訴訟費用額確定処分の申立て方法|手続きの流れと必要書類の書き方を解説
訴訟で勝訴判決を得た後、判決主文で定められた訴訟費用を相手方から回収する具体的な手続きについて、不明な点はないでしょうか。勝訴しただけでは自動的に費用が支払われるわけではなく、法的な手続きを踏んで請求額を確定させる必要があります。この記事では、そのための「訴訟費用額確定処分」について、申立ての要件や流れ、費用計算書といった必要書類の作成方法、そして相手方が支払いに応じない場合の強制執行まで、実務的な手順を詳しく解説します。
訴訟費用額確定処分とは?制度の概要と法的根拠
訴訟費用額確定処分の目的と制度概要
民事訴訟の判決では、訴訟費用の負担割合が示されますが、具体的な金額までは記載されません。そのため、勝訴した当事者が敗訴した相手方へ実際に費用の支払いを求めるには、判決とは別に費用の総額を法的に確定させる手続きが必要です。この手続きが訴訟費用額確定処分です。
この制度は、判決で認められた費用償還請求権を、強制執行が可能な具体的な金銭債権へと転換させることを目的としています。判決が確定した後や仮執行宣言が付された後に、勝訴当事者が申し立てることで手続きが開始され、この処分が確定すると、相手方への具体的な金額の請求や、支払われない場合の強制執行が可能になります。
- 判決等で定められた訴訟費用の負担割合に基づき、具体的な請求金額を確定させる
- 確定した金額について、強制執行が可能な債務名義としての効力を付与する
- 勝訴当事者の費用償還請求権を、具体的な金銭債権として実現可能にする
手続きの根拠となる法律(民事訴訟法第71条)
訴訟費用額確定処分の手続きは、民事訴訟法第71条にその根拠が定められています。この条文では、訴訟費用の額を定める権限や手続きの要点が規定されています。
- 手続きの申立て先は、第一審裁判所の裁判所書記官である
- 処分を行う権限を持つのは裁判官ではなく裁判所書記官である
- 当事者双方が費用を負担する場合、対当額で相殺された差額が定められる
- 処分の告知から1週間の不変期間内に異議がなければ確定する
訴訟費用額確定処分の申立て手続き
申立ての要件と対象となる裁判
訴訟費用額確定処分を申し立てるには、いくつかの要件を満たす必要があります。申立ての対象となるのは、判決だけでなく、裁判上の和解なども含まれます。管轄は、控訴審や上告審で判決が確定した場合でも、第一審の裁判所となります。
- 訴訟費用の負担を命じる裁判(判決など)や和解が執行力を有していること
- 判決が確定している、または判決に仮執行宣言が付されていること
- 費用償還請求権を有する当事者(通常は勝訴側)からの申立てであること
- 判決で訴訟費用の負担が命じられた場合
- 裁判上の和解で費用の負担者が定められたが、金額が未定の場合
- 訴訟が裁判や和解によらず完結し、費用の負担を命じる決定がなされた場合
申立ての期限と起算点
訴訟費用額確定処分の申立てには期間制限があり、訴訟費用の負担を命じる裁判が確定してから10年以内に行う必要があります。この期間は権利そのものが消滅する消滅時効期間とされているため、注意が必要です。
| ケース | 起算点 |
|---|---|
| 判決 | 判決が確定した日 |
| 和解 | 和解が成立した日 |
実務上は、判決確定後はなるべく速やかに申し立てることが推奨されます。時間が経つと領収書などの疎明資料が散逸するリスクがあるため、早期に着手することが望ましいでしょう。
申立てから処分確定までの全体的な流れ
申立てから処分が確定するまでの手続きは、裁判所書記官が中心となって進められます。以下にその一般的な流れを示します。
- 申立人が第一審裁判所へ申立書、費用計算書、疎明資料を提出する
- 裁判所書記官が相手方へ費用計算書等の副本を送付し、意見陳述の機会を与える(陳述の催告)
- 相手方は期間内に認否をしたり、自身の費用計算書を提出して相殺を主張したりする
- 裁判所書記官が双方の主張や資料を基に費用額を計算し、処分を行う
- 処分内容が記載された書面が当事者双方に送達される
- 送達から1週間以内に異議がなければ処分が確定し、債務名義となる
申立てを行うべきか?費用対効果の判断基準
申立てを行うかどうかは、回収できる見込み額と手続きにかかる労力を比較して慎重に判断する必要があります。特に、弁護士費用は原則として訴訟費用に含まれないため注意が必要です。
- 訴訟印紙代が高額になった場合
- 遠方への出廷で多額の旅費や日当が発生した場合
- 相手方に任意の支払いが期待できず、強制執行が必要な場合
- 請求できる費用額が少額な場合
- 相手方に支払い能力(資産)がないことが明らかな場合
- 手続きにかかる労力や時間と、回収見込み額が見合わない場合
申立てに必要な書類の準備と作成方法
申立てに必要な書類の一覧と準備
申立てにあたっては、申立書や費用を計算した書面、それを裏付ける資料を揃える必要があります。申立書と費用計算書は、裁判所用と相手方用の2部を作成します。
- 訴訟費用額確定処分申立書(正本・副本)
- 費用計算書(正本・副本)
- 各費用項目を裏付ける疎明資料(領収書など)の写し
- 相手方への送達用郵便切手
送達用の郵便切手は、事前に申立て先の裁判所に金額を確認しておきましょう。収入印紙代については、裁判所の記録で確認できるため、改めて領収書の添付は通常不要です。
訴訟費用額確定処分申立書の書き方と記載事項
申立書には、事件や当事者を特定する情報と、申立ての趣旨・理由を正確に記載する必要があります。書式は裁判所のウェブサイトなどで入手できるひな形を利用すると便利です。
- 事件番号と当事者名
- 申立ての趣旨(例:「被告が負担すべき訴訟費用額を金〇〇円と確定することを求める」)
- 申立ての理由(判決の確定日や和解の成立日など)
- 申立日と申立人の氏名・住所
- 宛先(〇〇地方裁判所 民事部 裁判所書記官 殿)
費用計算書の作成方法と対象となる費用の内訳
費用計算書には、民事訴訟費用等に関する法律に基づいて認められる費目を項目ごとに記載し、合計額を算出します。実費とは異なる法定の基準で計算する項目があるため注意が必要です。
- 訴え提起手数料(収入印紙代)
- 書類の送付・送達費用(予納郵便切手代)
- 期日への出頭日当(1日あたり3,950円など法定額)
- 出頭旅費(裁判所の規定に基づく計算額)
- 書類作成提出費用(法定額)
費用計算書で計上する際の注意点と疎明資料の準備
費用計算書を作成する際は、法律で定められた訴訟費用に該当しないものを誤って計上しないように気をつける必要があります。疎明資料は、各費目の根拠が明確に分かるように整理して添付します。
- 弁護士費用は原則として訴訟費用に含まれない
- 私的に依頼した鑑定費用や調査費用も対象外となる
- 郵便切手代は、裁判所で実際に使用された金額のみを計上する(要確認)
- 各費目の計算は、実費ではなく民事訴訟費用等に関する法律の規定に従う
申立て後の流れと相手方が支払わない場合の対応
裁判所書記官による処分の内容と当事者への送達
申立てが受理されると、裁判所書記官は相手方に意見を述べる機会を与えます。相手方からの回答も踏まえて費用額が計算され、処分が決定されます。双方が費用を負担する事件では、それぞれの費用を対当額で相殺した差額の支払いを命じる処分となります。
処分が決定すると、訴訟費用額確定処分正本が当事者双方に送達されます。この送達によって処分は効力を生じ、不服がある場合は送達を受けた日から1週間以内に異議を申し立てる必要があります。
確定処分後に相手方が支払わない場合の強制執行手続き
訴訟費用額確定処分が確定しても相手方が任意に支払わない場合、この処分を債務名義として強制執行を申し立てることができます。手続きには別途費用がかかりますが、これも執行費用として相手方に請求可能です。
- 確定した訴訟費用額確定処分正本に執行文の付与を申し立てる
- 相手方の財産(預貯金、給与、不動産など)を調査・特定する
- 地方裁判所に強制執行(債権差押えなど)を申し立てる
- 差押えが認められれば、財産から債権を回収する
訴訟費用額確定処分に関するよくある質問
申立てに手数料などの費用はかかりますか?
申立て自体に手数料(収入印紙)は原則として不要です。ただし、決定書を相手方に送達するための郵便切手代を予納する必要があります。必要な金額は裁判所によって異なるため、事前に申立て先の裁判所に確認してください。なお、処分確定後に強制執行へ進む場合は、別途、執行申立ての手数料や予納金が必要となります。
和解で訴訟が終了した場合でも申立ては可能ですか?
はい、可能です。裁判上の和解で「訴訟費用は被告の負担とする」のように費用の負担者が定められたものの、具体的な金額が決められていない場合には、この手続きを利用して費用額を確定させることができます。ただし、「訴訟費用は各自の負担とする」と定められた場合は、相手方に請求することはできません。
相手方が処分内容に不服を申し立てた場合はどうなりますか?
相手方が処分内容に不服な場合、処分の告知を受けた日から1週間以内に異議を申し立てることができます。異議申立てがあると、その後の手続きは裁判所が判断することになります。
- 相手方は処分の告知から1週間以内に裁判所へ異議を申し立てる
- 異議申立てにより、処分の執行力は停止する
- 裁判所が異議の内容を審査し、理由があれば自ら費用額を決定し、なければ異議を却下する
- 裁判所の決定にさらに不服がある場合、即時抗告が可能である
確定した請求権の消滅時効は何年ですか?
訴訟費用額確定処分によって確定した請求権の消滅時効は10年です。これは、確定判決などによって確定した権利の時効期間を10年とする民法第169条の規定が適用されるためです。起算点は処分が確定した時となりますので、権利が消滅しないよう、相手方が支払わない場合は10年以内に強制執行などの手続きをとる必要があります。
まとめ:訴訟費用額確定処分を確実に進め、権利を実現するために
本記事では、訴訟費用額確定処分の申立て手続きについて、その概要から必要書類の作成、申立て後の流れまでを解説しました。この手続きは、勝訴判決によって認められた費用請求権を、強制執行が可能な具体的な金銭債権へと転換させるための不可欠なプロセスです。申立てにあたっては、第一審裁判所へ申立書と法律に基づいた費用計算書、そして各費用を裏付ける疎明資料を正確に準備することが求められます。特に、弁護士費用は原則として対象外である点や、旅費・日当などが法定の基準で計算される点には注意が必要です。回収が見込める費用額と手続きにかかる労力を比較検討し、申立ての実益を判断した上で、権利の実現に向けて着実に手続きを進めましょう。

