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自己破産の申立てから開始決定までの期間|手続きの流れと法的効果を解説

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多額の負債により自己破産を検討されている経営者や個人事業主の方にとって、手続きの見通しが立たないことは大きな不安材料です。特に、裁判所に申し立ててから「破産手続開始決定」が下りるまでの期間は、事業や生活の再建計画を立てる上で重要な情報となります。この記事では、自己破産の申立てから開始決定までの期間の目安、具体的な流れ、そしてその法的な効果について、事件の種類別に詳しく解説します。

目次

自己破産の申立てから開始決定までの期間【事件別の目安】

同時廃止事件の場合:申立てから1〜2週間程度

自己破産の手続きのうち、同時廃止事件として扱われる場合、申立てから破産手続開始決定までの期間は比較的短く、概ね1〜2週間程度です。同時廃止事件とは、債権者への配当に充てるほどの財産がないことが明らかな場合に、破産手続の開始決定と同時に手続きを終了(廃止)させる簡易的な手続きです。

裁判所に申立書を提出後、書類審査を経て決定が下されます。東京地方裁判所など一部の裁判所では、弁護士が代理人として申し立てることで「即日面接」という迅速な運用が利用できる場合があります。この場合、申立て当日または数日内に裁判官と弁護士が面接し、問題がなければその日のうちに開始決定と同時廃止決定が発令されます。ただし、書類に不備があると補正に時間を要し、1ヶ月程度かかることもあります。

少額管財事件の場合:申立てから1週間〜1ヶ月程度

少額管財事件として扱われる場合、申立てから開始決定までの期間は概ね1週間〜1ヶ月程度が目安です。少額管財事件とは、破産管財人が財産調査や換価をおこないますが、弁護士が申立代理人となることを前提に手続きを簡略化し、裁判所への予納金(手続き費用)をおおむね20万円程度に抑えた運用です。

弁護士による事前の調査が尽くされているため、裁判所の審査も迅速に進む傾向にあります。東京地方裁判所などでは即日面接を経て、申立てから数日以内に開始決定が出されるケースも少なくありません。ただし、少額管財の運用がない裁判所では、次に説明する通常管財事件として扱われるため注意が必要です。

通常管財事件の場合:申立てから1ヶ月以上

法人の破産や、個人でも資産額や負債額が大きい複雑な事案では、原則的な手続きである通常管財事件として扱われます。この場合、申立てから破産手続開始決定まで1ヶ月以上の期間を要するのが一般的です。債権者数が多く、財産関係が複雑なため、裁判所による申立書類の審査が慎重におこなわれるためです。

場合によっては、裁判官が代表者などから直接事情を聴取する破産審尋という手続きがおこなわれることもあります。また、破産管財人の選任や、負債額に応じて高額になる予納金の納付手続きにも時間がかかるため、最終的な開始決定までに数ヶ月を要するケースもあります。

申立てから破産手続開始決定までの具体的な手続きの流れ

ステップ1:裁判所へ自己破産を申立てる

自己破産手続きは、債務者の住所地を管轄する地方裁判所へ、破産手続開始の申立書を提出することから始まります。通常、借金の返済義務を免除してもらうための免責許可の申立ても同時に行います。

申立てには、裁判所が指定する書式に加え、多数の添付書類が必要です。書類に不備があると受理されなかったり、その後の手続きが遅れたりする原因となります。申立時には、手数料や官報公告費などの予納金も納付します。

主な申立書類の例
  • 破産手続開始・免責許可申立書
  • 債権者一覧表(借入先、金額、時期などを記載)
  • 財産目録(預貯金、保険、不動産などの一覧)
  • 過去2年分の預金通帳の写し
  • 給与明細や源泉徴収票などの収入資料
  • 家計全体の状況(家計収支表)
  • 住民票、戸籍謄本

ステップ2:裁判官との審尋(面接)が行われる

申立書類を提出した後、裁判官が申立人から直接事情を聴取する審尋(しんじん)という手続きがおこなわれることがあります。これは破産審尋とも呼ばれ、破産手続を開始する原因(支払不能の状態など)があるかを確認する目的で行われます。

審尋では、申立書類の内容、借金が増えた経緯、現在の生活状況などについて質問されます。弁護士が代理人に就いている場合、裁判所によっては申立人本人の出頭が不要となり、代理人弁護士のみが裁判官と面接する「即日面接」で済むこともあります。審尋では虚偽の説明をせず、誠実に対応することが重要です。

ステップ3:破産手続開始決定が発令される

裁判所が提出された書類や審尋の結果を審査し、債務者が支払不能の状態にあると判断した場合、破産手続開始決定が発令されます。この決定をもって、正式に破産手続きがスタートします。

決定が下されると、その内容は国の広報紙である官報に掲載され、各債権者にも通知されます。管財事件の場合は、このタイミングで破産管財人が選任され、以降の財産管理は管財人がおこないます。同時廃止事件の場合は、開始決定と同時に破産手続きを終了させる決定もなされます。

申立て後、開始決定までの事業運営上の注意点

法人の代表者などが破産を申し立ててから開始決定が出るまでの間は、事業の混乱を防ぎ、後の手続きを円滑に進めるために厳格な行動が求められます。特に以下の行為は絶対におこなってはいけません。

開始決定を待つ間の事業運営上の禁止事項
  • 特定の債権者にだけ優先的に返済する(偏頗弁済
  • 新たな借り入れや、後払いを前提とした商品の仕入れ
  • 弁護士の指示なく、従業員の解雇や事務所の明け渡しを進める
  • 会社の財産(帳簿、印鑑、預金通帳など)を散逸させる
  • 破産の予定を不用意に取引先などに漏らし、混乱を招く

破産手続開始決定がもたらす法的な効果

債権者による給与差押えや督促が停止する

破産手続開始決定が発令されると、債権者による個別の権利行使が法律上禁止されます。これにより、債務者は精神的なプレッシャーから解放され、生活の再建に集中できる環境が整います。

開始決定による主な法的効果
  • 債権者から債務者への直接の電話や訪問による督促が停止する。
  • 給与や預金口座などに対する新たな強制執行(差押え)ができなくなる
  • すでに始まっている強制執行も、その効力が停止または失効する。

すでに給与差押えを受けている場合、管財事件では開始決定により差押えは停止し、破産管財人がその後の対応を行います。同時廃止事件では開始決定により差押えの効力は失われ、会社に留保されていた給与は本人に支払われることになります。

破産管財人による財産管理が開始される(管財事件)

管財事件の場合、破産手続開始決定と同時に、債務者が所有していた財産の管理処分権は破産管財人に移ります。これにより、破産者は自身の財産を勝手に売却したり譲渡したりできなくなります。

破産管財人は、中立的な立場で以下の職務をおこないます。

破産管財人の主な役割
  • 破産者の財産を調査・確保し、売却などによって現金化する(換価)。
  • 換価して得た金銭を、法に基づき各債権者へ公平に分配する(配当)。
  • 破産手続前に行われた不当な財産処分などを取り消す(否認権の行使)。
  • 破産者宛ての郵便物をチェックし、財産や債権者の漏れがないかを確認する。

官報への氏名掲載と一部資格の制限が発生する

破産手続開始決定が出ると、社会的な影響として主に2つのことが生じます。一つは、国の広報紙である官報に氏名や住所が掲載されることです。これは、裁判所が把握していない債権者に手続きへの参加機会を知らせる目的があります。

もう一つは、一部の職業や資格に就くことが一時的に制限される資格制限です。これらの制限は、免責許可決定が確定すれば解除され(復権)、再びその職業に就くことが可能になります。

資格制限を受ける主な職種・役職の例
  • 弁護士、司法書士、税理士などの士業
  • 警備員、保険募集人、宅地建物取引士
  • 株式会社の取締役、監査役(委任契約が終了し一度退任となる)

開始決定までの期間が長引く・短縮される要因

手続き期間が長期化する主なケース(書類不備・財産調査など)

破産手続開始決定までの期間が予定より長引く場合、その原因の多くは申立ての準備段階にあります。円滑に手続きを進めるためには、これらの要因を避けることが重要です。

手続きが長期化する主な要因
  • 裁判所に提出する申立書類に不備や矛盾がある。
  • 財産状況が複雑であったり、不透明な資金移動があったりして調査に時間を要する。
  • 債権者の数が非常に多い、または手続きに協力しない債権者がいる。
  • 裁判所に納める予納金の準備が遅れ、支払いが完了しない。

手続きを円滑に進め、期間を短縮するポイント

申立てから開始決定までの期間をできるだけ短縮するには、専門家である弁護士のサポートを受けながら、計画的に準備を進めることが不可欠です。

期間を短縮するためのポイント
  • 早期に弁護士に相談し、正確な申立書類を迅速に作成する。
  • 弁護士からの受任通知で債権者からの督促を止め、落ち着いて書類収集に専念する。
  • 裁判所が運用する「即日面接」などの迅速化制度を積極的に活用する。
  • 弁護士費用や予納金を事前に準備し、一括で支払えるようにしておく。
  • 裁判所や管財人に対し、財産状況などを正直に報告し、協力的な姿勢を示す。

開始決定を待つ間の資産管理で絶対にしてはいけないこと

申立ての準備中や開始決定を待つ間に、特定の行為をおこなうと、最終的に免責が認められなくなる(借金がゼロにならない)重大なリスクを負うことになります。以下の行為は絶対に避けてください。

絶対に避けるべき行為
  • 財産隠し:預金を家族名義の口座に移す、不動産の名義を変更するなど。
  • 偏頗弁済:友人や親族など、特定の債権者にだけ借金を返済する。
  • 浪費・詐術:破産を前提として新たに借金をする、クレジットカードで高額商品を買うなど。

これらの行為は、免責不許可事由に該当するだけでなく、悪質な場合には詐欺破産罪という犯罪に問われる可能性もあります。

参考:自己破産手続き全体の流れと期間の概観

相談・依頼から自己破産申立てまでの準備期間

弁護士に相談してから、実際に裁判所へ自己破産を申し立てるまでの準備には、一般的に3ヶ月から6ヶ月程度の期間がかかります。この期間は、主に必要書類の収集と、弁護士費用や裁判所費用の準備に充てられます。

準備期間中の主なタスク
  • 弁護士費用の分割払いによる積み立て
  • 全ての借入先からの債権調査と書類の回収
  • 預金通帳の記帳、給与明細、保険証券などの資料収集
  • 日々の収入と支出を記録した家計収支表の作成

書類の収集がスムーズに進めば期間は短縮されますが、費用の準備に時間がかかる場合などは半年以上を要することもあります。

破産手続開始決定から免責許可決定までの期間

破産手続開始決定が出てから、最終的に借金の支払いが免除される免責許可決定が下りるまでの期間は、手続きの種類によって大きく異なります。

手続きの種類 期間の目安 概要
同時廃止事件 約2〜3ヶ月 財産調査が不要なため、債権者の意見申述期間などを経て比較的短期間で終結します。
管財事件 約半年〜1年 破産管財人による財産調査、換価、債権者集会などが必要なため時間を要します。
開始決定から免責許可決定までの期間目安

免責許可決定が出された後、官報に掲載され、約1ヶ月後に法的に確定します。この確定をもって、すべての手続きが完了し、返済義務から正式に解放されます。

自己破産の開始決定に関するよくある質問

破産手続開始決定の通知は、いつどのように届きますか?

破産手続開始決定が出ると、裁判所から債務者本人(または代理人弁護士)と、申立書に記載された全ての債権者に対して「破産手続開始通知書」が郵送されます。通知が届くのは、決定から数日〜1週間程度が一般的です。

代理人弁護士に依頼している場合は、まず弁護士事務所に通知が届き、その後、本人へ報告がなされます。債権者宛ての通知書には、事件番号や破産管財人の連絡先などが記載されています。

開始決定が出た後、給料や収入はどうなりますか?

破産手続開始決定が出た後に得た給料や賞与などの収入は「新得財産(しんとくざいさん)」と呼ばれ、破産管財人による処分の対象にはなりません。したがって、それらの収入は生活費や将来のために自由に使うことができます

破産手続きで清算の対象となるのは、あくまで開始決定の時点で所有していた財産です。 また、開始決定前に給与の差押えを受けていた場合、管財事件では差押えは停止し、同時廃止事件ではその効力が失われるため、以降は給与の全額を受け取れるようになります。

申立てから免責許可が確定するまでの総期間はどれくらいですか?

裁判所に自己破産を申し立ててから、最終的に免責許可が確定し、すべての手続きが完了するまでの総期間は、事案の内容によって異なります。

申立てから免責許可確定までの総期間の目安
  • 同時廃止事件:約3ヶ月〜6ヶ月
  • 管財事件:約半年〜1年(複雑な事案ではそれ以上)

この期間は、あくまで裁判所に申し立ててからの目安です。弁護士への相談から起算したトータルの解決期間としては、半年から1年半程度を見込んでおくとよいでしょう。

まとめ:開始決定までの期間を把握し、冷静な準備を進めましょう

自己破産の申立てから破産手続開始決定までの期間は、同時廃止で1〜2週間、少額管財で1週間〜1ヶ月、通常管財では1ヶ月以上と、事案の種類によって大きく異なります。この決定が下りることで、債権者からの督促や差押えが法的に停止し、生活再建に向けた重要な一歩を踏み出すことが可能です。手続きを円滑に進めるには、早期に弁護士へ相談し、正確な書類を準備することが不可欠です。申立て後から開始決定を待つ間は、財産隠しや特定の債権者への返済(偏頗弁済)などは絶対におこなってはなりません。ご自身の状況を正確に把握し、専門家と連携しながら誠実に手続きを進めることが、最終的な免責許可を得るための鍵となります。

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