手続

自己破産と民事再生の違いとは?法人の倒産手続きにおける選択基準を解説

catfish_admin

会社の経営が悪化し、事業の継続が困難になったとき、経営者として重大な決断を迫られます。事業を完全に清算するのか、それとも再建の道を探るのか、その岐路に立った際、代表的な法的整理手続きである「自己破産」と「民事再生」の違いを正確に理解することが不可欠です。この記事では、法人における自己破産と民事再生の目的や手続き、経営陣・従業員への影響といった具体的な違いを多角的に比較し、自社の状況に最適な手続きを選択するための判断基準を解説します。

目次

法人における倒産手続きの全体像

法律上の「倒産」とは?経営破綻との意味の違い

一般的に使われる「倒産」という言葉は、法律で厳密に定義された用語ではありません。実務上は、企業が経済的に破綻し、債務の支払いができなくなり事業の継続が困難になった状態を指す広い概念として用いられます。手形の不渡りや、裁判所への法的手続きの申立てなどが、倒産と見なされる典型的な例です。 一方、「経営破綻」は、法的手続きに入る前の段階を含め、資金繰りが行き詰まるなど客観的に債務の返済が不可能な状態を指します。つまり、経営破綻という事実上の状態を経て、法律に基づいた手続きに入ることで、法的な「倒産」が確定する関係にあります。経営者としては、倒産という大きな枠組みの中に、破産や再生といった具体的な法的選択肢が含まれていると理解することが重要です。

手続きは2種類に大別される:清算型と再建型

法人の倒産手続きは、その目的によって清算型再建型の2種類に大きく分けられます。

清算型と再建型の特徴
  • 清算型: 会社の財産をすべて金銭に換え、債権者への配当に充てた後、法人格を消滅させる手続きです。代表例として「破産」や「特別清算」があります。
  • 再建型: 法人格を維持したまま、債務の減額や返済猶予を受け、事業の立て直しを図る手続きです。代表例として「民事再生」や「会社更生」があります。

事業を完全に終了させるのか、それとも苦境を乗り越えて継続させるのか、という経営者の根本的な方針によって、選択すべき手続きの方向性が決まります。

各法的整理手続きの位置づけと概要

法的整理には、主に「破産」「民事再生」「会社更生」「特別清算」の4種類があります。それぞれ対象や手続きの進め方が異なり、会社の状況に応じて最適なものを選択する必要があります。

手続きの種類 分類 主な対象 特徴
破産 清算型 全ての法人・個人 裁判所が選任した破産管財人が財産を管理・処分し、債権者に配当する。
民事再生 再建型 全ての法人・個人 原則として現経営陣が経営を続けながら、再生計画に基づき債務を返済する。
会社更生 再建型 主に大規模な株式会社 裁判所が選任した更生管財人が経営権を掌握し、担保権者も含めて包括的に再建を進める。
特別清算 清算型 株式会社のみ 債権者の多数の同意を前提に、破産より簡易・迅速に清算を進めることが可能。
主な法的整理手続きの概要

申立て準備段階での注意点:安易な資産処分や偏頗弁済のリスク

倒産手続きの準備を始めるにあたり、経営者が特に注意すべきは、不適切な財産処分や特定の債権者への不公平な返済です。これらの行為は、後の手続きで問題となり、最悪の場合、刑事罰に問われる可能性もあります。

申立て準備段階での主な禁止行為
  • 偏頗弁済(へんぱべんさい): 資金繰りが苦しい状況で、親族や知人など特定の債権者にだけ優先的に返済する行為。
  • 財産隠し: 会社の資産を隠したり、不当に個人名義に移したりする行為。
  • 不当な廉価処分: 会社の資産を意図的に著しく安い価格で第三者に売却する行為。

これらの行為は、破産管財人によって否認され、取り戻しの対象となるだけでなく、詐欺破産罪などの罪に問われるリスクも伴います。手続きを決断した後は、弁護士など専門家の指導のもと、全ての債権者に対し公平に対応することが不可欠です。

自己破産と民事再生の具体的な違いを7つの観点で比較

比較1:目的(事業の清算か、再建か)

自己破産と民事再生の最も根本的な違いは、手続きが目指すゴールにあります。

手続きの目的
  • 自己破産: 会社の財産を全て換価・配当し、法人格を消滅させること(事業の清算)。
  • 民事再生: 事業を継続しながら債務を整理し、経営を立て直すこと(事業の再建)。

事業を完全に終わらせるのか、それとも再生を目指すのかという点が、両者の決定的な違いです。

比較2:経営陣の処遇(経営権は維持されるか)

手続き中および手続き後の経営陣の立場も大きく異なります。

経営陣の処遇
  • 自己破産: 破産手続開始決定と同時に経営陣は経営権を喪失し、裁判所が選任した破産管財人が財産管理を行います。
  • 民事再生: 原則として現経営陣が経営を続行できます(DIP型)。ただし、裁判所が選任した監督委員の監督下に置かれます。

自らの手で事業再建を成し遂げたい経営者にとっては、経営権を維持できる民事再生が有力な選択肢となります。

比較3:財産・資産の取り扱い(管財人による管理か自主的な管理か)

会社の資産を誰が管理するかも、重要な比較ポイントです。

財産・資産の管理主体
  • 自己破産: 全ての資産は破産管財人の管理下に置かれ、売却などにより換価・処分されます。
  • 民事再生: 原則として会社自身が資産の管理を継続し、事業に必要な設備等をそのまま使用できます。ただし、重要な財産の処分には監督委員の同意や裁判所の許可が必要です。

比較4:従業員の雇用への影響(原則解雇か維持を目指すか)

従業員の雇用がどうなるかは、手続き選択における重大な要素です。

従業員の雇用
  • 自己破産: 会社が消滅するため、従業員は原則として全員解雇となります。
  • 民事再生: 事業継続が前提のため、雇用の維持を基本方針とします。ただし、再建計画の中で人員整理が行われる可能性はあります。

従業員の生活を守りたいという思いは、民事再生を選択する大きな動機の一つです。

比較5:申立ての対象と要件

手続きを利用できる条件にも違いがあります。

主な申立て要件
  • 自己破産: 支払不能(返済能力がなく、継続的に債務を返済できない状態)または債務超過(負債が資産を上回る状態)にあること。
  • 民事再生: 支払不能等のおそれがある段階でも申立てが可能です。それに加え、再生計画を遂行できる見込みがあることが実質的に求められます。

将来性がなく再建の目処が立たない場合は、民事再生を申し立てても認められず、破産手続きに移行することがあります。

比較6:手続きにかかる費用と期間の目安

一般的に、民事再生は自己破産よりも費用・期間の面で負担が大きくなる傾向があります。

項目 自己破産(少額管財) 民事再生
裁判所への予納金 20万円~ 数百万円~
手続き期間 半年~1年程度で終結 認可まで半年程度、弁済完了まで数年
費用と期間の目安(中小企業の場合)

民事再生を選択するには、高額な予納金や当面の運転資金を準備できる資金力と、長期にわたる手続きに対応できる体制が必要です。

比較7:社会的信用への影響と取引の継続可能性

どちらの手続きも社会的信用への影響は避けられませんが、その後の展開は異なります。

社会的信用と取引への影響
  • 自己破産: 会社が消滅するため、全ての取引関係が終了します。
  • 民事再生: 倒産の事実は公になりますが、事業は継続するため取引を継続できる可能性があります。ただし、現金決済を求められるなど、取引条件が厳しくなることが一般的です。

民事再生の場合、取引先の信頼を回復し、事業継続への協力を得ることが再建の鍵となります。

【状況別】自己破産と民事再生の選択基準

自己破産を選択すべきケース(事業継続が困難な場合)

客観的に事業の継続が難しいと判断される場合には、自己破産による清算が適切な選択となります。関係者への影響を最小限に抑えるためにも、早期の決断が求められます。

自己破産を検討すべき状況
  • 事業の収益性が根本的に失われ、将来的な黒字化が見込めない。
  • 会社の資産を処分しても、手続き費用や当面の運転資金を捻出できない。
  • 経営者に再建への意欲がない、または適切な後継者がいない。
  • 多額の税金や社会保険料を滞納しており、支払いの目処が立たない。

民事再生を選択すべきケース(収益性のある事業が残っている場合)

民事再生を検討する大前提は、事業そのものに利益を生み出す力(収益性)が残っていることです。

民事再生を検討できる状況
  • 本業では営業利益が出ているが、過大な借入金の返済で資金繰りが悪化している。
  • 不採算部門を整理すれば、収益性の高い中核事業で再建できる見込みがある。
  • 独自の技術や優良な顧客基盤など、事業に強みがある。
  • 破産した場合の配当額を上回る返済計画を立てることが可能である。

民事再生を現実的に検討するための資金・協力体制の要件

民事再生を成功させるには、経営者の意欲だけでなく、具体的な条件をクリアする必要があります。

民事再生の成功に必要な要件
  • 資金力: 高額な予納金や弁護士費用、数ヶ月分の運転資金を確保できること。
  • 債権者の協力: 再生計画の可決には債権者の多数の同意が必要なため、特に主要金融機関などの理解が不可欠であること。
  • スポンサーの存在: 資金援助や事業譲受などで再建を支援してくれる企業が見つかること。

これらの条件が整わない場合、民事再生の実現は極めて困難になります。

自社に合った手続きを選ぶための判断フロー

自社の状況を客観的に分析し、最適な手続きを選ぶためには、以下のような段階的な検討が有効です。

手続き選択の判断フロー
  1. 事業の収益性を確認する: 本業で営業利益が出ているか(黒字か赤字か)を確認します。赤字が構造的な場合は、自己破産を優先的に検討します。
  2. 資金の有無を確認する: 申立てに必要な予納金や、当面の運転資金を確保できるかを確認します。資金が完全に枯渇している場合、民事再生は困難です。
  3. 協力体制を見極める: 主要な債権者が再建に協力的か、支援してくれるスポンサーが現れる見込みはあるかを検討します。
  4. 総合的に判断する: 上記の条件が揃っていれば民事再生の道を、一つでも欠けている場合は、損害を広げないために自己破産を選択することを検討します。

その他の法的整理手続き(会社更生・特別清算)との違い

会社更生法:主に大企業向けの再建型手続き

会社更生は、民事再生と同じ再建型の手続きですが、より強力な権限を持つ点が特徴で、主に大企業を対象としています。

会社更生法の特徴
  • 担保権を持つ債権者の権利行使も制限できるため、事業資産を保全しながら抜本的な再建が可能です。
  • 原則として経営陣は退任し、裁判所が選任した更生管財人が経営の全権を掌握します。
  • 予納金が数千万円以上と極めて高額で、手続きも複雑かつ厳格です。
  • 上場企業など、多数の利害関係者が存在する大規模な株式会社の再建に利用されます。

特別清算:株式会社のみが対象の簡易的な清算型手続き

特別清算は、破産と同じく会社を消滅させる清算型の手続きですが、より簡易・迅速に進められる制度です。

特別清算の特徴
  • 利用できるのは、解散済みの株式会社で債務超過の疑いがある場合に限られます。
  • 破産と異なり、会社の清算人が主体となって手続きを進めることができます。
  • 手続きの進行には、債権者の議決権額で3分の2以上の同意が必要です。
  • 親会社が子会社を整理するケースや、債権者との間で事前に合意形成ができている場合に適しています。

各手続きの使い分けと特徴の早見表

どの手続きを選ぶべきか判断するために、それぞれの特徴を比較します。

手続き 目的 主な対象 経営陣 担保権の扱い 特徴
破産 清算 全ての法人 退任 手続き外で実行可能 最も一般的で強制力が強い清算手続き
特別清算 清算 株式会社 続投(清算人として) 手続き外で実行可能 債権者の同意を前提とした簡易・迅速な清算
民事再生 再建 全ての法人 原則続投(DIP型) 手続き外で実行可能 中小企業で最も利用される再建手続き
会社更生 再建 主に大企業 原則退任(管財人主導) 権利行使を禁止できる 担保権も含めて包括的に整理する強力な再建手続き
各法的整理手続きの比較

よくある質問

民事再生が不認可となった場合、自己破産に移行できますか?

はい、移行します。民事再生の申立て後、再生計画案が債権者集会で否決されたり、裁判所から不認可とされたりした場合、裁判所は職権で破産手続開始決定を下します。これは「牽連破産(けんれん はさん)」と呼ばれ、再生が不成功に終わった場合に自動的に清算手続きである破産へ移行する仕組みです。改めて破産を申し立てる必要はありません。

「民事再生は倒産ではない」と聞きますが、法的な位置づけはどうですか?

法的には、民事再生も倒産手続きの一つです。債務の支払いが困難になった状態を前提とするため、広義の倒産に含まれます。「倒産ではない」という表現は、事業が消滅する破産とは異なり、会社が存続して事業を継続するという点を強調した、実務上の肯定的なニュアンスで使われることがあります。しかし、信用情報には倒産手続きとして登録されるため、対外的な影響は大きいと理解しておく必要があります。

民事再生手続き中、従業員の給与は支払われるのでしょうか?

はい、原則として支払われます。事業再建に不可欠な従業員の給与は、法律上強く保護されています。民事再生手続開始に発生する給与は「共益債権」として扱われ、他の債務よりも優先して全額が随時支払われます。また、手続開始の未払給与についても、優先的な債権として扱われ、再生計画による減額の対象外となります。

自己破産後、代表者は二度と会社経営ができませんか?

いいえ、法律上は再び会社経営をすることができます。ただし、破産手続開始決定を受け、復権していない間は会社法上の役員の欠格事由に該当します。

会社更生手続きが中小企業で利用されにくい理由は何ですか?

会社更生が中小企業でほとんど利用されない主な理由は、莫大な費用経営権の喪失という2つの大きなハードルがあるためです。予納金だけで数千万円以上かかることが多く、中小企業には負担が困難です。また、創業経営者にとって、経営権を裁判所が選任した管財人に完全に明け渡さなければならないという点は、心理的にも受け入れがたい場合が多く、経営陣が続投できる民事再生が選択されるのが一般的です。

まとめ:自己破産と民事再生、自社の状況に合わせた最適な選択を

本記事では、法人の倒産手続きにおける主要な選択肢である自己破産と民事再生の違いを、目的、経営権、費用など7つの観点から解説しました。最も重要な違いは、自己破産が事業を清算し法人格を消滅させる「清算型」であるのに対し、民事再生は事業を継続しながら経営再建を目指す「再建型」である点です。どちらを選択すべきかの判断は、事業に収益性が残っているか、手続きを遂行するだけの資金力があるか、そして債権者などの協力が得られるかといった客観的な状況分析が鍵となります。経営権を維持して再建を目指せる民事再生は魅力的ですが、その実現には厳しい要件が伴うことも事実です。事業の将来性や関係者への影響を総合的に考慮し、手遅れになる前に弁護士などの専門家に相談の上、自社にとって最適な手続きを慎重に判断することが極めて重要です。

Baseconnect株式会社
サイト運営会社

本メディアは、「企業が経営リスクを正しく知り、素早く動けるように」という想いから、Baseconnect株式会社が運営しています。当社は、企業取引や与信管理における“潜在的な経営リスクの兆候”を早期に察知・通知するサービス「Riskdog」も展開し、経営判断を支える情報インフラの提供を目指しています。

記事URLをコピーしました