手続

債務免除と贈与税の判断軸|法人税との関係と株主別の課税差

経営リスクナビ編集部

債務免除(借金の棒引き)を法人が受ける(または役員・親族・グループ会社が行う)局面では、法人税の債務免除益課税と、株主等個人側の贈与税(みなし贈与)が同時に論点化しやすく、当事者を法人だけに限定して判断すると見落としが生じます。とくに、債務免除益30,000,000円のように金額が大きいケースでは、課税の有無だけでなく納税資金や株主間の負担調整まで含めて検討が必要になります。放置すると、法人側で課税所得が発生したり、株価上昇を通じて親族株主等にみなし贈与が波及したりして、実行後の修正が難しくなる点が実務上の不利益です。本稿では、債務免除益課税とみなし贈与の切り分けを判断するために必要な確認順を、順を追って確認していきます。

債務免除の課税関係

法人税と贈与税の全体像

債務免除(借金の棒引き)は、債務者の財務状況等が悪化して返済が困難になった局面で、金融機関等の債権者が債権を放棄することを指します。法人が債務免除を受けた場合、免除により負債が消滅して純資産が増える経済的利益が生じるため、原則として債務免除益として益金算入され、法人税の課税対象になります(清算中の事業年度であっても損益法による所得計算で同様に扱われます)。

一方、個人が債務免除を受けた場合は、原則としてその経済的利益は所得として取り扱われ、所得税法36条1項(所得税法第36条)の枠組みで収入金額に当たるのが基本です。さらに、法人取引に見えても、債務免除による株価上昇などを通じて株主等へ利益が移転したと評価されると、相続税法9条(相続税法第9条)に基づくみなし贈与が別途問題になります。

同じ「債務免除」でも税目が分かれる典型パターン
  • 法人が免除を受ける:債務免除益が益金となり法人税の論点になります。
  • 個人が免除を受ける:原則として経済的利益は所得税の収入金額として整理します(所得税法第36条)。
  • 法人の債務免除で株価が上がる:株主に対して相続税法9条(相続税法第9条)のみなし贈与が問題になり得ます。

債務者と株主で税目が分かれる場面

債務免除の直接の受益者(債務が消える者)が法人であれば、まず法人側で債務免除益の益金算入が問題になります。他方で、債務免除によって法人の純資産が増え、結果として株式価値が上昇する場合、免除した債権者と異なる株主が存在すると、その株主が対価を支払わずに株価上昇の利益を得たと評価され得ます。この局面では、法人の処理が正しくても、株主側で相続税法9条(相続税法第9条)の枠組みによる贈与税(みなし贈与)が問題となるため、当事者を「法人だけ」で見ない整理が必要です。

また、債務免除は金融機関の貸付金の棒引き等で生じ得るものの、参照されている実務整理では「現実にはそれほど頻繁ではない」とされており、だからこそ発生したときは納税資金の確保を含めた対応が重要になります。

誰に経済的利益が移ったかで税目を切り分ける判断手順

課税関係の切り分けは、「形式」ではなく経済的利益の帰属を追うのが安全です。特に、法人の債務免除が株主課税(みなし贈与)に波及するかは、株主構成と株価上昇の有無に依存するため、社内で確認順を固定しておくと判断がぶれにくくなります。

税目を切り分けるための確認手順
  1. 免除により誰の債務が消滅したかを確定し、債務者が法人なら債務免除益として益金算入の要否を検討します。
  2. 免除前後で純資産が増えるかを確認し、株式価値が上昇するなら株主別に利益帰属を整理します。
  3. 免除した者と異なる個人株主が株価上昇の利益を受ける構造なら、相続税法9条(相続税法第9条)のみなし贈与該当性を検討します。
  4. 個人が免除益を受ける局面があるなら、所得税法36条(所得税法第36条)・44条の2(所得税法第44条の2)の適用可能性(収入計上・非課税)を併せて確認します。

債務免除益と法人税

債務免除益の益金算入の考え方

法人が債務免除を受けた場合、免除された債務額は、原則として債務免除益として益金算入されます。これは、本来返済すべき負債が消滅し、担税力に結び付く利益が生じたと整理されるためです。たとえ本業が赤字でも、土地などの資産売却益や債務免除益によって最終利益がプラスになれば法人税が生じ得る、という点は実務上の注意事項です。

清算中の事業年度でも、損益法に基づく所得計算である以上、債務免除益は益金算入されます。そのうえで、青色欠損金控除により課税所得がゼロになれば問題になりにくい一方、青色欠損金が控除前所得に満たない場合は課税が残り得ます。そこで、「残余財産がないことが見込まれる」要件を満たすと、期限切れ欠損金の損金算入特例(法人税法59条4項(法人税法第59条))の適用可否が重要な論点になります。

参照されているケースでは、清算法人が債務免除を受けた時点で債務免除益30,000,000円が生じ、給与2,700,000円・旅費交通費380,000円・その他経費200,000円・支払利息120,000円を計上した結果、当期純利益が26,600,000円となっています。他方で、残余財産確定時点の現金及び預金を800,000円のみ残し、残余財産が残らない状態であれば、期限切れ欠損金の使用が可能となり、欠損金合計額が当期純利益を上回る前提では課税所得が生じないように調整し得る、という整理が示されています。

債権者側の損金算入と寄附金認定

債権者側では、債権放棄による損失が常に全額損金になるわけではなく、回収可能性があるのに一方的に放棄すると寄附金と評価されるリスクがあります。寄附金に該当すると、損金算入は損金算入限度額の枠に制限され、超過部分が損金不算入となり得ます。

もっとも、事業再生局面では、合理的な再建計画に基づく債権放棄等で「相当な理由」があると認められる場合、法人税基本通達9-4-2により、その経済的利益は寄附金に該当しない(貸倒損失として扱う)とされています。また「子会社等」には資本関係の子会社に限られず、取引関係・人的関係・資金関係等で事業関連性を有する者も含まれ、法人税基本通達9-4-1注の整理では、金融機関の貸出先も含まれる点が実務上の射程です。

寄附金認定を避けるために「相当な理由」を説明しやすい枠組み
  • 合理的な再建計画に基づく債権放棄等であること(法税基通9-4-2の考え方)。
  • 対象が「子会社等」に当たり得ること(資本関係以外の事業関連性も含む:法税基通9-4-1注)。
  • 準則型私的整理手続(事業再生ADR、再生支援協議会の再生支援スキーム、私的整理GL等)に沿うこと(国税庁への文書照会で損金算入が確認された整理)。

債権者が法人グループ内にいる場合の寄附金認定と説明資料の分かれ目

法人グループ内(完全支配関係等)の債権放棄は、税務上「無償の利益供与」と見られやすく、寄附金認定やグループ法人税制上の調整の論点が出ます。他方、事業再生としての債権放棄が合理的な再建計画に基づき、相当な理由があると認められる場合には、法人税基本通達9-4-2の射程で寄附金に該当しない(貸倒損失)整理があり得ます。

また、会社法上も「責任の免除」には限界があり、取締役の責任は総株主の同意があれば原則として全額免除可能である一方、会社債権者との関係で分配可能額を超過した剰余金配当等に関する責任の免除は、総株主の同意があっても分配可能額の範囲でしか効力を生じません(会社法第462条、会社法第850条)。税務上の寄附金論点と、会社法上の手当て(有効な意思決定・手続)を分けて整備することが重要です。

税務調査で問われやすい説明資料(再建計画の合理性の裏付け)
  • 再建計画が合理的であることを示す計画書と前提データ(法税基通9-4-2の「相当な理由」の説明に使用)。
  • 資本関係に限らない事業関連性(取引・人的・資金関係)を整理した関係図や契約関係一覧(法税基通9-4-1注の射程の説明に使用)。
  • 取締役会等の意思決定資料と、会社法上の制約(会社法第462条、会社法第850条)を踏まえた手続整理メモ。
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みなし贈与の判断基準

相続税法9条の位置づけ

相続税法9条(相続税法第9条)は、贈与契約という形式がなくても、実質的に贈与と同様の経済的利益の移転があるときに課税関係を捉える包括規定です。債務免除が「法人の負債整理」であっても、結果として株価が上がり、特定の個人株主が対価負担なく利益を得る構造がある場合、みなし贈与の論点として検討対象になります。

本条は、当事者の主観(租税回避目的の有無)よりも、客観的に見て「一方が財産的価値を失い、他方が対価なく(又は著しく低い対価で)利益を得たか」によって整理されやすい点が実務上のポイントです。

法人から個人への非課税規定

「法人から個人へ無償移転があれば贈与税」という整理は常に成り立つわけではなく、個人側では所得税として整理される場面があります。参照されている整理でも、債務免除による経済的利益は原則として所得の計算上収入金額とされ(所得税法36条1項(所得税法第36条)、所得税基本通達36-15(5))、特に保証人たる個人の保証債務の減免・免除も、原則として経済的利益を構成し得るとされています。

一方で、資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難な場合に債務免除を受けたときは、その免除により受ける経済的利益の価額は総収入金額に算入しない(所得税法44条の2第1項(所得税法第44条の2))とされます。「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難」の解釈として、所得税基本通達44の2-1では、破産の免責許可決定民事再生の再生計画認可決定がなされると認められるような場合をいう、とされています。

回収困難なら生じない場合

みなし贈与(贈与税)の検討では、形式的に利益があるように見えても、実質的に弁済能力が失われている場合の取り扱いが重要です。所得税の整理としては、資力喪失・著しい弁済困難があるとき、債務免除による経済的利益を総収入金額に算入しない(所得税法第44条の2)という明文があり、判断の具体像として「破産の免責許可決定」や「民事再生の再生計画認可決定」が挙げられています(所基通44の2-1)。

このため、株主課税(みなし贈与)を検討する局面でも、債務免除の背景事情として、債務者(個人・法人)の資力・弁済可能性を客観資料で確認し、税目ごとの取り扱い(所得税の非課税・相続税法9条の該当性)を混同しない整理が必要です。

株主借入金の債務免除

役員借入金を免除する場合

役員借入金(株主等から会社への貸付金)を免除する場合、会社側では負債が消滅し、原則として債務免除益が発生して益金算入されます。本業が赤字でも、債務免除益で最終利益がプラスになれば法人税が生じ得るため、実行時点で納税資金の確保を含めた資金繰り計画が必要です(債権放棄は現実には頻繁でないものの、発生した場合に法人税が生じ得るという実務整理)。

また、節税の打ち手を検討する場合も、根拠のない金額感で判断せず、参照されているように、役員退職金の支給等で最終利益を減らして課税所得を圧縮するなど、実務上取り得る手段がある一方で、意思決定の合理性・証憑性が問われる点に留意が必要です。

株主構成別のみなし贈与

みなし贈与の有無は、債務免除そのものよりも、免除後の株価上昇の利益が誰に帰属したかで決まります。完全な一人会社で、免除した役員本人が株式価値上昇分を全て引き受ける構造なら、他者への価値移転がなく、みなし贈与の論点は相対的に小さくなります。

一方、親族株主や共同経営者など、免除した者以外の個人株主がいる場合、その個人株主は対価負担なく株価上昇の利益を得るため、相続税法9条(相続税法第9条)に基づくみなし贈与を否認しにくい構造になります。暦年贈与課税制度では、贈与税の基礎控除が年110万円で、1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与財産の合計から控除して課税価格を計算する、という基本も踏まえ、株価上昇額が基礎控除を超える設計になっていないかを検証します。

同族会社の株価上昇と贈与税

同族会社での債務免除は、会社の純資産を押し上げ、株式評価額の上昇につながりやすい行為です。参照されている実務整理では、贈与税は暦年課税(1月1日〜12月31日)で、基礎控除が110万円であることが示されています。したがって、債務免除による株価上昇が発生する場合は、株主ごとに「上昇分がどの程度か」「暦年課税の基礎控除に収まるか」を具体的に見積もり、資金負担まで含めて検討する必要があります。

また、実務上は「連年贈与(毎年同額の贈与)」が定期贈与とみなされ、最初の年に将来分の権利を一括で贈与したと扱われるリスクがある、という注意点も示されています。債務免除を複数年で分割する設計を検討する場合には、形式的な分割が直ちにリスク低減になるわけではない点に留意が必要です。

免除前後の株価算定で見落としやすい簿外債務・時価修正の確認順

株価上昇の有無は、帳簿上の純資産だけでは判断できず、評価の前提(簿外債務・時価修正)がずれると、みなし贈与の金額認定もずれます。特に、会社計算規則では、市場価格のある金銭債権は時価または適正な価格をもって貸借対照表価額とする(会社計算規則5条6項2号)など、会計上も時価付けが問題になる局面があります。また、1年内に弁済を受けられないことが明らかな破産債権・更正債権等は、貸借対照表上「投資その他の資産」に計上される整理(会社計算規則74条3項4号チ)もあり、資産区分・回収可能性評価が株価算定の前提に影響します。

株価算定の前提確認(簿外債務と時価修正)
  1. 帳簿外の負債(未払・係争・将来負担等)の有無を洗い出し、純資産の過大計上を防ぎます。
  2. 金銭債権等について市場価格の有無を確認し、時価または適正価格を用いる必要性を検討します(会社計算規則5条6項2号)。
  3. 回収が長期化する債権(破産債権等)がある場合、資産区分(投資その他の資産)と回収可能性の見立てを揃えます(会社計算規則74条3項4号チ)。
  4. 有価証券を時価評価する場合、外部情報(新聞・インターネット・証券会社報告書等)で期末時点の時価を入手し、帳簿価額との照合結果を残します。
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債務免除以外の整理手法

弁済と代物弁済の税務差

通常の弁済(現金返済)は、返済により新たな利益が発生しないため、原則として債務者側に「免除益」は生じません。これに対し代物弁済は、資産の移転を伴うため、資産側の譲渡損益や、債務額と資産時価の差額が問題になり得ます。

また、保証が絡む局面では、保証人個人の税務も併せて整理が必要です。保証債務の減免・免除は、原則として経済的利益として所得税法36条(所得税法第36条)の収入金額に該当し得る一方、資力喪失・著しい弁済困難がある場合は所得税法44条の2(所得税法第44条の2)により総収入不算入となり得ます。整理手法の選択は、法人側だけでなく関係者(保証人等)の課税関係まで含めて検討するのが安全です。

DESと債権放棄の比較

債権放棄は債務を無償で消滅させるため、債務者側で債務免除益が発生しやすいのに対し、DES(デット・エクイティ・スワップ)は債務を資本に振り替えるため、財務上は自己資本の増強に結び付きます。

税務上、参照されている整理では、いわゆる疑似DESでは債務消滅益は生じない一方、真正DESでは、DESにより発行する株式の評価額と債務額の差額が債務消滅益となる点に留意が必要とされています。DESを「課税が出にくい」と一括りにせず、手法類型と評価(株式評価額と債務額の差)を前提に検討する必要があります。

返済・DES・債権放棄のどれを選ぶかを決める3つの社内基準

選択肢の比較は、税務だけでなく資金繰り・株主間関係・手続の実現可能性まで含めて行う必要があります。

3つの社内基準(税務リスクの見落とし防止を優先)
  • 欠損金と清算・整理の状況を踏まえ、法人税法59条4項(法人税法第59条)の期限切れ欠損金の損金算入特例の適用可能性(特に「残余財産がないことが見込まれる」要件)を確認します。
  • 保証人たる個人等が関与する場合、免除益が所得税法36条(所得税法第36条)の収入金額となるか、所得税法44条の2(所得税法第44条の2)で総収入不算入となる事情があるかを確認します。
  • 株主構成と株価上昇の有無を基礎に、相続税法9条(相続税法第9条)のみなし贈与の波及を検討し、暦年課税の基礎控除(年110万円)の範囲との関係も試算します。

事業承継での確認事項

時期と財務内容の確認順序

事業承継局面では、債務免除を「資本政策・親族間調整」と一体で扱う必要があり、順序を誤ると法人税と贈与税(みなし贈与)の双方が想定外に発生します。特に、贈与税が暦年課税(1月1日〜12月31日)で、基礎控除が年110万円である点は、株価上昇の時期(どの年に課税関係が立つか)を考えるうえで重要です。

事業承継での確認順序(債務免除を使う前提のチェック)
  1. 現時点の財務内容(債務超過の規模等)を整理し、免除額の必要水準と実行可能性を把握します。
  2. 欠損金の残高と、清算や整理を含む状況に応じて法人税法59条4項(法人税法第59条)の適用可能性を確認します。
  3. 免除前後の株価上昇を試算し、株主ごとの利益帰属を整理したうえで相続税法9条(相続税法第9条)の該当性を検討します。
  4. 承継先(後継者)に贈与税負担が出る可能性がある場合、暦年課税の基礎控除(年110万円)と課税時期(どの年の贈与として整理されるか)を踏まえて設計します。

株価評価と申告資料の残し方

税務調査対応では、結論よりも「判断過程」と「前提資料」が問われます。株価評価は、免除前後の比較ができる形で前提を揃え、会社計算規則上の時価評価の考え方(市場価格のある金銭債権は時価または適正価格:会社計算規則5条6項2号)や、回収が長期化する債権の資産区分(会社計算規則74条3項4号チ)と整合する説明ができるようにしておくと、評価の合理性を補強できます。

保存しておきたい資料(株価上昇・再建合理性・意思決定の裏付け)
  • 債務免除の意思決定資料(取締役会議事録等)と、会社法上の手当てに関する整理メモ(会社法第462条、会社法第850条)。
  • 免除前後の株式評価の明細と、前提資料(簿外債務の検討メモ、時価評価の根拠資料)。
  • 有価証券を時価評価する場合の外部時価資料と帳簿価額の照合記録(期末時点の時価入手経路を含む)。
  • 事業再生としての債権放棄等であることを示す合理的な再建計画と、法税基通9-4-2に沿う説明資料。

よくある質問

債務免除益は必ず法人税の課税対象になりますか?

法人が受けた債務免除益は、原則として益金に算入され、法人税の課税対象になり得ます。本業が赤字でも、債務免除益で最終利益がプラスになれば法人税が生じ得る点は要注意です。

一方で、青色欠損金控除により課税所得がゼロになれば課税が実質的に生じないことがあります。また、清算中の事業年度でも債務免除益は益金算入されますが、「残余財産がないことが見込まれる」要件を満たす場合には、期限切れ欠損金の損金算入特例(法人税法59条4項(法人税法第59条))の適用可否が重要になります。参照されているケースでは、債務免除益30,000,000円が生じても、残余財産確定時点で現金及び預金800,000円のみを残す形で残余財産が残らない状態を作れば、期限切れ欠損金の使用により課税所得が生じないように対応し得る、という整理が示されています。

役員からの債務免除で役員個人に贈与税がかかりますか?

役員本人が会社への貸付金を免除した場合、役員は債権を放棄して損失を負担している側であり、役員個人が会社から無償で財産を取得する構造ではないため、役員本人に直ちに贈与税が課されるという整理には通常なりません。

問題になりやすいのは、債務免除によって会社の純資産が増え、株式価値が上昇し、その上昇分の利益が役員以外の個人株主(親族株主等)に帰属する場合です。この場合、相続税法9条(相続税法第9条)により、免除した役員から他の株主へみなし贈与があったと評価され得ます。株主側の贈与税負担の検討では、暦年課税の基礎控除が年110万円である点も踏まえて、株主別に影響額を試算することが実務的です。

債務超過ならみなし贈与は生じないと考えてよいですか?

債務免除後も債務超過が解消されず、株式価値が実質的に上がらないのであれば、株主に経済的利益が生じたとはいえず、みなし贈与(相続税法9条(相続税法第9条))が問題になりにくい方向性はあります。

ただし、帳簿上の債務超過だけで判断すると、評価の前提を誤るリスクがあります。市場価格のある金銭債権は時価または適正価格を貸借対照表価額とする考え方(会社計算規則5条6項2号)や、1年内に弁済を受けられないことが明らかな破産債権等の資産区分(会社計算規則74条3項4号チ)など、時価・回収可能性の見立てで純資産が動くことがあります。簿外債務や時価修正を含めた前提を揃えて株価を検証し、株主別の利益帰属を整理したうえで判断することが不可欠です。

まとめ:債務免除への対応で次にすべきこと

債務免除は、まず法人側で債務免除益の益金算入(清算中を含む)を検討しつつ、免除後の純資産増加が株価上昇を通じて株主等個人に移転していないかを、相続税法9条(相続税法第9条)の観点で切り分けるのが要点です。金額が大きい場合は、債務免除益30,000,000円のように課税が顕在化し得るため、欠損金(青色欠損金・期限切れ欠損金)や法人税法59条4項(法人税法第59条)の要件(「残余財産がないことが見込まれる」)も含め、実行前に着地点を確認しておく必要があります。個人側の論点が出るときは、所得税法36条(所得税法第36条)・44条の2(所得税法第44条の2)の整理(収入計上・総収入不算入)と、贈与税(みなし贈与)を混同しないことが判断軸になります。次のアクションとして、免除前後の株価算定の前提(簿外債務・時価修正)と株主構成を先に固め、再建計画や意思決定資料を整備したうえで、税理士等の専門家に個別事情を踏まえた確認を行うのが安全です。



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