人事労務

60歳以上契約社員の雇止めは可能か 法務実務で見る判断基準

経営リスクナビ編集部

60歳以上契約社員の雇止め(契約期間満了による更新拒否)は、定年後再雇用を含む継続雇用の運用で「期間満了だから終了」と「更新されるはず」という認識差が生じやすく、紛争化しやすいテーマです。放置すると、労働契約法19条の枠組みで更新期待が認められる場面で、説明や記録が不足したまま不更新に進み、無効リスクや遡及的な賃金相当額が問題になり得ます。自社の就業規則・継続雇用規程・再雇用契約書をどこまで明確化し、満了前6か月から何を残すべきかを整理しておくことで、更新・不更新の判断軸と運用手順を具体化できます。実務で最初に押さえるべきは更新期待の見立てです。制度設計と記録のポイントから見ていきます。

目次

60歳以上契約社員の雇止め

雇止めが問題となる典型場面

高年齢の有期契約(契約社員・嘱託・パートタイム等)で雇止めが紛争化しやすいのは、会社が「期間満了なので終了」と整理している一方、本人は「これまでどおり働けるはずだ」という更新期待(契約が続くとの合理的な期待)を持っている場面です。定年後再雇用では、とくにこの認識差が生じやすいです。

典型的な対立構図
  • 会社側は有期契約の形式を根拠に「更新しない」判断をしやすいです。
  • 労働者側は「希望すれば65歳までの雇用確保が必要」という高年齢者雇用安定法の運用イメージから継続を強く期待しやすいです。
  • 更新手続が毎年の自動更新に近いほど、労働者の期待が強化されやすいです。

また、会社が能力不足や勤怠不良を理由に雇止め(更新拒否)に進む場合でも、日頃からの注意・指導や評価が曖昧だと、のちに「突然の打切り(不意打ち)」と評価されやすくなります。参照資料にある解雇の整理でも、労働契約の終了は客観的に合理的な理由社会通念上の相当性が重要だとされ(労働契約法第16条)、高年齢者の雇止めでも同様に「記録に裏付けられた説明」が実務上の分岐点になります。

定年後再雇用と通常の有期契約の違い

定年後再雇用の有期契約は、通常の有期契約(臨時業務対応・人員調整弁としての採用等)と比べて、契約が成立する背景が異なります。定年後再雇用は、高年齢者雇用安定法上の雇用確保措置(65歳まで)の履行と結びついて運用されることが多く、労働者側の更新期待が形成されやすいです。

一方で、参照資料【資料54】の趣旨に照らすと、「再雇用制度があるからといって誰もが当然に嘱託になれる」という説明は適切ではなく、企業側の制度設計としては、本人と会社の希望が合致するときに再雇用といった建付け(経営計画書等での明記)があり得ます。ただし、そのような建付けを採る場合でも、実際の運用(更新を繰り返しているか、説明してきたか、基準が明確か)によっては、労働者の合理的期待が認められ、雇止めが制限されることがあります。

雇止め法理の適用範囲

労働契約法19条の判断枠組み

有期労働契約の雇止めを制限する中心的な枠組みが、労働契約法の雇止め法理(労働契約法第19条)です。条文上は大きく次の2類型が整理されています。

労働契約法19条の2類型(要点)
  • 実質無期契約型:反復更新等により、期間の定めのない契約と同視できる状態です。
  • 期待保護型:契約満了時に更新されると期待することに客観的合理的理由がある状態です。

いずれかに当たる場合、労働者が満了前または満了後遅滞なく更新申込みをしたとき、会社が拒絶するには、客観的に合理的な理由があり、かつ社会通念上相当であることが求められます(実務上は解雇に近い厳格さになります)。この「客観的合理性・社会的相当性」という考え方は、参照資料【資料54】が解雇について整理している枠組み(労働契約法第16条)とも共通し、雇止めでも「理由と手続の両面」を揃えないと争いになりやすいです。

60歳以上で更新期待が認められる事情

60歳以上の継続雇用で更新期待が認められやすいかどうかは、会社側の制度設計・説明・運用の積み重ねで大きく左右されます。

更新期待を強めやすい事情(実務上の着眼点)
  • 65歳までの雇用確保措置が制度として運用され、本人も希望していることです。
  • 就業規則や継続雇用規程に「原則として65歳まで再雇用」等の趣旨が書かれていることです。
  • 更新手続が形骸化し、毎年ほぼ自動更新になっている実態があることです。
  • 業務が臨時ではなく恒常的で、組織運営に不可欠な役割を担っていることです。
  • 上司が「長く働いてほしい」など更新を期待させる言動をしていることです。

反対に、参照資料【資料54】のように、社内文書や制度説明で「本人と会社の希望が合致するとき」と明記する設計自体は可能ですが、その場合でも、基準が曖昧なまま更新を重ねると、結局は期待が形成されやすくなります。制度の言葉と実態運用がずれていると、紛争時に会社側が不利になりやすい点に注意が必要です。

65歳前と65歳到達後で変わる 更新期待の立証ポイント

更新期待の立証は、65歳前と65歳到達後で、焦点が変わりやすいです。65歳までは雇用確保措置の領域として運用されることが多い一方、65歳以降は70歳までの就業確保が努力義務の領域に移り、会社の制度・慣行・個別合意がより重要になります。

参照メモにある厚生労働省「高年齢者雇用状況等報告」(2023年6月時点、従業員21人以上の企業237,006社の集計)では、70歳までの高年齢者就業確保措置を実施済みの企業は29.7%とされています。このように、65歳以降の扱いは企業によって差が大きく、更新期待の有無も「その会社でどう運用してきたか」に依存しやすくなります。

65歳前後での立証ポイントの違い
  • 65歳前は制度上の継続雇用の文脈が強く、拒絶には厳格な理由付けと記録が求められやすいです。
  • 65歳以降は70歳までの就業確保が努力義務のため、社内慣行・個別契約の上限・面談での具体的言動などが中心証拠になりやすいです。
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定年後再雇用と継続雇用制度

高年齢者雇用安定法の60歳・65歳・70歳

高年齢者雇用安定法は、年齢の節目ごとに、事業主に求められる対応の強度が異なります。実務では「60歳・65歳・70歳」を分けて制度設計・説明文書・規程整備を行うことが重要です。

年齢の節目 会社に求められる対応の整理 根拠・位置づけ
60歳 定年を定める場合、60歳未満を定年とする設計はできません。 高年齢者雇用安定法の枠組み(定年下限)
60〜65歳 雇用確保措置(定年引上げ・定年廃止・継続雇用制度等)の実施が求められます。 高年齢者雇用安定法の雇用確保措置
65〜70歳 就業確保措置は努力義務で、制度導入の有無・内容は企業差が大きいです。 2021年4月施行の改正法の位置づけ(努力義務)
年齢ごとの法的整理(実務上の軸)

参照メモでは、2021年4月に改正法が施行され、65歳までの雇用確保義務に加え、65〜70歳の就業機会確保が努力義務になった点が示されています。さらに、内閣府の意識調査として、現在仕事をしている60歳以上の男女の約8割が「65歳以上でも働きたい」と回答した旨も挙げられており、企業側としては、法的義務の範囲だけでなく、従業員側の就労ニーズを前提にした説明・基準づくりが紛争予防に直結します。

選別基準を設ける場合の留意点

継続雇用制度の運用で「選別基準」を設ける場合、抽象的な基準(例:会社が必要と認める者)は、紛争時に合理性の説明が難しくなります。参照資料【資料54】の解雇整理でも、解雇を行うには、就業規則等に解雇事由の定めがあり、かつ客観的合理性と社会通念上の相当性が必要とされています(労働契約法第16条)。継続雇用の拒否・雇止めでも、同じ発想で「規程根拠と記録」が問われやすいです。

選別基準を置く場合の実務上の危険ライン
  • 「会社が必要と認める者」など、客観性が乏しい文言だけで運用することです。
  • 医師所見や勤務記録がないのに、健康不安を理由に継続雇用を拒否することです。
  • 成績不良を理由にするのに、指導・改善機会の付与や評価記録が残っていないことです。

令和7年3月31日で何が変わったか 経過措置終了後の制度見直し基準

令和7年3月31日で、高年齢者雇用安定法の経過措置が終了した、という理解で社内規程・運用を再点検することが重要です。参照メモでも、この期日まで、改正前から労使協定で選別基準を定めていた企業について一定の例外的取扱いがあり得たが、令和7年4月1日以降は経過措置が終了した旨が示されています。

制度見直しの観点では、規程に古い文言が残っているだけでなく、社内説明資料・雇用契約書のテンプレート・面談票の表現が過去の運用のままになっていないかも確認が必要です。参照資料【資料54】のように、社内文書に「本人と会社の希望が合致するとき」などの表現を置く設計もあり得ますが、経過措置終了後はとくに、文言の趣旨と実運用(対象者・更新判断のプロセス)を一致させないと、説明の整合性が崩れやすくなります。

無期転換と労働条件の整理

労働契約法18条と無期転換の要件

無期転換ルール(労働契約法第18条)は、同一使用者との有期契約が反復更新され、通算契約期間が5年を超えると、労働者が無期転換を申し込める制度です。申し込みがあれば、会社が承諾したものとみなされ、現契約満了日の翌日から無期契約に転換します。

ここで注意すべき点は、参照メモにあるとおり、無期転換ルールに年齢上限がないことです。したがって、定年後再雇用の嘱託であっても、通算5年超で無期転換の論点が生じ得ます。無期転換後の労働条件は、原則として直前の有期契約の条件が引き継がれるため、賃金・職務・労働時間・定年(無期側の定年規定)を含め、就業規則・契約書の整備が不十分だと、想定外の固定化が起こり得ます。

有期雇用特別措置法との関係

高齢者の無期転換リスクへの対応として、有期雇用特別措置法の枠組みが問題になります。参照メモでは、事業主が適切な雇用管理に関する計画を提出し、都道府県労働局長の認定(第二種計画認定)を受けた場合に、一定の高齢者(定年後に引き続き雇用される有期契約者)について、定年後に引き続き雇用されている期間中は無期転換申込権が発生しない特例がある旨が示されています。

特例適用の線引き(参照メモに基づく要点)
  • 対象は自社またはグループ会社で定年に達した後に引き続き再雇用される有期契約者に限定されます。
  • 他社で定年退職した後に自社で新規雇入れした有期契約者には特例が及びません。
  • 定年前から有期契約で長年雇用していた労働者にも特例が及ばない整理になります。

この線引きは、実務では雇用契約書のテンプレートの使い分けや、労働条件通知書の管理台帳と結びつけて運用しないと、適用誤りが起こりやすいです。

無期転換を避けたい会社が先に確認すべき 年齢上限条項と第2定年の線引き

無期転換を避けたい、または無期転換後の出口を整理したい場合、採用時・更新時の書面整備が重要です。ただし、年齢上限条項や第2定年は、条項を書けば何でも通るという話ではなく、更新期待や雇止め法理との関係で、説明と運用の一貫性が求められます。

参照メモにある制度整理(65歳までの雇用確保義務、65〜70歳は努力義務)を踏まえると、例えば年齢上限を設けるとしても、それが65歳までの領域なのか、65歳超の領域なのかで、社内説明の作り方が変わります。企業側の内部設計としては、少なくとも次の点を「文言」「説明」「運用記録」で揃える必要があります。

年齢上限条項・第2定年を置く場合の実務チェック
  • 契約書・就業規則・継続雇用規程で、上限年齢や更新上限の位置づけが矛盾していないことです。
  • 65歳までの継続雇用(義務領域)と、65歳以降(努力義務領域)を説明文書上も区別できていることです。
  • 無期転換(通算5年超)の可能性がある対象者を把握し、対象者区分(特例の有無)を管理できていることです。
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雇止め判断と裁判例

雇止めが無効となりやすい事情

雇止めが無効と評価されやすいのは、労働者の雇用継続に対する合理的期待が強いのに、会社の側でその期待を調整する説明・手続・記録が不足している場合です。

無効リスクを高めやすい要素
  • 実際の業務が恒常的で常用性が高いのに、形式だけ有期で更新を重ねていることです。
  • 更新のたびに評価や面談をせず、実質的な自動更新を長期間続けていることです。
  • 上司が「問題を起こさない限り保障する」など更新を強く期待させる説明をしていることです。

この局面では、雇止めが「解雇に近い不利益変更」として実質審査されやすく、参照資料【資料54】が解雇について述べるように、客観的合理性と社会通念上の相当性(労働契約法第16条)の説明に耐える準備がないと、紛争化した際に不利になりやすいです。

雇止めが有効とされやすい事情

雇止めが有効とされやすいのは、更新が当然ではないこと、更新判断の基準、更新しない場合の理由が、本人に事前に説明され、かつ運用記録で裏付けられている場合です。

有効性を補強しやすい実務要素
  • 契約の当初から更新の有無・更新上限・判断要素を契約書で明確化し、本人に説明していることです。
  • 更新の節目ごとに面談・評価を行い、課題があれば改善指導とフィードバックを記録していることです。
  • 就業規則等の解雇事由・服務規律と整合する形で、更新判断の基準が運用されていることです。

なお、雇止めそれ自体は解雇とは異なりますが、紛争時には「どこまで解雇に準じた厳格さが求められるか」が争点になり得ます。参照資料【資料54】が示す解雇の要点(就業規則の根拠、客観的合理性・社会通念上相当性、手続の慎重さ)は、雇止めの場面でも実務上の防波堤になります。

能力不足・健康不安・勤怠不良のどこまでで雇止め判断に進むか 記録の線引き

能力不足・健康不安・勤怠不良を理由に雇止め判断へ進むなら、最終判断の前に「改善機会の付与」と「客観記録の蓄積」を先に整えておく必要があります。参照資料【資料54】でも、企業秩序違反が軽微で指導教育がないのに、いきなり解雇はできない旨が整理されており、雇止めでも同様に「指導・教育・改善の経過」が問われやすいです。

理由別に残すべき記録の具体例
  • 能力不足:ミスの内容と発生日、指示内容、改善指導の日時、再発状況を日付入りで残します。
  • 健康不安:医師の診断書の提出依頼、産業医面談の実施、就労配慮の検討経過を記録します。
  • 勤怠不良:遅刻早退欠勤の客観記録と、注意・警告の履歴(口頭だけでなく書面)を残します。

また、雇止めが争われた場合の金銭リスクは、解雇と同様に「無効となれば遡及的な賃金相当額が問題になり得る」という構造があります。参照資料【資料54】も、解雇が無効になると解雇日からの給与相当額等の負担が生じ得ると注意喚起しており、雇止めでも「無効のリスクを織り込んだ証拠整備」が不可欠です。

就業規則と雇止め手順

就業規則と再雇用契約書の条項

定年後再雇用を含む高年齢の有期雇用では、就業規則(継続雇用規程を含む)と再雇用契約書(個別契約)の整合性が崩れると、雇止めの場面で説明が破綻しやすくなります。

とくに、就業規則に根拠がないのに個別契約だけで不利益な条件を定めた場合、就業規則基準との優劣が問題になります。労働契約の内容と就業規則の関係では、就業規則に達しない労働条件を定める個別合意は無効となり得るという整理があり(労働契約法第12条)、雇止め基準の書き分けが不適切だと紛争時の防御が難しくなります。

また、参照資料【資料54】が解雇について「就業規則等に解雇事由の定めがあること」が前提だと整理している点も踏まえると、雇止めの判断基準も、就業規則側に「どういう場合に更新しないことがあるか」を、服務規律・解雇事由と整合する形で明文化しておくことが実務上重要です。

条項設計で最低限そろえる観点
  • 更新判断の要素(勤務成績・勤怠・健康状態・業務量等)を就業規則と契約書の双方で整合させます。
  • 更新上限(回数・年齢・通算期間の考え方)があるなら、採用時点で説明できる書き方にします。
  • 「本人と会社の希望が合致するとき」等の文言を置く場合は、評価手続・面談・記録とセットで運用します。

契約更新を見据えた面談と記録化

更新・不更新をめぐる紛争予防の中心は、面談と記録化です。面談は「結論通告の場」ではなく、更新判断の基準と事実(勤務状況・課題・改善計画)をすり合わせる場として運用すると、雇止めの合理性を説明しやすくなります。

面談記録に必ず残す項目(例)
  • 面談日、同席者、対象契約の期間満了日を明記します。
  • 会社評価(事実ベース)と、その根拠資料(勤怠集計・業務記録等)を紐づけます。
  • 本人の意向(更新希望の有無、配置・時間・業務の希望)を要約して残します。
  • 次回までの改善事項と期限、次回面談予定を合意できた範囲で残します。

参照資料【資料54】が解雇について「証拠等をよく精査し、専門家に相談のうえ、合意退職の余地はないか検討」とする点も参考になります。雇止めの局面でも、争いを最小化する観点から、本人の納得形成(職務整理・配置転換・労働条件の調整・合意退職の可能性の検討)を含むプロセスを、面談記録として残すことが有用です。

現場・人事・法務がいつ何を残すか 雇止め判断前6か月の社内運用フロー

契約満了が近づいてから慌てて資料を作ると、後出しの説明になりやすいです。参照資料【資料54】が解雇で「30日前までの解雇予告または予告手当」に触れている点も踏まえ、雇止めでも少なくとも満了の相当前から、評価・説明・記録を積み上げる社内フローを定めておくことが安全です。

満了6か月前からの社内運用フロー(例)
  1. 満了6か月前:現場が業務遂行・勤怠・安全配慮の状況を点検し、課題があれば日付入りで指導記録を作成して人事に共有します。
  2. 満了3か月前:人事が就業規則・継続雇用規程の更新基準と照合し、更新可否の論点と必要資料(評価・勤怠・健康配慮の記録)を整理します。
  3. 満了2か月前:人事と現場が意思確認面談を行い、更新条件の変更案や改善計画を提示し、面談記録を作成して本人確認欄を設けます。
  4. 満了1か月前:不更新の可能性が高い場合は、満了日と不更新理由を特定して書面通知し、受領確認を取得します。

雇止めに関する通知の「何日前が必須か」は、個別事情(雇止め予告の対象か、就業規則・契約書にどのように書いてあるか)で変わりますが、参照資料【資料54】が解雇で30日前ルール(労働基準法第20条)を明記していることからも、少なくとも満了直前の不意打ちにならない運用設計が重要です。

よくある質問

60歳で定年のパートも雇止め法理の対象ですか?

パートタイムであっても、有期労働契約が反復更新され、実態として更新が見込まれていた場合は、雇止め法理(労働契約法第19条)の対象になり得ます。雇用形態(パート・アルバイト等)それ自体で適用が外れるわけではありません。

また、参照メモには、アルバイト・パートについて「就労実績、就労意欲、定職に就く可能性、年齢等から総合的に検討する」との整理があり、形式ではなく実態(継続性・期待)を重視する視点が示されています。したがって、長期にわたり更新を重ねている場合、会社は「期間満了だから当然終了」との運用を前提にせず、更新期待を生じさせる事情がないかを点検した上で対応すべきです。

65歳以上で更新しない場合も雇止めになりますか?

65歳以上であっても、有期契約を更新せずに終了させる以上、法形式としては雇止めに当たります。そのうえで、65歳以降は70歳までの就業確保が努力義務の領域になり(参照メモでは2021年4月施行の改正で努力義務化)、会社に一律の継続雇用義務が直ちに生じるわけではありません。

もっとも、65歳以降でも、過去の更新回数、社内の運用(65歳超も更新してきた慣行)、面談での具体的言動などにより、更新期待が認められると、雇止め法理(労働契約法第19条)により更新拒否が制限されることがあります。参照メモの統計でも、70歳までの就業確保措置を実施済み企業が29.7%にとどまる一方で、実施している企業も一定数あるため、自社の制度・慣行が期待形成の根拠になっていないかを確認することが重要です。

再雇用契約書に更新しないと書けば有効ですか?

不更新条項を書くだけで、常に雇止めが有効になるわけではありません。雇止め法理(労働契約法第19条)が問題になる局面では、更新期待が客観的に形成されていたか、会社が期待を調整する説明をしていたか、更新判断の手続が適正だったか、といった事情が総合考慮されます。

参照資料【資料54】でも、解雇について、就業規則等の根拠、客観的合理性、社会通念上の相当性(労働契約法第16条)が欠けると無効になり得ると整理されています。雇止めでも、実態が「解雇に近い打切り」と評価されると、条項の存在だけでは足りず、理由・手続・記録を揃える必要があります。

70歳までの就業確保措置は義務ですか?

70歳までの就業確保措置は、参照メモにあるとおり、2021年4月施行の改正により努力義務です。現時点で未導入でも直ちに刑事罰が科される性質ではありませんが、企業としては方針を説明できるよう、制度検討の記録や社内説明資料を整備しておくと実務上安全です。

また、厚生労働省「高年齢者雇用状況等報告」(2023年6月時点、従業員21人以上の企業237,006社)では、70歳までの高年齢者就業確保措置を実施済みの企業は29.7%とされており、実施の有無が企業間で分かれている状況が読み取れます。自社が未導入の場合でも、定年後再雇用(65歳まで)との線引き、65歳以降の契約更新の考え方、更新期待を生じさせない説明の一貫性を、就業規則・契約書・面談運用で担保することが重要です。

60歳以上契約社員の雇止めへの対応で次にすべきこと

60歳以上の雇止めは、「期間満了」という形式だけでなく、労働契約法19条(労働契約法第19条)の観点から更新期待が形成されていないかを起点に整理することが重要です。判断の軸は、就業規則・継続雇用規程・再雇用契約書の文言と、面談・評価・指導の記録が一致しているかで、ここが崩れると客観的合理性・社会通念上相当性(労働契約法第16条)の説明が難しくなります。実務上は、満了前6か月からの運用フローで、更新可否の論点と証拠(勤怠・業務・健康配慮等)を積み上げ、満了直前の不意打ちを避ける設計が紛争予防に直結します。令和7年4月1日以降の経過措置終了を踏まえ、古い選別基準や説明文書が残っていないかも併せて点検すると、制度と運用の齟齬を減らせます。個別の事案では、合意退職の余地や紛争時の立証方針も含め、早い段階で専門家に相談して進めるのが安全です。



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