2回目の法人破産は可能か?代表者の免責許可を得るための条件と手続き
一度目の破産を乗り越え再起を図ったものの、再び厳しい経営状況に直面し、2回目の法人破産を検討せざるを得ない状況は、精神的にも極めて大きな負担となっていることでしょう。特に、代表者ご自身の連帯保証債務が免責されるのか、2回目というだけで著しく不利になるのではないかという不安は大きいかと存じます。この記事では、2回目の法人破産に伴う代表者個人の自己破産において、免責許可を得るための具体的な条件、手続き上の注意点、そして万が一の場合の対処法について詳しく解説します。
2回目の法人破産は可能か?代表者個人の自己破産との関係
法人破産の手続き自体に回数制限はない
法人破産の手続きは、法律上、申立ての回数に制限は設けられていません。そのため、制度上は2回目以降であっても破産を申し立てることが可能です。
法人破産は、債務超過や支払不能に陥った法人が、裁判所の監督下で財産をすべて金銭に換えて債権者に公平に配当し、法人格を消滅させる清算型の手続きです。手続きが完了すると法人は消滅するため、借金の返済義務を免除してもらう「免責」という制度は存在しません。個人の自己破産とは異なり、免責制度がないことから、法人破産の手続き回数を制限する法律上の規定もないのです。
ただし、2回目の法人破産では、特に代表者個人の連帯保証債務の処理と関連して、裁判所の審査が実務上厳しくなる傾向があります。
課題となるのは「代表者個人の自己破産」における免責許可
2回目の法人破産を検討する際の最大の課題は、法人破産そのものではなく、それに伴う代表者個人の自己破産手続きにあります。
中小企業が金融機関から融資を受ける際、代表者個人が会社の債務について連帯保証人となるのが一般的です。会社が破産して法人格が消滅しても、代表者個人の連帯保証債務は消えません。そのため、債権者は代表者個人に返済を求めることになり、多くの経営者は代表者自身も自己破産を選択せざるを得なくなります。
したがって、2回目の法人破産が問題となる場面では、法人の清算手続きよりも、代表者個人が再び自己破産を申し立てた際に、裁判所から債務の支払義務を免除する「免責許可」を得られるかどうかが最も重要な論点となります。もし免責が許可されなければ、多額の連帯保証債務が残ってしまい、経済的な再起を図ることが極めて困難になります。
2回目の手続きで裁判所の審査がより厳格になる理由
2回目の法人破産、およびそれに伴う代表者個人の自己破産では、1回目に比べて裁判所の審査が厳格化します。これは、破産制度の濫用を防ぎ、債権者の利益を保護するという制度趣旨に基づいています。
裁判所が審査を厳格化する主な理由は以下の通りです。
- 制度濫用の防止: 自己破産は債務者に経済的再起の機会を与える救済制度ですが、短期間に繰り返されると制度の趣旨に反するため、安易な利用を防ぐ必要があります。
- 債権者保護: 2度の破産は、債権者に対して大きな不利益を与えることになるため、免責を認めるかどうかの判断はより慎重に行われます。
- 破産原因の精査: 「なぜ一度免責を受けたにもかかわらず、再び支払不能に陥ったのか」という点について、1回目以上に詳細かつ合理的な説明が求められます。
- 破産管財人による調査の必要性: 財産状況や免責不許可事由の有無について厳格に調査する必要性が高いため、原則として破産管財人が選任される「管財事件」として扱われます。
これらの理由から、2回目の申立てでは、破産に至った経緯について詳細な報告を求められたり、反省文の提出が要求されたりするなど、手続き全体を通じてより誠実な対応が不可欠となります。
代表者の2回目自己破産で免責許可を得るための必須条件
条件1:前回の免責許可決定日から7年が経過していること
代表者が2回目の自己破産で免責許可を得るための、最も重要な形式的要件が「7年ルール」です。これは、破産法第252条第1項第10号に定められています。
具体的には、前回の自己破産における「免責許可決定が確定した日」から、今回の自己破産の「申立て日」までに7年間が経過している必要があります。この期間内に再度申立てを行うと、原則として免責が許可されない「免責不許可事由」に該当します。
- 起算日: 前回の「免責許可決定が確定した日」。これは、裁判所から決定の通知が届いてから約1ヶ月後が目安です。
- 終期: 今回の「自己破産の申立てをした日」です。
この7年という期間は、制度の濫用を防ぎ、債権者を保護するために設けられたものです。もし期間満了まで残りわずかであれば、申立ての時期を調整することも検討すべきでしょう。なお、過去7年以内に個人再生手続きにおける給与所得者等再生の認可決定や、ハードシップ免責の決定が確定した場合も同様に免責不許可事由となります。
条件2:破産法が定める免責不許可事由に該当しないこと
7年の期間が経過していても、破産法第252条第1項に定められた他の免責不許可事由に該当しないことが、原則として免責許可を得るための重要な条件です。免責不許可事由とは、免責を認めることが不公平または不誠実と判断される一定の行為を指します。
特に注意すべき免責不許可事由の例を以下に示します。
- 財産の隠匿・毀損: 債権者を害する目的で、財産を隠したり、不当に価値を減少させたりする行為。
- 偏頗弁済(へんぱべんさい): 親族など特定の債権者だけに優先的に返済する行為。
- 浪費・射幸行為: 収入に見合わない浪費や、ギャンブル、FX取引などが原因で多額の借金を作った場合。
- 詐術による信用取引: 返済能力を偽って融資を受けたり、クレジットカードを利用したりする行為。
- 説明義務違反: 裁判所や破産管財人の調査に対し、説明を拒んだり、虚偽の説明をしたりする行為。
2回目の自己破産では、特に1回目と同じ原因で破産に至った場合、「反省していない」と見なされ、免責の判断が非常に厳しくなります。これらの行為を避け、手続きに誠実に取り組むことが不可欠です。
7年以内の申立てでも免責が認められる「裁量免責」の判断基準
裁判所が裁量免責を判断する際に重視するポイント
前回の免責から7年以内の申立てなど、免責不許可事由に該当する場合でも、裁判所が諸般の事情を考慮して例外的に免責を許可することがあります。これを「裁量免責」といいます。
裁量免責の判断に明確な基準はありませんが、裁判所は以下の点を総合的に考慮して判断します。
- 免責不許可事由の悪質性・重大性: 浪費やギャンブルが原因であっても、その金額や期間、背景に病気や失業といったやむを得ない事情がなかったかなどが考慮されます。
- 破産手続きへの協力姿勢: 破産管財人や裁判所の調査に誠実かつ積極的に協力し、反省の態度を示しているかどうかが極めて重視されます。
- 本人の反省と更生の意欲: 家計管理の改善や再発防止策など、経済的に立ち直るための具体的な努力や計画を示せているかが評価されます。
一方で、故意の財産隠しや虚偽報告など、破産手続きの公正性を著しく害する行為があった場合、裁量免責が認められる可能性は極めて低くなります。
2回目の破産に至った経緯の合理的な説明と反省の態度
2回目の自己破産で裁量免責を得るためには、「なぜ再び支払不能に陥ったのか」について、裁判所が納得できる合理的で説得力のある説明が不可欠です。
特に、1回目と同じ原因(例:2回とも浪費が原因)で破産に至った場合、免責のハードルは非常に高くなります。そのため、今回の破産が、自身の努力では避けられなかったやむを得ない事情(例:病気、リストラ、家族の介護費用の発生など)によるものであることを具体的に証明することが重要です。
経緯の説明にあたっては、1回目の破産後に生活再建に向けて真摯に取り組んでいたことを示す必要があります。また、2度目の破産という事態に対する深い反省の意を、裁判所や破産管財人に提出する反省文などを通じて、正直かつ具体的に伝えることが求められます。
破産管財人への協力姿勢と手続きへの誠実な対応
裁量免責の判断において、破産管財人への協力姿勢は極めて重要な要素です。破産管財人は、破産者の財産調査や免責に関する調査を行い、その結果を裁判所に報告する役割を担います。この報告内容は、裁判所の判断に大きな影響を与えます。
破産者は、破産管財人や裁判所に対して誠実に対応する義務があります。
- 財産状況や借金に至った経緯について、包み隠さず正直に説明する。
- 裁判所や管財人から求められた資料(預金通帳、給与明細など)を速やかに提出する。
- 管財人との面談には必ず出席し、真摯な態度で質問に答える。
- 家計収支表を作成・提出し、生活改善への取り組みを具体的に示す。
非協力的な態度や虚偽の説明は、それ自体が免責不許可事由に該当する可能性があり、裁量免責が認められない大きな原因となります。
1回目の破産経験を踏まえ、管財人に何をどう説明すべきか
2回目の自己破産手続きでは、破産管財人に対し、1回目の経験を教訓として経済的更生に努めていたことを、論理的かつ具体的に説明する必要があります。
説明の際は、以下の点を意識することが重要です。
- 1回目以降の努力: 1回目の免責確定後、家計管理を徹底するなど、生活再建のためにどのような努力を継続してきたかを具体的に述べます。
- 今回の破産原因: 今回の破産が、自身の怠慢ではなく、病気による失職や家族の治療費の増大など、予期せぬやむを得ない事情によるものであることを客観的な資料を基に説明します。
- 具体的な再発防止策: 1回目の経験を踏まえ、ギャンブル依存症の治療を受ける、専門家の助言を得て家計管理を行うなど、より強固な再発防止策を講じていることを示します。
破産管財人は、これらの説明や提出資料から、破産者が真摯に反省し、経済的再起の意欲と可能性があるかを判断します。
2回目の法人破産・自己破産の手続きと費用の目安
申立てから法人消滅・免責許可までの流れと1回目との相違点
2回目の法人破産と代表者個人の自己破産を同時に進める場合、基本的な手続きの流れは1回目と同様ですが、実務上の運用には重要な違いがあります。
手続きの概略は以下の通りです。
- 弁護士に依頼し、債権者に受任通知を送付して督促を停止する。
- 事業活動を完全に停止し、申立てに必要な書類を準備する。
- 裁判所に法人破産と代表者個人の自己破産を同時に申し立てる。
- 破産手続開始決定が下り、破産管財人が選任される。
- 破産管財人が法人の財産調査、管理、換価処分を行う。
- 債権者集会で、破産管財人が財産状況や手続きの進捗を報告する。
- 換価された財産が債権者に配当され、法人の手続きが終結し、法人格が消滅する。
- 代表者個人について、破産管財人による免責調査や免責審尋が行われる。
- 裁判所から免責許可決定が下り、確定すれば個人の債務が免除される。
1回目との最大の違いは、2回目の申立てでは、破産に至った経緯などを厳格に調査する必要があるため、原則として管財事件として扱われる点です。管財事件になると、破産管財人が選任されるため、手続きにかかる費用と期間が増加する傾向にあります。
弁護士費用と裁判所への予納金の相場
2回目の法人破産・自己破産にかかる費用は、弁護士に支払う弁護士費用と、裁判所に納める裁判所費用(予納金など)から構成されます。総額は1回目よりも高額になるのが一般的です。
| 費用の種類 | 金額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 弁護士費用 | 100万円以上 | 法人の規模や負債総額、事案の複雑さにより変動します。法人と個人の申立てを合わせてこの程度の金額が最低ラインとなることが多いです。 |
| 裁判所費用 | 20万円~ | 法人破産の予納金(少額管財の場合)が最低20万円程度かかります。負債総額によっては70万円以上になることもあります。 |
弁護士費用は法律事務所によって異なります。裁判所費用の中で最も大きな割合を占めるのが、破産管財人の報酬に充てられる引継予納金です。2回目の破産は管財事件となるため、この予納金の納付は必須です。法人と代表者個人を同時に申し立てることで、予納金が一部減額される運用もありますが、まとまった費用の準備が必要となります。
代表者以外の連帯保証人(役員・親族)への影響と事前調整
会社が破産し、代表者が自己破産で免責を得たとしても、その効果は代表者本人にしか及びません。代表者以外の役員や親族が会社の債務の連帯保証人になっている場合、その保証債務はなくならず、債権者はこれらの連帯保証人に対して返済を請求することができます。
連帯保証人には、まず主債務者(会社)に請求するよう求める権利(催告の抗弁権)などがないため、会社の破産後、直ちに全額の返済を求められることになります。
そのため、法人破産を進める際には、他の連帯保証人となっている役員や親族に対し、事前に状況を誠実に説明し、彼ら自身の債務整理(自己破産、個人再生など)についても方針を話し合っておくことが、トラブルを避ける上で不可欠です。
万が一、免責が認められなかった場合の対処法
免責不許可決定に対する即時抗告
裁判所から免責不許可の決定が下された場合、その決定に対して不服を申し立てる「即時抗告」という手続きがあります。即時抗告は、免責不許可決定の通知を受けてから2週間以内に、上級の裁判所(高等裁判所)に対して行わなければなりません。
ただし、一度下された免責不許可の決定を覆すことは非常に困難です。裁量免責が認められないケースは、財産隠しや手続きへの非協力など、悪質な事案が多いため、即時抗告が認められる可能性は極めて低いのが実情です。
個人再生や任意整理など他の債務整理手続きの検討
即時抗告でも免責が認められなかった場合、自己破産以外の債務整理手続きを検討することになります。主な選択肢として「個人再生」と「任意整理」があります。
| 手続きの種類 | 概要 | メリット |
|---|---|---|
| 個人再生 | 裁判所の認可を得て、債務を大幅に減額(通常1/5程度)し、原則3年で分割返済する手続き。 | ・自己破産のような免責不許可事由が問われない。<br>・住宅ローン特則により自宅を残せる可能性がある。 |
| 任意整理 | 弁護士が債権者と直接交渉し、将来利息のカットや返済期間の延長を目指す手続き。 | ・手続きが比較的簡易で費用が安い。<br>・特定の債務のみを整理の対象にできる。 |
これらの手続きは、いずれも継続的な収入があることが前提となりますが、免責が得られなかった場合の現実的な解決策となり得ます。
2回目の法人破産に関するよくある質問
2回目の法人破産後、再び会社を設立することは可能ですか?
法律上、2回目の法人破産後であっても、新たに会社を設立し、その代表取締役になることは可能です。現在の会社法では、破産したことは取締役の欠格事由(資格を失う理由)から除外されています。
ただし、実務上の最大の壁は資金調達です。自己破産をすると、信用情報機関に事故情報が登録(いわゆるブラックリスト状態)され、5年~10年間は金融機関からの融資やクレジットカードの作成が極めて困難になります。
そのため、再起業を目指す場合は、自己資金を準備するか、日本政策金融公庫の「再挑戦支援資金」のような公的融資制度の活用を検討する必要があります。この制度は、廃業歴があっても一定の要件を満たせば利用できる可能性があります。
信用情報への影響は1回目と異なりますか?
2回目の自己破産であっても、信用情報への影響は1回目と基本的に同じです。自己破産をすると、信用情報機関に事故情報として登録され、約5年~10年間、新たな借入れやクレジットカードの利用が困難になります。この登録期間や影響の度合いについて、1回目と2回目で法的な違いはありません。
また、破産した事実は国の機関紙である「官報」に掲載されますが、これも1回目と同様です。官報を日常的に確認している一般の方は非常に少ないため、ここから破産の事実が周囲に知られる可能性は低いといえます。
破産管財人との面談では、どのような点が重点的に確認されますか?
2回目の自己破産における破産管財人との面談では、1回目以上に免責を許可してよいかどうかが厳しく審査されます。特に、以下の点が重点的に確認されます。
- 再び破産に至った経緯: 今回の破産原因が1回目と同じではないか、病気や失業などやむを得ない事情があったかどうかが詳しく問われます。
- 財産関係の調査: 財産隠しや、特定の債権者のみに返済する偏頗弁済といった不誠実な行為がなかったか、通帳の履歴などを基に確認されます。
- 手続きへの協力姿勢: 質問に対して正直に回答しているか、資料提出などに誠実に応じているかといった態度が評価されます。
- 経済的更生への意欲: 家計収支表の提出や具体的な生活改善策を通じて、更生への真摯な意欲があるかどうかが確認されます。
面談では、虚偽の説明をせず、正直かつ誠実に対応することが何よりも重要です。
まとめ:2回目の法人破産を乗り越え、経済的再起を果たすために
本記事で解説した通り、2回目の法人破産自体は可能ですが、最大の焦点は代表者個人の自己破産における免責許可です。免責を得るためには、原則として前回の免責確定から7年が経過していること、そして財産隠しや偏頗弁済といった免責不許可事由に該当しないことが原則として絶対条件となります。裁判所の審査は1回目より厳格化され、破産に至った経緯について合理的で説得力のある説明が求められます。
万が一7年ルールを満たしていなくても、やむを得ない事情があり、破産管財人への調査に誠実に協力する姿勢を示すことで「裁量免責」が認められる可能性は残されています。しかし、2回目の手続きは原則として管財事件となり、費用や期間の負担も増大します。この複雑な状況を独力で乗り越えるのは極めて困難であるため、ご自身の状況で免責が得られるか、まずは倒産・破産分野に精通した弁護士へ速やかに相談することが、確実な再スタートへの第一歩となるでしょう。

