人事労務

無断欠勤社員への退職勧奨|連絡不能時の対応と適法な手続き

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無断欠勤を続ける従業員への対応、特に退職勧奨の進め方にお悩みの経営者や人事担当者の方もいらっしゃるでしょう。対応を誤ると、不当解雇などの法的トラブルに発展するリスクがあり、慎重な手続きが求められます。この記事では、無断欠勤者への初期対応から、退職強要と見なされないための注意点、退職合意書の作成、そして解雇や自然退職といった他の選択肢まで、法的な観点から具体的な手順を解説します。

無断欠勤者への初期対応

まずは本人への連絡を試みる

無断欠勤が発生した場合、企業はただちに本人への連絡を試みる必要があります。事故や急病といった不測の事態に巻き込まれている可能性も否定できず、企業が負う安全配慮義務の観点からも、まずは安否確認が最優先となります。

連絡は、段階的かつ多角的なアプローチで行うことが基本です。

本人への連絡手順
  1. 本人の携帯電話、個人メール、社内チャットなど、複数の手段を用いて連絡します。
  2. 一度で応答がない場合でも、時間を変えて複数回連絡を試み、メッセージを残します。
  3. それでも連絡がつかない場合は、緊急連絡先に登録されている家族や身元保証人に連絡し、安否確認に協力してもらいます。
  4. 最終的に本人や家族と一切連絡が取れない場合は、自宅を訪問して生活実態があるかを確認することも検討します。

全てのコンタクト履歴を記録する

無断欠勤者への対応履歴は、すべて正確に記録・保存することが極めて重要です。これらの記録は、将来的に退職や解雇といった法的手続きに移行した際、会社が従業員の安否確認や就労意思の確認のために十分な努力を尽くしたことを証明する客観的な証拠となります。

記録すべきコンタクト履歴の具体例
  • 連絡した日時、担当者名
  • 使用した連絡手段(電話、メール、チャットなど)
  • 連絡内容の要約と、相手の応答の有無や内容
  • 電話の発信履歴、送受信したメールやチャットのスクリーンショット
  • 内容証明郵便の控えと配達証明書
  • 自宅訪問時の日時、応答の有無、郵便受けの状況など現地の様子を記した報告書

就業規則の退職・解雇事由を確認

本人と連絡が取れない状態が続く場合は、自社の就業規則に定められている退職や解雇に関する規定を速やかに確認する必要があります。従業員との労働契約を終了させるには、就業規則上の明確な根拠と、それに基づいた適正な手続きが法律上求められるためです。

就業規則で確認すべき主要項目
  • 無断欠勤が何日続けば懲戒解雇の対象となるかの規定
  • 一定期間の連絡不能をもって自動的に労働契約が終了するとみなす自然退職(自動退職)の条項の有無
  • 上記の規定を適用するための具体的な条件や手続き

無断欠勤の背景調査|ハラスメント等の社内要因の有無を確認

無断欠勤の背景に、職場内のハラスメントや過重労働といった社内要因がなかったかを調査することも不可欠です。もし会社側に原因がある場合、無断欠勤を理由とした懲戒解雇は無効と判断されたり、安全配慮義務違反を問われたりする重大なリスクがあるためです。直属の上司や同僚へのヒアリングを通じて、本人の労働環境や人間関係に問題がなかったかを確認し、社内要因が疑われる場合は、懲戒処分よりも先に職場環境の改善措置を講じる必要があります。

退職勧奨の具体的な進め方

面談の設定と伝えるべき内容

退職勧奨は、あくまで従業員との合意によって労働契約を円満に終了させるための説得活動です。面談では、本人が納得して意思決定できるよう、会社の意向と退職を求める理由を客観的かつ明確に伝えることが重要です。

面談はプライバシーに配慮できる個室で、直属の上司と人事担当者など2名程度で実施するのが一般的です。その場で即答を強要せず、数日間の検討期間を設ける配慮も必要です。

面談で伝えるべき主な内容
  • 無断欠勤の客観的な事実と、それに対する会社の指導・注意の経緯
  • 現状のままでは雇用を継続することが困難であるという会社の評価
  • 自己都合退職に応じてもらいたいという会社の意向の表明
  • 退職に応じる場合の条件提示(退職金の上乗せ、有給休暇の買い取りなど)
  • 回答期限の提示と、その場で即決を求めないという配慮

退職強要と見なされない注意点

退職勧奨は、従業員の自由な意思決定を妨げる言動があれば退職強要と見なされ、違法な不法行為として損害賠償請求の対象となるリスクがあります。社会通念上、相当と認められる範囲を逸脱しないよう、細心の注意が必要です。

会社としては、面談内容が常に録音されている可能性を前提に、冷静かつ適法な範囲での説得に徹するべきです。

退職強要と見なされる可能性のある行為
  • 労働者が明確に退職を拒否しているにもかかわらず、執拗に面談を繰り返すこと
  • 1時間を超えるような長時間の面談や、大人数で取り囲んで威圧すること
  • 「応じなければ懲戒解雇にする」といった脅迫的な発言
  • 「給料泥棒」などの侮辱的な言葉で人格を否定すること
  • 仕事を取り上げたり、部署内で孤立させたりするなどの嫌がらせ行為

合意形成と退職合意書の作成

従業員が退職勧奨に応じたら、後日の紛争を防ぐため、合意内容を速やかに書面化し、退職合意書を締結することが不可欠です。口頭の合意だけでは、後から「強要された」「解雇だった」と主張されるリスクが残ります。

また、合意書とは別に、本人から自筆の退職届を提出してもらうことも、任意退職の意思を補強する上で有効です。

退職合意書に記載すべき主要項目
  • 双方の合意に基づき労働契約を終了することの確認
  • 具体的な退職日退職理由(例:自己都合退職)
  • 解決金や特別退職金の金額、支払時期、支払方法
  • 貸与品(PC、社員証など)の返還に関する取り決め
  • 未消化の年次有給休暇の処理方法
  • 後述する清算条項

後日の紛争を防ぐ「清算条項」の重要性

退職合意書には、必ず清算条項を盛り込むことが極めて重要です。これは、合意書に定められた権利義務を除き、会社と労働者の間には名目を問わず一切の債権債務が存在しないことを相互に確認する条項です。この条項により、退職後に未払い残業代やハラスメントの慰謝料など、予期せぬ金銭請求をされるリスクを法的に遮断し、紛争を終局的に解決することができます。

連絡不能時は内容証明郵便を活用

本人が音信不通で面談ができない場合は、内容証明郵便配達証明を付けて送付する方法が有効です。これにより、会社がいつ、どのような内容の通知を相手方に行ったか、そしてその通知が相手に届いたか(または不在で届かなかったか)を公的に証明できます。郵便物が受取人不在で返送された場合でも、会社が連絡を取るための正当な努力を尽くした証拠となります。

内容証明郵便に記載する内容の例
  • 無断欠勤が継続している客観的な事実
  • 指定した期日までに出勤または連絡するよう求める出勤督促
  • 期日までに応答がない場合、就業規則に基づき自然退職または懲戒解雇の手続きに進む旨の警告

退職勧奨以外の選択肢

自然退職(自動退職)の適用条件

自然退職とは、一定の事実が発生した場合に、当事者の意思表示を待たずに労働契約が自動的に終了する制度です。この規定を適用するには、就業規則上の明確な根拠と、厳格な要件を満たす必要があります。

自然退職の適用条件
  • 就業規則に「一定期間の無断欠勤と連絡不能」を自然退職事由とする明確な規定があること
  • 規定された日数(一般的に14日~30日程度)の無断欠勤が継続していること
  • 会社が本人への連絡を試みる努力を尽くしても、応答がないこと
  • 事故や病気など、連絡が取れないことについて本人に正当な理由がないと判断できること

懲戒解雇の適用条件とリスク

懲戒解雇は労働者にとって最も重い処分であり、その有効性は裁判で厳しく判断されます。適用するには客観的で合理的な理由と、社会通念上の相当性が求められ、要件を欠けば解雇権の濫用として無効になるリスクが極めて高い選択肢です。

懲戒解雇の主な適用条件
  • 就業規則に無断欠勤が懲戒解雇事由として明記されていること
  • 原則として2週間以上の長期にわたり、正当な理由なく無断欠勤が続いていること
  • 会社が複数回にわたり出勤を督促したにもかかわらず、本人が全く応じないこと

懲戒解雇が無効と判断された場合、解雇期間中の賃金(バックペイ)の支払いを命じられるなど、会社が受けるダメージは甚大です。適用は最終手段として慎重に検討すべきです。

各選択肢のメリット・デメリット

無断欠勤者への対応は、各選択肢のメリットとデメリットを比較し、事案に即して慎重に決定する必要があります。実務上は、紛争リスクが最も低い退職勧奨からアプローチするのが基本です。

対応方法 メリット デメリット
退職勧奨 双方の合意で円満に解決でき、後日の紛争リスクが極めて低い 交渉に時間や手間がかかり、解決金の支払いが必要になる場合がある
自然退職 就業規則の要件を満たせば、意思表示の到達を要さず手続きが簡便 要件の解釈を巡って争いになり、退職の効力が否定されるリスクがある
懲戒解雇 企業秩序を維持する厳しい姿勢を示せる 法的有効性のハードルが最も高く、無効時の金銭的ダメージが大きい
各選択肢のメリット・デメリット比較

退職確定後の事務手続き

社会保険・雇用保険の資格喪失

従業員の退職が確定したら、企業は速やかに社会保険および雇用保険の資格喪失手続きを行う義務があります。手続きが遅れると、退職者の再就職や失業給付の受給に支障をきたし、トラブルの原因となります。

主な社会保険・雇用保険の手続き
  • 健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届: 資格喪失日(退職日の翌日)から5日以内に年金事務所へ提出します。
  • 雇用保険被保険者資格喪失届: 資格喪失日(退職日の翌日)から10日以内にハローワークへ提出します。
  • 健康保険証の回収: 退職者本人および被扶養者分を回収します。回収できない場合は「被保険者証回収不能届」を添付して手続きを進めます。

離職票の発行と離職理由の記載

退職者が希望する場合や、年齢が59歳以上である場合は、離職票を発行する必要があります。離職票に記載する離職理由は、失業給付の受給資格に大きく影響するため、事実に即して正確に記載しなければなりません。

退職経緯別の離職理由の記載例
  • 退職勧奨による合意退職: 原則として「会社都合」扱いです。「事業主からの働きかけによる離職」に該当します。
  • 自然退職・懲戒解雇: 自己都合退職または労働者の責めに帰すべき重大な理由による離職扱いです。

貸与品の回収方法と注意点

社員証、PC、制服などの会社からの貸与品は、情報漏洩や不正利用のリスクを防ぐため、確実に回収する必要があります。退職合意書で返却品リストや返却方法を明確にしておくことが有効です。再三の督促にもかかわらず返却されない場合でも、本人の同意なく最後の給与から貸与品の代金を一方的に天引きすることは、労働基準法の賃金全額払いの原則に違反し、認められません。

従業員の私物の取り扱い

退職した従業員の私物が社内に残されている場合、会社が勝手に処分すると、所有権の侵害として損害賠償請求の対象となるリスクがあります。事前に退職合意書などで、引き取り期限と期限を過ぎた場合の処分について本人の同意を得ておくのが安全です。連絡が取れない場合は、内容証明郵便で引き取りを催告し、一定期間保管した後に処分するという手順を踏むべきです。

給与・退職金の法的な扱い

欠勤期間中の給与支払ルール

労働契約において給与は労働の対価であるため、「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づき、無断欠勤している期間の給与を支払う義務はありません。月給制の場合でも、就業規則に定められた計算方法に従い、欠勤日数分の給与を控除(欠勤控除)することが可能です。ただし、欠勤控除を行うには、就業規則にその根拠となる規定が明記されている必要があります。

最終給与の支払い義務と時期

どのような経緯で退職するにせよ、無断欠勤が始まるまでに行われた実労働に対する給与は、全額支払う義務があります。貸与品の未返却などを理由に、会社が一方的に給与から金銭を差し引くこと(相殺)は、労働基準法で原則として禁止されています。

支払時期は通常の給与支払日が原則ですが、退職者から請求があった場合は、請求日から7日以内に支払わなければなりません。

退職金の減額または不支給の可否

無断欠勤を理由とする懲戒解雇の場合、退職金を減額または不支給とすることは可能ですが、それには厳しい条件が課せられます。退職金は功労報償的な性格を持つため、その支払いを制限するには、従業員の長年の功績を全て無にするほどの重大な背信行為があったと認められる必要があります。

退職金の減額・不支給が認められるための要件
  • 退職金規程に「懲戒解雇の場合は退職金を減額または不支給とする」旨の明確な規定があること
  • 単なる無断欠勤にとどまらず、会社の業務に甚大な損害を与えたなど、重大な背信行為と評価されること

よくある質問

Q. 無断欠勤は何日で自然退職扱いになりますか?

法律で定められた明確な日数はなく、各企業の就業規則の規定によります。実務上は、「14日以上」または「1ヶ月以上」の無断欠勤と連絡不能を要件として定めている企業が多く見られます。就業規則に規定がなければ、自然退職を適用することはできません。

Q. 連絡不能な従業員への解雇通知方法は?

電話や郵便で連絡が取れない場合、最終手段として裁判所の「公示送達」という手続きを利用します。これは、裁判所の掲示板に一定期間掲示することによって、法的に意思表示が相手方に到達したとみなす制度です。解雇の意思表示は相手方に到達して初めて効力が生じるため、このような法的手続きが必要になる場合があります。

Q. 退職勧奨による退職の離職理由は?

原則として「会社都合」扱いとなります。雇用保険制度上、事業主からの働きかけによる退職は「特定受給資格者」に該当し、失業給付の受給で有利な扱いを受けられるためです。会社の判断で「自己都合」として処理すると、退職者に不利益を与え、後日ハローワークからの指導やトラブルの原因となります。

Q. 貸与品が返却されない場合の対処法は?

まずは内容証明郵便などで書面による督促を繰り返し行います。給与から一方的に代金を天引きすることは違法です。再三の督促に応じない悪質なケースでは、最終的に貸与品の返還請求や損害賠償請求といった法的措置を検討することになります。

Q. 退職後に不当解雇で訴えられるリスクは?

手続きや要件を適切に踏まずに解雇や自然退職の処理を行った場合、後日、不当解雇として訴えられるリスクは常に存在します。裁判で解雇が無効と判断された場合、解雇期間中の給与(バックペイ)の支払いを命じられるなど、会社は大きな金銭的負担を負うことになります。このリスクを回避する最も安全な方法は、退職勧奨によって双方の合意を書面で取り交わす合意退職です。

まとめ:無断欠勤者への退職勧奨を適法に進め、トラブルを防ぐ要点

無断欠勤を続ける従業員への対応は、まず安否確認を徹底し、全てのコンタクト履歴を記録することが基本です。退職を促す際は、高圧的にならないよう配慮し、双方の合意を書面(退職合意書)で残す退職勧奨が、最も紛争リスクの低い方法と言えます。就業規則に根拠があれば自然退職や懲戒解雇も選択肢となりますが、解雇は法的要件が厳しく、無効とされた場合のリスクが非常に高いため、最終手段と考えるべきです。まずは自社の就業規則で、無断欠勤に関する退職・解雇事由の規定を確認することから始めましょう。対応手順や判断に迷う場合は、不当解雇などのトラブルを未然に防ぐためにも、早期に弁護士や社会保険労務士などの専門家へ相談することをおすすめします。

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