人事労務

外国人労働者の解雇、適法な手続きと在留資格への影響【法務リスク回避】

経営リスクナビ編集部

外国人労働者の解雇は、在留資格への影響や特有の届出義務など、日本人従業員の場合とは異なる注意が必要です。適切な手順を踏まなければ、不当解雇として深刻なトラブルに発展しかねません。この記事では、解雇の基本ルールから外国人特有の注意点、具体的な行政手続きまでを分かりやすく解説し、企業が取るべきリスク予防策を明らかにします。

まず押さえるべき解雇の基本原則

日本人・外国人共通の解雇ルール

日本の労働法規は、国内で働くすべての労働者に国籍を問わず適用されます。したがって、外国人であることを理由に解雇したり、不利益な取り扱いをしたりすることは法律で固く禁じられています。

解雇が有効と認められるためには、「客観的に合理的な理由」があり、その理由が「社会通念上相当」であると認められる必要があります。この二つの要件を満たさない解雇は「解雇権の濫用」として無効になります(労働契約法第16条)。

企業は、解雇の理由や基準をあらかじめ就業規則に明記し、採用時に外国人労働者へ十分に説明して理解を得ておくことが、後のトラブルを防ぐ上で極めて重要です。

普通解雇の有効要件

普通解雇とは、労働者の能力不足や勤務態度の不良などを理由に、企業側から労働契約を終了させることです。しかし、単に「期待した成果を出せない」といった主観的な理由だけでは、有効な解雇とは認められません。

普通解雇を有効に行うためには、労働契約の継続が困難といえるほどの、客観的で合理的な理由が必要です。具体的には、以下のような点が総合的に判断されます。

普通解雇の有効性判断における考慮要素
  • 労働者の能力や適性が著しく欠如しており、改善の見込みがないこと
  • 業務上のミスが繰り返し発生し、企業に実質的な損害を与えていること
  • 職務に必要な適格性を欠き、他の従業員の業務に支障をきたしていること
  • 企業側が配置転換や十分な教育・指導を行うなど、解雇を回避するための努力を尽くしたこと

これらの要件は裁判所で厳格に審査されるため、解雇を強行する前に、まずは労働者との話し合いによる合意退職を目指すことが賢明です。

整理解雇の有効要件(4要件)

整理解雇とは、企業の経営不振などを理由に行う人員削減のことです。労働者側に落ち度がないため、特に厳しい有効要件が課されており、以下の4つの要件をすべて満たす必要があります。

整理解雇の4要件
  1. 人員削減の必要性: 企業の維持存続を図るために、人員削減を行わなければならないという高度な経営上の必要性があること。
  2. 解雇回避努力義務の履行: 希望退職者の募集、役員報酬の削減、新規採用の停止など、解雇を回避するために可能な限りの手段を尽くしていること。
  3. 被解雇者選定の合理性: 解雇対象者の選定基準が客観的・合理的であり、その運用が公平であること。
  4. 手続きの妥当性: 労働組合や労働者に対し、整理解雇の必要性、時期、規模、方法などについて十分に説明し、誠実に協議を行っていること。

これらの要件の一つでも欠けると、整理解雇は無効と判断される可能性が高まります。

懲戒解雇の有効要件

懲戒解雇は、労働者への制裁として行われる最も重い処分であり、その有効性が認められるためには極めて厳格な要件を満たす必要があります。

懲戒解雇が有効となるための主な要件
  • 就業規則上の根拠: 懲戒解雇の事由と内容が、あらかじめ就業規則に明記されていること。
  • 懲戒事由への該当性: 労働者の行為が、就業規則に定められた懲戒事由に客観的に該当する事実があること。
  • 処分の相当性: 行為の性質や態様、企業に与えた損害の程度に照らして、懲戒解雇という処分が社会通念上相当であること。
  • 適正な手続き: 労働者に対し、弁明の機会を与えるなど、処分に至るまでの手続きが適正に行われていること。

例えば、重大な経歴詐称、長期の無断欠勤、業務上の横領などが懲戒解雇の対象となり得ますが、手続きを一つでも怠ると、解雇が無効となるリスクがあります。

外国人労働者特有の注意点と届出義務

解雇が在留資格(ビザ)に与える影響

外国人労働者にとって、解雇は単に職を失うだけでなく、在留資格(ビザ)の基盤を揺るがす重大な事態につながります。「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザは、特定の企業で活動することを前提に許可されているためです。

解雇によって労働契約が終了すると、就労先がない状態となります。この状態が正当な理由なく3ヶ月以上続くと、出入国在留管理庁によって在留資格が取り消される可能性があります。解雇された外国人が日本での滞在を続けるには、速やかに転職先を見つけ、在留資格の変更などの手続きを行う必要がありますが、解雇という事実は審査において不利に働くことがあります。企業は、解雇が外国人の生活基盤を根底から覆す可能性を十分に理解し、日本人以上に慎重な判断を下す必要があります。

企業に課される届出義務の全体像

外国人労働者を解雇した場合、企業には労働法上の手続きに加え、各種行政機関への届出義務が課せられています。これらの届出を怠ると罰則の対象となる可能性があるため、確実な対応が求められます。

届出先 主な届出内容 提出期限の目安
出入国在留管理庁 中長期在留者の受入れに関する届出(契約の終了) 契約終了日から14日以内
ハローワーク 外国人雇用状況の届出(離職) 離職日の翌月末日まで
ハローワーク 雇用保険被保険者資格喪失届・離職証明書 離職日の翌日から10日以内
年金事務所 健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届 離職日から5日以内
市区町村 給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書 離職日の翌月10日まで
外国人労働者解雇時の主な届出先と内容

これらの手続きを漏れなく行うことは、企業のコンプライアンス遵守の観点からも非常に重要です。

不当解雇と訴訟リスクの予防策

外国人労働者との間では、言語や文化の違いから解雇をめぐる認識の齟齬が生じやすく、不当解雇として訴訟に発展するリスクが日本人よりも高い傾向にあります。訴訟で解雇が無効と判断された場合、解雇期間中の賃金の遡及払いや慰謝料など、企業は大きな金銭的負担を負うことになります。

こうしたリスクを予防するためには、日頃からの対策が不可欠です。

不当解雇リスクの予防策
  • 指導・注意の記録化: 業務上の問題点を指摘する際は、日時、内容、本人の反応などを具体的に文書で記録する。
  • 理解できる言語での伝達: 通訳を介したり翻訳文を渡したりするなど、本人が理解できる言語で指導や注意を行う。
  • 改善機会の提供: 具体的な改善目標と期間を設定し、改善の機会を十分に与える。
  • 解雇回避努力の実施: 他の部署への配置転換を検討するなど、解雇を避けるための努力を尽くし、その過程を記録する。

最終的に解雇が避けられない場合でも、これらの客観的な記録が、解雇の正当性を主張する上で重要な証拠となります。

解雇判断の前に:指導記録と改善機会の提供がリスクを左右する

解雇の有効性は、問題発生時の企業の対応に大きく左右されます。特に、日々の指導記録と、労働者に与えられた改善の機会の有無は、裁判所が解雇の合理性・相当性を判断する上で極めて重要な要素となります。

問題行動に対して口頭で注意するだけでなく、その都度、指導内容を具体的に記した文書を作成し、本人に交付・署名をもらうなどの対応が望まれます。指導を尽くしても改善が見られないという客観的な事実の積み重ねが、最終的に解雇という判断を正当化する根拠となります。したがって、企業は解雇を検討するずっと前の段階から、計画的に指導記録を作成・管理する体制を構築しておくべきです。

外国人労働者を解雇する手続きの流れ

①解雇予告または解雇予告手当の支払い

労働者を解雇する場合、原則として30日以上前に解雇を予告しなければなりません。もし30日前の予告ができない場合は、不足する日数分の平均賃金を「解雇予告手当」として支払う必要があります。例えば、即日解雇する場合は、30日分以上の平均賃金の支払いが必要です。

このルールは、労働者が次の仕事を探すための時間的・経済的な猶予を保障するもので、外国人労働者にも当然適用されます。ただし、労働者の重大な規律違反などを理由に労働基準監督署の「解雇予告除外認定」を受けた場合は、予告や手当なしでの即時解雇が可能です。しかし、この認定のハードルは非常に高いのが実情です。

②解雇理由証明書の交付

解雇された労働者から請求があった場合、企業は「解雇理由証明書」を遅滞なく交付する義務があります。この証明書には、労働者が請求した事項のみを記載し、就業規則のどの条文に該当するのかといった客観的かつ具体的な事実を記す必要があります。

外国人労働者の場合、この証明書は再就職活動だけでなく、在留資格の変更手続きなどで入国管理当局から提出を求められることがある重要な書類です。感情的な表現や請求されていない事項を記載すると、後のトラブルの原因となるため注意が必要です。

③社会保険・雇用保険の資格喪失手続

解雇に伴い、各種保険の資格喪失手続きを期限内に正確に行う必要があります。手続きの遅れは、労働者の失業手当の受給などに直接影響します。

主な社会保険・雇用保険の手続き
  • 雇用保険: 退職日の翌日から10日以内に、ハローワークへ「雇用保険被保険者資格喪失届」と「離職証明書」を提出します。
  • 健康保険・厚生年金保険: 退職日から5日以内に、年金事務所へ「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を提出します。健康保険証も回収し、添付して返却します。

これらの手続きは、日本人従業員の場合と全く同じです。帰国を予定している外国人が厚生年金の「脱退一時金」を請求する際にも、この資格喪失手続きが前提となります。

④ハローワークへの外国人雇用状況の届出

外国人労働者が離職した際は、雇用保険の加入状況にかかわらず、必ずハローワークへ「外国人雇用状況届出書」を提出しなければなりません。これは、国が外国人の雇用状況を把握するために、すべての事業主に課せられた義務です。

提出期限は離職した日の翌月末日までです。この届出を怠ったり、虚偽の届出を行ったりした場合は罰則の対象となるため、忘れずに手続きを行う必要があります。

⑤出入国在留管理庁への届出

企業は、外国人労働者との雇用契約が終了した日から14日以内に、出入国在留管理庁へその旨を届け出る義務があります。これは入管法に基づく手続きであり、在留資格の基礎となる所属機関との関係がなくなったことを国に報告する重要なものです。

届出は、「中長期在留者の受入れに関する届出」として、インターネット上の「出入国在留管理庁電子届出システム」または書面で行います。この届出を怠ると、企業が罰則の対象となるだけでなく、今後の外国人材の受け入れにも悪影響を及ぼす可能性があります。

解雇後の本人への情報提供:在留資格に関する案内と企業の責任範囲

解雇後のトラブルを避けるため、企業は外国人本人に対し、在留資格や帰国に関する情報を提供することが望まれます。これは法律上の義務ではありませんが、外国人雇用における社会的責任の一環と言えます。

解雇後に提供が望まれる情報
  • 在留資格が即時無効になるわけではないが、3ヶ月以上就労しないと取り消されるリスクがあること。
  • 転職活動をする場合、ハローワークや専門機関に相談できること。
  • 帰国する場合、市区町村での転出届やマイナンバーカードの返納などが必要になること。

こうした丁寧な情報提供が、円満な労使関係の終結につながります。

【在留資格別】解雇時の個別注意点

技能実習生の場合の留意事項

技能実習生は、日本の技術を母国へ移転することを目的とした「技能実習計画」に基づいて在留しているため、解雇には特別な配慮が必要です。原則として他の企業への転職は認められておらず、解雇されると帰国を余儀なくされます。

また、技能実習生は有期労働契約であることが多く、契約期間中の解雇には「やむを得ない事由」という、通常の解雇よりもさらに厳しい要件が求められます。企業の経営不振などを理由に解雇せざるを得ない場合は、監理団体や外国人技能実習機構と連携し、実習生が別の企業で実習を継続できるよう転籍先を探すなどの支援を尽くす義務があります。安易な解雇は制度の趣旨に反する行為として、厳しく問われます。

特定技能外国人の場合の留意事項

特定技能外国人は、深刻な人手不足に対応するための即戦力として期待されており、同一の業務分野内での転職の自由が認められています。そのため、解雇された場合でも、新たな就職先を見つけることで日本に在留し続けることが可能です。

企業には、解雇する特定技能外国人に対し、ハローワークへの同行や求人情報の提供といった転職支援を行うことが義務付けられています。また、会社都合で解雇した場合、その企業は「特定技能外国人を適正に受け入れていない」とみなされ、その後1年間は新たな特定技能外国人を受け入れることができなくなるという厳しいペナルティが課されます。特定技能外国人の解雇は、自社の将来の人材確保戦略にも直結する重大な判断となります。

よくある質問

Q. 解雇理由を母国語で伝える必要はありますか?

法律で母国語での説明が義務付けられているわけではありません。しかし、解雇は労働者の地位に重大な影響を与えるため、理由を正確に理解してもらうことが不可欠です。言葉の壁による誤解は、後に「不当解雇」として争われる原因となり得ます。トラブルを未然に防ぐためにも、通訳を介したり、母国語に翻訳した「解雇理由証明書」を交付したりするなど、本人が確実に理解できる方法で伝えることが強く推奨されます。

Q. 解雇した従業員の帰国費用は会社負担ですか?

帰国費用の負担義務は、在留資格によって異なります。

在留資格別の帰国費用負担義務
  • 特定技能: 本人が費用を負担できない場合、受入企業が帰国費用を負担することが義務付けられています。
  • 技能実習: 監理団体が一時的に立て替え、その後企業に請求するのが一般的です。
  • 技術・人文知識・国際業務など: 法律上の負担義務はありません。ただし、雇用契約書や就業規則で会社負担を定めている場合は、その定めに従う必要があります。

Q. 特定技能外国人を解雇した場合のペナルティは?

特定技能外国人を会社都合で解雇した場合、その企業は受入体制に問題があると判断され、ペナルティが課されます。具体的には、「過去1年以内に会社都合による特定技能外国人の離職者を出していないこと」が新たな受け入れの要件となっているため、解雇後1年間は新しい特定技能外国人を受け入れることができなくなります。これは企業の人材戦略に深刻な影響を及ぼすため、解雇の判断は極めて慎重に行う必要があります。

まとめ:外国人労働者の解雇は適正な手続きとリスク管理が鍵

本記事では、外国人労働者を解雇する際の法的な基本原則から、在留資格特有の注意点、具体的な手続きまでを解説しました。解雇の有効性は、日本人と同様に「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が厳しく問われ、特に事前の指導記録や改善機会の提供が重要となります。また、出入国在留管理庁やハローワークへの届出義務を怠ると罰則の対象となるため注意が必要です。特定技能外国人など在留資格によっては、解雇が企業の採用活動にペナルティを課す場合もあります。最終的な判断を下す前に、まずは合意退職を検討し、必要に応じて労働問題に詳しい専門家へ相談することをお勧めします。

Baseconnect株式会社
サイト運営会社

本メディアは、「企業が経営リスクを正しく知り、素早く動けるように」という想いから、Baseconnect株式会社が運営しています。

当社は、日本最大級の法人データベース「Musubu」において国内1200万件超の企業情報を掲げ、企業の変化の兆しを捉える情報基盤を整備しています。

加えて、与信管理・コンプライアンスチェック・法人確認を支援する「Riskdog」では、年間20億件のリスク情報をAI処理、日々4000以上のニュース媒体を自動取得、1.8億件のデータベース等を活用し、取引先の倒産・不正等の兆候の早期把握を支援しています。

記事URLをコピーしました