取締役会の開催頻度は?|3か月規制と実務の組み方を確認
取締役会の開催頻度は、取締役会設置会社かどうかの判定や設置検討の場面で、まず押さえるべきコンプライアンス論点です。会社法は「年◯回」とは書かず、代表取締役・業務執行取締役の報告義務として「3か月に1回以上」(会社法第363条)を定めているため、数え方を誤ると未開催扱い・報告欠缺のリスクが残ります。放置すると、取締役会の監督機能(会社法第362条)の実効性が揺らぎ、議事録整備や運営ルールも含めて後から是正コストが膨らみがちです。以下では、取締役会頻度の判断材料として「3か月に1回以上」のカウント方法と、実務上のスケジュール設計の考え方を示します。
取締役会の設置義務を確認
会社法上の取締役会の位置付け
取締役会は、重要な業務執行の決定と取締役の職務執行の監督を担う合議体の機関として位置付けられています(会社法第362条)。取締役会設置会社では、取締役はあくまで取締役会の構成員として職務を行い、個々の独断を避けつつ、会社としての意思決定と監督を制度的に行います。
また、取締役会は、代表取締役および業務執行取締役から職務執行状況の報告を定期的に受けることで監督機能を果たします。会社法は、報告頻度として「3か月に1回以上」を明記しており(会社法第363条)、取締役会を「単なる報告の場」にとどめず、監督の実効性を担保する設計にしています。
設置会社と非設置会社の違い
取締役会設置会社と非設置会社では、意思決定の置き方と、取締役に期待される役割が異なります。取締役会設置会社では、取締役会が会社の機関として意思決定・監督を行う一方、非設置会社では、取締役が会社機関としてより前面に立って意思決定を担い、相対的に重い役割を負います(取締役会設置会社では「取締役会の一構成員」にとどまるのに対し、非設置会社では「会社の機関のひとつ」としての性格が強い、という整理です)。
参照関係を整理すると、次のとおりです。
| 区分 | 意思決定・監督の基本構造 | 制度上のポイント |
|---|---|---|
| 取締役会設置会社 | 取締役会が重要な業務執行を決定し、取締役の職務執行を監督する(会社法第362条) | 代表取締役・業務執行取締役は3か月に1回以上、職務執行状況を取締役会へ報告(会社法第363条) |
| 取締役会非設置会社 | 会社統治を株主総会と取締役で行う | 株式譲渡制限会社のみが選択可能という制度設計がある(実務上、中小企業での採用が多いが、完全子会社を支配する目的で使われる場合もある) |
取締役会を置く前に確認したい機関設計の分かれ目
取締役会を置くかどうかは、「外部のステークホルダーが増え、合議による監督が必要になるか」「重要な業務執行を、誰がどの枠組みで決めるべきか」を起点に整理すると判断しやすいです。
会社法上、一定の会社には取締役会の設置義務があります(会社法第327条)。義務設置の該当性を確認したうえで、任意設置を検討する場合は、機関設計の詳細(監査等委員会の構成、常勤監査等委員の選定の要否、重要な業務執行の決定の取締役への委任の要否など)を先に内定し、その設計に合わせて定款や各種規程(取締役会規則、監査等委員会規則など)を整備していく流れが実務的です。
- 監査等委員会の構成をどうするか(人数・独立性・役割分担)。
- 常勤監査等委員を置くか(情報収集・監査の実効性に影響)。
- 重要な業務執行の決定を取締役へどこまで委任するか(委任するなら範囲と条件)。
- 上記に合わせて整備すべき規程は何か(定款、取締役会規則、監査等委員会規則など)。
会社法上の開催頻度を押さえる
開催頻度の基準は363条2項
取締役会の開催頻度は、「年◯回」といった形で直接には定められていません。一方で、代表取締役および業務執行取締役には、3か月に1回以上の割合で、自己の職務執行状況を取締役会へ報告する義務があります(会社法第363条)。この報告義務がある以上、取締役会設置会社では、少なくとも報告の機会を確保できる頻度で取締役会を開催する必要があります。
また、ここで重要なのは、会社法が「スケジュール(事業年度のどの時期に開くか)」まで定めていない点です。つまり、法的な最低ラインは会社法第363条の報告義務から導かれますが、実務では、取締役会で決議すべき事項(重要な業務執行など)との関係で、3か月に1回では足りないケースが多くなります。
3か月に1回以上の数え方
「3か月に1回」は、四半期に1度(Q1〜Q4のどこかで1回)という緩い意味ではなく、前回の取締役会と今回の取締役会の間に3か月以上の間隔が空いてはならないという趣旨で理解する必要があります(会社法第363条)。そのため、実務上は「四半期のどこか」ではなく、前回報告日を起点に日付ベースで管理します。
本文中の例でいえば、5月15日に報告を行った場合は、次回は8月15日までに報告ができる取締役会を置く、という管理が整合します。加えて、監督の実効性(報告を受けて議論すること)を確保する観点からは、期限ぴったりを狙わず、月次の定例化や予備日設定で「間隔が空きすぎない」運用に寄せるほうが安全です。
- 「四半期に1回」ではなく「前回から3か月以上空けない」という発想で管理します。
- 報告は取締役会に対して行うため、報告日(実際に報告がされた会議日)を起点にトラッキングします。
- 期限ぎりぎり運用は事故(延期・接続不良等)で超過しやすいため、余裕ある日程に寄せます。
報告義務と開催回数の関係
開催回数の下限を考えるうえでは、「決議があるかどうか」と「報告義務があるかどうか」を分けて整理するのが実務的です。決議事項が少ない時期でも、代表取締役・業務執行取締役の職務執行状況について、取締役会が定期的に報告を受ける必要があるためです(会社法第363条)。
また、取締役会は社外取締役・社外監査役を含む役員が一堂に会し、重要な業務執行の「決定」と職務執行の「監督」を行う場です(会社法第362条)。社外取締役は取締役会のメンバーとして出席し決議に加わる義務があるという整理が前提となり(会社法第362条)、社外監査役も取締役会に出席し、必要があるときは意見を述べる立場にあります(会社法第383条)。この前提に立つと、報告機会を確保するための開催回数は「形式」ではなく、監督機能のための実務要請としても位置付けられます。
取締役会の頻度設計を決める
定款と社内規程で定める方法
取締役会の開催頻度は、法の最低ライン(報告義務)を満たしたうえで、定款や取締役会規則等により自社の運用ルールとして具体化します。特に、報告義務(会社法第363条)は「開催しなければ履行できない」性質があるため、年間スケジュールとして落とし込むことが重要です。
また、機関設計を進める局面では、監査等委員会の構成や常勤監査等委員の要否、重要な業務執行の決定の委任の要否を検討し、それを踏まえて定款・取締役会規則・監査等委員会規則などを整備していく、という順序が実務上の定石になります。
- 定例取締役会の開催頻度(例:月1回、少なくとも3か月に1回以上など)。
- 3か月に1回以上の職務執行状況報告を、議題として必ず載せる運用(会社法第363条)。
- 重要な業務執行に関する付議基準(重要性判断の基準を社内で定義)。
- 臨時取締役会の招集・付議・緊急時の扱い。
上場会社と中小企業の目安
実務的には、多くの上場会社では月1回の定例取締役会として運用している例が多いです。ただし、これは慣例であって法律上の義務ではありません。会社法が開催スケジュール自体を定めておらず(最低限の根拠は会社法第363条の報告義務)、頻度は「取締役会決議が必要な事項の量」と「委任の可否」で変わるからです。
とくに監査役会設置会社では、重要な業務執行の決定を取締役に委任できず、取締役会で決議すべきとされます(会社法第362条)。その結果、重要性の判断基準(取締役会付議基準)を保守的に策定・運用する傾向があり、月1回程度の定例開催を置いて、重要事項の決議や事後報告、全般的な業務執行状況の報告を受ける設計になりやすいです。
一方で、監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社では、重要な業務執行の決定について大幅に業務執行者へ委任できる制度があり(会社法第399条の13、会社法第416条)、月1回より少ない頻度としている会社がある、という整理になります。
経営・法務・総務で分担する開催準備の実務フロー
取締役会運営は、法務・総務だけで完結せず、経営陣と事業部門を巻き込んだ「年間の動線」を作ることが実務上のポイントです。特に、定例取締役会では「重要な業務執行の決定」と「取締役の職務執行の報告」を行う、という基本を落とさない運用が必要になります(会社法第362条、会社法第363条)。
- 総務(事務局)が年間開催日を仮押さえし、3か月に1回以上の報告機会が途切れないように配置します(会社法第363条)。
- 経営陣・事業部門が付議事項(決議)と報告事項を早期に洗い出し、重要性判断に照らして取締役会付議の要否を整理します(会社法第362条)。
- 法務が招集手続、利害関係の整理、決議要件、議事録記載などの適法性を事前点検します。
- 総務が招集通知・資料配布・出欠管理を行い、社外役員が審議できるだけの情報提供(事前説明を含む)を段取りします。
- 当日は議長・事務局が進行し、報告(会社法第363条)と決議(会社法第362条)を切り分けて記録できるように運用します。
- 会後に議事録を確定し、本店での保存・閲覧対応を見据えて管理します(会社法第371条)。
取締役会の開催方法を選ぶ
対面とオンライン開催の留意点
取締役会は対面開催に限られず、オンラインでの開催も実務上選択されます。もっとも、オンライン運用では「議論への実質参加」が確保されていなければ、出席性が問題化します。にあるとおり、少なくとも株主総会については、会社法施行規則が「当該場所に存しない役員等が出席した場合の出席方法」を議事録記載事項として予定しており(会社法施行規則72条3項1号)、双方向性・即時性が確保されるオンライン出席が制度上想定されています。取締役会でも同様に、相互に音声・映像が即時に伝わり自由に議論できる環境を整えることが、コンプライアンス上の出発点になります。
また、社外取締役は取締役会の構成員として出席し決議に加わる義務があり(会社法第362条)、社外監査役も取締役会に出席して必要に応じ意見を述べる立場です(会社法第383条)。オンライン開催の設計は、これらの役割が実質的に果たせる品質(接続安定性、本人確認、セキュリティ)を満たすように定める必要があります。
書面決議と報告省略の限界
取締役会には、決議を省略する制度(いわゆる書面決議)があり、一定の要件のもとで機動的に意思決定できます。会社法上は、定款に定めがある場合に、取締役会の決議があったものとみなすために、取締役全員の同意と、(置かれている場合)監査役の異議がないことが求められます(会社法第370条)。実務で誤解が多い点として、過半数同意では足りず「全員」が必要です。
他方で、取締役会に対する職務執行状況の報告(会社法第363条)は、取締役会の監督機能の中核に位置付けられており、定期的に「取締役会が報告を受ける」運用を落とすとガバナンスが崩れます。したがって、書面決議を活用する局面でも、報告が必要となる間隔管理(前回から3か月以上空けない)を別立てで確保する、という運用設計が安全です。
オンライン開催で無効リスクが出やすい接続不良・途中退席・採決場面の扱い
オンライン開催では、採決時点での出席性・定足数維持が実務上のリスクになります。取締役会決議は、原則として「出席取締役の過半数の賛成」で行うため、接続不良や途中退席で「出席」の前提が揺らぐと、決議の有効性が争点化し得ます。
- 回線断が出た場合は審議・採決を止め、復旧と本人の再接続を確認してから再開します。
- 採決は「誰が採決時点で出席しているか」を音声・映像で確認し、議事録に反映します。
- 途中退席があり得る場合は、議題ごとの出席状況が追えるようにタイムスタンプ等で管理します。
- 社外取締役・社外監査役の役割(出席・意見表明)が実質的に阻害されない通信品質を確保します(会社法第362条、会社法第383条)。
招集・決議・議事録の実務
招集通知と省略のルール
取締役会の招集手続は、適法性の土台です。にあるとおり、取締役と監査役の全員が取締役会の開催に同意し、日時および場所を知っている場合には、招集手続の省略が可能です。この場合でも「取締役会として実際に開催され、報告・審議が行われている」ことが前提になるため、同意の事実と出席状況は議事録等で客観的に残します。
また、通知が漏れて一部の役員が出席機会を失うと、手続違反として後から問題化し得ます。特に、社外役員がいる会社では、招集手続の整備不足が「監督が働いていない」と評価される原因にもなるため、実務では省略を多用せず、例外として位置付ける運用が無難です。
決議要件と特別取締役制度
取締役会決議は、原則として出席取締役の過半数の賛成で行います。定款で決議要件を加重することは可能ですが、要件を緩和する方向の設計は慎重な検討が必要です。
また、決議の際に重要なのが特別利害関係人の排除です。にあるとおり、例えば代表取締役の解任決議における当該代表取締役や、取締役が実質的に支配する会社との重要な財産譲渡に関する当該取締役など、議題について特別の利害関係を持つ取締役は決議に参加できません(利害関係排除により、出席数・賛成数の分母管理もずれ得るため、議案ごとの整理が必要です)。
議事録の作成と10年保存
取締役会議事録は、開催の事実と意思決定プロセスを証明する中核資料です。取締役会設置会社では、議事録を作成し、本店に10年間備え置く義務があります(会社法第371条)。
議事録の実務では、次の点を落とさないことが重要です。
- 開催日時・場所、議事の経過要領、決議結果を記載し、監督と決定のプロセスが追えるようにします(会社法第371条)。
- オンライン出席がある場合は、その出席方法や出席状況(採決時点の出席性)を分かる形で残します。
- 反対意見・留保意見がある場合は、発言内容とともに議事録に残し、責任関係の後日の争いを避けます。
- 「10年保存」を前提に、検索性・改ざん防止・閲覧対応を含む保管ルール(電磁的記録を含む)を整備します(会社法第371条)。
取締役会頻度の見直し方
頻度を減らす増やす判断軸
取締役会の頻度は、法の最低ライン(代表取締役・業務執行取締役の職務執行状況報告を3か月に1回以上行う:会社法第363条)を下回らない範囲で、会社のリスクと意思決定需要に合わせて調整します。
実務上は、監査役会設置会社のように重要な業務執行の決定を取締役会に留保しやすい類型では(会社法第362条)、付議基準が保守的になり、結果として月1回程度の定例開催が必要になることが多いです。逆に、監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社のように、重要な業務執行の決定を業務執行者に大幅に委任できる類型では(会社法第399条の13、会社法第416条)、取締役会頻度を月1回より少なくしても、業務執行上の支障が相対的に出にくい、という整理が成り立ちます。
未開催が招く責任と是正対応
取締役会を「開いていない」「開いている体裁だけ」になっている状態は、取締役会の監督機能(会社法第362条)と、職務執行状況報告の履行(会社法第363条)の両面で問題になります。とくに、3か月に1回以上の報告が長期間欠けていると、監督が機能していない状態として、役員責任の論点(善管注意義務違反の評価など)に波及し得ます。
是正にあたっては、「未開催期間を後から議事録だけで埋める」という対応は避け、まず実開催を優先し、現時点での体制を合法運用に戻すことが要点です。
- 直近で取締役会を実開催し、代表取締役・業務執行取締役から職務執行状況の報告を行います(会社法第363条)。
- 未開催期間に相当する事項は、事後的に事実経過を整理して説明し、必要な監督・確認を行います(虚偽の議事録で埋めない運用が前提です)。
- 今後の再発防止として、前回開催日から3か月以上空かないように年間日程を引き直し、社内の管理者と管理方法を固定します。
よくある質問
3か月に1回以上は90日以内で数えますか?
「3か月に1回以上」は、四半期(Qごと)に1回でよいという意味ではなく、前回の取締役会と今回の取締役会の間に3か月以上の間隔が空いてはならないという趣旨で理解します(会社法第363条)。そのため、実務では「90日」といった日数固定で単純化するよりも、前回開催日(報告をした日)を起点に、次回開催日が3か月を超えていないかを日付ベースで管理するのが安全です。
本文中の例のとおり、5月15日に開催して報告したなら、次回は8月15日までに開催して報告を完了する、という管理になります。四半期末に合わせて8月末に寄せる運用は、前回日付によっては間隔が空きすぎるため注意が必要です。
書面決議だけで開催頻度を満たせますか?
書面決議は、取締役会決議があったものとみなす制度ですが、成立には取締役全員の同意が必要であり(会社法第370条)、運用できる範囲は限定されます。
また、代表取締役・業務執行取締役の職務執行状況は、取締役会に対して定期的に報告することが求められています(会社法第363条)。この趣旨(監督の実効性)を踏まえると、書面決議を多用していても、少なくとも「3か月以上の間隔が空かないように」報告の機会を確保する運用が必要です。
招集通知を省略した取締役会も開催回数に含められますか?
招集手続の省略は、取締役と監査役の全員が取締役会の開催に同意し、日時および場所を知っている場合に可能です。この要件を満たし、実際に取締役会として審議・報告が行われているなら、開催回数として数えること自体は可能です。
ただし、実務上は「全員同意」の立証や、出席機会の確保という観点で後から争いになりやすいため、同意の事実(誰が・いつ・どの会議に同意したか)と出席状況を議事録等で客観的に残す運用が重要です。
監査等委員会設置会社でも頻度の考え方は同じですか?
最低ラインの発想(代表取締役・業務執行取締役が、3か月に1回以上、職務執行状況を取締役会へ報告する:会社法第363条)は共通の前提になります。
一方で、監査等委員会設置会社は、重要な業務執行の決定について業務執行者に大幅に委任できる制度があり(会社法第399条の13)、監査役会設置会社のように重要な業務執行の決定が取締役会に留保されやすい類型(会社法第362条)と比べると、取締役会の開催頻度を月1回より少なくしている例がある、という実務整理になります。
取締役会の判断に必要な要点
取締役会の開催頻度は「年何回」と直結しては定まらず、最低ラインは代表取締役・業務執行取締役の「3か月に1回以上」の報告義務(会社法第363条)から逆算して設計します。ここでいう「3か月に1回」は四半期に1回という意味ではなく、前回の報告(会議日)から3か月以上空けないという日付ベースの管理が軸になります。加えて、重要な業務執行の決定や委任の可否(会社法第362条、会社法第399条の13、会社法第416条)により、実務上必要となる頻度は会社類型・付議基準で変動します。次のアクションとしては、まず自社が取締役会設置義務の対象か(会社法第327条)を確認し、開催日と報告日を起点に年間日程を組んだうえで、招集・決議・議事録(会社法第371条)まで含めた運用ルールを関係部門で固めることが実務的です。個別の状況(社外役員の有無、オンライン運用、未開催期間の是正など)により留意点が変わるため、判断に迷う場合は法務・専門家と論点を切り分けて確認するのが安全です。

