手続

任意整理の「140万円の壁」とは?司法書士と弁護士の対応範囲と費用を比較解説

catfish_admin

任意整理を検討しているものの、1社あたりの借金額が140万円を超えそうで、司法書士に依頼できるのか不安に感じていませんか。司法書士には「140万円の壁」と呼ばれる業務範囲の制限があり、これを超えると代理人として交渉できなくなる可能性があります。この記事では、司法書士が対応できる債務額の上限について、法的根拠や具体的な判断基準を詳しく解説し、弁護士との違いや状況に応じた最適な相談先の選び方を明らかにします。

目次

司法書士の任意整理における「140万円の壁」とは

司法書士法が定める業務範囲と140万円の法的根拠

司法書士の業務範囲は司法書士法によって定められており、債務整理に関して代理権を行使できる範囲には上限があります。平成14年の法改正により、法務大臣の認定を受けた認定司法書士は、簡易裁判所における訴訟代理権が認められました。

この簡易裁判所が取り扱う民事事件の訴額(訴えの利益)の上限が140万円であるため、認定司法書士が代理人として交渉や訴訟を行える債権額も140万円以下と定められています。これが「140万円の壁」の法的根拠です。この権限を超える業務を行った場合、弁護士法第72条が禁じる非弁行為にあたり、刑事罰の対象となる可能性があります。そのため、司法書士に相談する際は、自身の債務状況が業務範囲内であるかを確認することが重要です。

認定司法書士が代理できる主な業務(簡易裁判所管轄)
  • 紛争の目的の価額が140万円以下の民事訴訟
  • 民事保全、民事調停、支払督促の手続き
  • 裁判外での和解交渉

基準となる「1社あたりの債権額」の具体的な意味

「140万円の壁」は、借金の総額ではなく、債権者1社ごとの個別の債権額で判断されます。そのため、借金総額が140万円を超えていても、司法書士に任意整理を依頼できるケースは多くあります。

この判断基準は、平成28年の最高裁判所の判決によって明確に示されました。複数の会社から借り入れがある多重債務の状態でも、1社あたりの金額が140万円以下であれば、司法書士による解決が可能です。

ケース 借入状況 借金総額 司法書士の対応
依頼できる例 A社:50万円, B社:80万円, C社:100万円 230万円 全ての会社(A,B,C社)に対して代理交渉が可能
一部依頼できない例 A社:160万円, B社:40万円 200万円 A社は代理不可、B社のみ代理可能
司法書士への依頼可否の判断例

最高裁判所の判例で示された「債権額」の解釈(利息・遅延損害金を含む)

140万円の基準となる「債権額」の具体的な計算方法については、平成28年6月27日の最高裁判決によって明確な解釈が示されました。この判例により、実務上の重要な論点が整理されています。

「140万円」の判断基準のポイント(最高裁判例)
  • 判断基準は、債権者ごとの個別の債権の元本額である。
  • 依頼者が受ける経済的利益の額(減額幅など)ではない。
  • 元本が140万円以下であれば、利息や遅延損害金を含めた請求総額が140万円を超えても代理可能。
  • 過払い金返還請求では、返還を求める過払い金元本が140万円を超える場合は代理できない。

このように、基準額の解釈には専門知識が必要です。ご自身の状況で司法書士が対応可能か正確に知るためには、専門家との面談時に詳細な債務状況を伝えて確認することが不可欠です。

見落としやすい注意点:クレジットカードのショッピング枠とキャッシング枠の合算

クレジットカードの任意整理を検討する際には、ショッピング利用分とキャッシング利用分の扱いに注意が必要です。これらは利用目的が異なりますが、法的には同一のカード会社に対する一つの債権とみなされ、残高を合算して判断されます。

クレジットカード債務の注意点
  • 同一カード会社のショッピング枠とキャッシング枠は合算して1つの債権として扱う。
  • 例:ショッピングで100万円、キャッシングで50万円の利用残高がある場合、合計は150万円となり140万円の基準を超える。
  • この場合、司法書士は代理人として任意整理の交渉ができない。

【業務範囲で比較】任意整理における弁護士と司法書士の違い

代理権の範囲の違い(簡易裁判所以外の訴訟対応)

任意整理の交渉がまとまらず、債権者から訴訟を起こされた場合、弁護士と司法書士では対応できる範囲が大きく異なります。弁護士は代理権に制限がなく、すべての裁判所で活動できますが、認定司法書士の代理権は簡易裁判所に限定されます。

専門家 対応可能な裁判所 備考
弁護士 すべての裁判所(簡易、地方、高等、最高) 訴額や審級の制限なく、一貫して代理人になれる。
認定司法書士 簡易裁判所のみ 地方裁判所に訴訟を提起された場合や、控訴されて審理の場が移った場合は代理人になれない。
弁護士と司法書士の訴訟代理権の範囲

もし地方裁判所での手続きに移行した場合、司法書士は代理人になれないため、依頼者本人が裁判所に出頭するか、新たに弁護士に依頼し直す必要があります。最初から弁護士に依頼すれば、手続きが複雑化しても一貫したサポートが受けられます。

140万円を超える債務への対応可否

弁護士は、取り扱う債権額に法的な上限がありません。1社あたり数千万円といった高額な債務であっても、問題なく代理人として交渉や訴訟を行えます。一方、司法書士は1社あたりの元金が140万円を超える債務については、代理権を持たないため交渉などを行えません。

専門家 140万円以下の債務 140万円を超える債務
弁護士 対応可能 対応可能
認定司法書士 対応可能 代理人として交渉不可(弁護士法違反のリスク)
1社あたりの債務額に対する対応

実務上、1社でも140万円を超える債務がある場合は、手続きの煩雑さや費用対効果を考慮し、すべての債務をまとめて弁護士に依頼するのが一般的です。

個人再生や自己破産への手続き移行の可否

収支状況から任意整理での返済が困難と判明し、個人再生や自己破産へ方針変更する場合、弁護士と司法書士の役割には明確な違いが生じます。これらの手続きは地方裁判所の管轄となるため、司法書士は代理人になれません。

専門家 役割 メリット・デメリット
弁護士 代理人として全ての手続きを代行 裁判所とのやり取りも一任でき、依頼者の負担が少ない。少額管財を利用しやすく予納金を抑えられる場合がある。
認定司法書士 書類作成代行者(代理権なし) 裁判所への申立ては本人名義となり、審尋(面接)には本人が出頭する必要がある。少額管財が利用できず予納金が高額になる可能性がある。
個人再生・自己破産への移行時の役割の違い

手続きが任意整理以外に移行する可能性を考慮すると、代理権の範囲が広い弁護士に依頼する方が、依頼者の負担や費用の面で有利になることが多いと言えます。

費用面から見た弁護士と司法書士の比較

相談料・着手金の一般的な相場

債務整理を依頼する際の費用は事務所ごとに異なりますが、一般的には司法書士の方が弁護士よりも低価格な傾向にあります。ただし、近年は弁護士事務所でも価格競争が進み、両者の差は小さくなっています。

費用項目 弁護士 司法書士 備考
相談料 無料〜5,000円/30分 無料〜5,000円/30分 近年は初回無料の事務所が多い
着手金(1社あたり) 2万円〜5万円程度 2万円〜4万円程度 司法書士の方がやや安い傾向がある
相談料・着手金の一般的な相場比較

減額報酬や過払い金報酬の算定基準

任意整理が成功した場合に発生する報酬の基準は、日本弁護士連合会や日本司法書士会連合会の指針もあり、弁護士と司法書士で大きな差はありません。

費用項目 弁護士・司法書士共通の相場 備考
減額報酬 減額された金額の11%程度 近年は減額報酬を請求しない事務所も増加
過払い金報酬(交渉) 回収額の22%程度 事務所による差は小さい
過払い金報酬(訴訟) 回収額の27.5%程度 事務所による差は小さい
成功報酬の一般的な相場比較

契約前には、報酬体系だけでなく、事務手数料などの追加費用がないか、総額でいくらかかるのかをしっかり確認することが重要です。

総額で見た場合の費用傾向と注意点

一般的に司法書士の方が費用を抑えやすい傾向にありますが、状況によっては弁護士に依頼した方が結果的にコストパフォーマンスに優れる場合があります。目先の着手金の安さだけでなく、トータルの費用対効果で判断することが大切です。

費用を比較する際の注意点
  • 手続きが自己破産などに移行した場合、司法書士では追加費用や手間が発生する可能性がある。
  • 140万円を超える過払い金が判明した場合、弁護士への依頼変更で二重の手間や費用がかかることがある。
  • 目先の着手金の安さだけでなく、総額とサービス内容で判断することが重要。
  • 複数の事務所から見積もりを取り、費用対効果を比較検討する。

【ケース別】弁護士と司法書士どちらに相談すべきかの判断基準

1社あたりの借入額が140万円以下と明確な場合

すべての借入先について、元本が1社あたり140万円以下であることが確実であれば、弁護士と司法書士のどちらを選んでも手続き上の支障はありません。この場合は、費用や専門家の対応、ご自身との相性を重視して選ぶと良いでしょう。費用を少しでも抑えたい場合は、司法書士が有力な選択肢となります。ただし、依頼する事務所が債務整理の実績が豊富かどうかは必ず確認しましょう。

1社あたりの借入額が140万円を超える可能性がある場合

1社でも借入元本が140万円を超えている、または超える可能性がある場合は、代理権に制限のない弁護士に相談すべきです。もし司法書士に依頼した後に140万円超であることが判明すると、その債権者については辞任せざるを得ず、改めて弁護士を探す手間と追加費用が発生するリスクがあります。金額の判断に少しでも不安があれば、最初から弁護士を選ぶ方が安全です。

任意整理以外の債務整理も視野に入れている場合

借金の総額が大きく、任意整理での返済が難しいと感じる場合は、個人再生や自己破産も視野に入れた相談が必要です。これらの手続きは地方裁判所が管轄するため、代理人として一貫したサポートが可能な弁護士への相談を強く推奨します。司法書士は書類作成の支援にとどまるため、裁判所への出頭など依頼者本人の負担が大きくなります。

複数社のうち1社だけ140万円を超える場合の依頼先の考え方

複数の借入先のうち1社だけが140万円を超えている場合、原則として弁護士に依頼し、すべての債務をまとめて整理してもらうのが最も効率的です。140万円超の1社だけを弁護士に、残りを司法書士に依頼する分業も理論上は可能ですが、窓口が2つになることで管理が煩雑になり、全体として最適な返済計画を立てにくくなります。また、費用が割高になる可能性もあるため、一人の専門家に一元管理を任せる方が賢明です。

任意整理の「140万円の壁」に関するよくある質問

借金の総額が140万円を超えていても、司法書士に依頼できますか?

はい、依頼できます。140万円の基準は借金総額ではなく、債権者1社ごとの元本額で判断されます。例えば、借金総額が300万円でも、各社の借入額がすべて140万円以下であれば、司法書士に依頼することが可能です。

司法書士に相談後、債務額が140万円超と判明した場合はどうなりますか?

債権調査の結果、1社でも元本が140万円を超えていることが判明した場合、司法書士はその債権者に関する代理権を失うため、辞任せざるを得ません。その場合、依頼者は改めて弁護士に依頼し直すか、ご自身でその債権者と交渉する必要が生じます。

なぜ司法書士の業務には140万円という金額制限があるのですか?

この制限は、認定司法書士に与えられた訴訟代理権が簡易裁判所の管轄範囲に限定されていることに由来します。簡易裁判所が取り扱うことができる民事事件の訴額の上限が140万円であるため、司法書士が代理できる金額もそれに合わせて140万円以下と定められています。

過払い金請求でも、140万円の壁は同様に適用されますか?

はい、適用されます。取り戻したい過払い金の元本額が140万円を超える場合、司法書士は代理人として交渉や訴訟を行うことはできません。この基準は最高裁判所の判例で確定しており、弁護士に依頼する必要があります。

最初の無料相談の時点で、弁護士か司法書士か決めておく必要がありますか?

必ずしも決めておく必要はありません。しかし、1社でも140万円を超える借入がある、またはその可能性がある場合は、最初から代理権に制限のない弁護士に相談する方が二度手間を防げます。多くの事務所が無料相談を実施しているので、まずは相談してみて、ご自身の状況や費用、専門家との相性を確認してから正式に依頼することをおすすめします。

まとめ:140万円の壁を理解し、最適な専門家を選びましょう

本記事では、任意整理における司法書士の「140万円の壁」について解説しました。この制限は、借金総額ではなく債権者1社ごとの元本額で判断され、140万円以下であれば司法書士も代理人として交渉可能です。しかし、1社でも元本が140万円を超える可能性がある場合や、将来的に個人再生・自己破産へ移行する可能性がある場合は、代理権に制限のない弁護士への相談が賢明です。費用面では司法書士が安価な傾向にありますが、手続きが複雑化するとかえって割高になるリスクも考慮しなければなりません。ご自身の状況でどちらが最適か判断に迷う場合は、まず無料相談を活用し、詳細な債務状況を伝えた上で専門家のアドバイスを受けることが、問題解決への第一歩となります。

Baseconnect株式会社
サイト運営会社

本メディアは、「企業が経営リスクを正しく知り、素早く動けるように」という想いから、Baseconnect株式会社が運営しています。当社は、企業取引や与信管理における“潜在的な経営リスクの兆候”を早期に察知・通知するサービス「Riskdog」も展開し、経営判断を支える情報インフラの提供を目指しています。

記事URLをコピーしました