得の合計が年間20万円を超える場合は、確定申告が必要になるため注意が必要です。

まとめ:任意整理と過払い金請求を賢く進め、借金問題の解決を目指しましょう

本記事では、任意整理の手続きを進める上で過払い金がどのように扱われるかを網羅的に解説しました。2010年6月以前から長期間にわたり借入れをしていた場合、過払い金が発生している可能性があり、それを現在の借金と相殺することで返済負担を大きく軽減できます。過払い金額が借金残高を上回れば、債務がゼロになるだけでなく、手元に現金が戻ってくるという大きなメリットも期待できます。ただし、過払い金請求権には最終取引日から10年という時効があるため、早めの対応が肝心です。ご自身の状況で過払い金が発生しているか正確に知るためには専門家による調査が不可欠ですので、心当たりのある方はまず弁護士や司法書士に相談することをお勧めします。

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