不在者財産管理人の公告手続きを解説|官報掲載の方法から費用・文例まで
不在者財産管理人として管理業務の終盤に差し掛かると、残余財産の供託とそれに伴う官報公告という重要な手続きに直面します。これは管理人の任務を円滑に完了させるために不可欠ですが、その具体的な方法や法的根拠、費用については複雑で分かりにくい点も多いのではないでしょうか。この記事では、不在者財産管理における官報公告の目的から、具体的な申込み方法、費用、公告後の流れまでを実務に沿って詳しく解説します。
不在者財産管理における公告の目的と法的根拠
不在者財産の保全と利害関係者保護という目的
不在者財産管理制度は、従来の住所や居所を離れ、容易に戻る見込みのない人(不在者)の財産を保護するための制度です。選任された不在者財産管理人が不在者に代わって財産を管理することで、財産の散逸を防ぎます。この制度には、主に3つの目的があります。
- 不在者本人の利益保護: 不在者の財産が不当に失われたり、価値が下がったりすることを防ぎます。
- 利害関係者の権利保護: 不在者の配偶者や相続人、債権者など、財産に法律上の利害関係を持つ第三者の権利を守ります。
- 公共の利益の維持: 管理されない空き家が老朽化して周囲に危険を及ぼすといった事態を防ぎ、社会全体の利益を守ります。
公告は、これらの目的を達成するため、財産管理に関する手続きが公的かつ公正に進められていることを広く一般に知らせる役割を担っています。これにより、取引の安全を確保し、将来の紛争を予防します。
民法第29条に基づく家庭裁判所の監督と公告の役割
不在者財産管理人は、家庭裁判所によって選任され、その監督下で職務を遂行する不在者の法定代理人です。民法第29条では、家庭裁判所が管理人に対して財産の管理や返還に関する担保を提供させたり、不在者の財産の中から相当な報酬を与えたりできると定めています。
公告は、この家庭裁判所の監督体制を補完し、実務上重要な役割を果たします。特に、2023年(令和5年)4月1日に施行された改正民法により、管理人が金銭を供託した際の官報公告が義務化されました。公告には、以下のような機能があります。
- 手続きの透明性の確保: 管理業務の内容を公開し、透明性を高めます。
- 不正行為の抑止: 管理人の独断による財産の処分や不正を防ぐ抑止力として働きます。
- 利害関係者への情報提供: 不特定多数の利害関係者に事実を周知し、権利行使の機会を保障します。
不在者財産管理で公告が必要となる主な2つの場面
権限外行為許可の申立てに伴う公告
不在者財産管理人の権限は、原則として財産の価値を維持する「保存行為」と、財産の性質を変えない範囲での「利用・改良行為」に限られます。これを超える行為は権限外行為と呼ばれ、実行するには家庭裁判所の許可が必要です。公告は、この許可審判に際して行われることがあります。
- 不在者名義の不動産(土地・建物)の売却
- 遺産分割協議への参加
- 建物の取り壊し
- 高額な金銭の借入れ
家庭裁判所がこれらの行為を許可する際、特に利害関係者が多い場合や不在者の利益に重大な影響を及ぼす場合には、手続きの公正さを担保するために公告が行われます。公告を通じて、債権者などの利害関係者は自らの権利を主張する機会を得ることができ、後の紛争を未然に防ぐ効果が期待されます。
管理終了時の残余財産供託に関する公告
法改正により、不在者財産管理人が管理業務を円滑に終了させるための新たな仕組みとして、残余財産の供託とそれに伴う公告が導入されました。管理人は、財産の管理や処分によって生じた金銭を不在者のために法務局の供託所へ預ける(供託する)ことができます。
金銭を供託した場合、管理人はその事実を官報で公告しなければなりません。この公告の目的は、供託された事実を不在者本人やその相続人などに知らせることにあります。供託によって管理すべき財産がなくなれば、管理人は家庭裁判所に対し、不在者財産管理人選任処分の取り消しを申し立てることができ、管理業務を早期に終了させることが可能になりました。この公告は、管理人の負担を軽減し、不在者の財産の最終的な帰属を確定させるための重要な手続きです。
官報公告の具体的な手続きと流れ
家庭裁判所への公告申立てと許可審判
残余財産を供託したことに伴う公告を行うには、まず家庭裁判所での手続きが必要です。供託自体は管理人の権限で行えますが、管理終了を目的とする場合、裁判所への報告が不可欠です。実務上は、管理人が公告の原案を作成して家庭裁判所に提出し、内容の確認を受ける流れが一般的です。裁判所は、管理人が適切に供託を行ったことを確認した上で、公告の手続きを進めるよう指示します。この一連の手続きは、管理人の任務終了に向けた公的な証明としての意味を持ちます。
官報販売所への掲載申込み方法(オンライン・郵送)
公告の掲載申込みは、全国の官報販売所を通じて行います。主な申込み方法はオンライン、郵送、FAXです。最近では、専用のウェブフォームを利用したオンライン申込みが主流となっています。申込みから入稿までの基本的な流れは以下の通りです。
- 官報販売所へ公告掲載申込書と原稿を送付する。
- 販売所の担当者から内容確認の連絡を受ける。
- 販売所が作成した校正刷り(ゲラ)の内容を確認する。
- 内容に誤りがないことを確認し、校了(掲載承認)の連絡をする。
- 校了後、販売所から国立印刷局へ原稿が入稿される。
申込みにあたっては、官報公告等掲載約款への同意が必要です。この約款には、掲載料金の支払いや掲載内容の責任に関する事項が定められています。
公告原稿の作成と提出時の注意点
公告の原稿は、官報特有のルールに従って作成する必要があります。特に注意すべき点は以下の通りです。
- 原稿はB5サイズ以上の用紙に、14ポイント以上の読みやすい文字サイズで作成する。
- 住所の番地や日付には、「一、二、三」などの漢数字を用いる慣習に従う。
- 供託公告では、法律で定められた定型的な文言を使用する。
- 不在者の氏名、住所、生年月日は、戸籍謄本などの公的書類と完全に一致させる。
- 供託番号、供託金額、事件番号なども一字一句間違えずに正確に記載する。
原稿の内容に関する一切の責任は掲載依頼者である管理人が負います。虚偽の内容を公告すると、民事上・刑事上の責任を問われるだけでなく、公告自体の効力が失われる可能性があります。
官報掲載日の確認と掲載紙の入手
官報は、行政機関の休日を除き毎日発行されます。原稿の受付完了から実際に掲載されるまでには、通常7日から20日程度を要します。供託公告は主に「号外」に掲載されるため、14営業日程度の期間を見込むのが一般的です。
正確な掲載日は官報販売所から連絡があります。掲載された官報は、申し込んだ販売所から入手できるほか、インターネット版官報(発行から90日間は無料)でも閲覧可能です。管理人は、公告が正しく掲載されたことを確認し、その掲載紙を家庭裁判所への報告資料として適切に保管する義務があります。
公告文の記載事項・費用・期間の目安
公告文に記載すべき事項の詳細
不在者財産管理人による供託公告には、法律で定められた事項を正確に記載する必要があります。主な記載事項は以下の通りです。
- 公告の標題: 「不在者財産管理人による供託公告」
- 根拠条文: 家事事件手続法第146条の2の規定に基づく旨
- 不在者に関する情報: 氏名、最後の住所、生年月日
- 供託に関する情報: 供託所の名称、供託番号、供託金額
- 裁判所に関する情報: 選任した家庭裁判所の名称、事件名、事件番号
- 公告日: 官報掲載日
- 公告者: 不在者財産管理人の住所、氏名
これらの情報は、利害関係者が供託の内容を特定するために不可欠です。記載に不備があると公告の効力が認められない可能性があるため、提出前の入念な確認が求められます。
記載例:不在者財産管理人による供託公告の文例
不在者財産管理人による供託公告
家事事件手続法第百四十六条の二第一項及び第二項の規定により、次のとおり供託しました。
一、不在者 氏名 何某 住所 某県某市某町一丁目二番三号 生年月日 昭和某年某月某日
二、供託所 某地方法務局 三、供託番号 令和某年度金第某号 四、供託金額 金○○円 五、裁判所 某家庭裁判所 六、事件名 不在者財産管理人選任申立事件 七、事件番号 令和某年(家)第某号
令和某年某月某日
某県某市某町四丁目五番六号 不在者財産管理人 何某
上記はあくまで一例です。実際の作成にあたっては、法務省令で定められた様式に従い、各項目を正確に記載する必要があります。
官報公告にかかる費用の内訳と相場
官報公告の掲載料金は全国一律で、公告の種類によって計算方法が異なります。供託公告は、掲載行数に応じて料金が決まる行公告として扱われます。
料金の目安は1行(22字詰)あたり3,589円です(2024年現在)。一般的な供託公告(17行程度)の場合、掲載料金の総額は約6万円が相場となります。この費用は公告掲載料のみであり、原稿作成などを専門家に依頼する場合は別途費用がかかります。料金は改定される可能性があるため、申込み時に官報販売所へ最新の料金を確認することが重要です。この費用は、不在者の財産から支出することが認められています。
申込みから掲載までに要する期間
官報公告を申し込んでから実際に掲載されるまでには、一定の期間が必要です。供託公告の場合、申込みから掲載まで14営業日程度を見込むのが一般的です。ただし、以下の要因によって通常より日数がかかる場合があります。
- 決算公告が集中する5月〜7月などの繁忙期
- 年末年始や祝日を挟む場合
- 午後4時以降など、申込みの受付時間
管理業務の終了時期など、特定の期日までに公告を完了させる必要がある場合は、余裕を持ったスケジュールで手続きを進めることが不可欠です。
官報公告費用を不在者財産から支出する際の手続きと注意点
官報への公告費用は、財産管理に必要な経費として、不在者の財産から支出することが認められています。管理人は、支出を証明するために官報販売所が発行する請求書や領収書を必ず保管し、収支を帳簿に記録しておく必要があります。
これらの記録と証拠書類は、任務終了時に家庭裁判所へ提出する管理計算報告の基礎となります。もし不在者の財産が乏しく費用を賄えない場合は、申立人が裁判所に納めた予納金から支出されることもあります。管理人は、すべての支出について裁判所に報告し、その正当性を説明できる状態でなければなりません。
公告後の手続きと任務終了までの流れ
公告によって生じる法的効果
官報に公告が掲載されると、その内容は法的に「公にされた」ものとみなされます。これにより、所在が不明な不在者本人やその相続人、その他の利害関係者に対して、供託などの事実を法的に通知したことになります。また、管理人が公告義務を誠実に履行したことの証拠となり、後に手続きの不備を問われるリスクを回避できます。公告は、管理業務の適法性と透明性を担保し、円滑な任務終了を実現するための重要な手続きです。
残余財産を法務局へ供託する具体的な手順
財産を換価して得た金銭の供託は、管轄の法務局(供託所)で行います。管理人は、所定の「供託書」を作成し、供託金と共に提出します。供託書には、不在者の氏名や住所のほか、「供託の原因たる事実」として、不在者財産の売却代金から経費を差し引いた残額であることなどを具体的に記載します。手続きが完了すると、供託所から「供託書正本」が交付され、これが供託を証明する重要な書類となります。
家庭裁判所への任務終了報告と管理計算
供託と公告を終えた管理人は、速やかに家庭裁判所へ管理終了の報告を行います。その際、以下の書類を提出するのが一般的です。
- 管理終了報告書
- 最終の財産目録
- 管理期間中の全ての収支を記載した管理計算書
- 供託書正本の写し
- 公告が掲載された官報の写し
裁判所はこれらの書類を審査し、財産管理が適切に終了したことを確認します。確認が完了すると、不在者財産管理人選任処分の取消審判がなされ、管理人の任務は法的に完了します。
不在者財産管理人への報酬付与の申立て
管理人は、その労務の対価として、不在者の財産から報酬を受け取ることができます。報酬額は、管理財産の額、業務の難易度、期間などを家庭裁判所が総合的に判断して決定します。
管理人は、任務終了の目処が立った段階で報酬付与の申立てを家庭裁判所に行います。申立ての際には、行った業務内容や要した労力を具体的に説明する資料を添付します。報酬は、裁判所の審判が下りた後に、管理している財産の中から受け取ります。この報酬額も、最終的な管理計算に含めて裁判所に報告する必要があります。
供託と公告、家庭裁判所への報告の連携と実務上のタイミング
管理業務を円滑に終了させるためには、「供託」「公告」「裁判所への報告」という3つの手続きを、適切なタイミングで連携させることが重要です。実務上の一般的な流れは以下の通りです。
- 不在者財産を換価して得た金銭を法務局へ供託する。
- 供託後、速やかに官報販売所へ公告掲載を申し込む。
- 公告掲載を待つ間に、家庭裁判所へ提出する管理終了報告書や管理計算書を作成する。
- 官報に公告が掲載されたら、その掲載紙を入手する。
- すべての添付書類を揃え、家庭裁判所へ任務終了の報告を行う。
- 裁判所の審理を経て、選任処分の取消審判が確定し、任務が完了する。
各手続きのスケジュールについては、事前に裁判所の担当書記官と打ち合わせをしておくと、より円滑に進行できます。
不在者財産管理人制度の注意点
善管注意義務と裁判所への報告義務
不在者財産管理人には、善良な管理者の注意をもって職務を行う義務(善管注意義務)が課せられています。これは、他人の財産を管理する専門家として、自己の財産を管理する以上の高度な注意を払う義務を意味します。
この義務に違反して不在者の財産に損害を与えた場合、管理人個人の責任として損害賠償を請求されたり、業務上横領などの刑事責任を問われたりする可能性があります。また、管理人は家庭裁判所に対し、定期的に財産の状況を報告する義務も負います。これらの義務を誠実に果たすことが、管理人としての信頼を維持する上で不可欠です。
管理業務の長期化による負担と対策
不在者財産管理は、不在者が帰還するか死亡が確認されるまで続くため、時に数十年におよぶことがあります。管理が長期化すると、管理人の負担が増大するだけでなく、報酬や経費で不在者の財産が目減りしていくという問題が生じます。
この問題への有効な対策が、不動産などを売却して金銭に換え、法務局へ供託することです。供託により管理すべき財産がなくなれば、管理人は任務を早期に終了させることができます。早期の換価や供託制度の活用は、管理人と不在者の双方にとって有益な選択肢となり得ます。
公告手続きを怠った場合の法的リスク
法律で定められた公告手続き、特に供託後の官報公告を怠った場合、管理人は重大な法的リスクを負うことになります。
- 損害賠償責任: 公告しなかったことで利害関係者に損害が生じた場合、管理人個人が賠償責任を負う可能性がある。
- 手続きの遅延: 裁判所から選任処分の取り消しが認められず、管理業務が長期化する。
- 紛争の発生: 供託の事実が不在者や相続人に伝わらず、将来的な財産の帰属をめぐる紛争の原因となる。
- 行政罰: 100万円以下の過料(行政上のペナルティ)が科される可能性がある。
公告は、管理人の法的責任を完了させるための重要な義務であり、単なる事務作業ではないことを認識する必要があります。
不在者財産管理人に関するよくある質問
不在者財産管理人の任務はいつまで続きますか?
不在者財産管理人の任務には、法律上の任期はありません。管理を必要とする理由がなくなるまで続きます。任務が終了する主なケースは以下の通りです。
- 不在者本人が帰還し、自ら財産管理をできるようになったとき。
- 不在者の死亡が確認され、相続が開始したとき。
- 不在者について失踪宣告の審判が確定したとき。
- 管理すべき財産がなくなり、家庭裁判所が選任処分を取り消したとき。
- 不在者本人が自分で財産管理人を置いたとき。
公告費用とは別に、裁判所に納める予納金はいくらくらいですか?
予納金は、不在者財産管理人の報酬や管理費用を支払うために、申立人があらかじめ家庭裁判所に納めるお金です。金額は事案によって異なりますが、30万円から100万円程度が一般的な相場です。
ただし、不在者に十分な預貯金がある場合は予納金が不要となることもあります。逆に、不動産の解体費用など高額な支出が見込まれる場合や、管理が長期化しそうな場合は、100万円を超える予納金が必要になることもあります。
不在者本人が後から現れた場合、供託した財産はどうなりますか?
供託された財産は、不在者本人のものです。本人が現れた場合、法務局(供託所)に対して供託金の還付請求を行うことで、財産を取り戻すことができます。請求の際には、戸籍謄本や住民票など、本人であることを証明する書類が必要です。
なお、この還付請求権には時効があります。権利を行使できることを知った時から5年、または供託時から10年が経過すると時効により権利が消滅する可能性があるため、注意が必要です。
まとめ:官報公告を正確に行い、不在者財産管理人の任務を完了させる
本記事では、不在者財産管理における官報公告の目的、手続き、費用について網羅的に解説しました。公告は、財産管理の透明性を確保し、利害関係者を保護するだけでなく、管理人の任務を法的に完了させるための重要な義務です。特に、管理終了時の残余財産供託に伴う官報公告は、原稿作成のルールや約6万円の費用、14営業日程度の期間といった実務上のポイントを正確に押さえる必要があります。公告を怠ると損害賠償責任や過料などのリスクを負う可能性があるため、手続きは慎重に進めなければなりません。本記事で解説した流れを参考に、家庭裁判所や官報販売所と連携し、計画的に手続きを進めて管理人の責務を確実に果たしましょう。

