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不当解雇で訴えられた会社がすべきこと|手続きの流れと費用を解説

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従業員から不当解雇で訴えられた場合、会社の初期対応がその後の展開を大きく左右します。初動を誤ると、バックペイ(解雇後の賃金支払い)や企業の評判低下といった深刻な経営リスクに直結しかねません。この記事では、元従業員から解雇を理由に訴えられた際に会社が取るべき初期対応から、労働審判・民事訴訟といった法的手続きの流れ、そして潜在的なリスクまでを網羅的に解説します。

訴えられた直後の初期対応

通知書(内容証明等)の内容を精査

元従業員から内容証明郵便などの通知書が届いた場合、まずその内容を正確に精査することが初期対応の要です。今後の対応方針を決定するための重要な情報が含まれているためです。具体的には、以下の点を確認し、会社の認識と相違がないかを整理します。

通知書の主な確認事項
  • 請求の趣旨: 不当解雇の撤回、未払賃金の支払い、慰謝料請求など、元従業員が何を求めているか。
  • 請求の根拠: どのような事実を基に請求しているか。
  • 通知の当事者: 誰が、誰に対して意思表示を行っているか。
  • 代理人弁護士の有無: 弁護士名で送付されているか。弁護士が代理人となっている場合、法的手続きへの移行が近いことを示唆します。
  • 回答期限: 設定されている期限内に応答が必要か。焦って回答する必要はありませんが、期限の延長を求める連絡はしておくべきです。

解雇の正当性を裏付ける証拠の保全

解雇の正当性を立証するためには、客観的な証拠を迅速に保全することが不可欠です。裁判では、会社側が解雇の客観的かつ合理的な理由社会的相当性を証明する責任を負います。証拠は時間が経つと散逸しやすいため、訴えを受けた直後に網羅的に収集・保全する必要があります。

保全すべき証拠の例
  • 基本文書: 労働契約書、就業規則、誓約書など。
  • 勤務状況に関する記録: タイムカード、出退勤記録、業務日報など。
  • 人事評価に関する記録: 人事評価シート、面談記録、指導記録、注意書など。
  • 解雇理由の直接的証拠: 問題行動に関するメール履歴、関係者のヒアリング記録、懲戒委員会の議事録など。
  • 会社のデータ: 退職者が使用していた業務用PCやメールアカウントのデータ。

担当者間での情報共有と事実確認

訴えに対応するにあたり、人事部門や元従業員の直属の上司など、関係者間で正確な情報を共有し、事実確認を徹底することが重要です。現場の認識と人事部門の認識に乖離があることも少なくありません。

事実確認の主なステップ
  • 関係者へのヒアリング: 解雇に至る経緯や問題行動の具体的な内容、指導状況などを詳細に聞き取る。
  • 事実の時系列整理: 客観的な記録と照らし合わせながら、事実関係を時系列で整理する。
  • 証言の精査: 関係者の証言が食い違う場合、客観的事実と合致する情報を慎重に見極める。
  • 経営陣への報告: 紛争のリスクや想定される金銭的負担について速やかに報告し、全社的な対応方針を共有する。

訴えられた元従業員との直接接触に関する注意点

元従業員との直接的な接触は、原則として避けるべきです。不用意な発言が後日不利な証拠として利用されたり、感情的な対立を激化させたりするリスクがあるためです。相手方に代理人弁護士がついている場合は、必ずその弁護士を通じて連絡を取ります。元従業員本人から直接連絡があった場合でも、対応窓口を一本化し、個別の担当者が応じないように社内で徹底することが賢明です。

法的手続きの全体像と流れ

交渉段階での対応ポイント

労働審判や訴訟に発展する前の交渉段階で合意できれば、時間と費用の負担を大幅に軽減できます。会社の法的立場を冷静に見極め、合理的な解決点を探ることが重要です。すべての要求を拒否するのではなく、解雇の有効性に少しでも懸念がある場合は、解決金を支払って合意退職とする選択肢も視野に入れます。交渉の過程での重要なやり取りは、後の紛争を防ぐため必ず書面やメールで記録に残しましょう。

労働審判の申立てから終結まで

労働審判は、原則3回以内の期日で審理を終える、迅速な紛争解決手続きです。短期決戦となるため、初動の対応が結果を大きく左右します。

労働審判の主な流れ
  1. 申立てと呼出し: 元従業員が労働審判を申し立て、裁判所から会社へ呼出状と申立書が送達されます。
  2. 答弁書の提出: 会社は指定された期日までに、申立書への反論をまとめた答弁書と証拠を提出します。
  3. 第1回期日: 労働審判委員会(裁判官と専門家)が双方から事情を聴取し、争点を整理します。この期日で労働審判委員会の心証形成に大きな影響を与えることが多いです。
  4. 調停または審判: 審理の過程で調停案が提示され、双方が合意すれば調停成立となります。合意に至らない場合は、労働審判委員会が審判を下します。
  5. 異議申立て: 審判内容に不服がある当事者は、2週間以内に異議を申し立てることで、自動的に民事訴訟へ移行します。

民事訴訟(裁判)への移行

労働審判で異議が申し立てられた場合や、最初から訴訟が提起された場合は、民事訴訟で争うことになります。労働審判と比べて手続きは厳格で、審理期間も1年から数年に及ぶ長期戦となります。

民事訴訟の主な流れ
  1. 訴状と答弁書の提出: 原告(元従業員)が訴状を、被告(会社)が答弁書を裁判所に提出します。
  2. 口頭弁論期日: 約1か月に1回のペースで期日が開かれ、双方が準備書面と証拠を提出し、主張・立証を重ねます。
  3. 証人尋問・当事者尋問: 書面だけでは判断できない事実について、関係者への尋問が行われます。
  4. 和解勧告: 審理の途中や尋問後に、裁判官から和解が勧められることが多くあります。
  5. 判決: 和解が成立しない場合、裁判所が最終的な判断として判決を下します。判決に不服があれば控訴が可能です。

労働審判での会社側の対応

答弁書の作成と提出準備

答弁書は、労働審判委員会の第一印象を決定づける極めて重要な書面です。申立書の内容に対し、会社の主張を具体的かつ論理的に記載する必要があります。準備期間が非常に短いため、迅速な対応が求められます。

答弁書作成のポイント
  • 認否の明確化: 申立人の主張する事実関係について、認めるか、否認するか、知らないかを明確にする。
  • 具体的な反論: 会社の主張を、時系列に沿って具体的に記載する。
  • 証拠の添付: 主張を裏付けるメールや記録などの客観的証拠を、漏れなく添付する。
  • 期限の厳守: 指定された提出期限を必ず守る。

第1回期日に向けた主張整理

労働審判の成否を左右する重要な期日です。労働審判委員会からの質問に的確に答えられるよう、入念な準備が必要です。

第1回期日に向けた準備
  • 答弁書内容の完全な理解: 提出した答弁書と証拠の内容を、出席者が自分の言葉で説明できるようにしておく。
  • 想定問答の準備: 労働審判委員会から質問されそうな事項を予測し、回答をシミュレーションする。
  • 相手方の主張の分析: 相手方の申立書を読み込み、矛盾点や不合理な点を指摘できるように整理する。
  • 適切な出席者の選定: 事案を最もよく理解している人事担当者や直属の上司が出席する。

調停成立(和解)と審判への対応

労働審判では、話し合いによる解決(調停)が重視されます。労働審判委員会から示される心証や調停案を冷静に分析し、会社としての対応を決定します。

調停・審判への対応方針
  • 調停案の検討: 敗訴リスクや訴訟に移行した場合のコストを考慮し、提示された調停案を受け入れるか判断する。
  • 解決金の上限設定: 金銭解決に応じる場合、事前に支払える解決金の上限額を決めておく。
  • 調停条項の確認: 調停が成立する場合、将来の紛争を防ぐため、清算条項口外禁止条項を必ず盛り込む。
  • 異議申立ての判断: 審判の内容が受け入れられない場合は、2週間以内に異議を申し立て、民事訴訟で争うことを決断する。

民事訴訟での会社側の対応

訴状への反論(答弁書の提出)

民事訴訟でも、訴状を受け取ったらまず答弁書を提出します。期限内に提出しないと、相手方の主張をすべて認めたとみなされ、欠席判決で敗訴するリスクがあります。

答弁書の基本構成
  • 請求の趣旨に対する答弁: 「原告の請求を棄却する」という会社の基本的な態度を表明する。
  • 請求の原因に対する認否: 原告が主張する事実関係一つひとつに対し、「認める」「否認する」「知らない」「争う」のいずれかを明らかにする。

口頭弁論と準備書面での主張立証

民事訴訟では、口頭弁論期日の間に「準備書面」という書面を互いに提出し、主張と立証を積み重ねていきます。裁判官はこれらの書面と証拠を基に心証を形成します。

主張立証のポイント
  • 論理的な主張展開: 解雇の客観的合理性・社会的相当性を、就業規則の規定や具体的な事実、証拠を引用しながら論理的に主張する。
  • 的確な反論: 相手方の準備書面を精査し、その主張の矛盾点や証拠の弱点を的確に指摘し、再反論を行う。
  • 裁判所の訴訟指揮への対応: 裁判官からの指示や要請に誠実に応じ、求められた証拠を速やかに提出する。

証人尋問・当事者尋問の準備

証人尋問は、裁判官の心証に大きな影響を与える重要な手続きです。証言の信用性が問われるため、徹底した準備が求められます。

証人尋問の準備手順
  1. 陳述書の作成: 証言する内容を事前に「陳述書」としてまとめ、裁判所に提出します。矛盾や誇張がないよう正確に作成します。
  2. 主尋問の準備: 自社の弁護士からの質問(主尋問)に対し、重要な事実を分かりやすく、説得力をもって証言できるよう練習します。
  3. 反対尋問のシミュレーション: 相手方弁護士からの厳しい質問(反対尋問)を想定し、冷静に事実のみを答える訓練を重ねます。

解雇訴訟で会社が負うリスク

金銭的リスク(バックペイ・解決金)

解雇が無効と判断された場合、会社は深刻な金銭的リスクを負います。特にバックペイの負担は非常に大きくなる可能性があります。

主な金銭的リスク
  • バックペイ(Back Pay): 解雇日から判決確定日までの賃金全額の支払い義務。訴訟が長期化すれば数千万円に及ぶこともあります。
  • 遅延損害金: 未払賃金(バックペイ)に対して発生する利息に相当するもの。
  • 解決金: 裁判の途中で和解する場合に支払う金銭。バックペイの見込み額などを基に算定されます。
  • 付加金: 裁判所が、未払賃金と同額の支払いを追加で命じることができるペナルティ。

従業員の復職義務

判決で解雇が無効と判断された場合、会社は元従業員を復職させる法的義務を負います。一度は紛争関係となった従業員が職場に戻ることは、組織の秩序や他の従業員の士気に大きな影響を与えかねません。

復職に伴うリスク
  • 社内の人間関係の悪化: 当該従業員と他の従業員との間に深刻な軋轢が生じる可能性がある。
  • 業務遂行への支障: 円滑な業務連携が困難になり、生産性が低下する恐れがある。
  • 新たな紛争の火種: 復職後の待遇(配置転換など)をめぐり、新たな労働紛争に発展するリスクがある。

レピュテーションリスク(信用の低下)

解雇訴訟は、企業の社会的信用を大きく損なうレピュテーションリスクを伴います。一度「ブラック企業」というイメージが定着すると、その回復は容易ではありません。

レピュテーションリスクがもたらす影響
  • ブランドイメージの低下: 不当解雇の事実が報道やSNSで拡散し、企業の評判が低下する。
  • 取引への悪影響: 取引先からの信用を失い、契約を打ち切られる可能性がある。
  • 採用活動の困難化: 優秀な人材が集まりにくくなり、採用コストが増大する。

訴訟が他の従業員に与える影響と社内対応

解雇訴訟は、社内で働く他の従業員にも心理的な動揺を与え、組織全体に悪影響を及ぼす可能性があります。経営陣は、社内の不安を最小限に抑えるための対応が求められます。

他の従業員への主な影響
  • 士気の低下: 「明日は我が身かもしれない」という不安が広がり、モチベーションが低下する。
  • 生産性の悪化: 職場の一体感が損なわれ、業務効率が悪化する。
  • 連鎖的な離職: 会社への不信感から、優秀な人材が流出する可能性がある。

和解による解決という選択肢

和解のメリット・デメリット

訴訟を最後まで争うのではなく、途中で和解によって解決する選択肢もあります。メリットとデメリットを比較し、経営的な判断を下すことが重要です。

項目 メリット デメリット
時間・コスト 紛争を早期に終結させ、弁護士費用やバックペイの増大を防げる。 会社に正当性があっても、一定の解決金を支払う必要がある。
公開性 和解内容は非公開にでき、企業の評判への影響を最小限に抑えられる。 判決で白黒がつかないため、経営陣の不満が残ることがある。
確実性 判決による敗訴リスクを完全に回避できる。 安易な金銭解決が、他の従業員に誤ったメッセージを与える恐れがある。
和解のメリット・デメリット

和解交渉の適切なタイミング

和解交渉を有利に進めるには、そのタイミングを見極めることが重要です。手続きの節目や、裁判官から心証が示された時が交渉の好機となることが多いです。

和解交渉の主なタイミング
  • 労働審判: 第1回期日で労働審判委員会の心証が示された後。
  • 民事訴訟(争点整理後): 双方の主張と証拠が出揃い、争点が明確になった段階。
  • 民事訴訟(尋問後): 証人尋問の結果、自社に不利な心証が形成された、あるいは相手方の主張が崩れた場合。
  • 判決言い渡し前: 裁判所から強い和解勧告がなされた場合。

和解金の算定における考慮要素

和解金は、敗訴した場合の金銭的リスクや勝訴の見込みなどを総合的に考慮して算定されます。実務上の相場も参考にしつつ、自社が許容できる範囲を検討します。

和解金の算定で考慮する要素
  • バックペイの累積額: 和解時点までの未払賃金相当額が算定の基礎となる。
  • 勝訴の見込み: 裁判所から示された心証に基づき、敗訴する可能性がどの程度あるかを評価する。
  • 紛争対応コスト: 訴訟が続いた場合の弁護士費用や社内人件費などの見込み額。
  • 従業員の状況: 従業員が再就職しているかなど、個別の事情も考慮される。

弁護士への相談と費用相場

弁護士に相談すべきタイミング

解雇に関するトラブルは、可能な限り早期に弁護士へ相談することが、被害を最小限に抑える鍵となります。問題が複雑化する前に対策を講じることが重要です。

弁護士に相談すべき主なタイミング
  • 理想的なタイミング: 従業員の解雇を具体的に検討し始めた段階。
  • 必須のタイミング: 元従業員から内容証明郵便が届いた時点。
  • 緊急のタイミング: 裁判所から労働審判や訴訟の呼出状が届いた直後。

弁護士費用の内訳と仕組み

弁護士費用は、主に「着手金」と「報酬金」で構成されますが、他にもいくつかの費用が発生します。契約前に費用の仕組みをよく確認することが大切です。

弁護士費用の主な内訳
  • 着手金: 事件を依頼した時点で支払う費用。結果にかかわらず返金されないのが一般的です。
  • 報酬金: 事件が成功裏に終了した際に、得られた経済的利益に応じて支払う費用。
  • 実費: 裁判所に納める印紙代や郵便切手代、交通費など、手続きにかかる費用。
  • 日当: 弁護士が裁判所へ出廷するなど、事務所外での活動に対して発生する費用。
  • タイムチャージ: 弁護士の稼働時間に応じて費用が計算される方式。

会社側の弁護士費用の目安

解雇訴訟を弁護士に依頼する場合の費用は、手続きの種類や事案の難易度によって変動します。以下は一般的な目安です。

手続きの種類 着手金の目安 報酬金の目安
労働審判 30万円~50万円程度 経済的利益の10%~20%程度
民事訴訟(第一審) 40万円~60万円程度 経済的利益の10%~20%程度
弁護士費用の目安(会社側)

※ 上記はあくまで目安であり、請求額や事案の複雑性によって変動します。顧問契約がある場合は割引が適用されることもあります。

よくある質問

解雇訴訟の期間はどのくらいですか?

解雇に関する紛争解決までの期間は、選択する法的手続きによって大きく異なります。

手続き別の期間目安
  • 労働審判: 申立てから約2~3か月。原則3回以内の期日で迅速に結論が出ます。
  • 民事訴訟(第一審): 約1年~1年半。事案が複雑な場合は2年以上かかることもあります。
  • 控訴審以降: さらに長期化し、最終的な解決まで3年以上を要するケースもあります。

訴訟は必ず弁護士に依頼すべきですか?

法律上、本人で訴訟対応することは可能ですが、弁護士への依頼を強く推奨します。労働法は専門性が非常に高く、適切な主張・立証活動を行うには高度な知識と経験が不可欠だからです。

弁護士への依頼を推奨する理由
  • 専門性の高さ: 複雑な労働法規や判例を理解し、的確な主張を組み立てる必要があるため。
  • 手続きの複雑さ: 答弁書や準備書面の作成、証拠の提出など、厳格なルールに則る必要があるため。
  • 相手方との均衡: 元従業員側は労働事件に精通した弁護士を立てることが多く、対等に争う必要があるため。

敗訴した場合のバックペイ対象期間は?

解雇が無効と判断された場合、バックペイの支払義務が生じる対象期間は、「解雇日(就労を拒否された日)から判決が確定する日まで」の全期間です。裁判が長引けば長引くほど、対象期間は延び続け、会社の金銭的負担は雪だるま式に増加していきます。このリスクを正しく認識した上で、訴訟を継続するか、和解で解決するかの経営判断を行う必要があります。

まとめ:不当解雇で訴えられた際の対応とリスク管理

元従業員から不当解雇で訴えられた場合、初期対応が極めて重要です。まずは通知書の内容を精査し、解雇の正当性を裏付ける客観的な証拠を迅速に保全してください。法的手続きには迅速な労働審判と長期化しやすい民事訴訟があり、いずれも専門的な対応が求められます。解雇が無効と判断されると、バックペイや復職義務、レピュテーション低下といった深刻な経営リスクを負うことになります。解雇の客観的合理性や社会的相当性を立証できるかを見極め、訴訟を継続するか、和解による早期解決を目指すかの経営判断が必要です。少しでも不安があれば、問題が複雑化する前に速やかに弁護士へ相談し、対応方針を検討しましょう。

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