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個人情報漏洩の原因と対策|外部攻撃と内部要因から体系的に解説

経営リスクナビ編集部

個人情報漏洩は、企業の信用と経営基盤を揺るがす重大なリスクです。サイバー攻撃の巧妙化や内部からの不正・ミスなど、その原因は多岐にわたり、対策は複雑化しています。効果的な対策を講じるためには、まず漏洩を引き起こす具体的な原因を正しく理解することが不可欠です。この記事では、最新の動向を踏まえ、個人情報漏洩の主な原因を「外部要因」と「内部要因」に分けて網羅的に解説し、企業が講じるべき具体的な対策までを明らかにします。

最新データで見る情報漏洩の動向

情報漏洩の原因ランキング【最新版】

東京商工リサーチの2024年1月発表の調査(対象期間:2023年)によると、上場企業とその子会社における個人情報の漏洩・紛失事故は、4年連続で過去最多を更新しました。最大の原因は「ウイルス感染・不正アクセス」で、全体の半数以上を占めています。サイバー攻撃の巧妙化を背景に、外部からの攻撃が急増していることがわかります。次いで多いのが「誤表示・誤送信」といったヒューマンエラーです。

また、情報処理推進機構(IPA)が発表した「情報セキュリティ10大脅威 2024」では、組織における脅威の上位を以下が占めており、企業は外部と内部の両面からの対策が求められます。

情報セキュリティ10大脅威 2024(組織編)トップ3
  • 1位: ランサムウェアによる被害
  • 2位: サプライチェーンの弱点を悪用した攻撃
  • 3位: 内部不正による情報漏洩

これらのデータは、高度化するサイバー攻撃への技術的な防御と、従業員の不注意や不正を防ぐための組織的・人的な対策の両方が不可欠であることを示しています。

漏洩事故が企業に与える損害

情報漏洩事故が発生すると、企業は経済的損失と社会的信用の失墜という深刻な損害を被ります。その影響は単発のインシデントにとどまらず、企業の経営基盤そのものを揺るがしかねません。

企業が被る主な損害
  • 損害賠償・見舞金の支払い: 漏洩した情報の性質や規模によっては、被害者への賠償額が巨額になる可能性があります。
  • 事後対応コスト: 原因究明、システム復旧、再発防止策の策定、コールセンター設置など、事後対応に膨大な費用と時間がかかります。
  • 法的制裁: 個人情報保護法に違反した場合、行政指導や最大1億円の罰金が科されるリスクがあります。
  • 社会的信用の失墜: 顧客離反や新規顧客獲得の困難を招き、中長期的な業績悪化に直結します。
  • 株価の下落: 上場企業の場合、情報管理体制の不備が投資家からの評価低下を招き、株価に影響を及ぼす恐れがあります。

このように、情報漏洩は企業の存続を危うくする重大なリスクです。そのため、被害を未然に防ぐための予防策に積極的に投資することが求められます。

外部要因による情報漏洩

不正アクセスとサイバー攻撃

悪意のある第三者による不正アクセスやサイバー攻撃は、情報漏洩の最も深刻な外部要因です。攻撃手口は年々巧妙化・多様化しており、企業は常に最新の脅威に対応する必要があります。

代表的なサイバー攻撃の手法
  • ランサムウェア: PCやサーバーのデータを暗号化して使用不能にし、復旧と引き換えに身代金を要求します。最近では、データを窃取し「公開する」と脅す二重脅迫の手口も増えています。
  • 標的型攻撃メール: 取引先や関係者を装った巧妙なメールで受信者を騙し、添付ファイル開封やリンククリックによってウイルスに感染させます。
  • 水飲み場型攻撃: 従業員が頻繁に閲覧するWebサイトを改ざんし、アクセスしただけでウイルスに感染させる手法です。

攻撃者は常にシステムの脆弱性や人間の心理的な隙を狙うため、侵入されることを前提とした多層的な防御策の構築が不可欠です。

Webサイトの脆弱性悪用

企業のWebサイトやWebアプリケーションに存在するセキュリティ上の弱点(脆弱性)を悪用されることも、大規模な情報漏洩につながります。

Webサイトの脆弱性を悪用する主な攻撃
  • SQLインジェクション: Webサイトの入力フォームに不正なデータベース操作命令を送り込み、顧客情報などのデータを不正に窃取・改ざんする攻撃です。
  • クロスサイトスクリプティング(XSS): 脆弱性のあるWebサイトに悪意のあるスクリプトを仕掛け、サイト訪問者のブラウザ上で実行させることで、個人情報を盗み出します。
  • ゼロデイ攻撃: システムの脆弱性が発見されてから、修正プログラムが提供されるまでの無防備な期間を狙って行われる攻撃で、防御が非常に困難です。

これらの攻撃を防ぐには、定期的な脆弱性診断の実施や、セキュリティパッチ(修正プログラム)の迅速な適用といった、システムの継続的な保守管理が重要です。

フィッシング詐欺による窃取

フィッシング詐欺は、実在する企業や公的機関を装ってユーザーを欺き、IDやパスワード、クレジットカード情報などを騙し取る手口です。近年、その手口はさらに巧妙化しています。

フィッシング詐欺の多様な手口
  • Eメール: 最も古典的ですが、生成AIの活用により、従来のような不自然な日本語が減り、見分けるのが困難になっています。
  • スミッシング: スマートフォンのSMS(ショートメッセージサービス)を利用して、偽サイトへ誘導します。
  • クイッシング: QRコードを悪用し、スマートフォンで読み取らせて不正なサイトにアクセスさせます。

従業員がフィッシング詐欺に遭うと、盗まれた認証情報から社内ネットワークへ不正アクセスされる危険性があります。従業員への教育を徹底するとともに、多要素認証の導入など技術的な対策を組み合わせることが求められます。

取引先や委託先が起点となるサプライチェーン攻撃

サプライチェーン攻撃とは、セキュリティ対策が強固な大企業などを直接狙うのではなく、対策が手薄になりがちな取引先や業務委託先を踏み台として侵入する攻撃手法です。攻撃者は、まず関連中小企業のシステムに侵入し、そこを経由してターゲット企業のネットワークにアクセスします。

自社の対策だけでは防ぐことが困難なため、取引先を含めたサプライチェーン全体でセキュリティ水準を維持し、相互に連携して対策を講じることが不可欠です。

内部要因による情報漏洩

従業員等による意図的な不正

従業員や元従業員など、内部関係者による意図的な情報の持ち出しは、外部からの攻撃以上に深刻な被害をもたらすことがあります。内部者は正規のアクセス権限を持つため、防御システムを容易に回避できるからです。

内部不正の主な動機
  • 金銭目的: 窃取した情報を情報ブローカーなどに売却する。
  • 転職先への手土産: 転職先での自身の評価を高めるために顧客リストや技術データを持ち出す。
  • 会社への不満・怨恨: 人事評価や待遇への不満から、報復目的で情報を漏洩させる。

対策としては、従業員のアクセス権限を必要最小限に絞り、重要な情報へのアクセスログを監視して不正行為を抑止する仕組みが重要です。また、公正な人事評価や良好な職場環境を整備し、不正の動機そのものを減らす取り組みも求められます。

人的ミスによる偶発的な漏洩

悪意がなくても、従業員の不注意や確認不足といったヒューマンエラーが、重大な情報漏洩事故を引き起こすケースは後を絶ちません。

主な人的ミスによる情報漏洩の例
  • メールの誤送信: 宛先間違いや、BCCで送るべき宛先をTOやCCに入れてしまうミス。
  • 記録媒体の紛失・盗難: ノートPCやUSBメモリ、スマートフォンなどを社外に置き忘れる。
  • Webサイトの誤公開: 設定ミスにより、非公開にすべき情報を誰でも閲覧できる状態にしてしまう。
  • 書類の誤廃棄: 機密情報が記載された書類をシュレッダー処理せず、そのまま捨ててしまう。

人的ミスを完全になくすことは困難ですが、送信前のダブルチェックの義務化や、業務用デバイスの暗号化といったルールと技術の両面から、ミスが発生しにくい環境を構築することが重要です。

情報管理体制の不備

情報管理に関する明確なルールや仕組みが整備されていない状態は、組織全体のセキュリティレベルを低下させ、情報漏洩の温床となります。

情報管理体制の不備の具体例
  • 情報資産の分類・管理が不十分: 機密情報と一般情報が区別されず、誰でも重要なデータにアクセスできる状態になっている。
  • アクセス権限の設定が曖昧: 業務に不要な従業員にも重要なデータへのアクセス権が付与されている。
  • シャドーITの横行: 会社が許可していない個人のクラウドサービスやデバイスを業務に利用し、管理の及ばないところで情報が扱われる。
  • OS・ソフトウェアの脆弱性放置: アップデートを怠り、セキュリティ上の弱点が解消されないままになっている。

企業は、守るべき情報資産を明確にし、その重要度に応じたアクセス権限を設定するなど、実効性のあるルールを策定・運用し、定期的に見直す必要があります。

見落としがちな退職者による情報持ち出しリスク

退職予定者や元従業員による情報持ち出しは、在職中の不正行為よりも発覚が遅れやすく、深刻な被害につながるリスクがあります。転職先でのキャリアアップなどを目的に、在職中に扱っていた顧客リストや技術データを不正に持ち出す事例が多発しています。

退職者による情報持ち出しへの対策
  • アクセス権限の即時削除: 退職が確定した従業員や退職者のアカウント、アクセス権限を速やかに無効化する。
  • 貸与PC・記録媒体の確実な回収: 会社から貸与したPC、スマートフォン、USBメモリなどを漏れなく回収する。
  • 秘密保持契約の締結: 退職時に改めて秘密保持に関する誓約書を取り交わし、情報持ち出しが法的な責任を伴うことを認識させる。

これらの手続きを徹底し、退職プロセスにおける情報管理を厳格に行うことが重要です。

講じるべき情報漏洩対策

システムで防御する技術的対策

技術的対策は、サイバー攻撃などの外部の脅威と、内部からの不正な情報持ち出しを防ぐための基盤です。システムの「入口」「内部」「出口」の各段階で対策を講じる多層防御の考え方が重要になります。

多層防御における技術的対策の例
  • 入口対策: ファイアウォールで不正通信を遮断し、ウイルス対策ソフトやスパムフィルターでマルウェアや不審なメールの侵入を防ぐ。
  • 内部対策: OSやソフトウェアを常に最新の状態に保ち、多要素認証を導入してなりすましによる不正アクセスを防止する。
  • 出口対策: ネットワーク通信を監視し、機密データが不正に外部へ送信されるのを検知・ブロックする。
  • 共通対策: PCのハードディスクやUSBメモリを暗号化し、万一の紛失・盗難に備えて情報が読み取れないようにする。

これらの対策を組み合わせることで、情報漏洩のリスクを大幅に低減できます。

体制を整備する組織的対策

組織的対策は、技術的対策を有効に機能させ、企業全体で一貫したセキュリティレベルを維持するための土台です。システム導入とあわせて、ルールと運用体制を構築します。

組織的対策の主なポイント
  • 情報セキュリティポリシーの策定: 守るべき情報資産を定義し、その取り扱いに関する全社的な基本方針とルールを文書化する。
  • 情報管理体制の構築: 最高情報セキュリティ責任者(CISO)を任命し、部門ごとに管理者を置くなど、責任の所在を明確にする。
  • アクセスログの取得と監視: 「誰が」「いつ」「どの情報に」アクセスしたかの記録を取得・分析し、不正の抑止と早期発見につなげる。
  • 定期的な監査とルールの見直し: 定めたルールが遵守されているかを確認し、新たな脅威や事業環境の変化に対応して継続的に改善する。

インシデント発生に備える報告体制と連絡網の整備

万が一情報漏洩事故(インシデント)が発生してしまった場合に備え、迅速かつ適切に対応するための事前の準備が被害を最小限に食い止める鍵となります。インシデントを発見した従業員が、誰に、どのように報告すべきかを明確に定めた報告ルートと連絡網を整備しておくことが不可欠です。報告を受けた担当部署から経営層や対策チームへ迅速に情報が伝達され、組織的な意思決定ができる体制を構築しておく必要があります。

意識を向上させる人的対策

どれほど高度なシステムやルールを導入しても、それを利用する従業員一人ひとりのセキュリティ意識が低ければ、情報漏洩は防げません。人的対策は、全ての従業員をセキュリティの担い手とするための重要な取り組みです。

人的対策の具体的な取り組み
  • 定期的なセキュリティ研修の実施: 最新の攻撃手口や情報漏洩事例を学び、全従業員がリスクを自分事として認識する機会を設ける。
  • 標的型攻撃メール訓練の実施: 疑似的な攻撃メールを用いて、不審なメールへの対処法や報告手順を実践的に習得させる。
  • 日常業務における行動基準の周知徹底: パスワードの適切な管理や、機密書類の取り扱いなど、日々の業務で守るべきルールを明確にする。
  • ミスを報告しやすい職場環境の構築: ミスを隠蔽せず速やかに報告できる組織風土を醸成し、被害の拡大を防ぐ。

よくある質問

中小企業で特に注意すべき原因は?

中小企業では、経営資源の制約からセキュリティ対策が後手に回りやすく、特有のリスクに注意が必要です。

中小企業が特に注意すべき情報漏洩原因
  • サプライチェーン攻撃の標的化: 対策が強固な大企業への侵入経路として、取引関係にあるセキュリティの手薄な中小企業が狙われやすくなっています。
  • 基本的なセキュリティ管理の不備: 専任担当者の不在などから、OSのアップデート放置やパスワードの使い回しといった基本的な対策が疎かになりがちです。
  • 内部不正のリスク: 従業員一人ひとりの権限が広範に設定されていることが多く、退職者による顧客情報の持ち出しなどの不正が発生しやすくなります。

自社がサプライチェーンの一部であることを認識し、システムの最新化、アクセス権限管理、従業員教育といった基本的な対策を徹底することが極めて重要です。

テレワーク普及によるリスク変化は?

テレワークの普及は、働き方の柔軟性を高める一方で、従来のオフィス中心の業務とは異なる新たな情報漏洩リスクを生み出しています。

テレワーク環境における主な情報漏洩リスク
  • 業務用端末の紛失・盗難: PCやスマートフォンを社外に持ち出す機会が増え、物理的な紛失・盗難のリスクが高まります。
  • 安全でないネットワークの利用: 自宅のWi-Fiルーターの脆弱性や、セキュリティの低い公衆Wi-Fiを利用することで、通信内容を傍受される危険性があります。
  • シャドーITの利用: 利便性から、会社が許可していない個人のクラウドサービスやチャットツールが業務に使われ、情報管理が困難になります。
  • のぞき見などの物理的リスク: カフェや交通機関での作業中、第三者に画面をのぞき見されたり、家族に機密情報を見られたりする可能性があります。

これらのリスクに対応するため、安全な通信経路(VPN)の確保、多要素認証の必須化、テレワークに特化したルールの策定と教育が求められます。

情報漏洩が起きた際の初動対応は?

情報漏洩の発生、またはその疑いを検知した場合、パニックにならず、定められた手順に従って迅速に行動することが被害拡大を抑えるために最も重要です。

情報漏洩発生時の初動対応フロー
  1. 発見者から責任者への即時報告: 個人の判断で対応せず、直ちに定められた情報管理責任者や専用窓口へ報告します。
  2. 被害拡大防止(隔離): 不正アクセスやマルウェア感染が疑われる場合、該当端末をネットワークから物理的に切断し、被害の拡大を防ぎます。
  3. 事実関係と影響範囲の調査: 対策チームを招集し、「いつ、誰が、何を、どのように、なぜ」漏洩したのかを正確に把握します。
  4. 証拠の保全: 原因究明や法的対応に備え、該当端末の電源を切らず、ログなどのデータを保全します。
  5. 監督官庁への報告と本人への通知: 法令に基づき、個人情報保護委員会への報告や、漏洩の対象となった本人への通知を速やかに行います。

初期対応の遅れや隠蔽は、企業の信用を致命的に傷つけます。透明性を持って、迅速かつ組織的に対応することが求められます。

まとめ:情報漏洩の原因を理解し、多角的な対策で企業を守る

本記事では、個人情報漏洩の主な原因を、巧妙化するサイバー攻撃などの「外部要因」と、従業員の不正やミスに起因する「内部要因」に分けて解説しました。漏洩事故を防ぐには、システム導入といった技術的対策だけでなく、情報管理体制を整える組織的対策、そして全従業員の意識を高める人的対策を組み合わせた多層的なアプローチが不可欠です。まずは自社の現状を、本記事で挙げた外部・内部の具体的なリスクと照らし合わせ、対策が不十分な点がないかを確認することから始めましょう。特に、退職者の情報持ち出しやサプライチェーン攻撃など、見落とされがちなリスクにも注意が必要です。情報セキュリティ対策は一度講じれば終わりではなく、継続的な見直しと改善が、企業の持続的な成長と信用を守る基盤となります。



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