法務

給料差し押さえ手続き|勤務先が守る期限と計算の進め方

経営リスクナビ編集部

給料差し押さえの命令が会社に届いたとき、第三債務者として何を止め、誰に何を回答し、どの範囲で支払うべきかが曖昧だと、給与計算ミスや二重払いなどの実務事故につながります。特に送達後は、支払停止の切替と陳述書対応を並行して進める必要があり、送達を受けた日から2週間以内といった期限管理を外すと第三債務者責任の論点が表面化しやすくなります。放置すると、従業員対応のつもりが不当解雇・未払賃金・強制執行妨害といった別のリスクに波及し、社内統制の欠陥として整理されることもあります。実務で最初に押さえるべきは送達起点の処理範囲です。差押債権目録の読み方から見ていきます。

目次

給料差し押さえの基本

関係当事者と第三債務者の立場

給料差し押さえは、債権者(回収する側)、債務者(従業員)、第三債務者(勤務先=会社)の三者で成立します。会社は「従業員の借金の連帯保証人」になるわけではなく、裁判所の債権差押命令に従って、従業員に支払う予定だった給与債権の一部を支払わない(支払禁止)という立場になります。

参照資料の差押債権目録では、第三債務者が支払を止める対象は「本命令送達日以降支払期の到来する債権」と明示されています。つまり、会社が対応すべき範囲は「送達後に到来する支払期の給与・賞与等」であり、送達前にすでに支払期が到来していた分まで当然に遡って止める、という整理にはなりません(個別の支払状況によっては慎重な確認が必要です)。

また、差押債権目録では給与の定義が「基本給と諸手当(ただし通勤手当を除く)」とされる例が示されており、会社は給与明細の各項目が目録の記載に沿うか(通勤手当の扱い等)を確認して中立に処理する必要があります。

債務名義から強制執行までの流れ

給料差し押さえは、債権者が債務名義(確定判決、和解調書、公正証書など)を基に、裁判所の強制執行として進みます。申立書の宛先例として「東京地方裁判所民事第21部」が示されているとおり、実務では「執行裁判所(地方裁判所の担当部)」から会社宛に書面が届く形になります。

強制執行としての基本フロー(会社に書面が届くまで)
  • 債権者が債務名義等を準備して債権差押命令を申し立てます。
  • 裁判所が相当と認めると債権差押命令を発令し、第三債務者(会社)と債務者(従業員)に送達します。
  • 会社に送達された時点で、命令で定められた範囲の給与債権について支払禁止の効力が生じます。

会社は「従業員の同意を得てから止める/債権者に確認を取ってから止める」といった独自判断を挟むのではなく、送達を起点に、裁判所書面(差押債権目録を含む)どおりに処理することが基本です。

債権差押命令と勤務先対応

債権差押命令の内容と送達先

債権差押命令が届いたら、最初に「誰宛の書面か」「対象従業員が自社在籍か」「差押債権目録の対象範囲が何か」を確認します。差押債権目録の典型例では、次のように対象が具体化されています。

差押債権目録で会社が必ず読むべきポイント
  • 本命令送達日以降支払期の到来する給料・賞与・退職金等が対象になる旨の記載があるか。
  • 給料の範囲が「基本給と諸手当(ただし通勤手当を除く)」のように特定されているか。
  • 控除項目が「所得税、住民税及び社会保険料」と明記されているか(この控除後残額を基礎に計算します)。
  • 賞与が「期末手当、勤勉手当(その他の賞与の性質を有するものを含む)」などと記載され、賞与も対象であるか。
  • 退職前に弁済しきれない場合に「退職金」まで射程が及ぶ旨の記載があるか。

また、目録の形式として「役員報酬及び役員としての賞与」「役員退職慰労金」を対象とするタイプも示されています。従業員給与なのか役員報酬なのかで給与計算・支払期・控除の取り扱いが変わり得るため、対象者の地位(従業員/役員)と目録記載の一致は必ず確認します。

個人情報(借金・滞納等)に直結するため、閲覧者を限定し、原本管理・写しの配布範囲・保管場所を人事労務/法務で定めて運用することが実務上重要です。

勤務先の回答書と陳述の期限

差押命令に「第三債務者に対する陳述催告」が付いている場合、会社は陳述書(回答書)を提出します。陳述書では、少なくとも「在籍・雇用関係の有無」「給与・賞与・退職金の支払予定の有無」「先行差押え等の有無」など、差押えの実効性に関わる事項を整理して裁判所へ回答します。

本文で重要なのは期限管理です。従来どおり、送達を受けた日から2週間以内の提出が前提になります(催告書記載の期限が優先するため、書面記載日付も必ず確認します)。

提出遅延や不実記載は、第三債務者としての対応不備となり得ます。特に、差押債権目録にある「本命令送達日以降支払期の到来する債権」という射程を外して回答してしまうと、債権者側の取立て手続の前提を崩し、結果として損害賠償請求リスク(第三債務者責任)を高めます。

送達当日から誰が何を止めるか|人事 労務 経理 法務の初動分担

送達当日から重要なのは、差押債権目録にある「本命令送達日以降支払期の到来する」給与等について、差押範囲相当額を支払わない状態に切り替えることです。誰が何をするかを曖昧にすると、支払期到来(給与締日・支給日)に間に合わず、二重払い・過少控除の原因になります。

送達当日の初動(部署別の役割分担)
  1. 法務が書面一式を精査し、差押債権目録の対象(給料・賞与・退職金・役員報酬の別)と控除要件(所得税・住民税・社会保険料、通勤手当除外等)を確定します。
  2. 人事労務が対象者の所属(例:目録に「○○支店勤務」といった記載があるため配属情報)と在籍状況を突合し、関係者のアクセス範囲を限定したうえで必要最小限の説明を行います。
  3. 経理(給与担当)が給与計算の差押設定を行い、差押相当額を「支払停止(プール)」として管理できるよう支払データを分離します。
  4. 人事労務と法務が共同で、陳述催告がある場合の陳述書作成に必要な事実(支払期・支給見込み・先行差押の有無等)を収集し、期限内提出の段取りを確定します。

この初動は、従業員の生活配慮とは別次元で「第三債務者としての法的事故(取立不能・二重払い)」を防ぐための最低限の統制です。

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給与の差押範囲を計算する

手取り基準と4分の1の上限

差押範囲は、差押債権目録の記載に沿って算定します。参照資料の目録では、給料について「基本給と諸手当(ただし通勤手当を除く)から、所得税・住民税・社会保険料を控除した残額」を基礎にする形が明示されています。実務ではこの「控除後残額」を、一般に手取りベース(法定控除後)として整理すると理解しやすいです。

計算の基礎に入れる/入れない(目録記載に沿った整理)
  • 入れるもの:基本給、住宅手当などの諸手当(目録で除外されていない限り)。
  • 入れないもの:目録で「通勤手当を除く」とされている場合の通勤手当。
  • 控除するもの:所得税、住民税、社会保険料(目録に明記)。
  • 要注意:社内天引き(財形、社内販売、組合費等)は目録に通常記載がなく、法定控除と同列に扱わない前提で整理します。

そして、控除後残額の4分の1が差押対象となる型(一般債権で多い型)が示されています。ここは社内の給与計算ロジックに落とし込む際、差押え対象の「控除後残額」をどの項目で作るか(通勤手当除外の要否を含む)を、目録の文言で確定させてから実装する必要があります。

33万円と44万円の基準

参照資料の目録では、差押割合が4分の1の型であっても、控除後残額が月額44万円を超える場合は、差押禁止額を33万円として、残額(控除後残額−33万円)を差し押さえる構造が明示されています。また、賞与についても同様に「賞与の性質を有する給与に係る債権は、その額が44万円を超える場合には、33万円の差押えが禁止され、33万円を超える全額の差押えが認められる」と整理されています(民事執行法の委任を受けた民事執行法施行令の考え方)。

区分 控除後残額の水準 差押えの計算(目録記載)
給料 月額44万円以下 控除後残額の4分の1
給料 月額44万円超 控除後残額−33万円
賞与 44万円以下相当 控除後残額の4分の1
賞与 44万円超相当 控除後残額−33万円
目録に示される差押計算の切替(4分の1型)

この「44万円/33万円」の切替は、給与(毎月)と賞与(支給月)でそれぞれ独立に起こり得ます。賞与支給がある会社では、賞与月だけ計算が切り替わるケースがあるため、賞与の差押設定を別に持つ運用が安全です。

通勤手当 住宅手当 私的控除が混在するときの計算の分かれ目

差押債権目録には「基本給と諸手当(ただし通勤手当を除く)」と明記される例があるため、通勤手当はまず「目録で除外されているか」を確認して処理します。さらに、参照資料では、通勤手当は税法上「原則として月額15万円まで非課税」とされ、所得に含めない整理が紹介されています。差押の現場では、

  • 目録で通勤手当が除外されているか(除外なら計算基礎から外す)
  • 給与システム上、通勤手当が課税・非課税どちらで処理されているか(源泉徴収票の所得金額に入ってしまっていないか)

を同時に点検すると、差押額の過大・過小を避けやすくなります。

住宅手当は通常「諸手当」に含まれ、目録で除外されていない限り計算基礎に入ります。一方、財形貯蓄や社内購買、互助会費などの私的控除は、目録で控除項目として明記されている「所得税・住民税・社会保険料」とは別物です。目録に沿う限り、控除後残額を作る際に私的控除まで差し引く前提にしない(法定控除後残額から差押額を算定する)という整理で、社内運用を統一します。

勤務先の実務と法的リスク

支払停止と債権者への支払手順

差押命令が届いたら、まずは差押範囲相当額を支払停止(プール)します。そのうえで、取立て・支払に進む段階では「会社が何を根拠に、誰へ支払うか」を誤らないことが重要です。

参照資料が示す差押債権目録は、差押対象を「本命令送達日以降支払期の到来する」給料・賞与・退職金等と特定しています。したがって会社は、支給日ごとに次の整合を取る必要があります。

会社側の支払実務フロー(差押命令受領後)
  1. 差押債権目録に沿って、給料・賞与・退職金のうち対象となる支払(送達後に支払期到来するもの)を特定します。
  2. 対象支払ごとに、控除要件(所得税・住民税・社会保険料、通勤手当除外等)に従って控除後残額を算定します。
  3. 4分の1型なら4分の1、切替があれば「44万円超は控除後残額−33万円」、2分の1型なら2分の1等、目録に書かれた計算式で差押額を確定します。
  4. 確定した差押額は支払停止として管理し、取立権の発生や供託要否など次工程に備えて証憑(計算根拠・給与明細)を保存します。

取立権の発生時期(送達後の一定期間経過等)や送達証明の確認といった論点は、書面の種類(差押・転付等)や事件の進み方で変動するため、届いた書面の指示(送達関係書類、取立請求の有無)に従って運用し、疑義があれば発令裁判所への照会や専門家確認を挟むのが安全です。

社内貸付や立替金がある会社が相殺を主張できる場合 できない場合

従業員に対する会社の貸付金・立替金がある場合でも、差押命令が入った後に会社が一方的に相殺を強行すると、第三債務者としての支払義務処理を誤ったと評価され得ます。参照資料には「第三債務者の損害賠償責任」や「債務負担時期による相殺禁止」といった整理があり、相殺の可否は発生時期や契約条項、法令上の制約で分かれます。

相殺を検討するときの実務チェックポイント
  • 貸付契約書等に「差押え時に期限の利益を喪失する」などの条項があるか(条項がないのに当然に繰上げる整理は危険です)。
  • 貸付金・立替金が差押命令の送達前に発生しているか(送達後発生分は優先相殺が問題化しやすいです)。
  • 給与からの控除・相殺が賃金の全額払い原則(労働基準法第24条)との関係で適法に整理できるか。
  • 陳述書に「相殺予定」の事実を記載する必要があるか(不記載で進めると紛争化しやすいです)。

実務としては、差押え対応と相殺処理を同時に進めると誤りが起きやすいため、まず目録に沿った差押計算・支払停止の統制を優先し、相殺は法務が契約・発生時期・証憑を確認したうえで慎重に進めます。

差押えを理由に配置転換 懲戒 面談記録をどう扱うかの線引き

給料差押えは、従業員の私的債務が表面化したにすぎず、それ自体が直ちに業務命令違反や職務怠慢を意味するわけではありません。差押え「だけ」を理由に懲戒や解雇に踏み込むと、就業規則上の根拠・手続の欠缺に加え、客観的合理性・社会通念上相当性を欠くとして紛争化しやすくなります。

参照資料でも、懲戒処分は就業規則等の根拠規定が必要であり、かつ「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要と整理されています。懲戒を検討する場面があるとしても、差押えそのものではなく、横領・着服等の非違行為、業務上の支障といった別事実の立証が中心になります。

一方で、金銭を直接取り扱う職務(経理、回収等)については、内部統制や職務上の信用の観点から、業務上必要性・合理性が説明できる範囲で配置転換を検討する余地があります。

面談記録は、プライバシー配慮と目的外利用の防止が重要です。差押債権目録には「勤務先(○○支店勤務)」のように所属情報が書かれることもあるため、記録は「差押え対応に必要な情報(支払停止の説明、今後の給与支給の流れ)」に限定し、閲覧権限を最小化して管理します。

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税金差押えと他財産の整理

国税 地方税の滞納処分との違い

税務署や自治体から届く差押えは、裁判所の民事執行とは異なる「滞納処分」として行われます。参照資料には、国税について「すべての公課その他の債権に先立って徴収する」という優先性の説明があり、租税債権が一般債権より強い位置付けになり得る点が示されています。

会社としては、届いた書面が「裁判所の債権差押命令」なのか、「税務署・市区町村の滞納処分の差押え」なのかで、照会先・必要書類・優先関係の考え方が変わり得るため、まず書面の発出主体を見分けます。

さらに、税務対応一般として、参照資料には「滞納を放置せず税務署や市区町村に出向いて相談し、分割納付に変更してもらうこともできる」といった実務指針が示されています(対象は会社自身の滞納の説明ですが、税の差押えは交渉・相談の余地がある点の理解に役立ちます)。

複数債権者の優先順位と配当

同一従業員の給与に対し、差押えや仮差押えが複数並ぶことがあります。参照資料には「先行の差押え、仮差押えのないもの/あるもの」という順序整理や、「差押えの競合」時の配当・供託の考え方が示されています。

会社側の要点は、複数命令が届いたときに、会社が独断で順位を決めて特定債権者に支払わないことです。競合がある場合は、配当手続や供託手続により処理する方向になります。

競合時に会社が避けるべき対応
  • 先に連絡してきた債権者にだけ任意で振り込むこと。
  • 目録や命令の射程を外れて、差押禁止部分まで支払停止すること。
  • 競合状況を確認しないまま、従業員の申出だけで差押えを停止すること。

競合の整理は、命令類の到達順・内容(差押え/仮差押え等)で処理が変わるため、法務が命令を一元管理し、給与担当が処理ロジックを統一することが重要です。

民事執行と税滞納の差押えが競合したときに供託判断が必要になる場面

民事執行(裁判所)と滞納処分(税務署・自治体)が競合した場合、参照資料が挙げるとおり「滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律」に基づく調整論点が生じ、会社の判断ミスが二重払いに直結します。

参照資料では、第三債務者(会社)が、滞納処分により差押えされた債権について民事執行としての差押えがされたとき、差押債権の全額に相当する金銭を供託できる(権利供託)こと、また供託したときは供託書正本を添付して徴収職員等に事情届を提出しなければならないこと、さらに徴収職員等が執行裁判所に通知する流れが示されています(滞調20条の6第1項・第2項・第3項、20条の10)。

競合が疑われる場合は、

  • 書面の発出主体(裁判所か、税務署・自治体か)
  • 到達日(送達日)
  • 差押対象(給与か、退職金か、預金か)

を時系列で並べ、供託の可否・要否を含めて専門家と一緒に判断する運用が安全です。

従業員への影響と終了場面

就業継続と不利益取扱いの留意点

給料差押えがあった従業員に対して、会社が過度な不利益取扱い(退職強要、解雇、懲戒等)を行うと紛争リスクが高まります。参照資料でも、懲戒には就業規則上の根拠が必要であり、客観的合理性・社会通念上相当性が求められるとされています。差押えは私的債務の問題であることが多く、差押えのみを理由に処分の正当化を図るのは危険です。

一方で、会社は第三債務者として、差押債権目録どおりに「本命令送達日以降支払期到来の給与等」について支払停止・計算・支払(または供託)を継続しなければならず、従業員への説明は「処分」ではなく「事務手続の説明」に徹するのが線引きになります。

プライバシー保護の観点からも、差押えの事実は業務上必要な範囲(給与担当、法務、人事労務の必要最小限)に限定して共有し、職場内の噂や不当な差別につながる情報拡散を防ぐ統制が重要です。

範囲変更申立てと債務整理の案内

差押えで生活が立ち行かない場合、従業員側には裁判所への「差押禁止債権の範囲変更(減縮)」の申立てという救済手段があります。参照資料にも【書式2】として「差押範囲変更(減縮)申立書」が示されています。

会社としては、申立ての当事者ではありませんが、従業員から相談を受けたときに、

  • 裁判所手続として範囲変更の申立てがあり得ること
  • 会社は裁判所書面が変更されない限り、現行命令どおりに支払停止等を続けること

を中立に説明しておくと、誤解(「会社が止めているだけだから解除できる」等)を防げます。

また、借金問題の解決は差押え対応だけでは終わらないことがあるため、従業員本人が弁護士等へ相談して債務整理(任意整理、自己破産、個人再生等)を検討する余地があることを、社内相談窓口の範囲で案内するのは実務上有用です(会社が特定の手続を強制することは避けます)。

差押えの期間と終了要件

差押えは、頭書金額に満つるまで継続するのが通常です。参照資料の差押債権目録でも、「頭書金額に満つるまで」という到達条件が明示されています。

また、目録には「給料・賞与で弁済しないうちに退職したときは、退職金から(所得税・住民税を控除した残額の)4分の1(または2分の1)として、給料・賞与と合計して頭書金額に満つるまで」との記載例があります。つまり会社は、在籍中の給与差押えを回している途中で退職が発生した場合でも、退職金(や退職時精算)に差押えが及ぶ設計になっているかを命令文面で確認し、退職時の支払実務に連動させなければなりません。

終了の判断は、従業員の口頭申告ではできません。差押えの取下げ等、裁判所や債権者側の正式な手続に基づく書面(到達した文書)で確認してから、支払停止の解除・給与計算設定の復帰を行います。

よくある質問

給料差し押さえがあっても従業員を解雇してよい場面はありますか

差押えの事実のみでの解雇は、正当化が難しいのが基本です。参照資料でも懲戒には就業規則の根拠が必要で、かつ客観的合理性・社会通念上相当性が求められると整理されています。

一方で、解雇や重い懲戒が検討され得るのは、差押えとは別に、横領・着服などの非違行為が客観的証拠で確認できる場合や、無断欠勤の常態化など業務上の重大な支障があり、段階的な指導を尽くしても改善が見込めない場合です。この場合も、就業規則の懲戒事由・手続に則り、事実認定と手続保障(弁明の機会付与等)を適切に行う必要があります。

給与差押えの通知に気づかず期限を過ぎた場合はどうなりますか

陳述催告が付いている場合、会社は陳述書を期限内に提出する必要があります。実務では「送達日から2週間以内」が一つの基準になりますが、最終的には催告書に記載された期限に従います。

期限徒過に気づいた場合は、放置せず、発令元の裁判所(執行係)に連絡して、遅れてでも提出方針を確認したうえで、事実に基づく陳述書を作成して提出します。提出を怠ると、債権者側が会社を相手に取立訴訟等を検討する余地が生じ、第三債務者責任(損害賠償)に発展するリスクが高まります。

従業員が退職した後に未払残業代や賞与にも差押えは及びますか

差押債権目録に、賞与や退職金まで対象とする記載がある場合、退職後であっても、会社が債務者(元従業員)に対して負う金銭債務が残っていれば差押えの射程に入り得ます。

参照資料の目録例では、

  • 賞与:給料と同様に「所得税・住民税・社会保険料控除後残額の4分の1(44万円超は控除後残額−33万円)」
  • 退職金:給料・賞与で弁済しきれずに退職したときは「所得税・住民税控除後残額の4分の1(または2分の1)」

と明記されています。したがって、退職時に未払残業代、未払賃金、賞与、退職金があるときは、命令文面の対象に該当するかを確認し、該当する場合は本人へ全額を支払ってしまわないよう、差押計算・支払停止(または供託等)を行います。

給与差押えと同時に給料振込口座が差し押さえられた場合の処理はどうなりますか

給与差押え(第三債務者=会社)と預金差押え(第三債務者=銀行)は、対象債権と第三債務者が別です。会社は会社に届いた命令(差押債権目録)に従い、給与について「本命令送達日以降支払期到来分」を対象として、控除要件(所得税・住民税・社会保険料、通勤手当除外等)に沿って差押額を算定します。

そのうえで、差押禁止部分(目録計算上、差押対象にならない部分)は、従来どおり従業員の指定口座に振り込みます。振込後に預金が差し押さえられるかは銀行側の手続領域であり、会社が「口座差押えがあるから現金払いに切り替える」などの運用変更を行う場合は、賃金支払方法の合意・実務負担・安全配慮を含めて慎重に検討します。参照資料でも、預金口座の差押えが見込まれる場合に「自動振替を諦めて現金払いとせざるを得ない場合」があり得る旨が示されており、個別事情に応じた運用判断が必要です。

給料差し押さえへの対応で次にすべきこと

会社対応は、従業員の事情聴取より先に、裁判所からの送達書面どおりに「本命令送達日以降支払期到来分」を支払停止へ切り替え、差押債権目録の定義(通勤手当除外や法定控除の扱い)に沿って差押額を確定させるのが軸になります。次に、陳述催告が付いているかを確認し、送達を受けた日から2週間以内(催告書記載期限が優先)に、在籍・支払予定・先行差押の有無など事実関係を整理して提出できる体制を人事労務・経理・法務で整えます。差押額の計算は「4分の1」「月額44万円/33万円の切替」など目録の型で分岐するため、給与システムの設定根拠(計算式・明細項目・証憑)を残し、競合時は独断支払を避けて供託・配当の判断に備えることが実務上の防波堤になります。従業員への説明は処分ではなく事務手続に限定し、プライバシー管理と不利益取扱いの線引きを明確にして運用します。個別案件では書面類の種類や競合関係で結論が変わり得るため、疑義がある場合は発令裁判所への照会や弁護士等の専門家に相談して進めるのが安全です。



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