法務

「鍛神」販売のBIZENTOが業務停止。特商法違反の行政処分を解説

経営リスクナビ編集部

「鍛神」の販売元である株式会社BIZENTOが受けた営業停止処分について、その具体的な理由や法的背景を正確に知りたいと考えている方もいるでしょう。ECサイト、特に定期購入モデルにおける広告表示は、意図せず特定商取引法に違反してしまうリスクを常に抱えています。放置すれば、消費者からの信頼を失うだけでなく、事業継続を揺るがす行政処分に至る可能性も否定できません。この記事では、BIZENTOの事例を基に、行政処分の概要から原因となった表示義務違反の詳細、そしてEC事業者が学ぶべき法的注意点までを網羅的に解説します。

BIZENTOへの行政処分の概要

経済産業省による3ヶ月の業務停止命令

東北経済産業局は令和3年11月24日、健康食品の通信販売事業者である株式会社BIZENTOに対し、特定商取引法(以下「特商法」)第15条第1項に基づき、3ヶ月間の業務停止命令を発出しました。これは、消費者の意に反する申込みを長期間にわたり誘導していた事実が認定されたためです。

行政処分の主な内容
  • 業務停止期間: 令和3年11月25日から令和4年2月24日までの3ヶ月間
  • 停止対象業務: 通信販売に関する新規の広告、申込受付、契約締結
  • 付随する指示: 再発防止策の策定および社内コンプライアンス体制の再構築

対象商品と処分の対象期間

行政処分の直接の対象となった商品は、同社が自社ウェブサイトで販売していた健康食品「鍛神HMBCa2,000mg」です。処分の対象期間は令和3年11月25日から令和4年2月24日までの3ヶ月間でした。

特に問題視されたのは、少なくとも令和2年7月29日から令和3年1月6日までの間に申込みを受け付けていた、以下の2種類の定期購入契約です。

問題となった定期購入契約
  • キレキレコース定期便: 初回500円で購入できるが、最低4回の継続が条件
  • キレキレコース2袋定期便: 初回1袋が無料だが、最低2回の継続が条件

業務停止期間中は、これらの商品に関する新規顧客獲得活動が全面的に禁止され、同社の事業に重大な影響を与えました。

根拠法である特定商取引法とは

特定商取引法は、訪問販売や通信販売など、消費者トラブルが生じやすい特定の取引類型を対象として、事業者の不公正な勧誘行為を規制し、消費者の利益を保護することを目的とする法律です。取引の公正性を確保し、消費者が受ける被害を未然に防ぐためのルールを定めています。

本件の処分時点では、顧客の意に反して契約申込みをさせようとする行為を禁じる規定が適用されました。なお、令和4年6月1日からは改正法が施行され、最終確認画面における表示義務がより厳格化されています。この法律は、行政処分だけでなく、刑事罰や民事上の契約取消権も定めており、事業者にとっては遵守が極めて重要です。

処分の原因となった特商法違反の詳細

違反①:最終確認画面の表示義務違反

株式会社BIZENTOが処分を受けた最大の原因は、顧客が注文を確定する直前の「最終確認画面」において、取引に関する重要事項の表示が欠落していた点です。特商法では、顧客が契約内容を申込みの最終段階で容易に認識し、訂正できる状態で情報を提供することが義務付けられています。

最終確認画面での主な表示漏れ
  • 契約の性質: 解約しない限り無期限で自動継続される定期購入契約である旨
  • 支払金額: 2回目以降の代金および契約期間内の支払総額
  • 支払時期: 各回の代金を支払う時期

これらの情報が完全に表示されていなかったため、顧客は契約内容を誤認したまま申込みをせざるを得ない状況にあり、これが「顧客の意に反する申込み」に該当すると判断されました。

違反②:定期購入契約に関する表示不備

もう一つの重大な違反は、定期購入契約の継続条件(いわゆる「定期縛り」)や解約条件に関する表示の不備です。同社は、契約の根幹に関わるこれらの特別条件を、最終確認画面に一切表示していませんでした。

定期購入に関する主な表示不備
  • 継続購入条件: 最低購入回数(4回または2回)が契約の必須条件であること
  • 解約の期限: 解約には次回商品発送の10日前までに連絡が必要であること
  • 商品の引渡時期: 具体的な商品の引渡しのタイミング

顧客は初回価格の安さに惹かれても、複数回の購入義務があることを注文確定時に認識できませんでした。また、解約方法に制限がある場合、その事実を明瞭に表示する義務があります。このような表示不備は、取引の公正を著しく害する悪質な違反行為と認定されました。

運営会社「株式会社BIZENTO」の概要

会社の基本情報と事業内容

株式会社BIZENTOは、健康食品や化粧品の企画・通信販売を主な事業としていました。著名なタレントを広告に起用したマーケティング戦略で急成長を遂げましたが、その裏で消費者を誤認させるウェブサイトの表示(ダークパターン)が問題視されました。

会社概要
  • 設立: 平成29年6月29日
  • 本店所在地: 東京都
  • 資本金: 100万円
  • 代表取締役: 関口 翔

行政処分後、同社は公式サイトで新規受付を一時休止する旨を告知せざるを得なくなり、ブランドイメージの失墜と経営基盤の悪化を招きました。

事例から学ぶEC事業者の注意点

最終確認画面に表示すべき法定事項

EC事業者が特商法を遵守するためには、最終確認画面で以下の法定事項を網羅的かつ分かりやすく表示する必要があります。これらの情報を別ページへのリンクで済ませることは認められず、同一画面内で容易に確認できるように設計しなければなりません。

最終確認画面の法定表示事項
  • 商品の分量: 数量や内容量など
  • 販売価格・対価: 各回の代金、送料、支払総額など
  • 支払の時期・方法: クレジットカード決済日、後払いの期限など
  • 引渡時期: 商品の発送時期や到着予定日
  • 申込期間: 期間限定の販売である場合はその期限
  • 申込の撤回・解除に関する事項: 返品・解約の条件、方法、連絡先

定期購入の解約条件を明記する重要性

定期購入モデルでは、解約条件を最終確認画面に明記することが消費者トラブルを防ぐ鍵となります。特に、解約方法に制限を設ける場合は、その内容を明確に表示する義務があります。

明記すべき解約条件の例
  • 連絡先・連絡方法: 電話番号、メールアドレス、マイページなど
  • 解約申出の期限: 「次回発送予定日の〇日前まで」といった具体的な期限
  • 解約に伴う違約金: 発生する場合はその金額と条件

解約手続きを不当に困難にする設計は、特商法が禁じる「解除妨害」や、消費者契約法違反とみなされるリスクが非常に高いため注意が必要です。

有利誤認表示と見なされないための工夫

広告やランディングページで初回価格の安さを強調する場合、景品表示法が禁じる「有利誤認表示」と判断されないよう、表示方法に細心の注意を払う必要があります。有利誤認表示とは、実際よりも取引条件が有利であるかのように消費者を誤認させる表示のことです。

避けるべき表示方法
  • 不均衡なデザイン: 初回価格の文字だけを極端に大きくし、支払総額や継続条件はごく小さな文字で表示する
  • 誤解を招く表現: 「お試し」「モニター」といった言葉を使い、実際には自動で定期購入に移行することを隠す

有利な条件と不利な条件は、近接した位置に対等な大きさで表示し、消費者が取引の全体像を正確に理解できるようにすることが、法規制を遵守する上で不可欠です。

代表者個人への業務禁止命令が持つ重みと経営リスク

特商法違反では、法人への業務停止命令と同時に、代表者個人に対しても業務禁止命令が出されることがあります。これは経営者にとって極めて重大なリスクを伴います。

業務禁止命令の主な内容とリスク
  • 禁止される行為: 停止対象となった業務と同様の事業を、個人で新たに始めたり、他社の役員として関与したりすること
  • 違反時の罰則: 3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金(またはその両方)、法人には3億円以下の罰金という重い刑事罰が科される
  • 社会的信用の失墜: 代表者名が公表されることで個人の信用が失われ、融資や取引関係に深刻な影響が及ぶ

経営リスク管理の観点から、代表者自身が法令遵守の重要性を深く認識する必要があります。

よくある質問

業務停止命令の期間はいつまででしたか?

株式会社BIZENTOへの業務停止命令、および同社代表取締役への業務禁止命令の期間は、令和3年11月25日から令和4年2月24日までの3ヶ月間でした。法人と代表者個人に対し、同一の期間が設定されました。

契約中の定期購入は自動解約されますか?

いいえ、業務停止命令が出されても、既存の契約が自動的に解約されることはありません。行政処分は、あくまで新規の広告や契約締結を禁止するものです。したがって、処分前に成立した契約については、原則として商品発送や代金請求が継続されます。ただし、事業者の方針により対応が変更される場合もあるため、個別の通知などを確認することが重要です。

業務停止中に解約手続きはできますか?

はい、業務停止期間中であっても解約手続きは可能です。事業者は、既存顧客からの解約申出や問い合わせに対応する業務まで停止を命じられているわけではありません。むしろ、行政からは法令や契約に基づいて誠実に対応するよう指導されています。事業者が業務停止を理由に解約を拒否する行為は、さらなる行政処分の対象となる可能性があります。

まとめ:BIZENTOの行政処分事例から学ぶ、EC事業者が遵守すべき特商法の要点

株式会社BIZENTOへの行政処分は、ECサイトの最終確認画面における表示義務違反が事業停止という厳しい結果を招くことを示す重要な事例です。特に、定期購入の継続条件や支払総額、解約方法といった顧客の契約判断に不可欠な情報を分かりやすく表示していなかった点が、「顧客の意に反する申込み」として特商法違反と認定されました。EC事業者は、自社の販売サイトがこれらの法定表示事項を網羅しているか、顧客目線で誤解を招く表現がないかを定期的に確認する必要があります。有利な条件と不利な条件は、消費者が容易に比較検討できるよう、近接した位置に対等な大きさで表示することがトラブル回避の鍵となります。本記事で解説した内容は一般的な法解釈に基づくものであり、具体的なサイト設計や広告表現については、弁護士などの専門家へ相談することをお勧めします。



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