手続

費用がない方の自己破産|法テラス利用の条件・流れ・注意点

経営リスクナビ編集部

法テラスを利用した自己破産は、弁護士費用を捻出できず手続きを諦めかけている方にとって、有効な選択肢となり得ます。費用面の問題で行動をためらっている間にも、借金問題は深刻化する可能性があります。この記事では、法テラスで自己破産を進めるための利用条件、費用、手続きの流れ、メリット・デメリットを網羅的に解説し、経済的再生への第一歩をサポートします。

目次

法テラスの自己破産支援とは

民事法律扶助制度の概要

法テラス(日本司法支援センター)が提供する民事法律扶助制度は、経済的に余裕のない方が法的なトラブルを解決するための公的な支援制度です。自己破産の手続きには弁護士などの専門家の協力が不可欠ですが、その費用は高額になりがちです。この制度を利用することで、資金面の不安なく手続きを進めることができます。

民事法律扶助制度の主な支援内容
  • 同一案件につき3回まで無料で法律相談を受けられる
  • 弁護士や司法書士の着手金・実費などを法テラスが一時的に立て替えてくれる

利用者は立て替えられた費用を、手続き終了後に無理のない範囲で分割返済していくため、手元にまとまったお金がなくても自己破産に向けた一歩を踏み出せます。この制度は、多重債務で苦しむ人々にとって経済的再生を図るための重要なセーフティネットとして機能しています。

弁護士事務所への直接依頼との違い

法テラスを利用する場合と、弁護士事務所へ直接依頼する場合では、主に費用、支払い方法、手続き開始までのスピードに違いがあります。どちらが良いかは個人の状況によって異なりますので、それぞれの特徴を理解して選択することが重要です。

比較項目 法テラスを利用する場合 弁護士事務所へ直接依頼する場合
費用の目安 約15万円~21万円 約30万円~50万円
支払い方法 立替制度を利用し、月々分割で返済 事務所の規定に従い、一括または分割で支払い
手続き開始までの期間 審査に数週間~1ヶ月程度かかる 契約後すぐに着手可能
こんな人におすすめ 費用を最優先で抑えたい方 督促をすぐに止めたい、手続きを早く進めたい方
法テラス利用と弁護士事務所への直接依頼の比較

費用面を最優先するなら法テラス、スピードを重視するなら直接依頼が有力な選択肢となります。

法テラスの利用条件

収入に関する基準

法テラスの民事法律扶助制度を利用するには、申込者とその配偶者の手取り月収額が一定の基準を下回っている必要があります。これは、公的な支援を本当に必要としている方に届けるためです。

収入基準は、同居家族の人数や居住地(都市部か地方か)によって細かく定められています。例えば、東京などの大都市圏に住む単身者の場合、手取り月収がおおむね20万円以下であることが目安です。家族が1人増えるごとに基準額はおおむね3万円ずつ加算されます。

また、家賃や住宅ローンを支払っている場合は、その負担額の一部を収入基準額に加算できる特例があります。例えば、家賃5万円を支払っている単身者なら、基準額に一定額が上乗せされ、実質的な上限額が引き上げられます。収入の計算にはボーナスも含まれるため、自身の正確な収入状況を把握しておくことが重要です。

資産に関する基準

収入基準に加えて、申込者が保有する資産の総額も一定の基準内に収まっている必要があります。弁護士費用を自己資金で支払える余力がある場合は、公的な立て替え制度の対象外となるためです。

資産として審査されるのは、現金や預貯金だけでなく、不動産(自宅以外)、有価証券、生命保険の解約返戻金なども含まれます。将来の医療費や教育費など、近い将来に支出が確定している費用は、資産総額から差し引いて計算することが可能です。

資産基準の目安(現金・預貯金・不動産等の合計)
  • 単身者:180万円以下
  • 2人家族:250万円以下
  • 3人家族:270万円以下
  • 4人家族以上:300万円以下

無料相談の段階では主に現金・預貯金額で判断されますが、費用の立て替えを申請する際には、すべての資産に関する証明書類の提出が求められます。

自己破産の目的(免責の見込み)

法テラスの立て替え制度を利用するには、自己破産の最終目的である免責許可(借金の支払い義務の免除)を得られる見込みがあることが条件となります。これは、法テラスの支援が、最終的に法的な解決が見込める事案を対象としているためです。

下記のような免責不許可事由に該当する場合、免責が認められない可能性があります。

免責不許可事由の例
  • 財産を隠したり、一部の債権者にだけ返済したりする行為
  • 過去7年以内に自己破産による免責を受けている
  • ギャンブルや浪費が借金の主な原因である

ただし、ギャンブルなどが原因の場合でも、裁判所の判断で免責が許可される裁量免責の可能性があります。そのため、弁護士との相談で、反省の態度を示し、生活再建への意欲を伝えることで、免責の見込みがあると判断されれば、法テラスを利用できる場合があります。

法テラス利用時の自己破産費用

費用の目安と内訳

法テラスを利用して自己破産(同時廃止事件)を行う場合、費用総額は約15万円から21万円が目安です。この費用は、一般的な法律事務所の相場(約30万円~50万円)よりも大幅に低く設定されています。

費用は、弁護士等に支払う「着手金」と、裁判所に納める印紙代などの「実費」で構成されます。着手金は債権者の数に応じて変動します。

債権者数 着手金 実費 合計費用
1社~10社 約13万円 約2万円 約15万円
11社~20社 約15万円 約2万円 約17万円
21社以上 約18万円 約2万円 約21万円
法テラス利用時の自己破産費用(同時廃止事件の目安)

この明確な料金体系により、利用者は手続き開始前に必要な費用を正確に把握でき、安心して手続きに臨むことができます。なお、過払い金が回収できた場合などを除き、原則として追加の報酬金は発生しません。

弁護士・司法書士費用の立替制度

法テラスの立替制度は、自己破産に必要な着手金や実費を法テラスが利用者に代わって専門家へ支払い、利用者は後から分割で返済する仕組みです。これにより、手元に資金がない方でも、すぐに専門家のサポートを受けることができます。

制度の主な特徴は以下の通りです。

立替制度の主な特徴
  • 法テラスから専門家へ費用が直接支払われるため、利用者は現金を準備する必要がない
  • 立て替えてもらった費用には利息が一切かからない
  • 返済は月々5,000円~10,000円程度の無理のない金額で分割して行う
  • 返済期間は原則として3年以内で設定される

この制度は、経済的に困窮している方が借金問題解決のスタートラインに立つための、非常に実用的な支援策です。

生活保護受給者の償還免除

生活保護を受給している方が法テラスを利用する場合、立て替えられた費用の返済が猶予・免除される特例措置があります。生活保護費は最低限度の生活を維持するためのものであり、返済に充てるべきではないという考え方に基づいています。

自己破産の手続き中に生活保護を受給している場合、法テラスへの返済は一時的に猶予されます。そして、手続きがすべて終了した時点でも生活保護の受給が継続していれば、法テラスに「償還免除」の申請ができます。

この申請が認められると、立て替えられた弁護士費用等の返済が全額免除されます。つまり、実質的な自己負担なしで自己破産を終えることが可能です。これは、経済的に最も厳しい状況にある方にとって、人生を再出発させるための強力な支援となります。

立替制度の対象外となる費用(予納金など)

法テラスの立替制度は万能ではなく、一部対象外となる費用があります。代表的なものが、管財事件となった場合に裁判所へ納める予納金です。

自己破産手続きにおいて、一定額以上の財産がある場合や、免責不許可事由の調査が必要な場合は、破産管財人が選任される「管財事件」となります。このとき、破産管財人の報酬として、最低でも約20万円の予納金を裁判所に納める必要があります。

この予納金は、法テラスの立替制度の対象外であるため、利用者自身で用意しなければなりません。管財事件になる可能性が高い場合は、弁護士と相談し、予納金の準備についても計画を立てておく必要があります。

法テラスでの手続きの流れ

手順1:相談予約から無料法律相談

最初に、法テラスまたは法テラスと契約している専門家の事務所に連絡し、無料法律相談の予約を取ります。この相談で、自己破産が適切な解決策か、法テラスの利用条件を満たすかといった点を確認します。

相談予約の方法
  • 法テラスのサポートダイヤルや地方事務所に電話する
  • 法テラスと契約している弁護士・司法書士事務所に直接連絡する

相談当日は、借入状況、収入、資産に関する資料を持参し、弁護士に現状を正確に説明します。無料相談は同一案件につき3回まで利用可能です。弁護士が自己破産による解決が妥当と判断すれば、次のステップに進みます。

手順2:援助申込と審査

無料相談後、弁護士のサポートを受けながら、費用の立て替え(代理援助)を法テラスに申し込みます。公的資金を利用するため、利用条件を満たしているかを確認する厳格な書類審査が行われます。

利用者は、弁護士の指示に従って必要な証明書類を準備・提出します。

審査に必要な書類の例
  • 住民票
  • 給与明細(直近2~3ヶ月分)
  • 課税証明書
  • 預貯金通帳の写し(全ページ)

書類提出後、審査には通常2週間から1ヶ月程度かかります。この間はまだ正式な契約前なので、債権者からの督促は続きます。審査をスムーズに進めるためにも、書類は迅速かつ正確に準備することが大切です。

手順3:専門家選任と破産申立て

審査に通過し「援助開始決定」の通知が届くと、弁護士と正式に契約を結び、自己破産の申立て準備が本格的に始まります。契約が成立すると、弁護士は直ちに債権者へ受任通知を発送します。この通知が届けば、債権者からの直接の督促は法律で禁止されます。

その後は、弁護士と協力しながら裁判所に提出する申立書類を作成し、準備が整い次第、管轄の地方裁判所へ自己破産を申し立てます。この段階に至ると、日々の取り立てから解放され、落ち着いて手続きに専念できるようになります。

手順4:手続き終了後の費用償還

裁判所から免責許可決定を受け、自己破産手続きがすべて終了すると、法テラスが立て替えた費用の償還(分割返済)が始まります。これは、支援制度を維持し、次に助けを必要とする人のために役立てるための重要な義務です。

返済は、利用者の経済状況に応じて月々5,000円から10,000円程度の金額が設定され、指定口座からの自動引き落としで行われます。自己破産により借金の返済がなくなっているため、この償還は生活再建の妨げにならない範囲で計画的に行うことが可能です。もし病気や失業などで返済が困難になった場合は、返済の一時猶予を相談することもできます。

法テラスを利用するメリット

弁護士費用を立て替えてもらえる

最大のメリットは、自己破産に必要な弁護士費用を全額立て替えてもらえる点です。手元にまとまった資金がなくても、すぐに専門家へ依頼し、借金問題の解決に着手できます。通常、法律事務所では契約時に数十万円の着手金が必要となりますが、法テラスを利用すればこの初期費用を準備する必要がありません。費用面がネックで手続きをためらっていた方にとって、非常に大きな利点です。

費用が比較的低額に抑えられる

法テラスが定める報酬基準は、一般的な法律事務所の相場よりも大幅に低額です。これは、公的機関として利用者の経済的負担を軽減することを目的としているためです。民間事務所では30万円~50万円かかることが多い自己破産費用が、法テラスでは約15万円~21万円程度に抑えられます。費用総額が明確かつ低価格なため、将来の返済計画も立てやすくなります。

分割での返済(償還)が可能

立て替えてもらった費用は、無利息の分割払いで返済できます。返済額は月々5,000円~10,000円程度と少額に設定されるため、自己破産後の生活再建を圧迫することがありません。利息が付かないため、返済総額が膨らむ心配もなく、立て替えられた元金のみを自身のペースで計画的に返済していくことができます。これは、経済的な再スタートを切る上で非常に重要な支援です。

法テラス利用のデメリットと注意点

審査に時間がかかる場合がある

法テラスの利用には厳格な審査があり、申し込みから援助開始決定まで数週間から1ヶ月程度の時間がかかります。この審査期間中は、弁護士が正式な代理人ではないため、債権者からの督促が止まりません。給与の差し押さえが迫っているなど、一刻も早い対応が必要な場合には、審査期間が大きなデメリットとなる可能性があります。スピードを重視する場合は、即日対応が可能な民間の法律事務所への直接依頼を検討する必要があります。

弁護士・司法書士を自由に選べない

法テラスの窓口で相談を申し込んだ場合、担当する弁護士や司法書士を自分で選ぶことは原則できません。法テラスの登録名簿の中から、相談内容や地域に応じて自動的に割り当てられるためです。自己破産は人生を左右する重要な手続きであり、経験豊富で相性の良い専門家に依頼したいと思うのは当然です。しかし、紹介された専門家が必ずしも破産実務に精通しているとは限らず、相性に問題があっても変更は簡単ではありません。

必ずしも審査に通過するとは限らない

法テラスの利用には収入・資産の基準があるため、申請しても審査に落ちてしまう可能性があります。例えば、本人の収入は基準内でも、同居する配偶者の収入を合算すると基準を超えてしまうケースや、生命保険の解約返戻金など、想定していなかった資産が基準額を上回ってしまうケースがあります。審査に落ちるリスクを念頭に置き、事前に利用条件をよく確認しておくことが重要です。

法テラス契約弁護士への「持ち込み」という選択肢

「担当弁護士を選べない」というデメリットを解消する方法として、「持ち込み」という制度があります。これは、法テラスと契約している弁護士事務所を自分で探し、直接その事務所を訪れて「法テラスの制度を使いたい」と依頼する方法です。

この方法なら、自己破産に強く、信頼できる弁護士を自分で選んだ上で、法テラスの低額な費用と立替制度を利用することができます。専門家の質と費用の安さという両方のメリットを得られるため、法テラスの利用を検討する際は、まず「法テラス対応」を明記している弁護士事務所を探し、直接相談してみるのが最も賢明な方法と言えます。

自己破産と法テラスのよくある質問

審査に落ちたらどうすればよいですか?

法テラスの審査に落ちてしまっても、自己破産を諦める必要はありません。いくつかの対処法があります。

審査に落ちた場合の選択肢
  • 審査結果に不服申し立てを行う:書類の不備などが原因の場合、正しい書類を添えて再審査を求めることができます(通知から30日以内)。
  • 分割払いに対応する民間の法律事務所を探す:法テラスを利用せず、着手金の分割払いや後払いに柔軟に応じてくれる事務所を自分で探して依頼します。

審査に落ちたからといって道が閉ざされるわけではないので、速やかに次の行動に移ることが大切です。

紹介された専門家は変更できますか?

原則として一度選任された専門家を安易に変更することは推奨されませんが、方針が全く合わない、連絡が取れないなど正当な理由がある場合は、法テラスの地方事務所に相談することで変更が可能な場合があります。ただし、変更手続きには時間がかかり、それまでの業務に対する費用が発生する可能性もあるため、まずは担当の専門家と十分にコミュニケーションを取ることが重要です。

家族や会社に知られずに利用できますか?

弁護士や司法書士には守秘義務があるため、法テラスや専門家から家族や勤務先に連絡がいくことはなく、手続きの事実が直接漏れることは原則ありません。連絡は個人の携帯電話に、郵便物は事務所名ではなく個人名で送ってもらうなどの配慮を依頼できます。

ただし、生計を共にする家族の収入証明書の提出が必要な場合や、会社から退職金見込額証明書を取り付ける必要がある場合には、手続きの過程で知られる可能性はゼロではありません。絶対に秘密にしたい場合は、その旨を弁護士に強く伝え、対策を相談しましょう。

手続き中に収入を得た場合の償還は?

自己破産手続き中や終了後に就職するなどして収入状況が改善した場合、法テラスへの月々の返済額が見直されることがあります。また、手続きの過程で過払い金が回収できた場合は、そのお金はまず法テラスへの立替金の一括返済に充当されます。経済状況に変化があった場合は、速やかに担当弁護士または法テラスに報告する義務があります。

収入基準を少し超えても相談可能ですか?

収入が基準をわずかに超えている場合でも、利用できる可能性があります。例えば、高額な医療費や子どもの教育費など、家計を圧迫する特別な事情がある場合、その支出額を収入から控除して審査してもらえる裁量的な判断が働くことがあるからです。基準額だけで諦めずに、まずは家計全体の状況がわかる資料を持参し、法テラスの窓口や弁護士に直接相談してみることをお勧めします。

ギャンブルや浪費が原因でも利用できますか?

借金の原因がギャンブルや浪費の場合、それらは免責不許可事由に該当しますが、法テラスの利用を諦める必要はありません。裁判官の裁量によって免責が認められる「裁量免責」という制度があるためです。弁護士との相談で、現在は深く反省し、生活再建に真摯に取り組んでいる姿勢を示すことができれば、免責の見込みがあるとして法テラスの援助を受けられる可能性は十分にあります。正直に事情を話し、専門家のアドバイスを仰ぐことが重要です。

まとめ:法テラスで自己破産を進めるためのポイント

法テラスを利用した自己破産は、弁護士費用を準備できない方でも経済的再生を目指せる重要な制度です。費用が低額で立替制度が利用できる大きなメリットがある一方、審査に時間がかかり、督促がすぐに止まらないなどのデメリットも理解しておく必要があります。費用を最優先するのか、手続きのスピードを重視するのかが、利用を判断する一つの軸となるでしょう。まずはご自身の収入や資産が利用条件を満たすかを確認し、法テラスの利用も可能な法律事務所へ相談してみることをお勧めします。本記事の内容は一般的な情報提供であり、個別の状況に応じた最適な手続きについては、必ず弁護士等の専門家にご相談ください。


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