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解雇予告除外認定の申請方法|認定基準から様式の書き方まで実務解説

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従業員の重大な規律違反を理由に即時解雇を検討する際、解雇予告除外認定の申請様式や手続きについてお探しではないでしょうか。この手続きは労働基準法に関わるため、手順を誤ると法的なリスクを伴う可能性があります。適法に手続きを進めるためには、認定の基準や申請実務を正確に理解しておくことが不可欠です。この記事では、解雇予告除外認定の基本から、申請書の書き方、添付書類、注意点までを実務に沿って解説します。

解雇予告除外認定の基本

解雇予告制度と除外認定の目的

解雇予告制度は、突然の解雇から労働者の生活を守ることを目的としています。労働基準法第20条では、使用者が労働者を解雇する場合、少なくとも30日前の予告または30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)の支払いを義務付けています。これは、労働者に再就職の準備期間や当面の生活資金を保障するためです。

しかし、すべてのケースでこの義務を課すのは使用者にとって酷な場合があります。そこで設けられたのが「解雇予告除外認定」制度です。この制度は、特定の例外的な状況下で解雇予告や手当の支払いを免除し、労使間の公平性を保つことを目的としています。具体的には、天災事変で事業継続が不可能な場合や、労働者に極めて重大な非違行為があった場合などが該当し、使用者の過度な負担を軽減し、企業秩序を維持する役割を果たします。

認定を受けることの法的な意味

解雇予告除外認定を労働基準監督署長から受けることで、使用者は解雇予告手当を支払うことなく、労働者を即時に解雇することが法的に認められます。

通常、予告や手当なしに即時解雇を行うと労働基準法第20条違反となり、刑事罰(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)の対象となる可能性があります。しかし、事前に除外認定を得ていれば、この法的リスクを回避できます。

この認定は、企業がコンプライアンスを遵守しつつ、問題のある労働者に対して毅然とした対応を取るための正規の手続きです。金銭的負担の軽減だけでなく、適法に即時解雇を実行できるという点が、この制度の最も重要な法的な意味といえます。

誤解しやすい点:除外認定と懲戒解雇の有効性の関係

解雇予告除外認定と懲戒解雇の有効性は、全く別の基準で判断されるという点を理解しておくことが非常に重要です。

除外認定は、あくまで「解雇予告手当を支払わずに即時解雇する手続き」を認める行政上の判断です。これに対して、懲戒解雇そのものが有効か無効かは、解雇権の濫用に当たらないかという観点から民事裁判で判断されます。

したがって、労働基準監督署が除外認定を行ったからといって、その懲戒解雇が裁判で必ず有効になるわけではありません。実際に、除外認定が下りたにもかかわらず、後の裁判で解雇が無効とされた判例も存在します。除外認定とは別に、解雇自体の有効性は慎重に検討する必要があります。

除外認定が認められる基準

認定基準となる2つのケース

解雇予告除外認定が認められるのは、労働基準法第20条1項ただし書きに定められた、以下のいずれかのケースに該当する場合に限られます。

除外認定が認められるケース
  • 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合
  • 労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合

これらのいずれかに該当し、かつ所轄の労働基準監督署長が客観的な事実に基づき認定した場合にのみ、解雇予告義務が免除されます。

ケース1:天災事変などやむを得ない事由

「天災事変などやむを得ない事由」とは、地震、火災、洪水といった、事業主が最大限の注意を払っても避けることのできない突発的かつ不可抗力な事態を指します。これにより、事業の全部または大部分の継続が不可能になった場合に認定の対象となります。

該当すると考えられる例 該当しないと考えられる例
地震による工場の倒壊 経営予測の誤りによる資金難
事業主の過失によらない火災による事業所の焼失 税金の滞納処分による事業廃止
洪水による事業所の水没・流失 法令違反による機械の差押え
「やむを得ない事由」の該当例・非該当例

単なる経営不振や、事業主の経営上のリスクと見なされる事由は「やむを得ない事由」には当たりません。また、一部の設備が無事で事業の一部を継続できる場合や、一時的な操業停止にすぎない場合も認定されません。

ケース2:労働者の責に帰すべき事由

「労働者の責に帰すべき事由」とは、労働者に解雇されても仕方のない、極めて重大かつ悪質な非違行為があった場合を指します。これは、解雇予告による保護を与える必要がないほど、労働者側に大きな責任がある状態を意味します。

単なる勤務態度の不良や軽微な業務命令違反程度では認められません。労働者の非行の重大さと、会社が負う解雇予告義務を比較衡量し、予告手当を支払わせることが著しく不公平といえる事案に限定されます。社内での横領や傷害、重大な経歴詐称など、企業秩序を根本から揺るがす行為が典型例です。

重要なのは、この基準が会社の就業規則に定める懲戒解雇事由と必ずしも一致しない点です。就業規則上は懲戒解雇に該当しても、労働基準監督署が解雇予告の保護を不要とするほど重大ではないと判断すれば、除外認定は行われません。

「労働者の責」に該当する行為の具体例

労働者の責に帰すべき事由として、行政通達では以下のような行為が例示されています。

「労働者の責」に該当する行為の例
  • 刑法犯に類する行為:事業場内での窃盗、横領、傷害など。極めて軽微なものを除きます。
  • 職場規律を著しく乱す行為:賭博や風紀紊乱行為で、他の労働者に悪影響を及ぼす場合。
  • 重大な経歴詐称:採用条件の重要な要素となる経歴を偽った場合。
  • 他の事業所への転職:在籍のまま競合他社などに転職した場合。
  • 長期の無断欠勤:原則として2週間以上、正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合。

これらはあくまで例であり、個別の事案ごとに、労働者の地位や勤務状況、被害の程度、会社の対応などを総合的に考慮して、認定の可否が判断されます。

解雇予告除外認定の申請実務

申請から認定までの手続きフロー

解雇予告除外認定の申請から認定までの一般的な流れは以下の通りです。

申請から解雇実行までの流れ
  1. 所轄の労働基準監督署長に「解雇予告除外認定申請書」と添付書類を提出します。
  2. 労働基準監督署による事実調査が行われます(書類審査、使用者・労働者双方への事情聴取など)。
  3. 調査結果に基づき、労働基準監督署が認定の可否を審査します。
  4. 審査結果が「認定通知書」または「不認定通知書」として会社に交付されます。
  5. 認定通知書を受け取った後、対象労働者に解雇を通知し、即時解雇を実行します。

提出先と申請の適切なタイミング

申請書の提出先は、対象労働者が勤務する事業所の所在地を管轄する労働基準監督署です。本社が一括して管理している場合でも、実際に勤務している支店や工場の管轄署に提出します。

最も重要なのは申請のタイミングです。必ず対象労働者に解雇を通知する前に行わなければなりません。解雇を通告した後に申請した場合、万一不認定となった際には、解雇を通告した時点で労働基準法違反が確定してしまうため、実務上は絶対に避けるべきです。懲戒解雇の方針が決定したら、速やかに申請手続きを開始するのが鉄則です。

申請書(様式第3号)の書き方

労働者の責に帰すべき事由で申請する場合、所定の「様式第3号」を使用します。事業所や労働者の基本情報に加え、最も重要なのが「労働者の責に帰すべき事由」の欄です。

この欄には、認定の根拠となる事実を客観的かつ具体的に記載します。例えば「横領した」とだけ書くのではなく、「いつ、どこで、どのような手口で、いくら横領したか」といった5W1Hを明確に記述する必要があります。書ききれない場合は概要のみを記載し、詳細は別紙として添付します。第三者である監督官が正確に事実を理解できるよう、専門用語や社内用語は避け、簡潔にまとめることが求められます。

申請書作成における注意点

申請書を作成する上で最も重要なのは、記載するすべての事実を客観的な証拠で裏付けられるようにすることです。労働基準監督署は中立的な立場で判断するため、会社側の一方的な主張だけでは認定されません。

また、労働者の行為が就業規則のどの懲戒規定に違反するのかを明記することも重要です。申請後に監督署から追加の資料提出や説明を求められる場合に備え、関連資料を整理し、いつでも詳細に説明できるように準備しておく必要があります。事実関係に矛盾や不明瞭な点があると、調査が長引き、認定が遅れる原因となります。

申請時に添付すべき書類

申請時には、主張を裏付けるための証拠書類の添付が不可欠です。一般的に、以下の書類を正本または写しで用意し、労働基準監督署の指示に従って部数を提出します(多くの場合、2部ずつ求められます)。

主な添付書類の例
  • 労働者名簿、労働条件通知書:労働者の身分や雇用年月日を証明する書類
  • 就業規則の写し:該当する懲戒解雇事由が記載された部分
  • 疎明資料(客観的証拠):調査報告書、被害届、領収書、防犯カメラ映像、メールの履歴など
  • 本人の自認書・顛末書:非違行為を本人が認めていることを示す最も強力な証拠
  • 懲戒委員会の議事録:社内で適正な手続きが取られたことを示す書類
  • その他:告訴状の写し、新聞記事の写しなど、事案に関連する資料

これらの書類によって、会社の主張が客観的な事実に基づいていることを立証します。

労働者が非違行為を否認する場合の対応

対象労働者が非違行為を全面的に否認している場合、除外認定を受けるハードルは極めて高くなります。当事者の主張が対立し、事実認定が困難だと労働基準監督署が判断すると、不認定となる可能性が高いためです。

このような状況を避けるため、社内調査の段階で客観的な物的証拠を徹底的に収集することが不可欠です。言い逃れのできない証拠を固めた上で本人から事情を聴取し、事実を認める「自認書」や「顛末書」を取得しておくことが、スムーズな認定を得るための鍵となります。

よくある質問

Q. 解雇後の申請は可能ですか?

原則として解雇前の申請が必要です。解雇を通告した後に申請した場合、万一不認定となった際には、解雇を通告した時点で労働基準法違反が確定してしまうため、罰則のリスクを避けるためにも、必ず解雇を通知する前に申請してください。

Q. 認定までの期間はどのくらいですか?

事案によりますが、申請から認定または不認定の通知まで、標準的には1週間から2週間程度です。ただし、事案が複雑な場合や、労働者が事実を否認して調査が難航する場合には、1か月以上かかることもあります。

Q. 認定されなかった場合はどうなりますか?

不認定となった場合、その労働者を即時解雇するには原則通り30日分以上の解雇予告手当を支払う必要があります。あるいは、30日以上前に解雇を予告しなければなりません。不認定という事実は、将来的に解雇の有効性を巡る裁判になった際に、会社側に不利な要素として考慮される可能性があります。

Q. パートやアルバイトも対象ですか?

はい、対象となります。パートタイマーやアルバイトであっても、解雇予告制度の適用を受ける労働者であれば、解雇予告除外認定の対象となります。ただし、日雇い労働者や2か月以内の短期契約労働者、試用期間中の者(14日以内)など、そもそも解雇予告が不要な労働者については申請の必要がありません。

Q. 申請に費用はかかりますか?

労働基準監督署への申請自体に手数料などの費用はかかりません。ただし、申請手続きの準備や対応を社会保険労務士や弁護士に依頼する場合は、その専門家への報酬が別途発生します。

まとめ:解雇予告除外認定を適法に進めるための重要ポイント

解雇予告除外認定は、解雇予告手当を支払わずに即時解雇を可能にする行政手続きであり、そのためには「天災事変」または「労働者の責に帰すべき事由」という厳格な基準を満たす必要があります。重要なのは、この認定が解雇そのものの有効性を保証するものではなく、あくまで行政上の判断であるという点です。申請を成功させる鍵は、労働者の非違行為を裏付ける客観的な証拠を揃え、必ず解雇を通告する「前」に所轄の労働基準監督署へ申請することです。申請にあたっては、就業規則の懲戒規定との整合性を確認し、本人の自認書や顛末書、物的証拠などを準備することが求められます。本記事で解説したのは一般的な手続きであり、個別の事案における解雇の妥当性や具体的な申請方法については、弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談することをお勧めします。

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