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監査報告書と取締役会承認の順番は?会社法の時系列と実務整理

経営リスクナビ編集部

監査報告書の受領タイミングは、取締役会設置会社の決算スケジュールを組むうえで、取締役会承認・招集通知・定時株主総会までの順序を左右する実務論点です。監査報告(少なくとも内容通知)が取締役会承認より後追いになると、法定手続の順序に反するだけでなく、本店備置き(定時株主総会の2週間前から5年間)や総会提出の前提が崩れ、後工程で修正対応が発生しやすくなります。監査役(会)・会計監査人の通知期限(受領日から4週間など)を踏まえて、いつ何を確定させるべきかを時系列で整理しておくことが、総会議案設計(承認か報告か)まで含めた判断の近道になります。実務で最初に押さえるべきは監査報告の通知→取締役会承認の直列関係です。そこから見ていきます。

目次

監査報告と取締役会承認

監査報告が承認前に要る理由

取締役会設置会社では、取締役会が計算書類等を承認する前に、監査役等(監査役・監査役会)や会計監査人の監査を経た状態になっている必要があります。会社法は、監査を経た計算書類等を取締役会で承認し、その後に定時株主総会へ提出する建付けを採っています(計算書類の株主総会承認の原則は会社法436条3項・438条2項(会社法第436条、会社法第438条))。

参照実務の整理として、旧商法下で見られた「監査に出す前に取締役会でいったん承認する(いわゆる計算書類承認の取締役会)」は、会社法の下では不要であることが明確とされています。一方で、実務では「取締役会等で承認または報告してから監査に提出する」運用も残り得るため、社内手続(稟議・経営会議等)と、会社法上の確定手続(監査→取締役会承認→株主総会提出)を混同しないことが重要です。

取締役会が監査報告の通知前に承認決議を行うと、少なくとも法定の手続順序に反する状態となり、以後の本店備置き・招集通知への添付(同封)・総会提出の前提が崩れます。したがって、決算取締役会日程は「監査報告の通知日(到達日)を先に確保する」形で逆算して設計します。

計算書類等の対象範囲を整理

会社法上、毎事業年度に作成し、監査および取締役会の承認に付す「計算書類等」は、計算書類・事業報告・それぞれの附属明細書で整理します(計算書類の承認・確定に関する基本は会社法436条3項(会社法第436条))。

会社法上の「計算書類等」(典型例)
  • 計算書類:貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表
  • 計算書類の附属明細書:計算書類を補完する明細(重要な内訳・補足の位置付け)
  • 事業報告:1年間の事業の状況や役員の状況等を定性的に説明する書面
  • 事業報告の附属明細書:事業報告の補完資料

「計算書類」は財産・損益の状況を数値で示す中核資料であり、「事業報告」はそれを株主に理解可能な形で補う資料です。監査役等の「監査」は、の整理どおり、(a)取締役等の職務執行・事業報告面(業務監査)と、(b)計算書類面(会計監査)の2つの観点で問題がないかをチェックし、必要があれば監査報告に意見として表明するもの、と位置付けて把握すると実務判断がぶれにくくなります。

承認対象に含める書類がずれやすい会社の見分け方と、取締役会付議前の確認順

承認対象の「ずれ」が起きやすいのは、(1)連結計算書類の有無、(2)監査体制(監査役会/監査等委員会等)と招集通知の記載省略運用、(3)会計監査人設置の有無、が絡む会社です。上場会社の例では決算取締役会で「計算書類・事業報告・附属明細書・連結計算書類」を一括承認する運用が示されています(会社法444条7項に基づく連結計算書類の監査報告に言及あり(会社法第444条))。

取締役会付議前の実務確認順(ずれ防止)
  1. 機関設計の確定:監査主体が監査役会か監査等委員会かを確定し、招集通知等の文言(「監査役会」を「監査等委員会」に変更が必要か)を点検します。
  2. 対象書類の棚卸し:計算書類・事業報告・各附属明細書に加え、連結計算書類の作成・監査対象の有無を一覧で確定します。
  3. 監査の前提関係の確認:会計監査人設置会社では、監査役等の計算書類監査が会計監査人の会計監査報告を前提に組み立てられる点(記載事項の構造)を踏まえ、会計監査報告の受領見込み日を先に固めます。
  4. 招集通知との整合:招集通知発送後に修正が生じ得ることを前提に、周知方法(ウェブサイト掲載等)を社内ルールとして確認します(会社法施行規則65条3項・133条6項、会社計算規則133条7項・134条8項)。

監査役設置会社の手続

作成から監査役通知までの流れ

監査役設置会社では、取締役が作成した計算書類等を監査役(会)へ提出し、監査役(会)の監査後に取締役会が承認することで、事業報告等は確定していきます。の整理では、事業報告およびその附属明細書は「取締役が作成→監査役(会)に提出→監査役(会)の監査終了後→取締役会が承認して確定」とされています。

監査役側の運営としては、監査役会設置会社では、監査役会が監査の方針・監査計画・役割分担等を協議して重点監査項目を共有することが想定されており、会社法上も「監査の方針、調査の方法その他の監査役の職務の執行に関する事項の決定」は監査役会の職務として明記されています(会社法390条2項3号(会社法第390条))。

提出から通知までの期限管理は、会社計算規則上の「通知期限」設計(後記の会計監査人設置会社の条文ベースの期限)と同様に、受領日を起点に管理するのが実務上の安全策です。差し替えが発生し得ることを前提に、提出日・受領日・差し替え履歴(どの版をいつ受領したか)を記録しておくと、監査役側の通知期限管理と衝突しにくくなります。

監査後に取締役会で承認する順序

監査役の監査(監査報告の通知)を受けた後に、取締役会で計算書類等を承認します。取締役会は、監査を経た計算書類等を承認し、定時株主総会への提出書類として整える必要があります(会社法436条3項(会社法第436条))。

の実務例(上場会社・大会社の3月期)では、次のように「監査報告通知→決算取締役会」で日程が組まれています。

にある日程例(抜粋)
  • 5/9:会計監査人が会計監査報告(連結分を含む)の内容を特定監査役・特定取締役へ通知(計算書類の通知期限は5/17、連結計算書類の通知期限は5/24)
  • 5/12:特定監査役が監査役会の監査報告(連結分を含む)の内容を特定取締役・会計監査人へ通知(計算書類は5/17、事業報告は5/24が期限として整理)
  • 5/13:決算取締役会で計算書類・事業報告・附属明細書・連結計算書類を承認し、定時株主総会の招集事項と付議議案も決定(会社法298条・436条3項・444条5項(会社法第298条、会社法第436条、会社法第444条))

取締役会議事運営としては、審議に先立ち議長が監査役に監査報告を求め、常勤監査役が監査役会を代表して監査報告を行う運用が多いと整理されています。ここで、取締役の職務執行に関する監査だけでなく、連結計算書類に関する監査報告(会社法444条7項(会社法第444条))を合わせて扱うことも多い点は、議事進行・議事録作成の観点で押さえておくと実務が滑らかです。

監査役への提出日をいつで切るか―差し替えが出たときに通知期限をどう見直すか

「提出日(受領日)」は、監査役側の通知期限管理の起点になり得るため、何をもって提出完了とするかを実務上明確化しておく必要があります。差し替えが起きると、監査の対象資料が更新されるため、通知期限の取り扱い(どの版を起点にするか)が問題になります。

が明示しているのは、会計監査人の会計監査報告の通知期限が「(ア)計算書類全部の受領日から4週間」「(イ)附属明細書受領日から1週間」「(ウ)合意日があればその日」のいずれか遅い日であるという点です(会社計算規則130条1項1号)。この発想を監査役側の工程管理にも当てはめ、差し替えが出た場合は「最終版の受領日」と「合意日の再確認」をセットで行う運用が、スケジュール破綻を防ぎます。

差し替え発生時の実務整理(期限管理の観点)
  • 受領日を切る基準:計算書類等一式が「監査可能な完成版として揃った日」を受領日として合意し、版管理表で明確化します。
  • 合意日の使い方:会社計算規則130条1項1号(ウ)のように合意日が許容される場面があることを踏まえ、監査役(会)との間でも合意日運用の可否・条件を事前に確認します。
  • 連結の注意:連結計算書類は附属明細書がないため、会計監査人の通知期限が原則として「受領日から4週間」設計になる点(会社計算規則130条1項3号)を前提に、連結の差し替えは特に影響が大きいと理解します。
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会計監査人設置会社の流れ

会計監査人と監査役の監査順序

会計監査人設置会社では、会計監査人→監査役等の順で監査が進む設計を押さえる必要があります。監査役等の計算書類についての監査報告は、会計監査人の会計監査報告を前提として、その内容(方法・結果)を確認する構造で記載される旨が整理されています。

監査の対象と役割分担は、次のように整理するとスケジュール設計に落とし込みやすいです。

区分 主な対象 アウトプット(通知) ポイント
会計監査人 計算関係書類(計算書類・附属明細書等) 会計監査報告(会社計算規則126条) 無限定適正意見・限定適正意見・不適正意見等の監査意見区分が実務判断の起点になります
監査役等(監査役・監査役会) 会計監査人監査の相当性+事業報告等の業務監査 監査報告(会計監査人の方法・結果を相当でないと認める意見の有無等) 会計監査報告を受けて短期間でまとめる設計になり得るため、途中経過の共有が重要です
会計監査人設置会社における監査の役割整理

この順序を前提に、取締役会承認日を決める際は「会計監査報告の通知→監査役会監査報告の通知→決算取締役会」という直列工程として扱い、並行処理できるのはドラフト作成・注記整備・総会資料整備等に限る、という感覚が実務上の事故を減らします。

会社計算規則の通知期限を確認

会計監査人設置会社の通知期限は、に条文ベースで具体的に整理されています。ここはスケジュール設計の「動かせない制約」になるため、社内で共通言語にしておくことが重要です。

会計監査人の会計監査報告の通知期限(会社計算規則130条1項1号)
  • (ア)計算書類の全部を受領した日から4週間を経過した日
  • (イ)計算書類の附属明細書を受領した日から1週間を経過した日
  • (ウ)特定取締役・特定監査役・会計監査人の合意により定めた日があるときはその日

連結計算書類については「附属明細書がない」ため、会計監査報告の通知期限は原則として(ア)で管理し、合意日((ウ))を置く場合はその日になります(会社計算規則130条1項3号)。

また、監査役会の監査報告通知期限についても、では「計算書類に関する監査報告の通知期限」「連結計算書類に関する通知期限」で取り扱いが異なる旨が示されています(会社計算規則132条1項)。このため、計算書類(単体)と連結で提出・受領・差し替えの管理表を分け、どの期限が適用されるのかを工程表上で明示すると、監査役会・会計監査人双方の説明が容易になります。

株主総会承認が不要となる会社法439条の要件と、報告事項に切り替わる判断基準

会計監査人設置会社では、一定の要件を満たす場合に、定時株主総会で計算書類の「承認決議」を要せず、報告事項に切り替えることができます(会社法439条(会社法第439条))。でも「監査を受けた計算書類は取締役会承認後、原則は株主総会承認(会社法436条3項・438条2項)だが、439条により報告事項にできる」と整理されています。

判断に必要な要素は、条文だけでなく会社計算規則側の要件整理をセットで押さえるのが実務向きです。

取締役会で計算書類が確定し、総会が報告事項になり得る要件
  • 前提:取締役会設置会社であること(会社法439条(会社法第439条))
  • 会計監査報告:会計監査報告の内容に無限定適正意見(会社計算規則126条1項2号イ)が含まれていること
  • 監査役会監査報告:会計監査人の監査の方法または結果を相当でないと認める意見がないこと
  • 実務上の帰結:要件を満たすと、計算書類は定時株主総会で「承認」ではなく「報告」になり、議案設計と議事運営(決議事項の有無)が変わります

要件の充足性は、監査報告の文言(意見区分・相当でないと認める意見の有無)で決まるため、招集通知・議案書作成の確定前に、会計監査人・監査役会からの通知内容を読み込んで最終判定する運用が安全です。

定時株主総会との接続

招集通知と本店備置きの関係

定時株主総会に向けては、招集通知の発送と、計算書類等の本店備置きがスケジュール上密接に結びつきます。会社法442条は、会社が「計算書類等」および監査報告等を、定時株主総会の2週間前から5年間、本店に備え置く義務を定めています(会社法442条(会社法第442条))。

この「2週間前」という要請は、取締役会承認のタイミングに直接影響します。備置き対象は「取締役会の承認を経た計算書類等」と整理されるため、取締役会承認前のドラフトを備え置く運用は避けるべきです。

また、招集通知発送後に、株主総会参考書類・事業報告・計算書類・連結計算書類の記載について修正すべき事情が生じた場合の周知方法は、当該招集通知と併せて通知できる枠組みが規定されています(会社法施行規則65条3項・133条6項、会社計算規則133条7項・134条8項)。実務では、修正事項の周知方法を「会社ウェブサイト掲載」と定める会社が多い、というの指摘も踏まえ、社内でルール化しておくと事故対応が迅速になります。

株主総会での承認と事業報告の扱い

定時株主総会では、計算書類と事業報告の扱いが分かれます。の整理どおり、事業報告は「その内容を報告」する位置付けで、計算書類は原則として株主総会の承認を得ます(会社法436条3項・438条2項(会社法第436条、会社法第438条))。

一方で、会計監査人設置会社が会社法439条の要件を満たす場合には、計算書類も「承認」ではなく「報告」に切り替わり得ます(会社法439条(会社法第439条))。この切替えは、総会議案の構成(決議事項の有無)だけでなく、議事録の作り方、司会台本、質疑応答の想定にも影響するため、総会準備の早い段階で「決議か報告か」を暫定整理し、監査報告受領後に最終確定する段取りが実務的です。

決算公告まで含めた全体像

定時株主総会の終結後、株式会社は決算公告を行う義務があります(会社法440条1項(会社法第440条))。公告を怠ると100万円以下の過料に処され得る点が明示されています。

公告方法は、定款で定めるのが原則で、定款に定めがない場合は官報公告になります。の整理に従い、方法は「官報」「時事に関する記事を掲載する日刊新聞紙」「電子公告(ホームページ掲載)」のいずれかです。電子公告の場合の掲載期間等は運用として重要ですが、本稿ではにない数値を置かず、実務上は「公告手配の起案・調査機関対応(電子公告の場合)・掲載確認」を総会終結後のタスクとして管理する、に留めます。

さらに、債権者に決算書の閲覧権、3%以上保有株主に帳簿(決算書含む)の閲覧権が付与される旨が述べられており、備置き・開示請求対応の観点からも、総会後の公告・備置き・閲覧対応を一連のコンプライアンス工程として扱うことが重要です。

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取締役会設置会社の実務

開催決議とみなし決議の注意点

取締役会手続は、決算承認・招集決定という重要局面であるほど、形式不備が後工程(備置き・総会)に波及します。取締役会の招集・開催、書面・電磁的記録による「みなし決議」を使う場合も、決算スケジュールに耐えるよう設計します。

の図表では、決算取締役会で「計算書類、事業報告、附属明細書、連結計算書類の承認」に加え、「定時株主総会招集事項および総会付議議案決定」を同日に行う運用が示され、根拠条文として会社法298条・436条3項・444条5項が付されています(会社法第298条、会社法第436条、会社法第444条)。このように、決算取締役会は「承認」と「招集決定」がセットになりやすい点を前提に、みなし決議を使うとしても、監査役の異議の有無、議事録作成・保存、監査報告の受領確認(到達証跡)を同時に管理することが実務上の要諦です。

決算スケジュールの逆算例

上場会社(大会社)・3月期で、定時株主総会日を2025年6月27日(金)とする図表例が示されています。これを「逆算の骨格」として、監査報告が取締役会承認より前に必要であることを工程に落とし込むと、次のように組めます(個社事情により前後しますが、期限構造の理解に有用です)。

の図表を踏まえた逆算の骨格(例)
  1. 5/9(金):会計監査人が会計監査報告(連結分含む)を特定監査役・特定取締役へ通知(計算書類の通知期限は5/17、連結計算書類の通知期限は5/24)
  2. 5/12(月):特定監査役が監査役会の監査報告(連結分含む)を特定取締役・会計監査人へ通知(計算書類は5/17、事業報告は5/24が期限として整理)
  3. 5/13(火):決算取締役会で計算書類等を承認し、定時株主総会の招集事項・付議議案を決定(会社法298条・436条3項・444条5項(会社法第298条、会社法第436条、会社法第444条))

この骨格のとおり、監査報告(少なくとも内容通知)が先に来て、その後に決算取締役会が来る、という直列関係を崩さないことが最優先です。

総会日から逆算して誰がいつ資料を固めるか―法務・経理・監査役の実務分担表

分担の要点は、(1)会計監査人・監査役会の「通知期限」が受領日起点で決まること(会社計算規則130条1項1号等)、(2)決算取締役会で承認すべき対象が複数束ねられること(計算書類等+連結+招集事項)(会社法298条・436条3項・444条5項(会社法第298条、会社法第436条、会社法第444条))、(3)招集通知発送後の修正周知の枠組みがあること(会社法施行規則65条3項・133条6項、会社計算規則133条7項・134条8項)、の3点です。

担当 主タスク 成果物(確定物) 期限管理の要点
経理 計算書類・附属明細書の作成、会計監査人対応 計算関係書類の最終版(受領可能な形) 会計監査報告の通知期限は「受領日から4週間」等(会社計算規則130条1項1号)なので、受領日(提出日)を版管理で確定します
法務(総会事務局) 事業報告・附属明細書、招集通知・参考書類の作成、修正周知スキーム整備 招集通知一式、修正周知ルール 招集通知発送後の修正は、規則に基づく周知方法(会社法施行規則65条3項・133条6項等)を前提に手当てします
監査役(会) 監査方針・監査計画・役割分担の決定、監査報告作成 監査役(会)の監査報告(内容通知) 監査役会の監査方針等の決定は監査役会職務(会社法390条2項3号)であり、早期に計画を固めるほど後工程が安定します
総会日から逆算した実務分担

監査報告の内容と形式

記載事項の見方と確認ポイント

監査報告は、後続の「取締役会承認」「総会提出」「(場合により)439条の報告事項切替え」の判断材料になるため、形式チェックをルーチン化しておくと実務が安定します。監査役等の監査報告(計算書類に関する部分)に記載されるべき事項として、少なくとも次が列挙されています。

監査役等の監査報告(計算書類関係)で押さえる記載事項
  • 監査役等の監査の方法およびその内容
  • 会計監査人の監査の方法または結果を相当でないと認めたときは、その旨およびその理由
  • 重要な後発事象
  • 会計監査人の職務の遂行が適正に実施されることを確保するための体制に関する事項
  • 監査のため必要な調査ができなかったときは、その旨およびその理由
  • 監査報告を作成した日

また、会計監査人の会計監査報告についても、会社計算規則126条としてに記載事項が整理されており、特に監査意見の区分(無限定適正意見、除外事項を付した限定適正意見、不適正意見)と、「意見がないときはその旨および理由」「追記情報」「作成日」は、会社法439条の適用可否や総会議案設計に直結します。

実務の確認ポイントは、「監査報告の作成日・通知日が決算取締役会より前であること」を前提に、(1)意見区分、(2)相当でない旨の有無、(3)重要な後発事象や追記情報の有無、(4)調査不能の記載の有無、をチェックし、総会資料・想定問答へ反映します。

監査役会と個別監査役の違い

監査役は各自が独立して職務を行う建付けですが、監査役会設置会社では、監査役会が組織としての統括機能を持ちます。複数名で監査を進める以上、最初に監査方針・監査計画・役割分担を協議して重点監査項目を共有することが望ましい、とされ、会社法上も監査役会の職務として位置付けられています(会社法390条2項3号(会社法第390条))。

加えて、招集通知等の実務では、監査主体が監査等委員会に変わると、招集通知での表現(「監査役会」→「監査等委員会」)や、「監査をした対象書類の一部である旨」の記載も変更が必要になる点がで注意喚起されています。したがって、監査役会の会社であっても、将来の機関変更やグループ再編を見据えて、監査主体名の表記ゆれを起こさないテンプレート管理(招集通知・監査報告受領フロー・議事録ひな形)をしておくと、コンプライアンスリスクを抑えられます。

よくある質問

監査報告書が取締役会承認より後でも大丈夫ですか?

大丈夫ではありません。の整理どおり、会社法の下では「監査に提出する前の取締役会承認(旧商法型)」は不要である一方、確定手続は「監査を受けた計算書類等を取締役会が承認し、その後に総会へ提出する」流れで組み立てられています(会社法436条3項・438条2項(会社法第436条、会社法第438条))。

したがって、決算取締役会の時点で、少なくとも監査役(会)からの監査報告(内容通知)が到達している必要があり、監査報告の作成日・通知日は取締役会承認より後にならないように管理します。監査報告が後追いになると、取締役会承認の前提を欠き、本店備置き(会社法442条(会社法第442条))や総会提出の整合が崩れるため、実務上は「監査報告受領(到達)をもって決算取締役会開催可」のゲートを設けるのが安全です。

書面決議の場合、監査報告はどう確認しますか?

書面または電磁的記録によって株主総会決議があったものとみなす場合でも、株主が判断できる材料として、監査報告の位置付けは実務上重いです。株主総会は「株主に対する報告とその承認の決議」を行う場であり、計算書類等は監査を受け、取締役会で承認され、総会に提出されるという基本構造に変わりはありません。

実務対応としては、次の順で整合を取ると、監査役等からの指摘や株主対応の齟齬を避けやすいです。

書面決議での監査報告確認(実務手順)
  1. 取締役会承認の前提として、監査報告(会計監査人設置なら会計監査報告→監査役会監査報告)の到達を証跡付きで確認します。
  2. 株主に提示する資料(提案書・参考資料)と、取締役会で承認した計算書類等・監査報告の版が一致しているかを版管理表で突合します。
  3. 会計監査人設置会社では、会計監査報告の意見区分(無限定適正意見等)と、監査役会監査報告に「相当でない意見」がないかを確認し、会社法439条(会社法第439条)の該当性(報告事項化)を最終判断します。

株主総会で監査報告を読み上げる必要はありますか?

の実務運用では、決算取締役会で議長が監査役に監査報告を求め、常勤監査役が監査役会を代表して監査報告を行うことが多いとされていますが、これは取締役会での運用整理です。株主総会での取り扱いは、会社の総会運営(議事進行・時間配分・想定問答)と、提供資料(招集通知・電子提供措置事項等)の設計に強く依存します。

他方で、総会に提出される計算書類等は「監査を受け、取締役会で承認され、定時株主総会に提出」されるという基本構造(会社法436条3項・438条2項(会社法第436条、会社法第438条))が前提であり、監査報告はその前提資料です。したがって、読み上げの要否を形式論だけで決めず、少なくとも次を満たすように運用設計するのが実務的です。

「読み上げ」より優先して押さえる実務要件
  • 株主に提供される計算書類等と監査報告が最新版で整合していること(招集通知発送後の修正周知も含む)
  • 会計監査人設置会社で439条適用を狙う場合は、無限定適正意見の有無と「相当でない意見」不在を資料上明確にできていること
  • 重要な後発事象や追記情報がある場合は、総会での説明方針(質疑応答対応)を事前に整備していること

監査役がいない会社でも承認手続は同じですか?

同じではありません。が前提としている「監査を受け、取締役会で承認され、定時株主総会に提出」という構造のうち、監査役がいない会社では、監査役(会)による監査と監査報告通知の工程がありません。

ただし、取締役会設置会社で計算書類の確定手続を設計する際の基本は、会社法436条3項・438条2項(会社法第436条、会社法第438条)にある「取締役会承認→総会提出(原則として総会承認)」です。会計監査人もいない場合は、会社法439条(会社法第439条)の「報告事項化」による総会承認省略も通常は前提にしにくく、総会側の承認プロセスを軸に日程を組むことになります。

監査が省略される分だけ日程は組みやすく見えますが、でも計算書類は「会社の通信簿」とされているとおり、外部・第三者のチェックが弱くなるため、社内統制(数値確定プロセス、注記・附属明細書の整合、版管理)の厳格化が必要です。

監査報告書への対応で次にすべきこと

取締役会設置会社では、計算書類等の確定手続を「監査報告(内容通知)→取締役会承認→定時株主総会提出」という直列工程で捉え、社内稟議等の手続と混同しないことが、スケジュール事故を避ける前提になります。とくに会計監査人設置会社は、会計監査報告の通知期限(受領日から4週間等)を起点に、監査役(会)の監査報告通知までを逆算して決算取締役会日を置くのが実務的です。定時株主総会では、原則として計算書類は承認事項・事業報告は報告事項となり、さらに会社法439条の要件を満たすかで計算書類が報告事項に切り替わり得るため、監査報告の文言(意見区分や「相当でない」意見の有無)で最終判定する軸を明確にします。次アクションとしては、対象書類の棚卸し(連結の有無を含む)と、提出・受領日を版管理で確定したうえで、会計監査人・監査役(会)と通知見込み日(必要なら合意日運用の可否)を早めにすり合わせます。個別案件の適否や文言判断は会社の状況で変わり得るため、最終的には法務・経理と監査役(会)・会計監査人で確認し、必要に応じて専門家に相談して進めてください。



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