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テレビ会議の取締役会議事録の書き方|法的要件・開催場所の記載例を解説

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近年、取締役会をテレビ会議(Web会議)形式で開催する企業が増えていますが、その議事録作成には特有の法的留意点が存在します。特に、「開催場所」の記載方法やリモート出席者の表現など、会社法を遵守した正確な記録が求められ、担当者にとっては判断に迷う点も少なくありません。この記事では、テレビ会議形式で実施した取締役会の議事録について、法的要件から具体的な記載例、電子署名の活用法までを網羅的に解説します。

目次

テレビ会議(Web会議)で取締役会を開催するための法的要件

会社法で認められているテレビ会議等の開催方法

会社法では、取締役会の開催場所について物理的な集会を義務付けておらず、遠隔地から情報通信技術を用いて参加することも法的な「出席」として認められています。これにより、取締役が実際に一か所に集まることなく、有効な決議を行うことが可能です。認められている主な開催方法は以下の通りです。

会社法で認められる遠隔での開催方法
  • テレビ会議方式: インターネット回線を通じて、映像と音声でリアルタイムにやり取りする方法です。
  • Web会議方式: クラウド型の専用サービスを利用する形態で、近年最も一般的な方法です。
  • 電話会議方式: 映像を用いず音声のみで審議を行う方法で、後述の要件を満たせば有効と解されています。

開催に求められる「双方向性」と「即時性」の要件とは

テレビ会議等のシステムを利用して取締役会を開催する場合、その決議が法的に有効と認められるためには、出席者全員が物理的に一堂に会するのと同等の環境が確保されている必要があります。具体的には、以下の2つの要件を満たさなければなりません。

テレビ会議開催に必須の2要件
  • 双方向性: ある出席者の発言が他の全出席者に明確に伝わり、それに対して自由に意見交換や質疑応答ができる状態を指します。
  • 即時性: 映像や音声が遅延なくリアルタイムで伝達され、出席者間の対話が円滑に行える状態を指します。

例えば、事前に録画した映像を再生して意見を述べるだけでは、リアルタイムでの対話ができないため「即時性」の要件を満たしません。審議の全過程を通じて良好な通信状態を維持し、これらの要件が損なわれないようにすることが極めて重要です。

テレビ会議での開催に定款での定めは必要か

結論として、取締役会をテレビ会議やWeb会議で開催すること自体について、定款に特別な定めを置く必要はありません。これは、会社法が取締役の出席方法を物理的なものに限定しておらず、適切な通信環境下での参加を正規の出席として認めているためです。

ただし、会議を開催せず書面や電子メールのみで決議を行う「みなし決議(決議の省略)」を導入する場合は、事前にその旨を定款で定めておく必要があります(会社法第370条)。テレビ会議はあくまでも「会議の実開催」であるため、この規定とは区別されます。

開催方法 概要 定款の定め 根拠
テレビ会議・Web会議 映像と音声でリアルタイムに審議・決議を行う 不要 法的に「出席」と認められるため
みなし決議(決議の省略) 実際に会議を開かず、書面等で全取締役が同意する 必要 会社法第370条の要件
開催方法と定款の定めの要否

取締役会をテレビ会議で行う際の準備と招集通知のポイント

開催前に確認すべき通信環境や議事進行のルール

テレビ会議による取締役会を円滑かつ適法に運営するためには、事前の準備が不可欠です。特に、技術的なトラブルや議事の混乱を避けるため、以下の点を整備しておくことが推奨されます。

開催前の準備・確認事項
  • 通信環境のテスト: 各取締役の接続環境(回線速度、機器設定など)を事前に確認し、映像・音声テストを実施する。
  • 議事進行ルールの策定: 発言時以外のマイクミュート、発言を求める際の挙手機能の利用など、進行ルールを明確化し周知する。
  • セキュリティの確保: 公共の場所からの参加を禁止し、情報漏洩防止のためイヤホンやヘッドセットの使用を推奨する。
  • トラブル時の対応策: 通信遮断に備え、代替の通信手段(電話会議など)や事務局への緊急連絡方法を事前に定めておく。

招集通知への記載事項と文例

取締役会の招集通知は、原則として開催日の1週間前までに発する必要があります。テレビ会議形式の場合、通常の記載事項に加え、オンライン参加に必要な情報を漏れなく記載することが重要です。不備があると決議の有効性が争われる可能性があるため、注意が必要です。

招集通知への特有の記載事項
  • 使用するWeb会議システムの名称(Zoom、Microsoft Teamsなど)
  • 会議にアクセスするためのURL、会議ID、パスワード
  • 通信トラブル時の緊急連絡先(事務局の電話番号など)
  • 事前配布資料の入手方法や保存場所へのリンク

(文例) 開催場所:当会社本店会議室 (ただし、取締役の一部は、下記Web会議システムにより出席する)

Web会議システムによる出席方法: 参加用URL:https://… ミーティングID:123 4567 8900 パスコード:xxxxxxxx

テレビ会議における取締役会議事録の記載事項と書き方【文例付】

会社法で定められた取締役会議事録の必須記載事項

取締役会議事録は、会社法で作成と本店での10年間の備え置きが義務付けられた法定文書です。記載すべき事項は会社法施行規則で定められており、万が一の訴訟の際には重要な証拠となります。

取締役会議事録の必須記載事項
  • 開催日時および場所: 会議の開始時刻と終了時刻、物理的な開催場所を明記します。
  • 出席した役員の氏名: 出席した取締役・監査役の氏名を記載し、定足数を満たしていることを示します。
  • 議長の氏名: 当該取締役会の議長を務めた者の氏名を記載します。
  • 議事の経過の要領とその結果: どのような議案が審議され、どのような議論を経て、承認・否決されたかを記録します。
  • 特別利害関係取締役: 特定の議案について利害関係を有し、決議に参加しなかった取締役がいる場合、その氏名を記載します。
  • その他法務省令で定める事項: 会社法・施行規則で定められたその他の事項を記載します。

テレビ会議特有の記載事項(開催方法・出席方法など)

テレビ会議形式で取締役会を開催した場合、通常の記載事項に加えて、その開催方法を明確にするための特有の記載が求められます。これは、会議が適法な要件を満たして行われたことを事後的に証明するために重要です。

テレビ会議開催時の特有の記載事項
  • リモートでの出席方法: 開催場所にいない取締役・監査役について、その出席方法(例:「Web会議システムを用いて出席」)を明記します。
  • 通信環境の確認: 議長が審議開始時に、全出席者の映像・音声が良好で、即時性・双方向性が確保されていることを確認した旨を記載します。
  • 審議終了時の状況: 会議終了時に、通信障害等の異常なく全議事が終了した旨を付記することが望ましいです。
  • 使用したシステム名: 使用したWeb会議システムの具体的な名称を記載しておくと、より客観性が高まります。

【論点解説】開催場所の具体的な記載方法

全員がリモートで参加する「フルリモート取締役会」の場合、議事録に記載する「開催場所」をどう定めるかは実務上の論点です。会社法は物理的な場所を前提としているため、場所の記載を省略することはできません。一般的な対応方法は以下の通りです。

開催形態 議事録上の「開催場所」の記載例
ハイブリッド型(一部がオフィス等に集合) 役員が実際に集まっている場所(例:当会社本店会議室)を記載する。
フルリモート型(全員が各自の場所から参加) 議長の所在地(自宅住所など)または会社の本店所在地を記載する。
開催形態別の「開催場所」記載例

実務上は、たとえ誰もその場所にいなくても、会社の本店所在地を開催場所とし、出席者全員がWeb会議システムで出席した、と記載するケースが多く見られます。

【文例】テレビ会議形式の取締役会議事録サンプル

取締役会議事録

  1. 開催日時 令和〇年〇月〇日 午前10時00分~午前11時00分
  2. 開催場所 当会社本店会議室
  3. 出席役員
  4. 取締役総数 5名 出席取締役数 5名 (出席取締役)代表取締役A、取締役B、取締役C、取締役D、取締役E 監査役総数 1名 出席監査役数 1名 (出席監査役)監査役F

(注)取締役D、取締役Eおよび監査役Fは、Web会議システムを用いて本取締役会に出席した。

以上のとおり、取締役および監査役の出席があり、定款の定めにより代表取締役Aが議長となり、定刻に開会を宣した。

議長は、本日の取締役会で用いるWeb会議システムにおいて、出席者全員の音声および映像が即時に伝達され、一堂に会するのと同等に適時的確な意見表明が相互にできる状態であることを確認した旨を述べ、直ちに議案の審議に入った。

議案 第1号議案 〇〇プロジェクトの承認に関する件 議長が事前に配付した資料に基づき本件を説明し、その承認を求めたところ、出席取締役全員で慎重に審議した。その結果、満場一致をもって本議案を原案どおり承認可決した。

以上をもって本日の議事をすべて終了したので、議長は午前11時00分に閉会を宣した。なお、本日のWeb会議システムを用いた取締役会は、終始、通信上の異状なく進行した。

上記議事の経過の要領およびその結果を明確にするため、本議事録を作成し、出席した取締役および監査役がこれに記名押印する。

取締役会議事録への署名・記名押印と電子署名の活用

出席取締役・監査役の署名または記名押印の原則

書面で作成された取締役会議事録には、出席した取締役および監査役全員が署名または記名押印する義務があります(会社法第369条3項)。これは、議事録の内容の正確性を担保し、各役員がその内容を承認したことを証明するための重要な手続きです。

署名・記名押印のポイント
  • 署名と記名押印: 「署名」は自署、「記名押印」は氏名の印字等に押印することを指し、どちらでも有効です。
  • 印鑑の種類: 原則として認印で問題ありませんが、商業登記の申請に添付する場合は、出席役員全員の実印と印鑑証明書が求められることがあります。
  • リモート開催時の課題: 役員が各地にいる場合、議事録を郵送で回覧して押印を集める「持ち回り押印」が必要となり、時間とコストがかかる点が課題です。

電子署名を利用する場合の法的要件と注意点

取締役会議事録を電磁的記録(電子ファイル)で作成し、電子署名を用いることで、押印作業を効率化できます。会社法では、書面への署名・記名押印に代わる措置として電子署名を認めています(会社法第369条4項)。

電子署名の法的要件
  • 本人性の証明: その電子署名が、作成者本人によって行われたことを示せること。
  • 非改ざん性の証明: 作成後に情報が改変されていないことを確認できること。

2020年の法務省見解により、当事者が電子証明書を用いて署名する「当事者型」だけでなく、クラウド型サービス事業者などが署名を付与する「立会人型(事業者署名型)」の電子署名サービスも、上記の要件を満たすものとして広く利用可能になりました。ただし、商業登記のオンライン申請に議事録を添付する場合は、法務省が指定する電子証明書に対応したサービスを利用する必要があるため注意が必要です。

リモート環境下での議事録回覧・承認における内部統制上の留意点

議事録の承認プロセスを電子化する場合、紙と印鑑に代わる信頼性を確保するための内部統制が不可欠です。リモート環境では、以下の点に留意して運用ルールを整備する必要があります。

内部統制上の留意点
  • 承認履歴の記録: いつ、誰が、どの文書を承認したかを追跡できる監査ログ機能があるシステムを利用する。
  • アクセス権限の管理: 議事録の確定前のドラフト段階で、不正な編集や閲覧ができないよう、アクセス権限を厳格に設定する。
  • 承認プロセスの管理: 承認が遅延し、登記期限(原則2週間)等を徒過しないよう、リマインダー機能などを活用して進捗を管理する。
  • セキュリティ対策: サイバー攻撃や情報漏洩のリスクに備え、高度なセキュリティ対策が講じられたシステムを選定する。

テレビ会議による取締役会に関するよくある質問

通信トラブルで取締役が途中退席した場合、議事録にはどう記載しますか?

会議の途中で通信トラブルにより復帰できなくなった取締役は、その時点から「中座」したものとして扱います。議長は、その取締役の退席後も決議に必要な定足数を満たしているかを確認する必要があります。 議事録には、まず出席者の欄に「Web会議システムにより出席」と記載したうえで、議事の経過の中で「取締役〇〇は、第〇号議案の審議中である〇時〇分、通信回線の不具合により退席した」というように、退席した時刻と理由を具体的に記載します。その取締役は退席後の審議・決議には参加していないため、決議要件の母数からも除外して計算します。

監査役がオンラインで参加した場合の議事録への記載方法を教えてください

監査役がオンラインで参加した場合も、取締役と同様の記載を行います。まず、出席者の欄に「監査役〇〇はWeb会議システムにより出席」と明記します。また、議長が審議開始時に通信環境の良好性を確認した旨を記載する際、その確認対象に監査役も含まれていたことを明確にします。 監査役が会議中に行った意見陳述や質疑応答も、その内容を議事録に正確に記録する必要があります。議事録末尾の記名押印(または電子署名)も、出席した監査役には取締役と同様に義務付けられています。

テレビ会議の議事録の保管方法や期間は、通常の取締役会と異なりますか?

いいえ、保管方法や期間に関するルールは、通常の取締役会と全く同じです。会社法に基づき、取締役会の日から10年間、会社の本店に備え置く必要があります。保管形式は、書面(紙)でも、PDFなどの電磁的記録(電子データ)でも構いません。 電子データで保管する場合は、株主などから閲覧請求があった際に速やかに表示・印刷できる状態にしておく必要があります。また、データの破損や紛失を防ぐため、定期的なバックアップや長期的なデータ管理体制を構築することが重要です。

通信障害で審議が一時中断・再開した場合、議事録にはどう記載すべきですか?

審議中に通信障害が発生し、会議が一時中断した場合は、その事実と経緯を議事録に正確に記録する必要があります。具体的には、「〇時〇分、システム不具合により審議を一時中断した。〇時〇分、通信環境の復旧を確認し、議長が全出席者の接続状況を再確認の上、審議を再開した」といった形で、中断時刻、再開時刻、および再開時の確認プロセスを記載します。 これにより、中断によって決議の有効性に疑義が生じることを防ぎ、取締役会が法的な要件を遵守して適正に運営されていたことを事後的に証明できます。

まとめ:法的有効性を確保するテレビ会議取締役会議事録の作成ポイント

テレビ会議による取締役会は、物理的な開催と同等の法的有効性を持ちますが、その議事録作成には特有のルールを遵守する必要があります。最も重要なのは、通常の記載事項に加え、Web会議システムを利用した開催であること、各役員の出席方法、そして通信環境が良好であった旨を明確に記録することです。特に全員がリモートで参加した場合の「開催場所」は、本店所在地などを記載し、場所の記載を省略しないよう注意が必要です。また、押印プロセスは電子署名の活用で効率化できますが、本人性・非改ざん性の要件を満たすサービス選定が求められます。本記事で紹介した文例やポイントを参考に、自社の運用ルールを整備し、適法かつ円滑な取締役会運営を実現してください。

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