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企業再生における税理士の役割とは?業務内容から選び方、費用まで解説

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会社の経営状況が悪化し、事業の存続が危ぶまれる事態は、経営者にとって極めて深刻な局面です。このような危機的状況を乗り越えるためには、専門家の支援が不可欠となりますが、弁護士やコンサルタントなど、誰に相談すべきか判断に迷うことも少なくありません。特に財務・税務の観点から事業再生を支える「税理士」は、その中心的な役割を担う重要なパートナーとなり得ます。この記事では、企業再生における税理士の役割、具体的な支援内容、他の専門家との違い、そして信頼できる専門家の選び方までを網羅的に解説します。

目次

企業再生における税理士の役割と重要性

そもそも企業再生とは?目的と手法の概要

企業再生とは、財務状況が悪化した企業の経営を立て直し、事業の継続と発展を目指す取り組みです。単なる延命措置ではなく、不採算事業の整理や収益構造の改善を通じて、将来にわたり持続可能な事業体制を再構築することを目的とします。

企業再生の手法は、裁判所が関与する「法的整理」と、当事者間の話し合いで進める「私的整理」に大別されます。近年では、事業価値の毀損を抑え、秘密裏に進められる私的整理が選択されるケースが増えています。

手法 概要 メリット デメリット
法的整理 裁判所の監督下で、法律に基づき債務整理や事業再建を行う(例:民事再生、会社更生) 債権者の合意がなくても、法律に基づき手続きを進められる 手続きが公開され、信用力が低下する可能性がある
私的整理 金融機関などの債権者と個別に交渉し、合意に基づいて再建を進める(例:私的整理ガイドライン、事業再生ADR) 非公開で進められ、事業価値への影響を抑えやすい 全ての債権者の同意を得るのが難しい場合がある
企業再生の主な手法

財務・税務の専門家として果たす税理士の役割

税理士は、企業再生において財務・税務の専門家として中心的な役割を担います。決算書などの財務データを精査し、経営不振の根本原因を特定することから支援が始まります。その上で、企業の状況に応じた具体的な施策を立案・実行します。

税理士が担う主な役割
  • 財務分析と原因特定:財務デューデリジェンスを通じて、企業の財政状態の実態を把握し、課題を抽出する。
  • 資金繰りの安定化:税金や社会保険料の支払猶予制度の活用を検討し、納税予測に基づく資金計画を策定する。
  • 税務戦略の立案:債務免除益や資産売却益に伴う税負担を試算し、繰越欠損金の活用などで税務メリットを最大化する。
  • 金融機関交渉の支援:客観的な数値データに基づいた再生計画書を作成し、金融機関との円滑な交渉をサポートする。

通常の顧問税理士と企業再生専門の税理士の違い

通常の顧問税理士と企業再生を専門とする税理士では、求められるスキルや業務領域が大きく異なります。前者が過去の会計処理を正確に行う「過去会計」の専門家であるのに対し、後者は会社の未来を創る「未来会計」の専門家であると言えます。

比較項目 通常の顧問税理士 企業再生専門の税理士
主な業務 記帳代行、決算・税務申告 財務デューデリジェンス、事業再生計画の策定、金融機関交渉
時間軸 過去の会計数値を正確に処理する 将来のキャッシュフローを予測し、経営を改善する
必要スキル 税法・会計基準に関する知識 資金繰り管理、事業計画策定能力、金融機関との交渉術
専門知識 一般的な税務・会計 私的整理ガイドライン、企業再生税制、法的整理に関する知識
通常の顧問税理士と企業再生専門税理士の比較

顧問税理士への相談で注意すべき点とセカンドオピニオンの活用

長年の付き合いがある顧問税理士は内情に詳しい一方、企業再生のような特殊な案件には必ずしも精通しているとは限りません。特に、抜本的な経営改善策の提案や金融機関との交渉経験が乏しい場合は注意が必要です。

このような状況では、現在の顧問契約は維持しつつ、企業再生に特化した税理士にセカンドオピニオンを求めることが有効です。第三者の客観的な視点を取り入れることで、これまで見過ごされていた問題点や、新たな再生手法が見つかる可能性があります。

セカンドオピニオンを検討すべきケース
  • 顧問税理士が資金繰りの悪化に対して具体的な対策を提示できない。
  • 金融機関との交渉に消極的、または経験が少ない。
  • 過去の経緯から、厳しい経営判断を伴う提案がしづらい関係性にある。
  • 企業の将来について、より多角的な視点からのアドバイスが欲しい。

企業再生で税理士が提供する具体的な支援内容

現状把握のための財務デューデリジェンス(財務DD)

財務デューデリジェンス(財務DD)は、企業の財政状態や収益性を詳細に調査し、隠れた問題点やリスクを洗い出すプロセスです。税理士は、決算書に表れない実態を明らかにするため、実態バランスシートを作成します。正確な現状把握は、実効性の高い再生計画を策定するための大前提となります。

財務DDにおける主な調査項目
  • 不良債権(回収不能な売掛金など)の有無と評価
  • 滞留在庫・陳腐化在庫の実態評価
  • 帳簿に記載されていない簿外債務の有無
  • 役員貸付金や仮払金などの実態調査
  • 過去の税務申告における誤りや潜在的な税務リスク(税務DD)

実現可能な事業再生計画(経営改善計画)の策定支援

財務DDによる現状分析に基づき、金融機関などの債権者が納得できる、具体的で実現可能性の高い事業再生計画の策定を支援します。この計画書は、単なる希望的観測ではなく、客観的なデータに基づいた数値計画が盛り込まれている必要があります。

事業再生計画の主な構成要素
  • 現状分析:財務DDの結果や事業の強み・弱み(SWOT分析)の整理
  • アクションプラン:不採算事業からの撤退、遊休資産の売却、コスト削減策などの具体的施策
  • 数値計画:損益計画、キャッシュフロー計画、資金繰り計画など、施策を反映した将来予測
  • 返済計画:金融機関への具体的な返済スケジュール

金融機関との交渉・資金調達(リスケジュール等)のサポート

策定した事業再生計画書は、金融機関に返済条件の変更(リスケジュール)などを要請する際の最も重要な交渉ツールとなります。税理士は経営者に同行し、専門家の立場から計画の合理性や実現可能性を説明することで、金融機関の理解と協力を得られるよう後押しします。

金融機関へのサポート内容
  • 経営改善計画書に基づく返済猶予(リスケジュール)の交渉支援
  • 複数の金融機関が関係する場合のバンクミーティング(金融機関説明会)の開催支援
  • 新規融資や借換融資など、再生に必要な資金調達に関する助言
  • 日本政策金融公庫や信用保証協会の制度活用に関するアドバイス

再生計画の実行支援とモニタリング

再生計画は、金融機関の合意を得て終わりではありません。計画通りに施策を実行し、成果を出すことが最も重要です。税理士は計画実行段階において、定期的な進捗確認(モニタリング)を行い、経営者が計画達成に集中できるよう伴走します。

モニタリングにおける主な業務
  • 予実管理:計画(予算)と実績を比較し、差異の原因を分析する
  • 課題の早期発見と対策:計画通りに進んでいない問題点を早期に特定し、改善策を助言する
  • 金融機関への定期報告:試算表や月次報告書を作成し、金融機関へ再生の進捗を報告する

税理士との連携を成功させるための社内体制づくり

税理士の支援効果を最大化するためには、企業側の協力体制が不可欠です。特に、迅速かつ正確な情報共有ができる社内体制を構築することが成功の鍵となります。経営者は税理士を信頼し、都合の悪い情報も含めてすべてを開示する姿勢が求められます。

求められる社内体制のポイント
  • 経理フローを整備し、月次試算表を早期に作成できる体制を整える。
  • 請求書や領収書などの証憑書類を適切に整理・保管する。
  • 社内に経理担当者を配置するか、クラウド会計などを活用して情報共有を円滑にする。
  • 経営者が率先して、税理士に対して透明性の高い情報開示を行う。

他の専門家(弁護士・コンサルタント)との違いと連携

弁護士との役割分担:法的整理と私的整理における連携

企業再生において、弁護士は法律の専門家として、税理士は財務・税務の専門家として、それぞれ異なる役割を担います。両者が連携することで、法的にも財務的にも盤石な再生スキームを構築できます。

専門家 専門領域 主な役割
弁護士 法律 法的整理(民事再生等)の申立て、債権者との法的交渉、各種契約書の作成・レビュー、法的紛争の解決
税理士 財務・税務 財務デューデリジェンスの実施、事業再生計画の数値策定、債務免除益などに関する税務シミュレーション
弁護士と税理士の主な役割分担

事業再生コンサルタントとの違い:専門領域とアプローチ

事業再生コンサルタントは事業活動そのものの改善に、税理士は財務管理体制の構築に重点を置きます。コンサルタントが事業の「稼ぐ力」を高める役割なら、税理士は「お金を残す仕組み」を整える役割と言えるでしょう。

専門家 専門領域 主なアプローチ
事業再生コンサルタント 事業戦略・業務 現場に入り込み、営業戦略の立案、生産性向上、コスト削減などの実行を支援する
税理士 財務・会計・税務 経営を数値で可視化し、資金繰り管理、財務改善、税務戦略を通じて再生を支援する
事業再生コンサルタントと税理士のアプローチの違い

専門家チームによる連携体制の重要性

企業再生は法務、財務、税務、事業など、多様な専門性が求められる複雑なプロジェクトです。そのため、弁護士、税理士、コンサルタントなどが専門家チームを組成し、連携して取り組むことが成功率を高める鍵となります。

各専門家が情報を共有し、それぞれの知見を持ち寄ることで、単独では見つけられない最適な解決策を導き出すことが可能です。その中で税理士は、企業の財務状況を最も深く理解する立場として、専門家チームのハブ(中心)的な役割を果たすことも少なくありません。

信頼できる企業再生税理士の選び方と相談時のポイント

企業再生の実績と関連分野の専門知識を確認する

企業再生は通常の税務とは全く異なるノウハウが必要です。税理士を選ぶ際には、ウェブサイトなどで過去の実績を確認し、自社と同業種・同規模の案件を手がけた経験があるかを重視しましょう。

確認すべき専門性のポイント
  • 企業再生案件の具体的な支援実績(件数、業種など)
  • 財務デューデリジェンスや事業再生計画策定の経験
  • 国が認定する公的支援機関「認定経営革新等支援機関」の資格の有無
  • 企業再生税制や私的整理ガイドラインに関する知識

金融機関との交渉力やネットワークの有無

企業再生の成否は、金融機関の協力が得られるかに大きく左右されます。そのため、税理士が金融機関と円滑に交渉できる能力やネットワークを持っているかは非常に重要な選定基準です。金融機関出身の税理士や、日頃から複数の金融機関と良好な関係を築いている税理士は、交渉を有利に進められる可能性が高まります。

経営者と伴走できるコミュニケーション能力

企業再生は、時に厳しい判断を伴う長期的な取り組みです。そのため、専門知識だけでなく、経営者の不安や孤独に寄り添い、共に困難を乗り越えていけるコミュニケーション能力と人間性も重要になります。初回面談の際に、専門用語を多用せず分かりやすく説明してくれるか、親身に話を聞いてくれるかといった相性を確かめましょう。

初回相談時に確認すべきこと・準備する情報

初回相談を実りあるものにするため、事前に会社の財務状況がわかる資料を準備しておくことが重要です。また、税理士に対しては、不利な情報も含めて正直に伝えることで、的確なアドバイスを受けられます。

初回相談で準備・確認すべきこと
  • 準備する情報:直近3期分の決算書・申告書、試算表、借入金一覧表、資金繰り表など
  • 伝えるべき情報:現在の資金繰りの状況、税金や社会保険料の滞納の有無、簿外債務の有無など
  • 確認すべき事項:具体的な支援内容と進め方、費用体系と概算見積もり、再生完了までの大まかな見通し

企業再生を税理士に依頼する際の費用相場と料金体系

企業再生支援の料金体系(着手金・月額顧問料・成功報酬)

企業再生支援の費用は、案件の複雑さや期間に応じて、複数の料金体系を組み合わせて設定されるのが一般的です。国の補助金制度を利用することで、費用負担を軽減できる場合もあります。

主な料金体系
  • 着手金:業務開始時に支払う費用。現状分析や初期対応の対価。相場は30万円~100万円程度。
  • 月額報酬:計画実行中のモニタリングやアドバイスに対する費用。企業の規模に応じ、月額5万円~30万円程度。
  • 成功報酬:金融機関の合意取り付けや債務免除など、成果に応じて発生する費用。経済的利益の数%など、事前に条件を定めます。
  • 公的支援の活用:国の「経営改善計画策定支援事業(通称:405事業)」などを利用すれば、専門家費用の3分の2(上限あり)が補助されます。

費用相場と変動要因(企業規模・再生スキーム)

費用総額は、企業の規模や負債額、再生手法の複雑さによって大きく変動します。シンプルなリスケジュール交渉のみであれば数十万円で済むこともありますが、本格的な事業再生計画の策定や複数の金融機関との交渉が必要な場合は、総額で数百万円になることもあります。

費用が変動する主な要因
  • 企業の売上規模や負債総額
  • 債権者(金融機関)の数
  • 財務デューデリジェンスの要否と範囲
  • 第二会社方式など、特殊な再生スキームの利用の有無

費用対効果の考え方と見積もりの確認点

費用を検討する際は、金額の大小だけでなく、その投資によって得られるリターン(費用対効果)で判断することが重要です。例えば、返済猶予によって当面の資金繰りが改善したり、債務が圧縮されたりする経済的メリットは、専門家費用を大きく上回ることがほとんどです。

見積もりを取得した際は、金額だけでなく、以下の点を確認しましょう。

見積もり確認のポイント
  • 業務範囲が明確に記載されているか(どこからどこまで支援してくれるのか)
  • 各費用の算出根拠は合理的か
  • 成功報酬の発生条件や計算方法が明確か
  • 追加費用が発生する可能性がある場合は、その条件が明記されているか

税理士への相談から企業再生までの基本的な流れ

ステップ1:初回相談と現状のヒアリング

まずは企業再生に精通した税理士に連絡を取り、初回相談を行います。経営者は、現在の経営課題、資金繰りの状況、借入金の状況などを正直に伝えます。税理士は提供された情報や資料を基に、問題の緊急度や再生の方向性について初期的な見解を示します。

ステップ2:現状分析と再生可能性の評価

正式に依頼した後、税理士は財務デューデリジェンスなどを通じて企業の財産状況、収益構造、資金繰りの問題を詳細に分析します。この分析結果に基づき、実質的な債務超過の有無を把握し、自主再建が可能か、スポンサー支援が必要か、法的整理を検討すべきかといった再生の可能性と最適な手法を評価します。

ステップ3:再生計画の策定と金融機関等との合意形成

分析結果に基づき、具体的な数値目標やアクションプランを盛り込んだ事業再生計画書を策定します。その後、この計画書を持って主要な金融機関と交渉を開始し、返済条件の変更(リスケジュール)や追加支援などについての同意を求めます。全主要債権者の合意形成が、このステップのゴールです。

ステップ4:再生計画の実行と進捗管理(モニタリング)

金融機関の合意が得られたら、計画に沿って事業再生を実行していきます。税理士は、計画が順調に進んでいるかを定期的に確認(モニタリング)し、予実管理を行います。計画と実績に乖離が生じた場合は、その原因を分析し、速やかに軌道修正を支援します。経営が安定軌道に乗るまで、継続的に伴走するのが一般的です。

企業再生に関するよくある質問

どのタイミングで相談するのが最適ですか?

資金繰りに少しでも不安を感じた時点で、できるだけ早く相談するのが最適です。具体的には、金融機関への返済が苦しくなってきた、赤字が続いている、といった初期段階での相談が望ましいです。資金が完全に尽きてしまうと選択できる手段が著しく制限されるため、手遅れになる前に行動することが重要です。

赤字決算が続いていても相談可能ですか?

はい、もちろん可能です。むしろ、赤字や債務超過に陥っている企業こそ、専門家の支援が必要です。税理士は赤字の根本原因を分析し、事業の強みを活かしながら黒字化を目指すための計画策定を支援します。本業に収益性があれば、金融機関の協力を得て再建できる可能性は十分にあります。

中小企業や個人事業主でも支援を受けられますか?

はい、受けられます。企業再生の支援は、企業の規模を問いません。特に中小企業や個人事業主向けには、「経営改善計画策定支援事業(405事業)」のような公的な支援制度も用意されており、少ない自己負担で専門家のサポートを受けることが可能です。

企業再生にはどのくらいの期間がかかりますか?

ケースバイケースですが、一般的な目安として、再生計画を策定し金融機関の合意を得るまでに3ヶ月~半年程度、その後、計画を実行して経営が正常化するまでに3年~5年程度かかることが多いです。企業再生は、中長期的な視点で粘り強く取り組む必要があります。

まとめ:企業再生の成功は、信頼できる税理士との連携が鍵

本記事では、経営危機に直面した企業が再生を目指す上で、税理士が果たす重要な役割について多角的に解説しました。税理士は、財務デューデリジェンスによる客観的な現状分析から、実現可能性の高い再生計画の策定、そして金融機関との交渉まで、財務・税務の専門家として再生プロセス全体を力強く支援します。通常の顧問税理士とは異なる「未来会計」の視点と高度な専門性が求められるため、実績や金融機関との交渉力、そして経営者に寄り添う姿勢を見極めることが重要です。企業再生は孤独な戦いではありません。資金繰りに少しでも不安を感じたら、手遅れになる前に、まずは再生に精通した税理士に相談し、再生への第一歩を踏み出しましょう。

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