加害者賠償金を企業はどう負担する|保険・税務・示談の判断基準
加害者賠償金(損害賠償金)を会社として負担する場面では、慰謝料・治療費等の範囲や金額だけでなく、使用者責任の成否、保険でどこまで埋まるか、会計・税務処理までが同時に問われます。整理が曖昧なまま対応すると、示談交渉での過大支払や、保険の適用漏れ、社内の負担区分をめぐる紛争など、実務上の不利益が重なり得ます。たとえば事故直後は、午前8時40分の第一報から分単位で初動が進むこともあり、判断の材料を後追いで揃えるのが難しくなります。以下では、企業としての負担・リスクを見極める判断材料として、責任の整理から算定・保険・会計税務・初動対応までを示します。
加害者賠償金の全体像
加害者賠償金とは何を指すか
加害者賠償金とは、交通事故や業務災害等により第三者(被害者)に生じた損害を金銭で填補(てんぽ=埋め合わせ)するために支払う一切の金員を指します。企業が関係する場面では、運転者個人の不法行為責任(民法709条・民法第709条)に加え、従業員の行為について会社が負担する使用者責任(民法715条・民法第715条)が実務上の中心になります。
賠償対象となる損害は、損害項目ごとに金額を算出して合算するのが基本で、損害の性質から次のように整理できます。
| 区分 | 内容(例) | 実務上のポイント |
|---|---|---|
| 財産的損害(積極損害) | 治療費、入院費、通院交通費、付添費、葬儀費用など | 領収書・診療報酬明細等での立証が中心です |
| 財産的損害(消極損害) | 休業損害、逸失利益(将来収入の減少) | 基礎収入の資料(給与台帳、源泉徴収票等)と算定根拠が争点になります |
| 精神的損害 | 入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料(遺族固有分を含むことがあります) | 死亡事故では「遺族固有の慰謝料」が別途問題となり得ます |
また、支払額の調整要素として、被害者側の事情を理由に過失相殺(民法722条2項・民法第722条)が行われる場合や、損害を填補する給付がある場合に損益相殺(損害と給付の控除関係)が問題となる場合があります。
企業実務では、示談・訴訟のどちらで決めるにせよ、(a)責任原因(誰がどの法的根拠で負うか)、(b)損害項目(何をどこまで払うか)、(c)調整要素(過失相殺・損益相殺)を分解して整理することが、過大・過少いずれの支払リスクを避ける近道です。損害賠償額の算定実務では、公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編集の「民事交通訴訟 損害賠償額算定基準」(いわゆる赤い本)が一般に参照されます。
企業で起こりやすい事故類型
企業の「加害者」リスクは、典型的な社用車事故だけでなく、勤務形態・移動形態の多様化により広がります。参照事例として、東京都港区南青山3丁目交差点付近(青山通り=国道246号と外苑西通りが交わる信号交差点、外苑前駅から南西約250メートル)で、企業の商品配送車(ライトバン)が歩道に乗り上げ、通行人など少なくとも3名が大怪我を負ったという想定が置かれています。このような「市街地・交差点・歩行者密集」類型は、被害が拡大しやすく、初動の危機管理(対外対応・証拠保全・保険連携)が重くなります。
- 社用車の業務走行中の追突・右左折事故(運転者個人の責任に加え使用者責任が正面から問題になります)
- 商品配送・訪問営業など「時間制約のある運行」での交差点事故(速度・安全確認不足が争点化しやすいです)
- マイカー通勤中の事故(業務性の有無、会社がどこまで関与していたかが争点になります)
- テレワークからの移動中の事故(移動の位置づけが就業・業務と評価されるかが問題になり得ます)
- 無断運転・私用寄り道中の事故(外形上の業務性と実質が食い違い、事業執行性の評価が争点になります)
事故類型の把握は、賠償範囲だけでなく、社内規程(運転許可、車両管理、ドラレコ運用、報告ライン)の設計に直結します。
交通事故で加害者が負う責任
民事責任と使用者責任の範囲
運転者本人は、不法行為に基づく損害賠償責任を負います(民法709条・民法第709条)。企業側は、従業員が「事業の執行について」第三者に加えた損害について使用者責任を負うのが原則です(民法715条・民法第715条)。でも「従業員が業務中の事故で第三者に損害を負わせた場合、従業員のみならず会社も責任を負う」と整理されています。
被害者との関係では、企業と従業員それぞれに請求が向かい得るため、資力・保険の観点から企業が窓口となって対応せざるを得ない場面が多くなります。その際、賠償額の算定は損害項目ごとの積み上げで行い、被害者側の事情があるときは過失相殺(民法722条2項・民法第722条)が問題になります。
また、労働災害(社内の被災者が出たケース)では、会社に刑事責任と民事責任が生じ得るという整理が基本となります。民事責任の法的構成としては、不法行為だけでなく安全配慮義務違反(労働契約法5条・労働契約法第5条)が争点化することがあります。損害賠償の実務では、同じ損害でも「不法行為」構成と「安全配慮義務違反」構成で、遅延損害金や消滅時効の起算点など、論点の立て方が変わり得る点に注意が必要です。
刑事責任と行政処分の整理
加害運転者個人は、事故態様により刑事責任(例:過失運転致死傷等)を負い得ます。行政上も、違反点数の加算による免許停止・取消等があり、民事(賠償)とは別の手続で進みます。
企業側は、運転者個人の処罰・処分を「会社の問題ではない」と切り離すのではなく、次のように社内の法的リスクとして整理しておく必要があります。
- 民事(賠償)は被害回復が目的で、示談・訴訟で金額と範囲が確定します
- 刑事は社会秩序維持が目的で、示談があっても自動的に消滅しません
- 行政処分は道路交通秩序の維持が目的で、民事・刑事と別建てで進行します
加えて、業務災害が絡む場合は、会社・関係者に生じる主たる法的責任が「刑事責任と民事責任」であるという整理が出発点になります。事故対応の実務では、対外説明(広報・取引先対応)も同時に走るため、初動で事実確定と情報統制を行う体制(後述のアラート運用等)が重要です。
損害賠償金と慰謝料の算定
被害者が請求できる損害の内訳
被害者損害は、人身損害と物損損害に大別されます。人身損害はさらに、財産的損害(積極損害・消極損害)と精神的損害に整理して、損害項目ごとに算定・合算します。
| 区分 | 代表的な損害項目 | 企業側で確認すべき資料 |
|---|---|---|
| 積極損害 | 治療費、入院費、通院交通費、付添費 | 領収書、診断書、診療報酬明細、通院経路の記録 |
| 消極損害 | 休業損害、逸失利益 | 休業損害証明、給与資料、就労状況、基礎収入の根拠 |
| 精神的損害 | 入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料(遺族固有分を含み得ます) | 後遺障害等級認定資料、治療経過、家族関係資料(死亡時) |
| 物損 | 修理費、代車費用、レッカー代等 | 見積書・請求書、写真、損傷部位の整合性 |
支払側(企業)としては、提示された損害内訳が「損害項目ごとの積み上げ」になっているか、立証資料が揃っているかを確認し、争点(過失割合、症状固定時期、後遺障害の有無等)を早期に切り分けることが重要です。
過失割合が賠償金に与える影響
過失割合は、損害総額から被害者側の過失分を控除する仕組み(過失相殺)として、最終の支払額を直接左右します(民法722条2項・民法第722条)。
過失相殺は「加害者側の過失と被災者側の過失を対比し、その割合によって決すべき」という実務上の考え方が示されています。また、被害者側に過失がなくても、基礎疾患や心因的要素などが結果に影響している場合に、裁判所が損害賠償額を減額することがあり、いわゆる素因減額として議論されます(例:NTT東日本北海道支店事件・最一小判平成20年3月27日)。
企業側の実務対応としては、過失割合の主張立証の前提となる一次資料(実況見分の内容、写真、ドラレコ等)を早期に確保し、被害者側の事情(過失の有無、既往症等の影響)については、医学的資料と整合的に検討することが必要です。
慰謝料の三基準と後遺障害
慰謝料算定には、自賠責基準・任意保険基準・裁判(弁護士)基準という「水準差」があり、同じ事故でも交渉ルートで金額が変わり得ます。加害者側企業としては、提示額がどの水準かを把握し、支払可能性(保険支払・会社負担)に落とし込んで検討します。
後遺障害が問題となる場合、等級に応じた後遺障害慰謝料や逸失利益が争点になります。後遺症慰謝料の目安として次の金額が示されています。
| 障害等級 | 金額 | 障害等級 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 第1級 | 2,800万円 | 第8級 | 830万円 |
| 第2級 | 2,370万円 | 第9級 | 690万円 |
| 第3級 | 1,990万円 | 第10級 | 550万円 |
| 第4級 | 1,670万円 | 第11級 | 420万円 |
| 第5級 | 1,400万円 | 第12級 | 290万円 |
| 第6級 | 1,180万円 | 第13級 | 180万円 |
| 第7級 | 1,000万円 | 第14級 | 110万円 |
逸失利益の算定は、の整理では次の算定式が基本形です。
- 基礎収入額(給与所得者は原則として傷病発生前の現実収入=年収)
- 労働能力喪失率
- 労働能力喪失期間に対応する中間利息控除係数
労働能力喪失率は、労働基準局通達(昭32.7.2 基発第551号)の表が参照されることがあります。
| 障害等級 | 労働能力喪失率 | 障害等級 | 労働能力喪失率 |
|---|---|---|---|
| 第1級 | 100/100 | 第8級 | 45/100 |
| 第2級 | 100/100 | 第9級 | 35/100 |
| 第3級 | 100/100 | 第10級 | 27/100 |
| 第4級 | 92/100 | 第11級 | 20/100 |
| 第5級 | 79/100 | 第12級 | 14/100 |
| 第6級 | 67/100 | 第13級 | 9/100 |
| 第7級 | 56/100 | 第14級 | 5/100 |
企業側は、後遺障害等級の認定資料(症状固定時期、画像・診断書等)と、基礎収入・就労実態の資料が、賠償額に直結することを前提に、保険会社・顧問弁護士と連携して検討するのが安全です。
保険で加害者側をどう補うか
自賠責保険と任意保険の補償範囲
自賠責保険は自動車損害賠償保障法により加入が義務付けられる強制保険で、原則として人身損害を対象に、法定の限度額の範囲で支払われます。元記事のとおり、補償限度額は傷害120万円、死亡3,000万円、後遺障害は最高4,000万円と整理され、物損は対象外です。
一方、任意保険は自賠責の限度額を超える部分や物損を含めてカバーし、実務上は任意保険会社が「一括対応」として窓口を担うことが多いです。
自賠責保険金請求権(自賠法15条・商法ではなく自賠法の論点ですが、本記事では条文マーカー対象外のため法令名のみ記載します)について、最判昭和56年3月24日が、被保険者の保険金請求権は賠償金支払を停止条件とする債権である一方、一定の場合に差押・転付の関係で停止条件が成就し得る旨を判示した整理が紹介されています。これは、被害者側の回収手段(差押等)が絡むと、支払の流れやタイミングが実務上影響を受け得ることを示す論点であり、企業としては「保険がある=任せきり」ではなく、法的手続の進行も見据えた管理が必要です。
加害者側でも保険金請求できる条件
加害者側であっても、加入している保険種目により、運転者・同乗者の損害が補償されることがあります(人身傷害、搭乗者傷害、自損事故、車両保険など)。
ただし「損害を填補する給付がある場合の対応(損益相殺)」が問題になるように、被害者・加害者のいずれの立場でも、保険給付や労災給付が支払われると、二重払いにならないよう賠償額の調整(控除関係)が生じ得ます。社内での事故処理フローでは、賠償交渉と並行して「どの給付が、どの損害項目を、どの範囲で埋めているか」を整理することが重要です。
また、故意・重過失(飲酒運転、無免許運転等)では、約款免責や求償の問題が顕在化しやすいため、事故態様の事実確定(アルコール検知、運転許可の有無等)を初動で押さえる必要があります。
社有車・マイカー業務利用・レンタカーで保険の優先順位はどう変わるか
車両の所有・利用形態により、一次対応となる保険(どの契約が先に動くか)が変わります。優先順位の整理を誤ると、示談・支払の遅延や、免責・適用外による企業負担の顕在化につながります。
- 社有車は法人契約が前提でも、運転者範囲・使用目的の条件違反で支払が争われることがあります
- マイカー業務利用は、本人契約の補償内容(業務使用の可否、対人対物の限度額)が企業リスクを左右します
- レンタカー・リースは、貸渡条件・免責補償の有無と、自社保険の他車運転特約等の適用関係が争点になります
マイカー利用を許容する会社では、承認制(申請・許可)とし、保険証券の確認や補償条件の適合性確認を、規程と運用の両面で固定化しておくことが必要です。
企業の負担範囲と会計税務
会社と従業員の負担区分を考える
業務中の事故で会社が被害者に賠償金を支払った場合、会社が従業員に求償できるか(どこまで負担させられるか)が問題になります。被害者との関係では会社が使用者責任を負い得る(民法715条・民法第715条)一方、社内的な負担調整は、事故の態様、会社の管理状況、従業員の職務内容等を踏まえて信義則上制限され得ます。
には「従業員は会社の指揮監督下で業務を遂行しているので、本人の不注意により会社に損害を与えても、多くは厳重注意にとどまり、損害賠償の話にならない」との実務感覚も示されています。もちろん全件がそうなるわけではありませんが、企業としては、求償を前提にコストを従業員へ転嫁する設計は、労務・訴訟リスクを高めやすい点に留意が必要です。
そのため、就業規則・車両管理規程・マイカー業務利用規程で、少なくとも「報告義務」「無断運転の禁止」「保険加入要件」「事故時の会社窓口」「懲戒との関係」を具体化し、ケースごとの恣意的運用を避けることが実務上有効です。
賠償金の費用計上と損金算入
企業が支払った賠償金の会計・税務処理では、(1)損害賠償金として費用計上できるか、(2)保険金等の受領がある場合の表示(益金計上・相殺)をどうするか、(3)個人帰責(従業員・役員の故意重過失)により給与課税・損金否認が生じないか、が中心論点になります。
では「損害を填補する給付がある場合の対応(損益相殺)」が整理項目として明示されており、企業としては、任意保険金・労災給付・その他給付が、賠償のどの損害項目に対応するのかをひも付けて管理する必要があります。
また、業務災害の文脈では、労働基準法の災害補償(労働基準法75条以下・労働基準法第75条)と、労災保険給付の関係が論点になります。の整理によれば、労災保険給付が行われるべき場合、使用者は災害補償責任を免れるとされ(労基法84条1項)、実務上、使用者が労基法上の災害補償を行う場面は多くない一方で、休業初日から第3日目までは労災保険の休業補償給付が支給されないため(労働者災害補償保険法14条1項・労働者災害補償保険法第14条)、この部分は企業側の補償・賠償設計で見落としやすいポイントです。
役員事故は従業員事故と何が違うか|会社負担が問題化しやすい場面
役員事故は、従業員事故よりも「会社負担=役員への経済的利益(給与課税・損金否認)」として問題化しやすい点が特徴です。にも「役員に対する経済的利益」という整理項目があり、事故費用の会社負担が、役員個人への利益供与と評価されるリスクを常に伴います。
特に、業務関連性が弱い(私用・私的便益が強い)場面で会社が賠償金・修理費等を負担すると、社内決裁の有無にかかわらず、税務上・ガバナンス上の説明可能性が低下します。したがって、役員については、
- 当該運転が業務命令・職務遂行と評価できる根拠(予定、指示、行程、出張命令等)
- 車両の使用権限・管理状況(私的流用の有無)
- 事故態様(故意・重過失の疑いの有無)と、会社が負担する合理性
を事故直後から文書化しておく必要があります。
損金算入できる事故とできない事故を業務関連性・重過失で切り分ける
損金算入の可否は、少なくとも「業務関連性」と「故意・重過失(悪質性)」で切り分けて整理することが重要です。過失相殺や損益相殺といった調整論点があることから、事故態様の評価を誤ると、税務だけでなく民事上の主張立証(どこまで会社が負うべきか)にも影響します。
- 業務遂行中の通常過失は、事業関連費用として整理しやすい一方、損害項目の立証管理が甘いと否認・紛争化の温床になります
- 故意・重過失が疑われる場合は、会社負担の合理性が争われやすく、本人負担(求償)・懲戒・再発防止措置まで一体で設計する必要があります
- 損害を填補する給付(任意保険金、労災給付等)がある場合は、どの損害に充当されたか(損益相殺の整理)を誤ると二重計上・二重払いのリスクが出ます
実務では、事故報告書に「業務関連性(いつ・どこへ・何のために)」「使用許諾の有無」「酒気帯び等の有無」「ドラレコの有無」「警察届出の有無」を必須項目として固定化し、損金算入の前提となる事実認定のブレを防ぐことが有効です。
示談対応と再発防止
事故直後から支払までの流れ
事故対応は、初動の遅れがそのまま賠償・保険・対外説明の不利につながるため、時系列で「誰が・何をするか」を定型化しておくことが重要です。フィクション事例では、午前8時40分に警視庁(赤坂警察署交通課)から会社に第一報が入り、リスク管理室部長の判断で8時45分に担当者を赤坂警察署へ向かわせ、社内には発信日時 午前8時50分のアラートメールで共有する、という分単位の動きが示されています。
- 人命救護と二次被害防止を最優先し、警察へ通報して事故の公的記録化を行います(相手から警察不要と言われても応じない運用が重要です)。
- 会社の報告ライン(上司・総務・法務・リスク管理)と保険会社へ速やかに連絡し、窓口と情報発信ルールを固定します。
- 事故現場・車両・負傷状況・当事者情報を一次資料として保全し、実況見分への立会い・説明を行います。
- 治療経過を踏まえ、治療終了または症状固定の時点で人身損害の算定範囲を確定させます。
- 過失割合と損害項目(必要資料)を突合し、保険会社を介して示談交渉を進めます。
- 合意内容を示談書に落とし込み、期限・振込方法・清算条項(追加請求の扱い)を確認して支払います。
には交通事故の示談書(合意書)例として、会社と運転者が「連帯して」支払義務を認め、支払期限・振込方法・振込手数料負担、民事・刑事上の請求放棄、債権債務不存在確認を盛り込む形が提示されています。企業としては、条項の意味(清算条項の射程など)を理解せずに定型文で締結すると、後日の紛争リスクが残るため、事案ごとの調整が必要です。
無保険時の対応と社内規程整備
任意保険が付いていない(または適用外となる)事故は、資金流出がそのまま企業の存続リスクになり得ます。最低限の自賠責があっても、元記事のとおり自賠責は物損をカバーせず、限度額もあるため、無保険状態は極めて危険です。
のアラート運用例は、無保険に限らず「重大事故の初動」を社内規程・体制で吸収する発想を具体化しています。受信者【レベルA】として、社長・役員・本部長・部長等の管理職全員、リスク管理室と広報室の部員全員を含めて同報し、警察からの連絡内容と会社の初動(8時45分に担当者派遣等)を即時共有する設計になっています。
- 全車両(社有車・マイカー業務利用)について自賠責・任意保険の加入確認を定期運用に組み込みます
- 事故時の一次連絡先と、対外窓口(保険会社・法務・広報)の権限分掌を明確化します
- 無断運転・無保険運転・飲酒等の重大違反時の懲戒と、会社負担の扱い(求償の方針)を規程化します
規程は作るだけでは機能しないため、鍵管理、保険証券確認、ドラレコデータ保全などを「監査可能な運用」に落とすことが重要です。
事故当日に総務・法務・現場責任者が集めるべき資料と記録
事故当日の情報収集は、後日の過失割合・損害項目・保険適用の判断を左右します。初動として「警察へ連絡」「実況見分に立会い」「写真等で保全」「業務中なら上司にも連絡し一緒に立会う」ことが推奨され、相手から警察不要と言われても応じないべき理由(後日の言い分変更・追加損傷主張等)が明確に示されています。
- 警察への届出情報(担当署・担当課・届出番号等)と、実況見分の予定・立会い者
- 現場写真・車両損傷状況・周辺状況(信号、標識、路面状況)と、ドラレコ・車載記録の原本保全
- 当事者・相手方の情報(氏名、連絡先、車両情報、保険会社)と、事故直後の発言メモ
- 業務性の資料(業務指示書、運行日報、訪問予定、配送指示、テレワークからの移動指示等)
- 社内の初動記録(いつ誰が報告を受け、誰がどこへ派遣され、誰が対外窓口になったか)
の想定では、警察からの第一報(8時40分)、担当者派遣(8時45分)、アラートメールの発信(8時50分)が時系列で記録されています。こうしたタイムスタンプ付きの社内記録は、後日の説明責任(監督官庁・取引先・株主・保険会社)において重要な基礎資料になります。
よくある質問
加害者として支払った損害賠償金は会社の経費になりますか?
業務として従業員が第三者に損害を与え、会社が使用者責任に基づき賠償した場合(民法715条・民法第715条)、事業関連費用として費用計上・損金算入の検討対象になります。ただし、税務以前に「損害項目の積み上げ」「過失相殺(民法722条2項・民法第722条)」「損害を填補する給付がある場合の調整(損益相殺)」を整理し、二重払い・過大計上を避ける必要があります。
また、業務災害が絡む場合は、労災保険給付との関係で会社の災害補償責任が免れる場面がある一方(労働基準法84条1項・労働基準法第84条)、休業初日から第3日目は労災保険の休業補償給付が出ないため(労働者災害補償保険法14条1項・労働者災害補償保険法第14条)、補償・賠償の設計で見落とさないことが重要です。故意・重過失が疑われる場合は、会社負担が本人への経済的利益(給与課税等)と評価されるリスクも含め、事実確認と社内決裁の整合を取る必要があります。
従業員が勤務中に起こした交通事故の賠償金は会社と本人のどちらが負担しますか?
被害者との関係では、運転者本人は不法行為責任(民法709条・民法第709条)、会社は使用者責任(民法715条・民法第715条)により責任を負い得ます。でも「従業員が業務中の事故で第三者に損害を負わせた場合、従業員のみならず会社も責任を負う」と整理されています。
社内的な最終負担(会社が払った後に本人へ求償するか)は別問題で、従業員が会社の指揮監督下で業務をしていることを踏まえ、実務上は本人に全額負担させる設計は紛争化しやすいです。少なくとも、故意・重過失か、無断運転か、業務性があるか、保険適用があるかを切り分けたうえで、就業規則・車両規程に沿って判断する必要があります。
加害者側でも通院慰謝料や休業損害の保険金を受け取れるケースはありますか?
加害者側でも、人身傷害等の付帯により、治療費・休業損害・慰謝料相当を受け取れる場合があります。ただし、賠償(相手方への支払)と給付(自社・本人の保険金)を混同すると、損害項目の整理が崩れ、損益相殺(損害を填補する給付がある場合の調整)が問題になり得ます。
また、故意・重過失が疑われる場合は、約款免責等により支払対象外となる可能性があるため、事故当日の事実確認(飲酒の有無、運転許可の有無、運転態様)を確実に記録して、保険会社に正確に伝える必要があります。
無保険車で従業員が事故を起こした場合、会社は何から確認すべきですか?
まず、警察への届出と人身被害の有無を確認し、事故の公的記録化と被害拡大防止を優先します。相手方から警察不要と言われても応じず、実況見分への立会い・写真等による証拠保全を行うべきとされています。
次に、社内的には「業務中か私用か」「無断使用か」「会社の指揮命令・承認の有無」を切り分け、使用者責任(民法715条・民法第715条)の成立可能性を検討します。並行して、社内の初動体制が機能しているかを確認し、被害者対応・資金手当・対外説明の準備を進めます。
まとめ:加害者賠償金への対応で次にすべきこと
加害者賠償金は、損害項目の積み上げ(積極損害・消極損害・慰謝料)と、過失相殺・損益相殺といった調整要素を分解して整理することが、企業の過大支払・過少対応の双方を避ける前提になります。判断の軸としては、(1)誰がどの法的根拠で責任を負うか(不法行為・使用者責任・安全配慮義務違反)、(2)保険でどこまでカバーできるか(自賠責・任意保険・付帯補償)、(3)会社負担が会計・税務上どう扱われ得るか(役員事故を含む)をセットで確認します。次アクションとして、事故直後の一次資料(実況見分・写真・ドラレコ等)と社内記録を確保し、午前8時40分→8時45分→8時50分のような初動のタイムラインを残したうえで、保険会社・顧問弁護士・税務担当と分担して論点を洗い出す運用が重要です。業務災害が絡む場合は、休業初日から第3日目は労災保険の休業補償給付が出ない点も含め、補償と賠償の線引きを見落とさないようにします。個別事案は事故態様や就業実態で結論が変わり得るため、最終判断は専門家への相談を前提に進めてください。

