手続

清算型民事再生とは?破産との違いや手続きの流れ、メリットを解説

catfish_admin

企業の経営状況が悪化し、自力での再建が困難な場合、破産以外の選択肢を模索することは極めて重要です。特に、価値ある優良事業を存続させたいと考える経営者にとって、会社の清算と事業の再生を両立させる手法は大きな関心事でしょう。清算型民事再生は、まさにそのような状況で有効な選択肢となり得ます。この記事では、清算型民事再生の定義や具体的な手法、法的手続きの流れ、メリット・デメリットについて詳しく解説します。

目次

清算型民事再生の基本概要

清算型民事再生とは(事業清算を前提とした再建手法)

民事再生手続は、通常、債務者である会社を存続させ、将来の収益から債務を返済する「再建型」の手法です。これに対し清算型民事再生は、会社の事業の全部または一部を第三者へ承継させた後、会社自体は特別清算や破産によって消滅させる手法を指します。具体的には、採算の取れる優良な事業を事業譲渡会社分割によって切り出し、その事業価値を維持したまま別の法人へ引き継ぎます。事業を承継した対価を弁済の原資として債権者へ配当し、最終的に元の法人格は解散・清算します。「再生」という名称ですが、最終的に会社が消滅する点で、実態は法的な清算プロセスの一種です。この手法により、単純な破産では散逸してしまうノウハウや雇用を維持しつつ、債務整理を完了できるという特徴があります。

一般的な民事再生(再建型)との相違点

再建型の民事再生は会社自体の存続を目指しますが、清算型は事業の存続を重視し、会社は消滅する点が根本的に異なります。両者の主な違いは以下の通りです。

項目 再建型民事再生 清算型民事再生
目的 会社そのものの存続と再建 優良事業の存続と、旧会社の清算
手続後の会社 存続し、営業を継続する 弁済完了後に消滅する
主な弁済原資 手続後の事業収益 事業の売却代金
弁済期間 複数年(例:10年)にわたる分割弁済が一般的 一括または短期間での弁済が一般的
重視する点 会社の将来の収益力 事業の現在価値の最大化
再建型民事再生と清算型民事再生の比較

破産手続との目的・プロセスの違い

破産手続が会社の全財産を換価して清算することのみを目的とするのに対し、清算型民事再生は事業価値の維持を重視する点で異なります。どちらも最終的に会社は消滅しますが、プロセスと目指す結果に大きな違いがあります。

項目 破産手続 清算型民事再生
目的 全財産の換価と債権者への公平な分配 優良事業を存続させ、その対価で弁済を最大化する
手続の主体 裁判所が選任する破産管財人 原則として現経営陣(債務者)
事業の継続 原則として即時停止される 継続しながらスポンサー(買い手)を探せる
事業価値 価値が急激に毀損しやすい 維持・向上させやすい
債権者の合意 不要(法律に基づき強制的に進行) 再生計画の可決に多数の同意が必要
配当率 処分価格が基準のため低くなる傾向 事業価値が評価されるため高くなる傾向
破産手続と清算型民事再生の比較

清算型民事再生が選択される具体的な状況

自力再建やスポンサー獲得が困難な場合

会社全体の自力再建が極めて困難な状況で、清算型民事再生が選択されます。特に、以下のようなケースが該当します。

清算型民事再生が検討される状況
  • 将来の収益見込みだけでは、膨大な債務の返済が到底不可能である。
  • 資金繰りが著しく悪化し、事業継続のための運転資金が枯渇している。
  • スポンサー候補は存在するが、会社全体ではなく特定の優良事業のみの取得を希望している。
  • 不採算部門が会社全体の重荷となっており、切り離さなければ再生の見込みがない。

このように、会社全体を救うことは難しくても、中核事業の価値を最大限に活かし、債権者への弁済を最大化することが合理的な判断となる場合に採用されます。

収益性のある事業のみを切り出して存続させたい場合

複数の事業を展開している企業において、一部は深刻な赤字でも、他には収益性や成長性が見込める優良事業が存在する場合、清算型民事再生は有効な手段です。この手法を用いることで、赤字部門がもたらす資金流出を止め、優良事業だけを健全な財務状態の新会社へ移管できます。残された不採算部門や過剰債務は、元の会社(旧会社)と共に清算されます。これにより、価値ある事業、従業員の雇用、蓄積された技術が守られ、取引先や地域経済への影響を最小限に抑えながら、実質的な再生を図ることが可能になります。法的手続きを通じて、事業ポートフォリオの抜本的な再編を実行する強力なツールとして機能します。

破産による急激な事業価値の毀損を避けたい場合

破産手続を開始すると、対外的な信用は即座に失われ、事業は原則として停止します。これにより、従業員の離散、取引先との契約解除が相次ぎ、これまで築き上げてきた事業の価値が瞬時に失われるリスクがあります。特に、ブランド、技術、顧客基盤といった無形資産が価値の源泉である場合、一度事業が停止するとその価値を取り戻すことは困難です。清算型民事再生では、事業を継続しながら売却先を探せるため、事業価値の毀損を防ぐ「ソフトランディング」が可能です。買い手にとっても稼働中の事業を引き継げるメリットは大きく、これが売却価格の向上につながります。結果として、債権者への配当原資を増やし、社会的な信用を保ちながら、組織を円満に整理することが可能となります。

清算型民事再生で用いられる主な手法

事業譲渡による事業価値の換価と承継

事業譲渡は、特定の事業部門に関連する資産、負債、契約などを個別に選択して第三者に譲渡する手法です。買い手にとって不要な資産や簿外債務などを切り離せるため、リスクを限定した買収が可能となります。ただし、個別の権利義務を承継させる特定承継であるため、従業員の雇用契約や取引先との契約を移転するには、原則としてそれぞれの相手方から個別の同意を得る必要があります。このプロセスは手間がかかる一方、買い手にとっては承継範囲を明確にコントロールできる利点があります。民事再生手続では、裁判所の許可を得ることで再生計画の認可前に迅速に事業譲渡を実行でき、事業価値の劣化を防ぎます。譲渡によって得られた代金は旧会社に残り、債権者への弁済原資となります。

会社分割を活用した優良事業の分離

会社分割は、事業に関する権利義務を包括的に新設会社または既存の別会社へ承継させる組織再編の手法です。事業譲渡と異なり、個別の同意を得ずとも法律上当然に権利義務が引き継がれる包括承継が原則であるため、多数の契約関係を持つ事業を迅速に移転させる場合に非常に有効です。清算型民事再生では、まず優良事業を切り出して新会社を設立し(新設分割)、その新会社の株式をスポンサーへ売却する形が多く用いられます。この場合、新会社が事業と従業員を一体として引き継ぎ、旧会社は株式の売却代金で債権者へ弁済します。従業員の雇用も労働契約承継法に基づき原則として維持されるため、組織の安定性を保ちやすいというメリットがあります。

事業譲渡と会社分割の使い分けと判断基準

事業譲渡と会社分割のどちらを選択するかは、事業の特性や状況に応じて総合的に判断されます。主な判断基準は以下の通りです。

判断基準 事業譲渡が有利な場合 会社分割が有利な場合
契約関係 取引先が少数で、個別同意の取得が容易な場合 取引先や従業員が多数で、個別同意が困難な場合
許認可 許認可の新規取得が容易な場合 許認可の承継が法的に認められている場合
手続きの迅速性 裁判所の許可により迅速に実行したい場合 債権者保護手続等が必要だが、一括承継で結果的に早い場合
負債の切り離し 簿外債務などを確実に切り離したい場合 事業に関連する負債も含めて包括的に承継させたい場合
税務 税務上のメリットが限定的、またはデメリットがない場合 適格要件を満たし、税制上の優遇措置を受けられる場合
事業譲渡と会社分割の主な判断基準

清算型民事再生の法的手続きの流れ

申立てから再生手続開始決定まで

清算型民事再生は、債務者である会社が裁判所へ申し立てることで開始します。開始決定までの主な流れは以下の通りです。

開始決定までの主な流れ
  1. 債務者が管轄の地方裁判所へ再生手続開始の申立てを行う。
  2. 裁判所が弁済禁止の保全処分を出し、同時に監督委員を選任する。
  3. 経営陣は監督委員の監督下で事業を継続し、債権者説明会などを開催する。
  4. 裁判所が申立て内容を審査し、問題がなければ再生手続開始決定を下す。

財産評定と事業譲渡等に対する裁判所の許可

再生手続の開始決定後、会社は速やかに自社の財産状況を明らかにする必要があります。開始決定時点の全財産について価値を評定し、財産目録貸借対照表を作成して裁判所に提出します。この財産評定は、後の再生計画の基礎となる重要な手続きです。清算型民事再生では、事業価値が時間とともに低下するのを防ぐため、再生計画の認可を待たずに事業譲渡などを行うことが一般的です。その際、会社の重要な財産を処分することになるため、民事再生法に基づき、事前に裁判所の許可を得る必要があります。裁判所は、その事業譲渡が会社の再生に不可欠であり、債権者全体の利益にかなうかを審査し、許可を判断します。

再生計画案の作成と債権者による決議

債権額が確定した後、会社は再生計画案を作成します。清算型の場合、事業の売却代金などを原資として、どの債権者に、いくらを、どのように弁済するかを具体的に定めます。この計画案について、債権者の多数の同意を得る必要があります。 再生計画案を可決するための要件は以下の通りです。

再生計画案の可決要件
  • 議決権を行使できる債権者の過半数の同意
  • 議決権者の議決権総額の2分の1を超える額に当たる議決権を持つ者の同意

債権者にとっては、この計画案に同意することが、破産した場合の配当を受けるよりも有利かどうかが最大の判断基準となります。そのため、経営陣は事業売却の妥当性や弁済率の優位性をデータで示し、債権者の理解と協力を得なければなりません。

再生計画の認可、遂行から手続終結へ

債権者集会で再生計画案が可決されると、最終的に裁判所が認可を決定します。その後の手続きは以下の流れで進みます。

認可から終結までの主な流れ
  1. 裁判所が法律上の要件を審査し、再生計画の認可決定を行う。
  2. 会社は認可された計画に従い、事業譲渡代金などから債権者への弁済を遂行する。
  3. 全ての弁済が完了した後、会社は裁判所へ手続終結の申立てを行う。
  4. 裁判所が手続終結決定を下し、民事再生手続はすべて完了する。

この終結決定をもって、会社は清算され、法人格は完全に消滅します。

破産手続と比較したメリット・デメリット

メリット:事業価値の維持と柔軟な清算が可能

清算型民事再生の最大のメリットは、経営陣が主導権を維持したまま、事業を停止させずに手続きを進められる点です。破産手続では事業が停止し資産が個別に処分されがちですが、民事再生では事業全体を一体としてスポンサーに売却できるため、事業価値を高く評価してもらえる可能性が高まります。これにより、債権者への配当率を向上させることが期待できます。また、会社の状況を最もよく知る経営陣が手続きを進めるため、資産処分や契約関係の整理などを柔軟かつ最適なタイミングで行うことが可能です。

メリット:取引先への影響緩和と社会的信用の維持

事業を継続しながら清算プロセスを進めるため、取引先への影響を最小限に抑えられます。破産の場合は取引が即時停止となりますが、民事再生では事業承継後の新たな取引継続を期待できるため、仕入先などの協力を得やすくなります。これは、サプライチェーンの維持にも貢献します。また、社会的には「倒産」ではなく「再生」に向けた努力の末の整理と見なされやすく、経営者や従業員がその後のキャリアを再開する上でも、破産に比べてマイナスのイメージを緩和する効果があります。

デメリット:手続きの複雑性と費用負担の増大

一方で、破産手続に比べて手続きは格段に複雑で、費用も高額になります。

主なデメリット(費用・負担)
  • 高額な予納金: 負債総額に応じて、裁判所に納める予納金が数百万円から数千万円に及ぶことがあります。
  • 専門家費用: 申立てを依頼する弁護士や、財産評定を行う公認会計士などへの報酬が必要です。
  • 経営陣の負担: 資金繰り、事業運営、債権者対応、裁判所への報告などを同時に進める必要があり、経営陣には極めて大きな精神的・時間的負担がかかります。

デメリット:債権者の同意形成に関する注意点

民事再生は、債権者の多数決による同意がなければ成立しません。特に、融資額の大きい金融機関などの主要債権者が反対すれば、再生計画案は否決されてしまいます。もし経営陣と債権者の信頼関係が損なわれていたり、経営責任を厳しく追及されたりする場合には、同意形成が難航する可能性があります。計画案が否決されれば、民事再生手続は廃止され、より不利益な結果となりかねない破産手続へ移行するリスクを常に抱えています。

清算価値保障の原則と債権者への説明責任

清算型民事再生を進める上で、清算価値保障の原則を遵守しなければなりません。これは、「再生計画による弁済額は、もし会社が今すぐ破産した場合に得られる配当額(清算価値)を下回ってはならない」という重要なルールです。経営陣は、破産ではなく民事再生を選択することが債権者にとって経済的に合理的であることを、客観的なデータに基づいて証明する重い説明責任を負います。そのため、専門家による厳密な資産評価を行い、なぜこの方法が破産よりも高い弁済につながるのかを、論理的に説明し納得を得る必要があります。

清算型民事再生に関するよくある質問

清算型民事再生の場合、従業員の雇用はどうなりますか?

事業譲渡や会社分割によって事業がスポンサー企業へ承継される場合、その事業に従事する多くの従業員の雇用契約もそのまま引き継がれることが一般的です。買い手側も、事業を円滑に運営するために経験豊富な人材を必要とするためです。ただし、譲渡対象とならない不採算部門の従業員や、旧会社の清算業務に関わる一部の従業員については、残念ながら解雇となる可能性があります。その場合でも、未払賃金の立替払制度の利用を支援するなど、破産による突然の解雇に比べて丁寧な対応が可能です。

清算型民事再生にかかる費用の目安はどのくらいですか?

費用は会社の負債総額や規模によって大きく変動しますが、一般的には高額になります。裁判所に納める予納金だけでも、負債総額に応じて数百万円以上が必要となるケースが多くあります。これに加えて、申立てを代理する弁護士費用(着手金・報酬金)、財産評定を依頼する公認会計士や不動産鑑定士の費用などがかかります。中堅企業の場合、総額で1,000万円から数千万円規模の資金が必要になることも珍しくありません。資金が完全に尽きてしまうと申立て自体が不可能になるため、手元資金に余力がある段階での早期決断が重要です。

手続き完了後、会社の法人格は消滅しますか?

はい、消滅します。清算型民事再生は、事業を第三者に承継させてその対価で債務を弁済し、最終的に会社を整理することを目的としています。再生計画に定められた弁済がすべて完了し、裁判所から手続終結決定が出された時点で、会社の清算が結了します。その後、法務局で会社の登記簿は閉鎖され、法人格は完全に消滅することになります。会社そのものが存続する再建型とは異なり、事業という中身だけを存続させ、器である会社はなくなるという結末を迎えます。

債権者の同意が得られない場合、手続きはどうなりますか?

再生計画案が債権者集会で可決されなかった場合、民事再生手続は廃止されます。手続が廃止されると、多くの場合、裁判所が職権でその会社を破産手続に移行させます。これを牽連破産(けんれんはさん)と呼びます。牽連破産となった場合、当初目指していた事業価値を維持した形での売却は困難になり、破産管財人の下で資産が切り売りされることになります。その結果、債権者への配当率が低下し、従業員の雇用が維持できなくなるなど、関係者全員にとってより厳しい結果となる可能性が高まります。

まとめ:事業価値を守り抜くための清算型民事再生という選択肢

本記事では、清算型民事再生の概要と具体的な手続きについて解説しました。この手法は、会社全体の再建は困難でも、価値ある事業を存続させたい場合に有効な選択肢です。破産手続とは異なり、事業を継続しながらスポンサーを探せるため、事業価値の毀損を最小限に抑え、債権者への弁済を最大化できる可能性があります。一方で、手続きは複雑で高額な費用を要し、再生計画の成立には債権者の多数の同意が不可欠という高いハードルも存在します。清算型民事再生を検討する際は、そのメリットとデメリットを正確に理解し、手元資金に余力がある段階で弁護士などの専門家へ速やかに相談することが、最善の道筋を描くための鍵となります。

Baseconnect株式会社
サイト運営会社

本メディアは、「企業が経営リスクを正しく知り、素早く動けるように」という想いから、Baseconnect株式会社が運営しています。当社は、企業取引や与信管理における“潜在的な経営リスクの兆候”を早期に察知・通知するサービス「Riskdog」も展開し、経営判断を支える情報インフラの提供を目指しています。

記事URLをコピーしました