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給与の差押債権目録の書き方とは?記載例と第三債務者の実務対応

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債務者の給与を差し押さえる、あるいは従業員の給与差押命令を受け取った際、手続きの要となるのが差押債権目録です。この目録の記載が不十分だと、申立てが却下されたり、会社が法的なリスクを負ったりする可能性があります。この記事では、給与債権を対象とする差押債権目録の具体的な書き方や記載例、差押可能額の計算方法、そして会社側の実務対応までを詳しく解説します。

差押債権目録の基本

差押債権目録とは

差押債権目録とは、債権者が強制執行によって債務者の財産を差し押さえる際に、その対象となる債権を具体的に特定するために作成し、裁判所に提出する書面です。

強制執行は、国家が強制力をもって個人の財産を処分する強力な手続きであるため、差し押さえる対象が誰の目から見ても明確に識別できる状態でなければなりません。そのため、この目録によって対象財産を正確に画定することが求められます。

例えば給与債権を差し押さえる場合、差押債権目録には、基本給、諸手当、賞与といった対象項目や、そこから税金などを控除した残額のうち法律で定められた差押可能額の範囲を具体的に記載します。これにより、第三債務者である勤務先の会社は、従業員に支払う給与のうち、どの範囲の支払いを停止すべきかを正確に把握することができます。

このように、差押債権目録は債権執行の対象を明確化し、手続きの適法性と安定性を担保するための不可欠な書類です。

債権差押命令における役割

債権差押命令において、差押債権目録は差押えの効力が及ぶ範囲を具体的に定め、その範囲を債務者や第三債務者などの関係者に公式に知らせるという中心的な役割を担います。

裁判所から債権差押命令が発令されると、債務者は対象債権の取り立てなどの処分ができなくなり、第三債務者は債務者への支払いができなくなります。この二重の禁止効力を適切に発生させるには、対象となる債権が誤解の余地なく特定されていることが大前提となります。

裁判所が発令する債権差押命令には、申立人(債権者)が作成した差押債権目録が添付され、それが債務者と第三債務者に送達されます。第三債務者は、この目録の記載内容を解釈し、自らが債務者に対して負っている債務のうち、どの部分が差押えの対象かを判断します。もし目録の記載が不明確だと、第三債務者が誤って債務者に全額を支払ってしまい、後から債権者に二重払いを求められるといった不測の損害を被るリスクが生じます。

したがって、差押債権目録は、債権差押命令の効力を正確に発生させ、第三債務者を保護し、円滑な債権回収を実現するためのきわめて重要な文書といえます。

給与の差押債権目録の書き方

【記載例】給与債権の目録全体像

給与債権を差し押さえる際の差押債権目録は、対象となる給与の種類、差押えの範囲、支払期などを網羅的かつ正確に記載する構成になっています。これは、給与が毎月継続的に発生する債権であること、そして労働者の生活保障のために法律で全額の差押えが禁止されているという特殊性を、書面上で明確に反映させる必要があるためです。

具体的には、以下のような事項を緻密に記載し、債権回収に漏れがないように構成されます。

給与債権の目録の主な記載内容
  • 頭書金額: 強制執行によって最終的に回収したい債権の総額を記載します。
  • 対象債権の発生時期: 差押命令が第三債務者に送達された日以降に支払期が到来する給料債権が対象であることを明記します。
  • 給料の範囲: 基本給や諸手当を対象に含め、実費弁償的な性質を持つ通勤手当は除外する旨を記載します。
  • 差押可能額の計算方法: 給料から所得税、住民税、社会保険料を控除した「手取額」を基準とし、その4分の1(または2分の1)を差し押さえる旨を記載します。
  • 差押可能額の特例: 手取額が一定額を超える場合の特例計算についても、法律の規定通りに記載します。
  • 賞与の扱い: 夏期や冬期に支払われる賞与も同様の計算方法で差押えの対象に含めます。
  • 退職金の扱い: 頭書金額に満たないまま債務者が退職した場合に備え、退職金債権も差押えの対象とする旨を記載します。

記載事項①:当事者の表示

当事者の表示は、強制執行手続きに関与する権利義務の主体(誰が、誰に対し、誰の財産を差し押さえるのか)を正確に特定するための記載事項です。債権執行は「債権者」「債務者」「第三債務者」の三者で構成されるため、それぞれの情報を明確に記載し、手続きの対象者を誤認しないようにする必要があります。

各当事者の記載情報
  • 債権者: 申立てを行う人または法人の氏名・名称と住所・本店所在地を記載します。
  • 債務者: 差押えを受ける従業員の氏名と住所を記載します。
  • 第三債務者: 給与の支払者である会社の名称、本店所在地、代表者の氏名を記載します。

債務名義(判決文など)に記載された当事者の情報から変更がある場合、例えば債務者の住所が変わっているときは、現在の住所を記載した上で、住民票や商業登記事項証明書といった公的書類を添付し、当事者の同一性を証明しなければなりません。最新の公的記録に基づく正確な記載が求められます。

記載事項②:請求債権の表示

請求債権の表示は、債権者が債務者に対して持つ権利の内容と、今回の強制執行で回収を目指す具体的な金額を特定するための記載事項です。執行裁判所は、債務名義に表示された権利の範囲内で執行を許可するため、請求金額の内訳を明確にする必要があります。

請求債権は、以下の項目に分けて記載し、それらを合算した金額を「頭書金額」として目録の冒頭に示します。

請求金額の内訳
  • 元金: 債務名義で認められた元本です。
  • 確定利息・確定損害金: 判決などで既に金額が確定している利息や損害金です。
  • 遅延損害金: 債務名義記載の起算日から、申立日までの期間について計算した遅延損害金です。
  • 執行費用: 申立てに必要な印紙代、郵便切手代、資格証明書の取得費用など、今回の強制執行手続きにかかる費用です。

これらの金額は、法律上のルールに従って正確に計算する必要があります。請求債権の表示は、債権者が正当に請求できる総額を確定させ、第三債務者が支払うべき上限額を示すための不可欠な要素です。

記載事項③:差押対象債権の表示

差押対象債権の表示は、第三債務者が債務者(従業員)に対して負っている債務のうち、どの債権を差し押さえるのかを具体的に指示するための記載事項です。第三債務者はこの記載だけを頼りに支払いを停止する範囲を判断するため、他の債権と混同されないよう、客観的かつ明確な特定が求められます。

給与債権を対象とする場合、法律上の複雑な差押禁止範囲のルールを反映し、第三債務者が実務上迷わず処理できるように、以下のような事項を具体的に記載します。

給与債権の特定における記載事項
  • 対象となる給付: 債務者が第三債務者から受け取る給料、賞与などの継続的な給付が対象であることを明記します。
  • 計算の基礎: 基本給や諸手当は含める一方、実費弁償的な通勤手当は除外することを明示します。
  • 差押禁止範囲の明示: 給料から所得税、住民税、社会保険料といった法定控除額を差し引いた手取額を算定の基礎とすることを記載します。
  • 差押割合: 上記手取額の4分の1(一般債権の場合)または2分の1(養育費等の場合)を差し押さえる旨を記載します。
  • 特例の記載: 手取額が法律で定める額を超える場合の特例計算についても、その計算方法を明記します。
  • 効力の範囲: 差押命令が第三債務者に送達された日以降に支払期が到来する給付に限り、頭書金額に達するまで効力が継続することを記載します。

債権の特定が不十分な場合の申立て却下リスク

差押債権の特定が不十分な場合、裁判所は債権差押命令の申立てを不適法として却下するリスクがあります。差押命令の効力は第三債務者に送達された時点で発生するため、第三債務者が直ちに、かつ客観的に差押えの対象を識別できなければ、二重払いの危険にさらされるなど、手続きの安定性が害されるからです。

過去の裁判例では、預金債権の差押えにおいて、将来入金される不特定の預金や、複数の支店を曖昧に指定した申立てが、特定不十分を理由に認められなかったケースがあります。給与債権においても同様に、差押えの対象範囲や計算方法の記述が曖昧であれば、申立てが却下される可能性があります。

申立てを却下されるリスクを避けるためには、第三債務者の立場に立ち、誰が読んでも対象を一つに確定できるような、客観的で明確な基準を用いて債権を特定することが重要です。

給与の差押可能額の計算

差押禁止債権の範囲を理解する

給与の差押えにおいては、労働者とその家族の最低限度の生活を保障するため、法律(民事執行法)によって一定範囲の金額を差し押さえることが禁止されています。給与は労働者の主要な生活基盤であり、その全額が失われると生存権が脅かされる事態になりかねないため、政策的な配慮から差押えに上限が設けられています。

差押えが禁止される範囲は、請求する債権の種類によって異なります。

債権の種類 手取額が33万円以下の場合 手取額が33万円を超える場合
一般債権(借金など) 手取額の4分の3に相当する部分 33万円
扶養義務等債権(養育費など) 手取額の2分の1に相当する部分 33万円
差押禁止範囲の原則と特例

つまり、通常の借金であれば手取額の4分の1まで、養育費などであれば2分の1まで差し押さえが可能です。ただし、差押禁止額が33万円を超える場合は、その差押禁止額は33万円となります。この場合、差押可能額は手取額から33万円を差し引いた残りの全額となります。また、債務者の生活状況によっては、裁判所に申し立てることで、この差押禁止範囲を変更できる制度もあります。

計算の基礎となる手取額の算出方法

差押可能額を計算する際の基礎となる「手取額」は、給与の総支給額から法律で定められた控除項目(法定控除)のみを差し引いた金額を指します。会社と従業員の間の合意に基づく任意の控除項目は、この計算上、差し引くことはできません。これは、差押えを免れるために不当に控除額を操作することを防ぎ、債権者の権利を保護するためです。

手取額の計算方法は以下の通りです。

総支給額に含めるもの
  • 基本給、残業代、家族手当、住宅手当などの各種手当
総支給額から控除する法定控除項目
  • 所得税
  • 住民税
  • 社会保険料(健康保険、厚生年金、雇用保険など)
手取額計算上、控除できない項目(控除前の総支給額に含めたまま計算する)
  • 財形貯蓄の積立金
  • 社内貸付の返済金
  • 労働組合費、親睦会費
  • 社宅費、寮費

実費弁償的な性格が強い通勤手当は、原則として計算の基礎となる総支給額から除外します。このため、差押え計算上の手取額は、従業員が実際に銀行口座で受け取る金額よりも高くなることが一般的です。

差押可能額の計算式と具体例

給与の差押可能額は、算出した手取額を基に、請求債権の種類に応じた計算式を適用して算出します。第三債務者である会社は、この計算を誤ると債権者や債務者から責任を問われる可能性があるため、正確な計算が求められます。

具体的な計算パターンは以下の通りです。

債権の種類 手取額の条件 差押可能額の計算式 具体例(手取額30万円) 具体例(手取額50万円)
一般債権 44万円以下 手取額 × 1/4 30万円 × 1/4 = 7万5千円 適用外
一般債権 44万円超 手取額 - 33万円 適用外 50万円 - 33万円 = 17万円
扶養義務等債権 66万円以下 手取額 × 1/2 30万円 × 1/2 = 15万円 50万円 × 1/2 = 25万円
扶養義務等債権 66万円超 手取額 - 33万円 適用外 適用外
差押可能額の計算パターン(月給の場合)

賞与(ボーナス)についても、月給と同様の計算ルールが適用されます。算出された差押可能額が、差押債権目録の頭書金額(残額)を上回る場合は、その頭書金額(残額)のみを控除し、その月で差押え手続きは完了します。

第三債務者(会社)の対応

債権差押命令受領後の対応フロー

会社(第三債務者)に裁判所から債権差押命令が届いた場合、法的な責任を問われないよう、定められた手順に従って迅速かつ正確に対応する必要があります。対応を誤ると、債権者から損害賠償を請求されるなどのリスクがあります。

債権差押命令を受け取った後の基本的な対応フローは以下の通りです。

債権差押命令受領後の基本フロー
  1. 裁判所からの特別送達を受け取り、受領日を正確に記録します。
  2. 同封されている差押命令書の内容を精査し、対象従業員や差押範囲などを確認します。
  3. 対象従業員への給与のうち、差押え対象部分の支払いを直ちに停止する措置を講じます。
  4. 命令受領から2週間以内に、同封の催告書に従って「陳述書」を作成し、裁判所に提出します。
  5. 次回の給与支払日に、法律に基づいて正確な差押可能額を計算し、従業員には差押え対象外の部分のみを支払います。
  6. 控除した金銭は、債権者からの取立てに応じて直接支払うか、複数の差押えが競合している場合は法務局へ供託します。
  7. 請求債権が完済されるか、従業員が退職するまで、毎月この処理を継続します。

手順1:差押命令の内容確認

対応の第一歩として、送達された債権差押命令書と添付書類の内容を詳細に確認し、自社が負う義務の範囲を正確に把握することが重要です。この確認を怠ると、その後のすべての処理を誤ってしまう危険があります。

特に注意して確認すべき項目は以下の通りです。

差押命令で確認すべき主要項目
  • 当事者目録: 債務者として記載された氏名・住所が自社の従業員情報と完全に一致するかを確認します(同姓同名の別人や退職済みの元従業員の可能性も考慮します)。
  • 請求債権目録: 債権者が回収を目指す総額(頭書金額)を把握し、いつまで対応が続くのかの見通しを立てます。
  • 差押債権目録: 最も重要な確認項目です。請求が一般債権か扶養義務等債権かによって差押可能額の計算割合が異なるため、内容を正確に理解します。
  • 差押えの対象範囲: 給料だけでなく、賞与や退職金も対象に含まれているかを確認します。

記載内容に不明な点がある場合は、自己判断で処理を進めず、顧問弁護士などの専門家に相談することが賢明です。

手順2:陳述書の作成と提出

債権差押命令を受け取った会社は、同封の催告書に基づき、命令受領日から2週間以内に陳述書を作成し、裁判所に提出する義務があります。陳述書は、差押え対象の債権が存在するか、回収の見込みはどうかなどを債権者が判断するための重要な情報源であり、これに対する回答を怠ると法的な責任を問われる可能性があります。

陳述書には、事実をありのままに記載する必要があります。

陳述書の主な記載内容
  • 対象者との雇用関係の有無(既に退職している場合はその旨を記載します)。
  • 雇用関係がある場合の給与や賞与の支給状況。
  • 他の債権者からの先行する差押えや仮差押えの有無。
  • 支払いを拒否する法的な事由の有無。

従業員をかばう目的で虚偽の事実を記載してはいけません。故意または過失により不実の陳述をした場合や、正当な理由なく提出を怠った場合、会社はそれによって債権者が被った損害を賠償する責任を負うことがあります。作成した陳述書は、裁判所に提出します。

手順3:支払または法務局への供託

会社は、従業員の給与から控除した差押え対象額を、状況に応じて適切な方法で処理し、自らの支払義務を完了させる必要があります。差押えの効力により、会社は控除した金銭を従業員本人に支払うことはできず、適切な相手に支払わなければ二重払いのリスクを負います。

処理方法は主に2つに分かれます。

控除した金銭の処理方法
  • 債権者への直接支払: 今回の差押えが一件のみで、他の差押えと競合していない場合に選択します。債権者が取立権を行使できるようになった後(差押命令が債務者に送達されてから1週間を経過した後)、債権者からの連絡を受けて指定口座に振り込みます。
  • 法務局への供託: 複数の債権者から差押命令が届き差押えが競合している場合や、債権者から取立ての連絡がない場合などに選択します。特に差押えが競合した場合、会社は特定の債権者にだけ支払うことは許されず、供託が義務となります。供託後は、裁判所に「事情届」を提出します。

どちらの方法を選択すべきか迷う場合は、法務局や弁護士に相談し、自社の法的リスクを回避することが重要です。

差押命令の対象となった従業員への説明とプライバシー配慮

会社に差押命令が届いた場合、対象となった従業員本人への説明と、そのプライバシー情報の保護を両立させることが極めて重要です。差押えは給与額の減少という労働条件に直接影響するため丁寧な説明が求められる一方、個人の債務問題は非常に繊細なプライバシー情報であり、その漏洩は従業員に不当な不利益や精神的苦痛を与える可能性があるからです。

会社としては、以下の点に留意して対応すべきです。

対象従業員への対応と注意点
  • 冷静な事実の説明: 対象従業員と速やかに面談し、裁判所から命令が届いた事実と、今後の給与から法律に基づき計算された金額が控除されることを事務的に、かつ冷静に伝えます。
  • 厳重な情報管理: 差押えの事実は、経理や人事の担当者など、業務上どうしても知る必要がある最小限の範囲でのみ共有します。本人の同意なく、直属の上司や同僚に知らせることは厳に慎むべきです。
  • 不利益な取り扱いの禁止: 差押えを理由とした解雇や降格などの不利益な人事処分を行うことは、原則として許されません。

よくある質問

請求債権の表示にはどの範囲の金額を記載しますか?

請求債権の表示には、債権者が法的に回収できるすべての金額を合算して記載します。これは、強制執行によって回収すべき債権の総額を確定させ、差押えをいつまで継続するかの終着点を明確にするためです。

具体的には、以下の項目が含まれます。

請求債権に含まれるもの
  • 元金: 債務名義(判決など)で認められた元本。
  • 確定利息・確定損害金: 既に金額が確定している利息や損害金。
  • 申立日までの遅延損害金: 債務名義で定められた起算日から、差押申立日までの日数に応じて計算した金額。
  • 執行費用: 申立てにあたり裁判所に納付した印紙代、郵便切手代、登記事項証明書などの取得費用といった実費。

これらの合計額が、差押債権目録の冒頭に記載される「頭書金額」となります。

差押命令の送達後に従業員が退職したら?

差押命令の対象となった従業員が退職した場合、会社と従業員との間の雇用契約が終了するため、継続的な給与債権が発生しなくなり、給与差押えの効力も基本的には終了します。ただし、退職時に未払いの給与や退職金がある場合は、それらに対して最後の差押え処理を行う必要があります。

従業員退職時の対応手順
  1. 退職月の最終給与について、通常通り差押可能額を計算し、控除します。
  2. 差押債権目録に退職金も対象として記載されている場合、退職金についても同様に差押可能額(原則として手取額の4分の1)を計算し、控除します。
  3. 控除した金銭を債権者へ支払うか、または法務局へ供託します。
  4. 債権者に対し、従業員が退職したため、今後の給与からの支払いはない旨を通知します。

この最終の清算処理をもって、会社としての対応は完了となります。

複数の差押えが競合した場合の支払先は?

複数の債権者から差押命令が届き、差押えが競合した場合は、会社は特定の債権者に支払うことはできず、法務局へ供託する義務を負います。これは、特定の債権者を優遇することを防ぎ、債権者間の公平な配当を実現するためです。もし会社が独断でいずれかの債権者に支払ってしまうと、他の債権者から損害賠償を請求されるリスクがあります。

差押え競合時の対応
  • 会社は差押可能額を計算し、その金銭を債務の履行地を管轄する法務局に供託します。
  • 差押可能額が異なる複数の差押えが競合した場合(例:一般債権と養育費)、差押禁止部分を除いた差押えの対象となる債権の全額を供託します。
  • 供託手続きを完了した後、裁判所に対して「事情届」を提出し、供託した旨を報告します。

これにより、各債権者への配当は裁判所が行うことになり、会社は配当に関する責任から解放されます。

給与差押えの効力はいつまで続きますか?

給与差押えの効力は、原則として請求債権の全額が回収されるまで継続します。給与債権は毎月発生する継続的な債権であるため、差押命令は将来にわたって効力を持ち続けます。

ただし、以下のような事由が発生した場合には、その時点で効力が終了します。

給与差押えが終了する主な事由
  • 完済: 毎月の給与からの控除額の累計が、請求債権の総額(頭書金額)に達したとき。
  • 取下げ: 債権者が差押えの申立てを取り下げたとき。
  • 退職: 対象の従業員が会社を退職し、差し押さえるべき給与債権がなくなったとき。
  • 法的整理手続: 従業員が自己破産や個人再生の手続きを開始し、裁判所の決定によって差押えが中止または失効したとき。

会社は、これらの終了事由が発生するまで、毎月正確に差押えの処理を続ける必要があります。

目録の書式はどこで入手できますか?

差押債権目録を含む債権差押命令申立てに関する各種書式は、各地方裁判所のウェブサイトから無料でダウンロードできます。裁判所は申立人の利便性を図るため、実務で標準的に使用される書式のひな形をPDFやWord形式で公開しています。

例えば、東京地方裁判所や大阪地方裁判所などのウェブサイトには、民事執行手続きに関するページがあり、そこに給与債権用、預貯金債権用など、差し押さえる債権の種類に応じた書式が用意されています。これらの公式な書式を利用することで、記載漏れなどを防ぎ、スムーズに申立て手続きを進めることができます。

まとめ:差押債権目録の正確な記載で確実な給与差押えを実現する

本記事では、給与債権を対象とする差押債権目録の書き方と関連する実務対応を解説しました。差押債権目録は、強制執行の対象を特定する極めて重要な書類であり、当事者や請求債権、差押対象債権を具体的に記載する必要があります。特に給与債権は、法律で差押禁止範囲が定められているため、手取額を正確に算出し、法定の割合で差押可能額を計算することが求められます。差押命令を受け取った会社側も、陳述書の提出や供託など、法的な義務を正しく履行しなければなりません。目録の作成や内容の解釈で不明な点がある場合は、裁判所の書式を確認するとともに、必要に応じて弁護士などの専門家に相談し、適切な手続きを進めることが重要です。この記事で提供する情報は一般的な解説であり、個別の事案への対応は専門家にご相談ください。

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