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日本政策金融公庫の融資審査に落ちる原因とは?ケース別の対策と次のステップを解説

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日本政策金融公庫は事業者にとって心強い資金調達の選択肢ですが、その融資審査は決して簡単なものではありません。万が一審査に落ちてしまった場合、具体的な原因がわからなければ、次の対策を立てることも困難です。この記事では、日本政策金融公庫の融資審査に落ちる主な原因から、審査通過の可能性を高めるための具体的な準備、そして審査に落ちた後の対処法までを網羅的に解説します。

目次

日本政策金融公庫の融資審査に落ちる5つの主な原因

原因1:個人の信用情報に問題がある(クレジットヒストリー)

日本政策金融公庫の融資審査では、申込者の個人の信用情報(クレジットヒストリー)が厳格に確認されます。信用情報とは、クレジットカードやローンの利用履歴・返済状況の記録であり、金融機関は指定信用情報機関(CICなど)に照会して申込者の支払い能力や信頼性を判断します。

過去に金融事故の履歴があると、返済に対する誠実さや資金管理能力が低いとみなされ、審査に通過することは極めて困難になります。特に注意すべきは、自分では軽微と考えている滞納や、すでに解消した問題でも一定期間は記録として残る点です。

信用情報で問題となる主な記録
  • クレジットカードや各種ローンの返済遅延・延滞
  • 携帯電話端末代金の分割払いの滞納
  • 債務整理(任意整理、個人再生、自己破産)の履歴
  • 短期間における複数の金融機関への連続した融資申込
  • 他社からの借入額が年収などに対して過大である状態

自身の信用情報に不安がある場合は、事前に信用情報機関へ情報開示請求を行い、内容を確認しておくことが重要です。

原因2:自己資金が不足している、またはその形成過程が不透明

創業融資における自己資金は、事業への熱意と計画性を客観的に示す重要な指標です。制度上は「創業資金総額の10分の1以上」が要件ですが、実務上は総事業費の3割程度を準備していることが望ましいとされています。自己資金が少ないと、準備不足とみなされ、借入への依存度が高い不安定な事業と判断される傾向があります。

また、審査では単に口座残高の額だけでなく、その資金がどのように形成されたかという過程が重視されます。過去半年から1年程度の預金通帳を提出し、毎月の給与から計画的に貯蓄した経緯を示すことが理想的です。一方、出所が不明な資金や一時的に借り入れたお金は「見せ金」と判断され、自己資金として認められないばかりか、かえって心証を悪くする原因となります。

自己資金として認められにくいケース
  • 融資申込の直前に、出所不明のまとまった入金がある(見せ金)
  • 第三者から一時的に借り入れた返済義務のあるお金
  • 贈与契約書がなく、返済義務がないことを証明できない親族からの資金
  • タンス預金など、金融機関の記録で形成過程を客観的に証明できない現金

親族からの贈与を自己資金に含める場合は、贈与契約書を作成し、返済義務のない資金であることを明確に証明する必要があります。

原因3:事業計画の具体性や実現可能性が低い

事業計画書は、事業の将来性と返済能力を審査担当者に示すための最重要書類です。その内容が抽象的であったり、実現可能性が低いと判断されたりすると、審査に落ちる直接的な原因となります。

売上予測は精神論ではなく、客観的な市場調査や競合分析に基づいた論理的な根拠が必要です。また、資金使途も明確にする必要があり、設備投資であれば見積書、運転資金であれば具体的な算出根拠を示し、なぜその金額が必要なのかを説得力をもって説明しなければなりません。計画の緻密さが、事業の成功と確実な返済への信頼につながります。

低評価につながる事業計画書の特徴
  • 売上予測が精神論や希望的観測で、客観的な市場調査や根拠データがない
  • 資金使途が曖昧で、設備投資の見積書や運転資金の具体的な内訳が示されていない
  • 収支計画のコスト見積もりが甘く、利益を確保できる構造になっていない
  • 事業のリスク分析や、計画未達時の対策が十分に検討されていない
  • 記載内容と面談での経営者の説明に食い違いがある

原因4:税金や公共料金、社会保険料に未納・滞納がある

税金や公共料金、社会保険料の支払い状況は、経営者としての社会的責任感や基本的な資金管理能力を測る指標として厳しくチェックされます。日本政策金融公庫は政府系金融機関であり、その原資には税金も含まれるため、納税などの公的な義務を果たしていない事業者への融資は原則として行いません。

税金等の滞納は、資金繰りが悪化している証拠とみなされるだけでなく、融資した資金が事業ではなく滞納分の支払いに充てられるリスクがあると判断されます。たとえ事業計画が優れていても、基本的な支払いを怠っていると、融資の返済も滞る可能性が高いと評価されてしまいます。融資申込前には、これらの支払いに漏れがないかを確認し、もし未納があれば完済してから申請に臨むことが必須です。

審査でチェックされる主な支払い項目
  • 所得税、住民税、法人税、消費税などの国税・地方税
  • 年金や健康保険などの社会保険料
  • 電気、ガス、水道などの公共料金
  • 事業所の家賃や住宅ローン

原因5:希望融資額と事業規模・返済能力が見合っていない

希望する融資額が、事業の規模や計画上の収益力に対して過大である場合、返済能力を超えていると判断され審査に落ちる原因となります。金融機関は、事業計画から見込まれる利益で毎月の返済が十分に可能かどうかをシビアに評価します。

資金使途の根拠を明確にせず、漠然と多めの金額を申請することも避けるべきです。過剰な借入は、経営を圧迫するリスクや、事業外への資金流用を懸念させます。融資額は、必要な設備資金と運転資金を具体的に積み上げた上で、自己資金とのバランスを考慮して現実的な金額を設定する必要があります。

一般的に、創業融資における借入額は自己資金の2倍から3倍程度が一つの目安とされます。これを超える金額を希望する場合は、よほど高い収益性や確固たる事業基盤を示せない限り、経営者の金銭感覚や計画性を疑われる要因となりかねません。

【ケース別】創業融資と追加融資で異なる審査のポイント

創業融資で特に重視される点と審査落ちの理由

事業実績がまだ存在しない創業融資では、審査の焦点は「経営者の資質」「事業計画の確からしさ」に絞られます。実績がない分、申込者の過去の経験や準備状況から、事業を成功させられる人物かどうかを判断します。

全くの未経験分野での起業は、事業継続への懸念から審査が厳しくなる傾向があります。また、自己資金が極端に少ない場合や、その形成過程が不透明な場合も、事業への覚悟や準備が不足しているとみなされ、審査落ちの大きな要因となります。創業融資では、これらの要素を通じて「この経営者になら安心して資金を貸せる」という信頼を得ることが何よりも重要です。

創業融資で特に重視される3つのポイント
  • 経営者の資質と経験: これから始める事業分野での実務経験や専門知識があるか。
  • 自己資金の準備状況: 長期間かけて計画的に準備され、事業への熱意を示せるか。
  • 事業計画の実現可能性: 売上予測や資金計画に客観的な根拠があり、説得力があるか。

追加融資で特に重視される点と審査落ちの理由

すでに事業を営んでいる事業者が申し込む追加融資では、将来の計画以上に過去から現在に至るまでの「事業実績」「返済状況」が最も重要な審査ポイントとなります。

創業融資が「期待」で評価されるのに対し、追加融資は「結果」で評価されます。赤字決算が続いていたり、債務超過に陥っていたりするなど、業績が悪化している場合は、新たな返済は困難と判断されます。また、既存の借入金の返済に一度でも遅延があれば、信用は大きく損なわれます。追加融資を成功させるには、これまでの事業が順調に進んでおり、今回の融資によってさらに成長するという明確なストーリーと実績を示すことが不可欠です。

追加融資で特に重視される3つのポイント
  • 事業実績: 直近の決算書や試算表で、事業が計画通りに成長し、利益を出せているか。
  • 返済状況: 既存の借入金や税金・社会保険料を遅延なく誠実に支払っているか。
  • 資金使途の妥当性: 赤字補填などの後ろ向きな理由ではなく、事業拡大など前向きな投資であるか。

審査通過の可能性を高めるための具体的な準備

実現可能な事業計画書を作成し、収支計画の精度を高める

審査を通過するためには、希望的観測ではなく、客観的な根拠に基づいた実現可能な事業計画書の作成が不可欠です。精度の高い計画書は、事業の成功と確実な返済を約束する重要な資料となります。以下のポイントを押さえて、誰が読んでも納得できる計画書を目指しましょう。

実現可能な事業計画書を作成するポイント
  1. 売上計画の根拠を固める: 客単価、客数、市場調査データなどを用いて論理的に数値を積み上げる。
  2. 収支計画の精度を高める: 原価、人件費、家賃などのコストを正確に見積もり、利益が出る構造を示す。
  3. 資金使途を明確にする: 設備資金は見積書、運転資金は算出根拠を添付し、金額の妥当性を証明する。
  4. リスク対策を盛り込む: 計画が未達だった場合の代替案や資金繰り対策を具体的に記述する。

担当者との面談に備え、事業内容を明確に説明できるよう準備する

融資審査の面談は、書類だけでは伝わらない経営者の熱意や人柄をアピールする重要な機会です。提出した事業計画書の内容に基づき詳細な質問がされるため、記載内容を隅々まで理解し、自分の言葉で論理的に説明できるよう万全の準備をして臨みましょう。

担当者は、経営者自身が事業のリスクや課題を正しく認識しているかを見ています。曖昧な回答や書類との矛盾は、信頼を損なう原因となります。

面談準備のポイント
  • 事業計画書の完全な理解: 記載内容を自分の言葉で、数字の根拠まで含めて説明できるようにする。
  • 想定問答集の作成: 創業動機や売上根拠など、頻出の質問に対する回答を準備し、練習する。
  • 誠実な態度の徹底: 社会人としてのマナーを守り、厳しい質問にも冷静かつ前向きに回答する。
  • 一貫性の確保: 書類の内容と面談での発言に矛盾がないように注意する。

申込書類に不備がないかを確認し、正確に提出する

申込書類の不備や記載ミスは、審査が遅れる原因になるだけでなく、申込者の事務処理能力や計画性に対する評価を下げることにもつながります。提出前には、必要書類がすべて揃っているか、記載内容に誤りや矛盾がないかを徹底的に確認しましょう。

特に、経歴や他の借入状況について虚偽の申告をすることは絶対に避けるべきです。信用情報機関への照会などで必ず発覚し、その時点で信用を失い、審査に通過することはありません。丁寧に作成された完璧な書類は、事業に対する真摯な姿勢を伝える無言のアピールになります。

申込書類の最終チェックリスト
  • 借入申込書、創業計画書、本人確認書類など、必要書類がすべて揃っているか。
  • 各書類の記載内容に誤字脱字や記入漏れはないか。
  • 計画書の自己資金額と通帳コピーの残高など、書類間で数字に矛盾はないか。
  • 経歴や借入状況に虚偽の記載がないか。

共同経営者や役員の経歴・信用情報も審査対象になる可能性

法人の場合や共同経営者がいる場合、代表者だけでなく、他の役員の経歴や信用情報も審査に影響を与える可能性があります。金融機関は、経営チーム全体で返済能力や信頼性を評価するためです。

もし共同経営者や役員の中に、過去の金融事故や多額の借入など信用情報に問題がある人物がいると、会社全体の評価を下げる原因となりかねません。事前にパートナーの状況も確認し、懸念がある場合は役員構成を見直すなどの対策が必要です。それぞれの役割分担を明確にし、チーム全体で事業を成功に導ける体制であることをアピールすることが重要です。

万が一、審査に落ちてしまった場合の対処法と次のステップ

まずは審査に落ちた原因を冷静に分析する

審査に落ちた際は、落胆する気持ちを抑え、まずは原因を冷静に分析することが次のステップへの第一歩です。日本政策金融公庫は通常、不採択の理由を詳細に開示しませんが、担当者に問い合わせることで、改善点のヒントを得られる場合があります。

担当者から直接的なフィードバックが得られなくても、提出した書類や面談時のやり取りを振り返ることで、原因を推測することは可能です。何が不足していたのかを特定し、具体的な改善策を立てることが重要です。

審査落ちの原因を分析する方法
  • 担当者へのヒアリング: 可能な範囲で、審査落ちの理由や改善点についてアドバイスを求める。
  • 提出書類の再点検: 事業計画の甘さや自己資金比率など、審査基準と照らし合わせて見直す。
  • 面談の振り返り: 担当者の反応が鈍かった質問や、回答に窮した場面を思い出し、懸念点を推測する。
  • 信用情報の確認: CICなどの信用情報機関に情報開示請求を行い、ネガティブな情報がないか確認する。

事業計画を見直し、期間を空けて再申請を検討する

日本政策金融公庫への再申請は可能ですが、状況が何も変わらないまま短期間で申し込んでも、結果は同じです。一般的に、申込履歴が信用情報機関に残る期間も考慮し、最低でも6ヶ月程度は期間を空けることが推奨されます。

この期間は、審査落ちの原因となった弱点を克服するための重要な準備期間です。自己資金を積み増したり、事業計画をより具体的にブラッシュアップしたりと、前回よりも事業の実現可能性が高まったことを客観的に示せる状態を目指しましょう。

再申請までに取り組むべき改善策の例
  • 自己資金の積み増し: 毎月コツコツと貯蓄を続け、通帳に記録を残す。
  • 事業計画のブラッシュアップ: テストマーケティングやモニター調査を行い、売上予測の根拠を強化する。
  • 実績作り: 小規模でも事業を開始し、売上実績を作る(許認可の取得なども含む)。
  • 信用情報の回復: 滞納があれば解消し、正常な支払いを続ける。

日本政策金融公庫以外の資金調達方法も視野に入れる

日本政策金融公庫の融資が受けられなかったとしても、資金調達の道が完全に閉ざされたわけではありません。他の多様な選択肢を検討しましょう。

公庫の融資と並行して検討されることが多いのが、地方自治体が窓口となる「制度融資」です。また、融資以外にも、返済不要の補助金・助成金や、インターネットで資金を募るクラウドファンディングなど、様々な方法があります。自社の状況に合わせて、最適な手段を組み合わせることが大切です。

資金調達方法 特徴
制度融資 自治体・金融機関・信用保証協会が連携する融資。創業期でも利用しやすい。
補助金・助成金 国や自治体が提供する返済不要の資金。特定の要件を満たす必要がある。
クラウドファンディング インターネットを通じて不特定多数から少額ずつ資金を募る。
出資(エクイティファイナンス) ベンチャーキャピタルや個人投資家から資金提供を受け、株式を割り当てる。
ファクタリング 売掛債権(売掛金)を専門業者に売却し、早期に現金化する。
日本政策金融公庫以外の主な資金調達方法

再申請時には前回の審査落ち理由への改善策を具体的に示す

再申請に臨む際は、前回の審査から何がどう改善されたのかを、具体的かつ客観的な証拠をもって示すことが成功の鍵となります。

例えば、自己資金不足が原因だったなら、計画的に貯蓄を増やした通帳の記録を提示します。事業計画の甘さが指摘されたなら、テスト販売の実績や顧客からの仮契約書などを添付し、計画の確実性が向上したことをアピールします。このように、前回の審査における懸念点を払拭するための具体的なアクションと、その結果を示すことで、事業への真剣な姿勢と改善能力を評価され、審査通過の可能性を高めることができます。

日本政策金融公庫の融資に関するよくある質問

一度審査に落ちた場合、再申請はいつから可能ですか?

制度として明確な禁止期間はありませんが、実務上は前回の審査から6ヶ月程度空けるのが一般的です。これは、信用情報機関に融資の申込履歴が6ヶ月間登録されることや、審査落ちの原因を改善し、事業状況に具体的な進展を示すために、相応の期間が必要だからです。

赤字決算ですが、融資を受けることはできますか?

赤字決算であっても、融資を受けられる可能性はあります。ただし、その赤字が設備投資による一時的なものなど、理由が明確で、今後の事業計画によって黒字化する具体的な見通しが立っていることが条件です。一方で、慢性的・構造的な赤字で債務超過に陥っている場合は、返済能力が低いとみなされ、審査は非常に厳しくなります。

自己資金は具体的にいくらくらい用意すればよいですか?

制度上の要件は「創業資金総額の10分の1以上」ですが、審査を有利に進めるためには総事業費の3割(3分の1)程度の自己資金を準備することが望ましいとされています。自己資金の比率が高いほど、事業主の覚悟や計画性が評価され、金融機関からの信頼を得やすくなります。

面談ではどのようなことを重点的に質問されますか?

面談では主に「創業の動機」「事業経験・経歴」「事業内容(商品・サービスの強み)」「売上や収益の根拠」「自己資金の形成過程」などが質問されます。特に、事業計画書に記載した数値の根拠や、将来の資金繰りの見通しについて、経営者自身の言葉で論理的かつ情熱をもって説明できるかが重視されます。

税金や公共料金の支払いが一度でも遅れたら、審査に影響しますか?

はい、影響する可能性が高いです。特に、所得税や住民税などの税金に未納・滞納がある場合、融資を受けることはほぼ不可能です。公共料金や家賃の支払い遅れも、通帳の履歴から確認され、資金管理能力に問題ありと見なされるマイナス要因となります。審査前には全ての滞納を解消しておくことが必須です。

まとめ:審査落ちの原因を理解し、次の資金調達へつなげよう

日本政策金融公庫の融資審査では、個人の信用情報、自己資金の状況、事業計画の実現可能性、税金等の支払い状況といった点が総合的に評価されます。これらに共通するのは、経営者としての信頼性や返済能力を、客観的な事実や数値に基づいて証明できるかという視点です。創業融資では将来への期待値が、追加融資では過去の実績が特に重視されるため、自身の状況に合わせた準備が不可欠となります。万が一審査に落ちてしまった場合でも、原因を冷静に分析し、事業計画の改善や自己資金の積み増しを行うことで、再申請の道は開かれます。公庫からの融資が難しい場合でも、制度融資や補助金など他の選択肢も視野に入れ、多角的に事業継続の道を探ることが重要です。

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