手続

民事再生と破産の違いを7つの視点で比較|手続きの流れと選択のポイント

経営リスクナビ編集部

企業の経営不振に直面し、事業の再生を目指す「民事再生」と会社を清算する「破産」のどちらを選ぶべきか、重大な決断に迫られている経営者の方もいらっしゃるでしょう。これらの法的手続は目的や流れが全く異なり、それぞれの特徴を正確に理解しないまま選択すると、再建の機会を失う可能性があります。各手続のメリット・デメリットを把握することで、自社の状況に即した最適な選択肢を判断する道筋が見えてきます。この記事では、事業再生と清算の代表的な手続である民事再生と破産の違いを7つの視点から比較し、それぞれの手続の概要や判断基準について詳しく解説します。

目次

倒産手続の全体像

事業継続を目指す「再生型」手続

企業の経営が行き詰まった際に、事業の継続と会社の立て直しを目指す法的手続を「再生型手続」と呼びます。再生型手続は、会社を消滅させずに事業を維持し、将来の収益から債務を返済していくことを目的とします。裁判所の関与のもとで債務の減額や返済猶予を受けることで、自力での再建が困難な企業でも事業を立て直すことが可能になります。

再生型手続の主な特徴
  • 会社の法人格は消滅せず、事業活動を継続できる。
  • 取引先との関係や従業員の雇用を維持しながら再建を目指せる。
  • 策定した再生計画に基づき、事業収益から計画的に債務を弁済する。
  • ブランド価値や技術力といった無形の資産を守ることができる。

資産を清算する「清算型」手続

事業の継続を断念し、会社の全財産を売却して債務の弁済に充てる法的手続を「清算型手続」と呼びます。清算型手続は、会社の財産を金銭に換えて債権者に公平に分配し、会社そのものを消滅させることを目的とします。事業から収益を生む見込みがなく、事業継続が困難な場合に選択されます。

清算型手続の主な特徴
  • 会社の全資産を売却し、得られた金銭を債権者に配当する。
  • 手続が完了すると会社の法人格は消滅し、残った債務の支払義務も消える。
  • これ以上の損失拡大を防ぎ、法的な枠組みの中で債務関係を最終的に清算する。
  • 従業員は原則として解雇され、事業活動は完全に停止する。

各手続の概要と特徴

【再生型】民事再生とは

民事再生は、経営難に陥った企業が現在の経営陣の主導のもとで事業の再建を目指す、代表的な再生型手続です。会社を存続させながら債務を大幅に減額し、事業の立て直しを図れる点が特徴です。経営者は退任せずに事業運営を続けながら、裁判所の監督下で債権者と協議し、弁済計画を盛り込んだ再生計画を策定します。経営陣が持つノウハウを活かせるため、中小企業から大企業まで幅広く利用されています。

【再生型】会社更生との違い

会社更生も再生型手続ですが、主に大企業を対象としたより強力な手続であり、民事再生とは手続の主導者や権限の強さが異なります。最大の違いは、会社更生では原則として現在の経営陣は退任し、裁判所が選任する「更生管財人」が経営権を引き継ぐ点です。更生管財人には担保権の実行を禁止する強力な権限が与えられ、抜本的な事業再編を行います。

項目 民事再生 会社更生
手続の主導者 既存の経営陣 更生管財人
経営陣の処遇 原則として続投 原則として退任
対象法人 制限なし(株式会社、個人等) 株式会社のみ
担保権の扱い 原則として手続外で実行可能(別除権) 手続内で実行が禁止される(更生担保権)
民事再生と会社更生のおもな違い

【清算型】破産とは

破産は、債務超過や支払不能に陥った会社が、全財産を金銭に換えて債権者に公平に配当し、会社を完全に消滅させる清算型の手続です。事業継続が不可能な場合に、裁判所の関与のもとで債務関係を法的に終了させる最終手段です。裁判所が選任した「破産管財人」が財産の管理・処分・配当などすべてのプロセスを主導し、債権者間の公平性を保ちながら会社の債務を清算します。

【清算型】特別清算との違い

特別清算は、解散済みの株式会社のみが利用できる、破産よりも簡易的な清算型手続です。破産との大きな違いは、裁判所の監督は受けるものの、会社が選任した「清算人」が手続を主導し、債権者集会の同意を得ながら柔軟に清算を進められる点にあります。破産ほど手続が厳格でなく、費用や期間を抑えられるため、債権者の協力が得られやすい場合に選択されます。

項目 破産 特別清算
手続の主導者 破産管財人 会社の清算人
債権者の同意 不要 協定の可決に必要
対象法人 制限なし(株式会社、個人等) 解散済みの株式会社のみ
手続の厳格さ 厳格(否認権の行使など) 比較的柔軟
破産と特別清算のおもな違い

民事再生と破産の7つの違い

①目的:事業の再生か、資産の清算か

民事再生と破産では、手続が目指すゴールが正反対です。民事再生は事業を継続して会社を立て直すことを目的とするのに対し、破産は会社を消滅させて債務関係を清算することを目的とします。民事再生では将来の収益が返済原資となりますが、破産では現在保有する資産のみが配当の原資となります。

②事業継続の可否

手続開始後の事業活動も明確に異なります。民事再生は事業を継続することが大前提の手続であり、営業活動を続けながら再生計画の策定を進めます。一方、破産は事業を直ちに停止することが原則であり、開始決定と同時にすべての営業拠点は閉鎖され、事業活動は終了します。

③経営陣の処遇:続投か、退任か

経営陣の処遇にも大きな違いがあります。民事再生では、経営陣が持つ事業ノウハウの活用が重視されるため、原則として経営陣は続投し、自ら再建の舵を取ります。これに対し破産では、会社の財産管理権はすべて破産管財人に移るため、従来の経営陣は会社の経営から完全に退くことになります。

④手続の主体:誰が主導するか

手続を誰が主導するかも異なります。民事再生は、経営者自身が再生計画案の作成や債権者との協議などを主体的に進める、会社主導型の手続です。一方の破産は、中立的な第三者である破産管財人が、財産の換価や配当などすべてのプロセスを法に則って進める管財人主導型の手続です。

⑤債権者の同意要件

債権者の同意の要否も重要な相違点です。民事再生では、再生計画案を成立させるために、債権者集会における各議決権者集団ごとの多数決による同意(議決権者の過半数かつ議決権総額の2分の1以上)が不可欠です。一方、破産は支払不能などの客観的要件を満たせばよく、債権者の同意は一切不要で、裁判所の判断で手続が進められます。

⑥担保権の扱い

不動産などに設定された担保権の扱いも異なります。民事再生では、担保権は「別除権」として扱われ、担保権者は再生手続とは関係なく原則として自由に権利を行使(競売など)できます。事業に必要な資産を守るには、個別の交渉が必要です。破産でも別除権として扱われ、担保権者は原則として破産手続とは関係なく権利を行使できます。ただし、破産管財人が担保権者の同意を得て任意売却を行うなど、清算手続の中で協力的に処理される場合もあります。

⑦対象法人:株式会社以外も可能か

手続を利用できる法人の種類については、両者に大きな違いはありません。民事再生も破産も、株式会社だけでなく合同会社、医療法人、学校法人、個人事業主まで、あらゆる法人・個人が利用可能です。会社更生や特別清算が株式会社のみを対象とするのとは対照的に、利用対象が広い点は共通の特徴です。

民事再生手続の具体的な流れ

申立てと保全処分

民事再生手続は、弁護士を通じて裁判所に申立てを行うことから開始されます。申立てと同時に、債権者による個別の取立てや資産の流出を防ぐため、弁済禁止の保全処分を申し立てるのが一般的です。裁判所が保全処分を発令すると、会社は債務の支払いを一時的に停止でき、事業継続に必要な資金を確保しやすくなります。

開始決定と債権届出

申立ての要件が満たされていると裁判所が判断すれば、民事再生手続の開始決定が出されます。開始決定後、裁判所は会社の負債総額を確定させるため、全債権者に対して債権届出を要請します。債権者は指定された期間内に、自身が持つ債権の額や内容を裁判所に届け出る必要があります。

財産評定と再生計画案の作成

債権額の確定作業と並行して、会社は自社の財産を評価する財産評定を行います。この財産評定の結果と、将来の事業収益予測に基づいて、具体的な再生計画案を作成します。再生計画案には、債務をどの程度減額してもらい、残りを何年でどのように返済していくかという弁済計画や、事業の再建策などを盛り込みます。

再生計画案の決議・認可・遂行

作成した再生計画案は、債権者集会に提出され、各議決権者集団における多数決による決議にかけられます。ここで債権者の同意が得られれば計画案は可決され、その後、裁判所の認可決定を経て法的な効力を持ちます。認可後は、会社はこの再生計画に従い、原則として最長10年間で計画的な弁済を遂行し、手続の完了を目指します。

民事再生のメリット・デメリット

メリット:事業と経営権の維持

民事再生の最大のメリットは、会社を存続させ、現在の経営陣が経営権を維持したまま事業の立て直しを図れる点です。これにより、経営者が持つノウハウや取引先との信頼関係を再建に活かすことができます。

民事再生のおもなメリット
  • 経営陣が退任せず、引き続き経営の主導権を握れる。
  • 事業活動を継続できるため、ブランド価値や取引関係を維持しやすい。
  • 従業員の雇用を原則として守ることができる。
  • 再生計画が認可されれば、法律に基づいて債務が大幅に圧縮される。

デメリット:費用負担と信用の低下

一方で、民事再生は法的な倒産手続であるため、社会的な信用の低下は避けられません。また、手続を進めるためには高額な費用が必要になるというデメリットもあります。

民事再生のおもなデメリット
  • 官報公告などにより情報が公開され、社会的な信用が著しく低下する。
  • 取引先から現金決済を求められるなど、資金繰りが一時的に悪化するリスクがある。
  • 裁判所に納める予納金や弁護士報酬など、高額な費用が必要となる。
  • 再生計画の成立には債権者の多数の同意が必要で、否決されると破産に移行する。

【実務視点】取引先への説明と関係維持のポイント

民事再生を成功させるには、事業継続に不可欠な取引先との関係維持が極めて重要です。手続開始による信用不安を払拭し、仕入れや販売のネットワークを守るため、誠実な対応が求められます。

関係維持のポイント
  • 申立て直後、主要な取引先に個別の説明の場を設け、経緯と今後の再建策を伝える。
  • 手元の資金状況を透明にし、現金決済への協力や取引継続を誠意をもって依頼する。
  • 少額弁済許可制度などを活用し、事業運営に不可欠な取引先への支払いを優先する。
  • 誠実なコミュニケーションを通じて、取引先の不安を解消し、信頼関係の再構築に努める。

民事再生を選択すべきかの判断基準

事業に収益性や将来性があるか

民事再生を選択する大前提は、事業そのものに将来的な収益力が見込めるかという点です。再生計画は事業から生み出されるキャッシュフローを返済原資とするため、本業で利益を出せる見通しがなければなりません。

収益性・将来性の判断ポイント
  • 不採算部門の整理などの改善策により、安定した営業利益を出せる構造か。
  • 独自の技術力や強固な顧客基盤など、競争力の源泉となる強みがあるか。
  • 事業の将来性について、債権者を納得させられるだけの合理的な根拠を示せるか。

資金繰りと債権者の協力が得られるか

手続期間中の資金繰りと、主要な債権者の協力も不可欠な要素です。手続開始により信用取引が制限されるうえ、再生計画の成立には債権者の同意が必須となります。

資金繰り・債権者協力の判断ポイント
  • 申立て費用(予納金・弁護士報酬)や当面の運転資金を確保できるか。
  • 金融機関などの大口債権者から、再建への協力姿勢や内諾を得られる見込みがあるか。
  • 破産した場合の配当率よりも、民事再生による弁済率の方が高くなることを示せるか。

再生計画が頓挫しやすいケースと注意点

民事再生を申し立てても、特定の要因があると手続が頓挫し、破産に移行するリスクが高まります。申立て前にこれらのリスクを十分に検討する必要があります。

頓挫しやすいケースの例
  • 事業の根幹となる資産(本社ビルや工場)に設定された担保権が実行され、事業継続が不可能になる。
  • 経営陣に粉飾決算などの不正があり、債権者の信頼を完全に失っている。
  • 楽観的すぎる収益予測など、実現不可能な再生計画しか策定できない。
  • スポンサーからの支援が前提であるにもかかわらず、スポンサーが見つからない。

よくある質問

民事再生と「倒産」は同じ意味ですか?

厳密には異なります。「倒産」とは、債務の支払いができなくなった経営破綻の状態を指す一般的な用語です。一方で「民事再生」は、その倒産状態から会社を立て直すための法的な手続の一つです。つまり、民事再生は倒産という大きな括りの中に含まれる、再建のための具体的な手段と位置づけられます。

従業員の雇用や給与はどうなりますか?

民事再生では事業継続を目的とするため、従業員の雇用は原則として維持されます。手続開始後の給与は共益債権として、また手続開始前の未払給与の一部(原則として申立て前3か月分など)は優先的再生債権として、他の債務よりも優先的に支払われる権利として保護されます。ただし、経営再建の過程で不採算部門の縮小などに伴い、やむを得ず人員削減が行われる可能性はあります。

民事再生が失敗すると必ず破産しますか?

多くの場合、破産手続に移行します。再生計画案が債権者集会で否決されたり、裁判所に認可されなかったりした場合、あるいは認可された計画を遂行できなくなった場合には、民事再生手続は廃止(打ち切り)となります。その際、裁判所が職権で破産手続の開始を決定することが一般的です。

手続きを申請したことは取引先に知られますか?

はい、必ず知られます。民事再生は法的な手続であるため、申立ての事実は国の機関紙である「官報」に公告されます。また、信用調査会社などを通じて情報は広まりますし、そもそもすべての債権者に手続開始の通知を送る必要があるため、取引先に秘密のまま進めることは不可能です。

民事再生手続きにはどのくらいの費用がかかりますか?

民事再生には、裁判所に納める「予納金」と、申立てを依頼する弁護士への「報酬」が主に必要となり、総額は数百万円から数千万円規模にのぼります。特に予納金は会社の負債総額に応じて定められています。

負債総額 予納金基準額
5,000万円未満 200万円
5,000万円以上 1億円未満 300万円
1億円以上 5億円未満 400万円
5億円以上 10億円未満 500万円
10億円以上 50億円未満 600万円
裁判所予納金の目安(法人の場合・東京地裁)

この他に、弁護士費用が別途必要となります。

経営者の個人保証債務の扱いはどうなりますか?

会社の民事再生によって、経営者個人の連帯保証債務が自動的になくなることはありません。民事再生はあくまで法人の債務を整理する手続です。再生計画によって会社の債務が減額されても、債権者(特に金融機関)は減額された分を連帯保証人である経営者個人に請求するのが一般的です。そのため、経営者自身も「経営者保証に関するガイドライン」の利用や、個人の自己破産など、別途債務を整理するための手続を検討する必要があります。

まとめ:民事再生と破産の違いを理解し、自社に最適な選択をするために

本記事で解説した通り、民事再生と破産は、事業を継続して会社を立て直すか、資産を清算して会社を消滅させるかという根本的な目的が異なります。経営陣が続投できるか、事業を続けられるか、そして債権者の同意が必要かどうかが、両者を分ける重要なポイントです。民事再生を選択肢とするには、事業そのものに将来的な収益力があり、運転資金を確保できる見込みがあることが大前提となります。加えて、金融機関をはじめとする主要な債権者の協力が得られるかどうかも、手続の成否を左右する極めて重要な要素です。どちらの道を選ぶべきか判断に迷う場合は、まず自社の財務状況、資産と負債の内容、そして事業の強みを客観的に分析することが第一歩となります。倒産手続は専門的な知見が不可欠であり、経営者個人の連帯保証債務の扱いなど、複雑な問題も絡んできますので、手遅れになる前に、必ず弁護士などの専門家に相談し、具体的な状況に応じた助言を求めるようにしてください。

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