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外国人従業員の解雇|必要な手続き・在留資格への影響とトラブル回避策

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外国人従業員の雇用が一般化する中で、やむを得ず解雇を検討しなければならない場面も増えています。しかし、外国人従業員の解雇には、日本人従業員の場合とは異なり、在留資格(ビザ)への影響といった特有の法的な配慮が不可欠です。安易な判断は、不当解雇として深刻な労務トラブルに発展するリスクを伴います。この記事では、外国人従業員を解雇する際の基本原則から、在留資格別の注意点、具体的な手続き、トラブル回避策までを網羅的に解説します。

目次

外国人従業員の解雇における基本原則

日本人従業員と同様に労働基準法・労働契約法が適用される

日本国内の事業所で就労する外国人従業員には、国籍を問わず、日本人従業員と同様に日本の労働関係法令が適用されます。労働基準法第3条は、国籍を理由とする労働条件の差別的取扱いを禁止しており、これは解雇の場面でも同様です。

したがって、企業は在留資格の種類にかかわらず、外国人従業員を解雇する際には日本法に基づいた適正な手続き正当な理由が求められます。たとえ雇用契約で準拠法を外国法と定めても、日本の強行法規である労働基準法などの適用を免れることはできません。不法就労の状態であっても、労働者としての実態があれば労働基準法上の保護対象となり、労災保険なども適用される点には注意が必要です。

外国人従業員にも適用される主な労働関係法令
  • 労働基準法
  • 労働契約法
  • 最低賃金法
  • 労働安全衛生法
  • 労働者災害補償保険法

解雇権濫用法理と「客観的に合理的な理由」の必要性

日本の労働法では、使用者が労働者を自由に解雇することはできず、労働契約法第16条の「解雇権濫用法理」によって厳しく制限されています。このルールは外国人従業員にも等しく適用され、解雇が以下の2つの要件を満たさない場合、その解雇は無効と判断されます。

解雇権濫用法理の判断要素
  • 客観的に合理的な理由: 従業員の著しい能力不足や規律違反、経営上の必要性など、第三者から見ても解雇がやむを得ないと判断できる事実関係があること。
  • 社会通念上の相当性: 解雇理由に対し、解雇という処分が重すぎないか、解雇を回避するための努力が尽くされたかなどを総合的に判断して妥当であること。

外国人従業員の場合、言語の壁や文化・商慣習への不慣れが能力不足と見なされることがありますが、企業側が十分な教育や指導を行わずに解雇すれば、合理性や相当性が欠けるとして不当解雇と判断されるリスクが非常に高くなります。

解雇の種類とそれぞれの有効要件

普通解雇:能力不足や勤務態度不良などを理由とする場合

普通解雇は、従業員が労働契約上の義務を十分に果たせないこと(債務不履行)を理由に行われる解雇です。単に能力が低い、成績が悪いというだけでは解雇は認められず、企業が繰り返し注意・指導を行い、改善の機会を与えたにもかかわらず、改善の見込みがない場合に初めて有効と判断される可能性があります。特に、外国人従業員に対しては、言語や文化の違いを考慮した上で、配置転換や研修の実施など、解雇を回避するための努力を尽くすことが求められます。

普通解雇の主な理由
  • 著しい能力不足や成績不良
  • 協調性の欠如
  • 頻繁な遅刻や無断欠勤などの勤務態度不良

普通解雇を行うには、就業規則に解雇事由が明記されていること、および原則として30日以上前の解雇予告または解雇予告手当の支払いが必要です。

整理解雇:経営上の理由による人員削減の場合(4要件)

整理解雇は、企業の経営不振などを理由に人員削減を行うための解雇(リストラ)です。従業員側に責任がないため、その有効性は判例で確立された以下の4つの要件を総合的に考慮して、厳格に判断されます。

整理解雇の有効性を判断する4要件
  1. 人員削減の必要性: 経営危機回避のため人員削減が不可避であること。
  2. 解雇回避努力義務の履行: 希望退職募集や役員報酬の削減など、解雇以外の手段を尽くしたこと。
  3. 被解雇者選定の合理性: 解雇対象者の選定基準が客観的・公平であること。
  4. 手続きの妥当性: 労働組合や従業員へ十分な説明と協議を行ったこと。

特に、外国人従業員のみを解雇の対象とするなど、国籍を理由とした不合理な人選は、選定の合理性を欠き、違法な解雇と判断される可能性が極めて高いです。

懲戒解雇:重大な規律違反に対する制裁措置の場合

懲戒解雇は、従業員が企業の秩序を著しく乱す重大な規律違反を行った場合に、最も重い懲戒処分として行われる解雇です。懲戒解雇が有効となるためには、就業規則に懲戒事由が具体的に明記されていること、その事由に該当する客観的な事実があること、そして本人に弁明の機会を与えるなどの適正な手続きを踏むことが不可欠です。

懲戒解雇は再就職などに重大な不利益をもたらすため、裁判所はその有効性を極めて慎重に判断します。単なる能力不足や軽微なミスを理由とすることは認められません。

懲戒解雇の対象となりうる重大な規律違反行為の例
  • 業務上横領や窃盗などの犯罪行為
  • 重大な経歴詐称
  • 正当な理由のない長期間の無断欠勤
  • 悪質なハラスメント行為
  • 在留資格に関する虚偽申告

外国人特有の注意点:在留資格(ビザ)への影響

解雇による在留資格の取消しリスクと該当事由

外国人従業員が解雇されると、在留資格の基礎となる活動がなくなるため、在留資格が取り消されるリスクがあります。入管法では、正当な理由なく在留資格に係る活動を継続して3か月以上行っていない場合、在留資格取消しの対象となり得ます。

ただし、会社都合による解雇などで本人が再就職の意思を持って誠実に求職活動を行っている場合は、「正当な理由」があると認められ、直ちに在留資格が取り消されることは通常ありません。企業は、解雇した従業員が不法滞在とならないよう、ハローワークでの手続きなどについて情報提供を行うことが望ましいです。

在留資格取消しの判断における「正当な理由」
  • 「正当な理由」ありと判断されやすいケース: 会社都合による解雇で、本人が誠実に再就職活動を行っている場合。
  • 「正当な理由」なしと判断されやすいケース: 自己都合で退職後、特に理由なく再就職活動を行わずに放置している場合。

解雇後の再就職活動が可能な期間と条件

会社都合で解雇された外国人従業員は、現在保有する在留資格の在留期限まで、日本に滞在して再就職活動を行うことができます。在留期限が近づいても再就職先が決まらない場合は、一定の要件を満たせば在留資格を「特定活動(就職活動)」に変更し、さらに滞在を延長できる可能性があります。

「特定活動(就職活動)」ビザのポイント
  • 対象者: 主に会社都合で離職し、日本での再就職を希望する外国人。
  • 滞在期間: 6か月間、就職活動のための滞在が許可される。
  • その他: 資格外活動許可を得れば、週28時間以内のアルバイトが可能。

自己都合退職の場合は、原則としてこの特例の対象外となるため注意が必要です。

在留資格別の解雇に関する留意事項

「技能実習」における解雇と実習継続の可否

技能実習生は有期雇用契約であり、労働契約法第17条により「やむを得ない事由」がなければ契約期間中の解雇は認められません。能力不足や勤務態度不良などは、通常この「やむを得ない事由」には該当せず、解雇は無効となる可能性が高いです。企業の経営悪化など、実習生の責任ではない理由で実習が続けられなくなった場合、企業と監理団体は、実習生が別の企業で実習を継続できるよう、新たな実習先を探す義務を負います。不当な解雇を行った企業は、その後5年間、技能実習生の受入れができなくなるという重いペナルティが科されることがあります。

「特定技能」における解雇と受入企業の支援義務

特定技能外国人を受け入れる企業には、入管法に基づく特別な支援義務があります。会社都合で特定技能外国人を解雇する場合、企業は出入国在留管理庁への届出に加えて、当該外国人が安定して再就職できるよう支援する義務を負います。

特定技能外国人の解雇に伴う受入企業の主な義務
  • 出入国在留管理庁への届出(受入れ困難に係る届出書など)
  • 非自発的離職者に対する再就職支援(ハローワークへの案内、推薦状作成など)

これらの義務を怠った場合、企業はその後1年間、新たな特定技能外国人を受け入れられなくなる可能性があります。

「技術・人文知識・国際業務」など一般的な就労資格の場合

「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格を持つ従業員の場合、解雇の有効性は日本人と同様に労働契約法に基づいて判断されます。解雇された場合でも、在留資格に適合する業務内容の転職先を見つけることで、在留を継続することが可能です。企業は、解雇した従業員の再就職活動に支障が出ないよう、離職票などの必要書類を速やかに交付する義務があります。また、能力不足を理由とする解雇の場合、企業の教育体制が不十分であったと判断されれば、解雇が無効となるリスクがある点は他の従業員と同様です。

外国人従業員を解雇する際の具体的な手続きの流れ

解雇理由の整理と客観的な証拠の収集

解雇を検討する最初のステップは、解雇理由を明確にし、それを裏付ける客観的な証拠を十分に収集・整理することです。口頭での注意だけでは証拠として弱いため、文書で記録を残すことが極めて重要です。これらの証拠は、後に不当解雇として争われた際に、解雇の正当性を立証するための生命線となります。

客観的な証拠の例
  • タイムカード、勤怠記録(勤務態度不良の場合)
  • 業務日報、始末書、メール履歴(業務上のミスや能力不足の場合)
  • 指導書、面談記録(改善指導を行った記録)

30日以上前の解雇予告または解雇予告手当の支払い

労働基準法第20条に基づき、従業員を解雇する際には、以下のいずれかの措置をとる必要があります。このルールは外国人従業員にも例外なく適用されます。

解雇予告のルール
  • 原則: 少なくとも30日前に解雇を予告する。
  • 代替措置: 30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払うことで即時解雇が可能。
  • 組み合わせ: 予告日数が30日に満たない場合、不足日数分の解雇予告手当を支払う。

ただし、労働基準監督署長の「解雇予告除外認定」を受けた場合は、これらの支払いは不要となります。

解雇通知書の交付と退職関連書類の準備・発行

解雇の意思表示は、後のトラブルを防ぐため、必ず書面で行うべきです。「解雇通知書」には解雇日と解雇理由を明記します。また、従業員から請求された場合は、「解雇理由証明書」を遅滞なく交付する義務があります。退職時には、外国人従業員の在留資格手続きや失業給付の申請に不可欠な書類を確実に交付することが重要です。

解雇時に交付・準備する主な書類
  • 解雇通知書
  • 解雇理由証明書(本人から請求があった場合)
  • 雇用保険被保険者離職票
  • 源泉徴収票

解雇を通知する際の通訳同席や母国語書面の活用

外国人従業員に解雇を通知する際は、本人がその理由や条件を正確に理解できるよう、言語面での配慮が不可欠です。日本語での説明が不十分だと、後に「内容を理解していなかった」と主張され、トラブルに発展するおそれがあります。

言語面での配慮事項
  • 日本語能力が不十分な場合は通訳を同席させる。
  • 解雇通知書や説明資料を母国語や平易な日本語で用意する。
  • 重要な事項について本人が理解したことを確認する書面を取得する。

解雇に伴う行政機関への届出義務

ハローワークへの「外国人雇用状況の届出」

事業主は、外国人従業員が離職した際に、その状況をハローワークに届け出る義務があります。この届出を怠ったり、虚偽の届出をしたりした場合には、30万円以下の罰金が科される可能性があります。

「外国人雇用状況の届出」の概要
  • 提出義務者: 事業主
  • 提出先: 管轄のハローワーク
  • 提出期限(離職時): 雇用保険被保険者は離職日の翌日から10日以内、それ以外は離職した月の翌月末日まで
  • 対象: 特別永住者などを除くすべての外国人労働者

出入国在留管理庁への「所属機関等に関する届出」

従業員の離職に伴い、企業だけでなく外国人本人にも出入国在留管理庁への届出義務が生じる場合があります。特に「特定技能」の外国人を受け入れていた企業は、契約終了から14日以内にその旨を届け出る必要があります。その他の就労資格の場合、企業に直接の届出義務はありませんが、外国人本人には退職から14日以内の届出義務があるため、その旨を本人に案内することが望ましい対応です。

不当解雇などの労務トラブルを未然に防ぐための対策

就業規則の整備と多言語での周知徹底

労務トラブルを防ぐ基本は、解雇事由を含む就業規則を明確に整備し、全従業員に周知することです。外国人従業員に対しては、日本語の規則をただ見せるだけでは「周知」とは言えません。規則の翻訳版や、要点を母国語・平易な日本語でまとめた概要書を用意し、内容を確実に理解させる努力が求められます。

言語や文化の違いを前提とした丁寧なコミュニケーション

労務トラブルの多くはコミュニケーション不足に起因します。業務指示や注意指導は、日本の「暗黙の了解」を前提とせず、具体的かつ明確な言葉で伝えることが重要です。定期的な面談の機会を設け、業務上の課題や悩みを早期に把握し、解雇という事態に至る前に対処する姿勢が求められます。

解雇判断の前に弁護士など外部専門家へ相談する

解雇は法的なリスクが非常に高い経営判断です。解雇を検討する段階で、労働問題に詳しい弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談し、解雇の妥当性や手続きの進め方について助言を求めることを強く推奨します。専門家の客観的な視点を取り入れることで、不当解雇のリスクを大幅に軽減できます。

解雇回避努力の実行と記録(配置転換・再教育など)

解雇は、あらゆる手段を尽くしても雇用を維持できない場合の最終手段です。裁判では、解雇前に企業がどれだけ回避努力を行ったかが厳しく問われます。能力不足であれば再教育や配置転換を、経営不振であれば希望退職の募集など、具体的な努力を行い、そのプロセスを必ず記録として残しておくことが、解雇の正当性を支える上で不可欠です。

解雇回避努力の具体例と記録
  • 能力不足の場合: 再教育、研修、配置転換の実施と、その結果の記録。
  • 整理解雇の場合: 希望退職の募集、役員報酬削減などの実行記録。

外国人従業員の解雇に関するよくある質問

解雇された従業員は、すぐに帰国しなければなりませんか?

いいえ、直ちに帰国する必要はありません。会社都合による解雇の場合、本人が日本での再就職を希望し、誠実に求職活動を行うのであれば、現在保有する在留資格の在留期限まで日本に滞在できます。在留期限が近い場合でも、「特定活動(就職活動)」ビザへ変更することで、さらに6か月間滞在を延長できる可能性があります。

有期雇用の外国人社員を、契約期間の途中で解雇することは可能ですか?

原則として極めて困難です。有期雇用契約の期間中の解雇は、労働契約法第17条により「やむを得ない事由」がある場合に限定されます。この「やむを得ない事由」は、企業の倒産や従業員の重大な犯罪行為など、客観的に雇用継続が不可能な場合に限られ、単なる能力不足などでは認められにくいため、解雇は無効となるリスクが非常に高いです。

解雇を通知した後、本人が納得せず拒否した場合はどうすればよいですか?

法的に有効な解雇は、従業員の同意がなくても成立する一方的な意思表示です。しかし、本人が納得しない場合、労働審判や訴訟などの紛争に発展するリスクがあります。まずは、解雇理由を裏付ける客観的な証拠に基づき、冷静に説明を尽くすことが重要です。話がこじれるようであれば、弁護士などの専門家に対応を依頼するのが賢明です。紛争を未然に防ぐためには、いきなり解雇を通知するのではなく、退職勧奨によって合意退職を目指すことも有効な手段です。

まとめ:専門家と連携し、適法かつ慎重な手続きを

本記事では、外国人従業員を解雇する際の法的な枠組みと実務上の注意点を解説しました。最も重要な点は、国籍を問わず日本の労働契約法が厳格に適用されること、そして在留資格という特有の問題が絡むことです。解雇の有効性を判断する「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」は、言語や文化の違いを考慮した丁寧な指導や解雇回避努力が尽くされているかが厳しく問われます。また、解雇が従業員の在留資格に与える影響は大きく、企業側にもハローワークや入管庁への届出義務が課せられています。不当解雇のリスクを避け、円滑な手続きを進めるためにも、解雇を検討する初期段階で必ず労働問題に詳しい弁護士などの専門家に相談し、法的な妥当性を確認することが賢明です。

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