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車の差し押さえは回避できる?原因から実行までの流れ、具体的な対処法を解説

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税金やローンの滞納により、愛車が差し押さえられるのではないかと不安を感じていませんか。督促状が届けば、その不安は一層募るものでしょう。この記事では、車が差し押さえられる原因から具体的な流れ、そして差し押さえを回避・解除するための実務的な対処法までを網羅的に解説します。

目次

車が差し押さえられる主な原因

税金(自動車税・住民税など)の滞納

自動車税や住民税などの税金を滞納すると、行政機関は自力執行権に基づき、裁判所の手続きを経ずに財産を差し押さえることができます。自動車税は車両の所有者に課されるため、滞納した場合はその車自体が差し押さえの直接的な対象となりやすいのが特徴です。

納付期限を過ぎると延滞金が加算され、行政から督促状が送付されます。法律上、督促状の発送から10日が経過しても完納されない場合、いつでも差し押さえを実行できる状態になります。税金の滞納は、他の債務よりも迅速かつ強制的に財産を失うリスクが高いといえます。

自動車ローンの返済滞納

自動車ローンを組む際、多くの契約では所有権留保という条項が設定されています。これは、ローンを完済するまで車の所有権が信販会社やディーラーにあり、購入者は使用者に過ぎないという状態です。

ローンの返済が2〜3ヶ月滞ると、債務者は分割で支払う権利(期限の利益)を失い、残債の一括返済を求められます。これに応じられない場合、所有者である信販会社は、裁判手続きを経ずに所有権に基づいて車両を引き上げます。これは法的な差し押さえとは異なりますが、車を失うという点では同じ結果を招きます。

カードローンなど他の借金滞納による強制執行

カードローンやフリーローンなど、自動車ローン以外の借金を滞納した場合も、最終的に車が差し押さえられる可能性があります。ただし、民間の債権者が差し押さえを行うには、裁判所に訴訟などを起こして債務名義(確定判決や支払督促など)を取得しなければなりません。

債権者が債務名義を得ると、裁判所に強制執行を申し立てます。車は動産ですが、登録自動車については自動車執行という不動産に準じた手続きで差し押さえが行われます。債権者は、車に資産価値があると判断すれば、この手続きによって強制的に売却し、債権を回収します。

差し押さえが実行されるまでの具体的な流れ

督促状・催告書の送付

債務の支払いが滞ると、まず債権者から督促状が送付されます。これは支払いを促す最初の通知です。これを無視すると、より警告の度合いが強い催告書が届きます。催告書には、期限までに支払いがない場合に法的措置へ移行する旨が記載されており、これが最終通告となることが一般的です。特に税金滞納では、督促状の送付が差し押さえの前提条件となります。この段階で誠実に対応すれば、分割払いなどの交渉に応じてもらえる可能性があります。

財産調査の実施

督促を無視し続けると、債権者は差し押さえる財産を特定するための調査を開始します。行政機関は法律に基づき、金融機関や勤務先に照会して預金や給与の状況を調査する強力な権限を持っています。民間の債権者も、裁判所を通じて第三者からの情報取得手続を利用し、債務者の資産情報を得ることが可能です。車両については、自動車登録情報を照会することで所有者を特定します。この調査は債務者に知られることなく水面下で進められます。

差押通知書の送付と差し押さえの実行

財産調査で対象資産が特定されると、債権者は差し押さえを実行します。行政機関からは差押通知書が送付され、裁判所を通じた強制執行の場合は差押命令が発令されます。車両の差し押さえでは、運輸支局の登録ファイルに差し押さえが記録され(差押登録)、これによって名義変更や廃車などの処分が一切できなくなります。

実力行使として、執行官などが車両の所在地を訪れ、走行不能にするためのタイヤロックを装着したり、差し押さえ中であることを示す公示書を貼り付けたりします。場合によっては、その場でレッカー車によって車両が物理的に引き上げられます。

車の差し押さえを回避・解除するための対処法

滞納分を速やかに支払う

差し押さえを回避・解除する最も確実な方法は、滞納している元金と延滞金や遅延損害金を全額支払うことです。支払いが確認されれば、差し押さえの理由がなくなるため、債権者は速やかに取下げ手続きを行います。支払う際は、事前に債権者の担当窓口へ連絡し、支払う意思と金額を伝え、完済後に差し押さえを解除するよう依頼することが重要です。放置すれば車両の売却手続きが進むため、一刻も早い対応が求められます。

支払いが困難な場合は債権者へ相談・交渉する

一括での支払いが難しい場合でも、差し押さえ実行前に債権者へ相談することで、事態の悪化を防げる可能性があります。行政機関であれば納税の猶予換価の猶予といった制度の適用を、民間債権者であれば返済計画の見直し(リスケジュール)を交渉します。交渉の際は、現在の収支状況を正直に説明し、現実的な分割払いの計画を提示することが不可欠です。督促を無視せず、早期に誠実な姿勢で相談することが交渉成功の鍵となります。

弁護士や司法書士に相談し債務整理を検討する

借金が多額で自力での解決が困難な場合は、弁護士などの専門家に債務整理を依頼するのが有効な手段です。債務整理には主に3つの手続きがあり、それぞれ車への影響が異なります。

手続きの種類 概要 車の扱い(原則)
任意整理 債権者と交渉し、将来利息をカットして元金を3〜5年で分割返済する手続き 自動車ローンを交渉対象から外せば、車を残せる可能性が高い
個人再生 裁判所の認可を得て、借金を大幅に減額し、原則3年で分割返済する手続き 所有権留保が付いていなければ、車を残せる可能性がある
自己破産 裁判所の免責許可を得て、原則として全ての借金の支払義務を免除してもらう手続き 資産価値のある車は、原則として処分される
主な債務整理手続きと車への影響

専門家が介入すると、債権者からの督促や差し押さえが一時的にストップするため、冷静に対策を立てる時間を確保できます。

差し押さえを解除するための手続きと費用

実行された差し押さえを解除するには、法的な手続きが必要です。最も一般的なのは、原因となった債務を全額弁済し、債権者に差押えの取下げを依頼する方法です。差し押さえの内容に不服がある場合は、裁判所への執行異議の申し立てや、行政への審査請求といった手段がありますが、いずれも期限が短く専門的な知識を要します。

解除にかかる費用として、裁判手続きの実費のほか、弁護士報酬が発生します。また、車両が既にレッカー移動されている場合は、その費用や保管料も債務者の負担となるため、迅速な対応が経済的損失を抑えることにつながります。

債権者への相談時に伝えるべき内容と交渉のポイント

債権者との交渉では、感情論ではなく客観的な事実に基づいて、誠実に状況を伝えることが重要です。以下の点を整理して臨みましょう。

交渉で伝えるべき内容
  • 現在の正確な収入と、家賃・光熱費など最低限の生活費の内訳
  • 支払いが滞った客観的な理由(例:失業、病気、家族の介護など)
  • 無理なく継続して支払える具体的な返済額の提案
  • 車が通勤や通院に不可欠で、失うと返済自体が困難になるという事実

「支払う意思はあるが、現状では計画の見直しが必要」という姿勢を一貫して示し、連絡を絶やさないことが信頼を得るための基本です。

差し押さえの対象とならない車の条件

資産価値が一定基準に満たない車

差し押さえは債権回収が目的であるため、売却しても費用を賄えないほど資産価値が低い車は、差し押さえの対象にならないことがあります。実務上、中古車としての査定額がおおむね20万円を下回るような、年式が古い、過走行、状態が悪い車は、差し押さえが見送られる傾向にあります。ただし、希少価値がある旧車などはこの限りではなく、最終的には債権者が換価価値ありと判断するかどうかによります。

事業や生活の維持に不可欠と判断される車

法律では、債務者の生活を維持するために最低限必要な財産を差押禁止財産と定めています。車自体は原則としてこれに含まれませんが、例外的に差し押さえが認められないケースがあります。

例えば、公共交通機関が乏しい地域での通勤や家族の通院・介護に不可欠な場合や、個人事業主が事業のために使用している場合などです。ただし、これらを理由に差し押さえを免れるには、裁判所に差押禁止財産範囲の変更を申し立て、車がなければ生活が成り立たないことを客観的な証拠で証明する必要があります。

滞納者本人以外の名義になっている車

差し押さえの対象は、債務者本人名義の財産に限られます。したがって、たとえ家族が日常的に使用している車であっても、車検証の所有者名義が配偶者や親など、債務者本人以外であれば差し押さえられることはありません。ただし、差し押さえを免れる目的で直前に名義変更を行った場合、その行為は詐害行為として取り消され、差し押さえの対象となる可能性があります。

ローン完済前で所有権が信販会社にある車

ローン返済中で所有権留保が設定されている車は、法的な所有者が信販会社であるため、そのローンとは無関係の第三者(カード会社など)が差し押さえることは原則としてできません。しかし、これは車が安全だという意味ではありません。自動車ローンの返済が滞れば、所有者である信販会社が車両を引き上げることができます。また、税金の滞納処分や、他の債権者が残債を肩代わりして所有権を移転させた上で差し押さえるという特殊なケースも存在します。

「生活に不可欠」と認められるための具体的な基準や主張方法

車が生活に不可欠であることを裁判所などに認めてもらうためには、客観的な証拠に基づいた主張が必要です。単に「不便になる」というだけでは認められません。

「生活への不可欠性」を証明するための要素
  • 自宅周辺の公共交通機関の路線図や時刻表
  • 勤務先の場所や勤務時間を示し、公共交通機関での通勤が不可能なことの証明
  • 家族の通院や介護の必要性を示す医師の診断書やケアプラン
  • 車両を失った場合に生じる具体的な経済的損失の試算

これらの資料を添えて、裁判所に差押禁止財産範囲の変更を申し立てるか、行政機関との交渉で提示することで、差し押さえの回避を主張します。

差し押さえられた車はどうなるのか

車両の引き上げと公的機関による保管

差し押さえが実行されると、車両はレッカー車などで引き上げられ、行政や裁判所が管理する保管場所へ移送されます。この際にかかるレッカー代や日々の保管料は、すべて債務者の負担となります。車両は現状のまま保管されますが、屋根のない場所に置かれることもあり、時間とともに劣化が進む可能性があります。保管が長引くほど、債務者が負担する費用は増え続けます。

公売や競売による売却処分

差し押さえられた車両は、最終的に強制的に売却されます。これを換価といい、税金滞納の場合は公売、民間の借金の場合は競売という手続きで行われます。これらはオークション形式で、最も高値を付けた入札者に売却されます。ただし、車両は現状のまま引き渡され、保証もないため、落札価格は中古車市場の相場よりも低くなることがほとんどです。一度売却が完了すると、元の所有者が車を取り戻すことはできません。

売却代金の充当と残った債務の支払い義務

車両の売却代金は、まずレッカー代や保管料、公売・競売の手続き費用に充てられます。その残額が、滞納していた税金や借金の返済に充当されます。ここで最も重要なのは、売却代金で債務を完済できなくても、残った借金の支払い義務は消えないという点です。多くの場合、売却価格は残債を下回るため、車を失った後も返済を続けなければなりません。売却代金が債務総額を上回った場合は、差額が債務者に返還されます。

差し押さえを免れるための禁止行為

車を隠す・破壊するなどの財産隠匿行為

差し押さえから逃れるために車を隠したり、意図的に破壊したりする行為は、財産隠匿とみなされ、絶対に行ってはいけません。これらの行為は、強制執行妨害罪などの刑事罰の対象となる可能性があります。また、自己破産を検討している場合、財産隠しは免責不許可事由に該当し、借金の免除が認められなくなるという深刻な事態を招きます。一時しのぎの隠蔽工作は、状況をさらに悪化させるだけです。

督促を無視して第三者へ名義変更や売却をする行為

督促を受けている状況で、焦って車を第三者に売却したり名義変更したりする行為も危険です。これは債権者の利益を害する詐害行為とみなされる可能性があります。債権者は、裁判所に詐害行為取消権を申し立てることで、その売却や名義変更を無効にし、車を差し押さえの対象に戻すことができます。また、自己破産手続きでは、このような不当な財産処分は否認権の対象となり、破産管財人によって取り戻されてしまいます。

債権者からの連絡を無視し続けること

最も避けるべき行為は、債権者からの連絡を完全に無視することです。連絡を絶つと、債権者は「支払う意思がない」と判断し、交渉の余地なく直ちに法的措置に移行します。無視を続けても事態は好転せず、むしろ分割払いの機会を失ったり、知らない間に裁判が進んで給与や預金まで差し押さえられたりするリスクを高めるだけです。支払いが困難な状況であっても、誠実に連絡を取り、話し合いのテーブルに着くことが、差し押さえを回避するための第一歩です。

車の差し押さえに関するよくある質問

ローンが残っている(所有権留保中)の車も差し押さえの対象ですか?

原則として、ローンとは無関係の第三者の債権者が、所有権留保中の車を差し押さえることはできません。法的な所有者がローン会社だからです。ただし、ローン自体の返済を滞納すればローン会社に引き上げられます。また、税金滞納の場合は差し押さえられる可能性があり、他の債権者が残債を肩代わりして所有権を移転させた上で差し押さえるという例外的なケースも存在します。

一度差し押さえられた車を取り戻すことは可能ですか?

車両が公売や競売にかけられて売却される前であれば、取り戻せる可能性はあります。最も確実な方法は、滞納している債務全額と延滞金、手続き費用を一括で支払うことです。完済により差し押さえの理由が消滅し、手続きが取り下げられます。売却が完了し、所有権が第三者に移転した後は、いかなる手段をもってしても車を取り戻すことはできません。

家族名義の車が差し押さえられることはありますか?

原則として、ありません。差し押さえは債務者本人名義の財産が対象のため、所有者名義が配偶者や親など家族のものであれば、差し押さえの対象外です。ただし、差し押さえを逃れるために滞納後に名義変更した場合は詐害行為として取り消されたり、名義は家族でも実質的な所有者が債務者本人だと認定されたりした場合は、例外的に対象となるリスクがあります。

差し押さえの通知が来る前に車を売却しても問題ありませんか?

差し押さえの効力が発生する前であれば、法的に売却は可能です。売却で得た資金を滞納分の返済に充てるのは、むしろ望ましい解決策です。ただし、自動車税が未納だと名義変更ができず売却が完了しない点に注意が必要です。また、不当に安い価格で売却したり、売却代金を返済以外の目的で隠したりすると、後に詐害行為財産隠しとして問題になる可能性があります。

差し押さえの執行官が自宅に来た場合、どう対応すればよいですか?

執行官が来た場合、抵抗したり拒否したりしてはいけません。執行官には法的な権限があり、抵抗すると公務執行妨害罪に問われるおそれがあります。冷静に身分証明書の提示を求め、調査に協力してください。その場で差し押さえを止めることはできませんが、事態が最終段階にあることを意味します。直ちに弁護士などの専門家に連絡を取り、法的措置を相談することが、状況を打開する最後のチャンスとなります。

まとめ:車の差し押さえは回避可能。早期の行動が鍵

本記事では、車の差し押さえに至る原因と流れ、そして具体的な回避・解除方法を解説しました。差し押さえの主な原因は税金やローンの滞納であり、督促を無視すると財産調査を経て強制的に実行されます。最も重要なのは、督促状が届いた段階で決して放置せず、速やかに債権者へ連絡・相談することです。一括返済が難しい場合でも、分割払いの交渉や弁護士など専門家への債務整理相談によって、車を守れる可能性は十分にあります。まずはご自身の状況を正確に把握し、手遅れになる前に具体的な一歩を踏み出しましょう。

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