圧縮記帳と決算書の見方|別表・償却・資金繰りへの影響を確認
圧縮記帳(固定資産の圧縮)を適用すると、補助金・保険金で取得した資産について、決算書と申告書で「どこが・どの金額で」変わるのかが一見わかりにくくなります。たとえば1,000万円の機械装置に対して400万円の補助金を受けたケースでは、直接減額方式か積立金方式かで、貸借対照表の資産表示や損益、別表での調整の出方が変わります。ここを曖昧にしたまま進めると、金融機関や株主への説明が組み立てづらくなり、台帳・別表・証憑の突合でも手戻りが出やすくなります。以下では、圧縮記帳の判断材料として決算書表示・別表連動・説明の組み立て方を示します。
圧縮記帳と決算書の基本
圧縮記帳で取得価額と帳簿価額はどう変わるか
圧縮記帳とは、国庫補助金や火災保険金などの交付を受けて、関連の固定資産を購入した場合に、その交付金額の部分を購入額から控除して記帳する税務上の取扱いです。法人税法は圧縮記帳ができる場面を例示しており、条文ベースでは法人税法44条〜47条、49条、50条が中核になります(法人税法第44条、法人税法第45条、法人税法第46条、法人税法第47条、法人税法第49条、法人税法第50条)。
結論として、圧縮記帳を行うと、決算書(会計)・申告書(税務)のどこで調整する方式を採るかにより見え方は異なるものの、税務上の取得価額(償却の基礎)または将来益金算入される積立金が設定され、補助金等の受領年度の課税を一時的に平準化します。
- 直接減額方式:貸借対照表の固定資産は「圧縮後の取得価額」で表示され、以後の減価償却の基礎も圧縮後の金額になります。
- 積立金方式:貸借対照表の固定資産は「圧縮前の取得原価」のまま表示し、純資産の部(その他利益剰余金の内訳等)で圧縮積立金を管理し、申告書で損金算入・益金算入を調整します。
たとえば、1,000万円の機械装置の取得に対し400万円の補助金を受けたケースでは、直接減額方式なら機械装置を600万円で計上し、圧縮額を損益(固定資産圧縮損)に反映させます。積立金方式なら機械装置は1,000万円のまま計上し、圧縮額はその他利益剰余金の内訳として積立・取崩で管理しつつ、申告調整で圧縮効果を実現します。なお、積立金方式では、圧縮額から繰延税金負債を控除した純額を積立金として計上するのが原則であり、税効果会計を適用している会社ほど説明資料での補足が重要です。
課税所得と税負担が後年へ移る仕組み
圧縮記帳は免税ではなく課税の繰延べです。補助金等を受けた年度に圧縮損(または積立金の損金算入)で課税所得を圧縮する一方、翌期以降は減価償却費が圧縮後ベースとなって小さくなり、結果として将来年度の課税所得が増えます。
実務上の要点は、決算書の利益と申告所得のつながりを、方式に応じて説明できるようにすることです。
- 当期:補助金等の受領で収益(または益金)が発生する一方、圧縮損の損金算入または積立金の損金算入で当期課税を抑えます(圧縮が認められる類型は法人税法44条〜47条、49条、50条に沿って判断します)。
- 翌期以降:圧縮後の取得価額が償却の基礎となるため、減価償却費の計上可能額(損金)が圧縮され、課税所得が相対的に増えます。
- 積立金方式:積立金は「積み立てっぱなし」ではなく、法令の規定に従い取り崩して益金算入していく前提のため、将来の課税タイミングも含めた管理が必要です。
このため、資金繰り面では「当期の税負担が下がる」一方で、「将来の税負担が増える」構造になりやすく、設備投資計画と合わせて長期の納税見通しを作っておくことが実務上の安全策になります。
圧縮記帳の対象資産と要件
国庫補助金等と工事負担金の対象範囲
国庫補助金等・工事負担金で取得した固定資産は、一定の要件のもとで圧縮記帳の対象となります。法人税法上、国庫補助金等に係る圧縮記帳は法人税法第44条、工事負担金に係る圧縮記帳は法人税法第45条が基本条文です。
結論として、対象かどうかは「入金名目」よりも、固定資産の取得に直接充当された給付であることを中心に整理します。
- 対象になり得るもの:国庫補助金等(法人税法第44条)や工事負担金(法人税法第45条)で取得した固定資産。
- 対象外になりやすいもの:運転資金・研修費等の経費補填部分など、固定資産の取得価額に直接対応しない部分。
- 重要資料:交付決定通知書、実績報告書、経費内訳(どの資産の取得に何円充当されたかの特定に使います)。
圧縮記帳の適用の可否は、後日の税務調査では「固定資産取得との対応関係」が中心論点になりやすいため、社内では補助金資料と固定資産台帳の突合ができる形で保管・整理しておくことが重要です。
保険差益・交換差益・買換えの適用要件
保険差益・交換・収用等・特定資産の買換え等による利益にも、所定の要件のもと圧縮記帳が認められます。条文としては、保険金等は法人税法第47条、交換は法人税法第50条が軸になります。
結論として、これらは「利益が出たから何でも圧縮できる」のではなく、代替取得・交換・政策的買換え等の類型に当てはまり、かつ要件を満たすことが必要です。
- 災害等の保険金等による取得(保険差益):法人税法第47条の枠組みで検討します。
- 交換により取得(交換差益):法人税法第50条の枠組みで検討します。
- 収用等・特定資産の買換え等:法人税法上の規定に加え、租税特別措置法の買換え規定も関係し得ます(法令名の特定は適用条文に応じて整理します)。
また、代替資産や買換資産の取得が期をまたぐ場合には「圧縮特別勘定」により繰延べを行う設計がありますが、適用できる場面・できない場面があるため、次の「受給年度と取得年度がずれる場合の処理」とあわせて整理する必要があります。
ケース別の限度額と圧縮割合の判定
圧縮記帳は、事由ごとに圧縮限度額の枠があり、受け取った金額=全額圧縮が常に認められるわけではありません。結論として、限度額は「資産の取得価額」「差益金の額」等との関係で制限され、限度超過分は当期の益金(または会計上の利益)として残ります。
ここでは、根拠条文に沿って「どの類型か」を先に確定し、次に限度額計算へ進む運用が安全です。
- 国庫補助金等:法人税法第44条の圧縮限度額の考え方に従って計算します。
- 工事負担金:法人税法第45条に従って計算します。
- 保険金等:法人税法第47条に従って計算します。
- 交換:法人税法第50条に従って計算します。
買換え等で租税特別措置法を使うケースも含め、圧縮割合・限度額は改正影響を受け得るため、「制度名」ではなく「適用条文」と「要件充足」の証跡で説明を組み立てると、金融機関・株主・監査のいずれにも通りやすくなります。
補助金ごとに対象経費が分かれるとき、どの資産に対応づけるかの判断基準
1つの補助事業の中で複数の資産・経費が混在する場合、圧縮記帳の前提となる「補助金のうち固定資産取得に直接充当された部分」を、客観資料で説明できる形に落とし込む必要があります。
結論として、対応づけは交付申請書・実績報告書の経費内訳を起点に行い、台帳にも「圧縮対象額の根拠」が残るように整理します。
- 交付決定通知書・実績報告書の経費区分から、固定資産の取得価額に直接対応する補助対象経費を抽出します。
- 対象外(人件費・消耗品費・研修費などの費用性支出)が混在していれば、固定資産取得部分と明確に区分します。
- 複数資産が対象で明確に区分できないときは、合理的な按分基準(取得価額比など)を決め、計算根拠と資料の突合表を残します。
- 固定資産台帳に「圧縮前取得価額・圧縮額・圧縮後(税務)取得価額」および根拠資料(どの書類のどの金額か)を記録します。
この対応づけが弱いと、別表で数字が合っていても、税務上は「固定資産取得に直接充当された補助金か」が説明できず否認リスクが上がるため、資料整備を優先してください。
直接減額方式と積立金方式
直接減額方式の会計処理と固定資産圧縮損
直接減額方式は、固定資産の取得価額から圧縮額を直接控除し、その圧縮額を損益(固定資産圧縮損等)で処理する方法です。結論として、固定資産が貸借対照表に圧縮後の金額で出るため、以後の減価償却の基礎も圧縮後となり、管理はシンプルになりやすいです。
一方で重要な制約として、参照情報のとおり、直接減額方式が認められる取得態様は限定されます。
- 国庫補助金・工事負担金で取得した資産。
- 交換・収用等、ならびに特定の資産の買換えで交換に準ずるものと認められるものにより取得した資産。
この制約を外して「何でも直接減額」としてしまうと、会計表示は整って見えても税務上の適用関係で説明が崩れるため、まず取得態様が上記に当てはまるかを確認し、当てはまらないなら積立金方式や別表調整を前提に組み立てます。
積立金方式の会計処理と別表調整
積立金方式は、固定資産の取得価額は原価のまま維持し、圧縮額を純資産(その他利益剰余金の内訳等)で積み立て、申告で損金算入・益金算入していく方法です。
結論として、決算書の資産表示は「取得原価主義」に沿って分かりやすい一方、申告書上の調整と、積立・取崩の管理が実務の中心になります。
- 決算:圧縮積立金は貸借対照表のその他利益剰余金の内訳として積立・取崩を管理します。
- 税効果:圧縮額から繰延税金負債を控除した純額を積立金として計上するのが原則であり、税効果会計適用会社は説明資料で明示すると誤解が減ります。
- 申告:損金算入・益金算入の調整は別表4・別表5(1)等と連動し、圧縮記帳の明細は別表13等に落とし込みます。
積立金方式は、金融機関や株主への説明では「資産規模は原価で見せつつ、純資産に圧縮積立金がある」構造を説明できる点が利点になる反面、別表と台帳の連動が崩れるとミスが顕在化しやすい点に注意が必要です。
直接減額方式と積立金方式は何を基準に選ぶか|金融機関説明・台帳管理・税効果の分かれ目
選択基準は、決算書の見え方だけでなく、適用できる取得態様の制約、申告調整の手間、税効果会計、金融機関説明の組み立てまで含めて決めます。
| 比較軸 | 直接減額方式 | 積立金方式 |
|---|---|---|
| 適用できる取得態様 | 国庫補助金・工事負担金、交換・収用等、特定買換えの一部などに限定 | 取得態様の制約は相対的に小さいが、条文要件に沿った申告調整が前提 |
| 貸借対照表の資産表示 | 固定資産が圧縮後の金額になり、総資産が小さく見えやすい | 固定資産は原価のまま、純資産に圧縮積立金(その他利益剰余金の内訳等)を表示しやすい |
| 申告・別表対応 | 会計と税務の金額が一致しやすいが、適用類型の誤りが致命傷になり得る | 別表4・別表5(1)・別表13等の連動と、積立・取崩管理が必須 |
| 税効果会計との関係 | 会社の方針によるが、積立金方式ほど「純額管理」の説明ニーズは強くない | 圧縮額から繰延税金負債を控除した純額を積立金とする原則の説明が重要 |
金融機関説明では、どちらの方式でも「補助金等の受領→圧縮→将来の償却費減少」という流れは共通なので、方式の違いは「決算書のどこに差額が残るか」を中心に整理すると伝わりやすいです。
決算書表示と減価償却の読み方
貸借対照表と損益計算書の表示ポイント
圧縮記帳を行うと、貸借対照表・損益計算書・注記(および申告書別表)で、どこに圧縮の影響が現れるかが方式で変わります。結論として、直接減額方式は固定資産金額そのものが動き、積立金方式は純資産(その他利益剰余金の内訳等)と別表調整が中心になります。
- 直接減額方式:固定資産(有形固定資産等)の取得価額が圧縮後になっているか、圧縮損が損益(固定資産圧縮損等)に計上されているかを確認します。
- 積立金方式:固定資産が原価で計上されているか、純資産の部に圧縮積立金(その他利益剰余金の内訳等)が適切に表示されているかを確認します。
- 税効果会計:積立金方式では、圧縮額から繰延税金負債を控除した純額で積み立てるのが原則であるため、繰延税金負債の計上・注記の整合も確認します。
金融機関や株主への説明では、圧縮を「利益操作」と誤解されないよう、条文に基づく制度であること(例:国庫補助金なら法人税法第44条)と、将来の費用減少によって課税が戻る構造を合わせて示すことが実務上有効です。
減価償却費と耐用年数への影響
圧縮記帳を行うと、減価償却費は圧縮後の税務上取得価額(または圧縮の影響を反映した帳簿価額)を基礎に計算されるため、同じ耐用年数でも毎期償却費が小さくなります。結論として、耐用年数そのものは変わらない一方、将来の損金算入余地が小さくなるため、利益・税負担が後年へ戻りやすい点が管理ポイントです。
また、積立金方式を採っている場合でも、税務上は圧縮の効果を別表で反映するため、「会計上の償却」と「申告上の損金算入」の差異が出る局面があります。ここは税理士等と、台帳・別表をセットで確認しておくと安全です。
EBITDA・営業CF・自己資本比率はどう見えるか|圧縮記帳後に金融機関へ説明する順番
圧縮記帳後は、減価償却費が小さく見えたり、資産規模や純資産の表示が変わったりするため、金融機関が見る指標の読み替えが必要になります。
参照情報にあるキャッシュ・フロー計算書の枠組みでは、営業活動によるキャッシュ・フローは「税金等調整前当期純利益」に「減価償却費」等を加減算して作られます。したがって、圧縮で減価償却費が減ると、形式的なEBITDA(利益+減価償却費)や営業CFの説明に補足が必要になることがあります。
- 補助金等の受領と圧縮記帳の類型(国庫補助金なら法人税法第44条など)を示し、制度上の処理であることを先に共有します。
- 直接減額方式か積立金方式かを明示し、貸借対照表(資産・純資産)でどこに影響が出ているかを示します。
- キャッシュ・フロー計算書の考え方に沿って、税金等調整前当期純利益と減価償却費の関係を説明し、圧縮により減価償却費が小さく見える点を補足します。
- 必要に応じて「圧縮前取得原価ベース」の参考指標(設備規模、参考EBITDA等)を社内資料として添付し、見かけの数値変化が格付に与える影響を緩和します。
ポイントは、圧縮記帳の影響を「利益」だけで語らず、営業CFの構造(減価償却費は非資金費用である一方、圧縮で将来の損金が減る)まで含めて説明することです。
申告実務と併用可否の判断
法人税法上の別表13等の記載の流れ
圧縮記帳の適用は、会計処理だけでは完結せず、申告書(別表)での明細・調整が前提になります。結論として、別表13等で圧縮限度額や取得状況を明確化し、別表4・別表5(1)等へ連動させることで、損金算入(または将来の益金算入)が税務上担保されます。
また、圧縮記帳の典型類型は法人税法44条〜47条、49条、50条に整理されているため、別表作成でも「どの条文類型か」を起点に組み立てると、記載の一貫性が出ます(法人税法第44条〜法人税法第47条、法人税法第49条、法人税法第50条)。
- 取得態様を条文で特定し(例:国庫補助金等は法人税法第44条)、圧縮限度額の算定根拠を別表13等に整理します。
- 積立金方式の場合は、別表4で損金算入(減算)し、別表5(1)の利益積立金額等の計算に関する明細書に積立・取崩の増減を連動させます。
- 直接減額方式の場合でも、圧縮の根拠資料(交付決定・確定通知、実績報告等)と台帳の整合を前提に、明細書で説明できる状態にしておきます。
「別表が合っていれば良い」ではなく、税務では証憑(通知書・報告書・台帳)が揃って初めて整合性が完成するため、申告直前の突合をルーチン化しておくことが有効です。
少額減価償却資産や特別償却との関係
圧縮記帳と他の特例(少額減価償却資産、特別償却等)の併用可否は、制度ごとの要件と、取得価額の判定基準の取り方で結論が変わります。
参照情報のとおり、少額な減価償却資産については「取得時に全額損金処理が認められる」枠組みがあり、金額により取扱いが異なるため注意が必要です。加えて、圧縮記帳には法人税法上の圧縮記帳と租税特別措置法上の圧縮記帳があり、両方の枠組みで適用できると整理されています。
- 少額減価償却資産:少額資産の取扱いは「資産の金額により取扱いが異なる」ため、圧縮後の取得価額で判定するのか、制度上の前提を確認します。
- 特別償却等:同一資産での重複適用が制限される特例があり得るため、要件条文と適用順序を税理士等と確認します。
- 圧縮記帳の法令根拠:法人税法44条〜47条、49条、50条のどの類型か(法人税法第44条〜法人税法第47条、法人税法第49条、法人税法第50条)。
結論として、併用は「できる/できない」の一般論ではなく、資産種類・取得態様・適用条文の組合せで決まるため、申告前に対象資産ごとにチェックシートで判定しておくのが実務的です。
決算日から申告までに誰が何を照合するか|別表13・固定資産台帳・補助金資料の実務フロー
決算日から申告までの短期間にミスを防ぐには、部門横断で「同じ数字を見ている状態」を作ることが重要です。結論として、経理(台帳・仕訳)と税理士(別表)に加えて、補助金を所管する事業部門(交付決定・実績報告)の資料を一体で突合します。
- 事業部門:交付決定通知書・交付確定通知書・事業実績報告書の金額(補助対象経費と補助額)を確定させ、経理へ共有します。
- 経理:固定資産台帳に圧縮前取得価額・圧縮額・圧縮後(税務)取得価額を記録し、積立金方式ならその他利益剰余金の内訳(圧縮積立金)の増減も確認します。
- 税理士等:条文類型(法人税法第44条等)を特定し、別表13等→別表4→別表5(1)の連動を検算し、添付・保存すべき証憑が揃っているかを点検します。
照合のゴールは、決算書の数字・台帳の数字・別表の数字が一致することだけでなく、「その数字の根拠資料が説明できること」です。
圧縮記帳の留意点と代替制度
受給年度と取得年度がずれる場合の処理
補助金等の受給と資産取得が別事業年度になる場合、圧縮記帳のタイミング調整として「圧縮特別勘定」を検討することがあります。参照情報のとおり、圧縮特別勘定は、圧縮記帳に係る代替資産または買換資産の取得が資産を譲渡した事業年度の翌期以降にずれる場合に用いる勘定で、圧縮記帳の対象となる代替資産または買換資産の取得ができないなど対象資産の取得が遅れる場合に、譲渡した事業年度中に代替資産等を取得できないケースも生じうるが、その場合に「特別勘定」の計上によって、譲渡益等を繰り延べることが認められるとされています。特別勘定の経理は、積立金として積み立てる方法のほか、仮受金等として経理する方法によることもできる(法基通10-1-1)。
一方で、参照情報には「計上できない特別勘定」も明確に列挙されています。ここを誤ると、繰延べ前提で組んだ資金繰り・税額見通しが崩れるため注意が必要です。
- 国庫補助金等で取得した資産に係る圧縮記帳の特別勘定(法法43条)。
- 工事負担金で取得した資産に係る圧縮記帳の特別勘定(法法45条)。
- 保険金等で取得した資産に係る圧縮記帳の特別勘定(法法48条)。
- 交換により取得した資産に係る圧縮記帳の特別勘定(法法50条)。
- 収用等に伴い取得した資産に係る圧縮記帳の特別勘定(措法64条の2)。
- 特定の資産の買換え等により取得した資産に係る圧縮記帳の特別勘定(措法65条の8)。
したがって、「年度ずれ=特別勘定で何とかなる」とは限らず、対象類型ごとに、圧縮記帳の適用年度・必要書類・別表の作りを個別に設計する必要があります。
よくある誤りと帳簿管理の防止策
圧縮記帳の実務では、台帳・別表・補助金資料のどれかが欠けると、後で修正が重くなります。結論として、誤りの多くは「根拠資料の確定前に見込みで処理した」「積立金方式なのにその他利益剰余金の内訳管理が弱い」「特別勘定の可否を取り違えた」に集約されます。
- 圧縮特別勘定が使えない類型(国庫補助金等・工事負担金・保険金等・交換等)で、特別勘定による繰延べを前提に申告設計してしまう。
- 積立金方式で、圧縮積立金をその他利益剰余金の内訳として積立・取崩する管理ができておらず、別表5(1)との連動が崩れる。
- 税効果会計適用会社で、圧縮額から繰延税金負債を控除した純額で積立金を計上する原則を踏まえず、純資産の説明が不整合になる。
- 取得態様を条文で確定し(法人税法第44条等)、直接減額方式の可否や特別勘定の可否を先に判定します。
- 固定資産台帳に「圧縮前取得価額・圧縮額・圧縮後(税務)取得価額」を必ず並列で残します。
- 積立金方式の場合は、その他利益剰余金の内訳(圧縮積立金)と別表5(1)の増減が一致するかを決算締め前に検算します。
個人事業主の総収入金額不算入との違い
法人の圧縮記帳(損金算入・積立金管理)と、個人事業主の取扱いは、根拠法令と申告構造が異なります。結論として、法人は法人税法の圧縮記帳規定(44条〜47条、49条、50条)を軸に、圧縮損または積立金で調整します(法人税法第44条〜法人税法第47条、法人税法第49条、法人税法第50条)。
一方、個人事業主側は「総収入金額不算入」といった所得計算上の整理になり、法人のように「その他利益剰余金の内訳として積立・取崩を管理する」という設計自体が当てはまりません。
そのため、グループ内に法人・個人が混在している場合は、「同じ補助金スキームでも会計・税務の落としどころが違う」点を前提に、台帳様式や説明資料の型を分けて運用するのが安全です。
よくある質問
圧縮記帳を行った決算書は銀行にどう説明すべきですか?
銀行説明では、圧縮記帳を「会計上の見え方の変更」と「税務上の課税繰延べ」の両面から整理し、誤解を避ける必要があります。結論として、(1)どの条文類型の圧縮か、(2)直接減額方式か積立金方式か、(3)指標への影響を、順番に示すのが実務的です。
- 圧縮の根拠を条文で示します(例:国庫補助金等なら法人税法第44条、保険金等なら法人税法第47条)。
- 決算書のどこが変わるかを方式別に説明します(直接減額方式なら固定資産金額、積立金方式ならその他利益剰余金の内訳の圧縮積立金と別表調整)。
- キャッシュ・フロー計算書の枠組み(税金等調整前当期純利益+減価償却費…)に沿って、圧縮による減価償却費の見え方と、将来の税負担が戻る構造を補足します。
この順番で説明すると、「見かけの利益」だけでなく「返済原資(営業CF)の説明」まで一続きになり、格付担当者の理解が早くなります。
固定資産を売却・除却したとき圧縮記帳はどう処理しますか?
圧縮記帳を適用した資産を売却・除却すると、損益計算の前提となる帳簿価額が通常と異なります。結論として、直接減額方式なら圧縮後の帳簿価額を前提に売却益・除却損を計算します。
積立金方式の場合は、資産自体は原価で残っていても、圧縮積立金(その他利益剰余金の内訳等)を法令に従って取り崩し、申告上は益金算入していく設計です。処分時には、残存する積立金の取崩と、別表での調整が論点になりやすいため、固定資産台帳と別表5(1)の残高管理が重要になります。
補助金交付決定が固定資産取得後でも圧縮記帳は使えますか?
固定資産取得が先行し、補助金の交付決定・確定が後になるケースは実務上よくあります。結論として、圧縮記帳の可否は「年度ずれの形」と「適用類型」により異なり、特別勘定で繰延べできる場面もあれば、そもそも特別勘定が使えない類型もあります。
参照情報のとおり、圧縮特別勘定は圧縮記帳に係る代替資産・買換資産の取得が翌期以降にずれる場合に用いる制度ですが、国庫補助金等・工事負担金・保険金等・交換等に係る特別勘定は計上できない類型として列挙されています。したがって、取得後に交付決定となった場合は、まず取得態様が法人税法44条〜47条、49条、50条のどれに当たるか(法人税法第44条〜法人税法第47条、法人税法第49条、法人税法第50条)を確定し、そのうえで年度別の申告手続(別表・添付資料・台帳)を設計する必要があります。
圧縮記帳への対応で次にすべきこと
圧縮記帳は、当期の見かけの利益や税負担だけでなく、翌期以降の減価償却費(損金算入余地)を通じて課税が戻る「繰延べ」として管理する必要があります。決算書表示は、直接減額方式なら固定資産が圧縮後の金額になり、積立金方式なら純資産(その他利益剰余金の内訳等)の圧縮積立金と別表4・別表5(1)・別表13等の連動が中心になります。実務では、1,000万円の取得に対して400万円の補助金を受けた例のように、圧縮前後の取得価額・圧縮額・圧縮後(税務)取得価額を固定資産台帳で並列管理し、証憑(交付決定・実績報告等)と突合できる状態を先に作ることが次の一手です。金融機関や株主には、条文類型(例:法人税法第44条など)→方式→貸借対照表・損益計算書・指標(営業CF等)への影響の順で説明骨子を揃えると、誤解が減ります。個別の適用可否や併用関係は資産種類・取得態様・適用条文で結論が変わるため、申告前に税理士等と台帳・別表・資料をセットで確認してください。

