事業運営

訪問介護の苦情受付票テンプレート|無料案内と記入項目の整え方

経営リスクナビ編集部

訪問介護の苦情受付票(苦情受付簿・苦情記録票)について、指導監査や苦情対応の体制整備の一環で「どの項目を、どの粒度で残すべきか」に迷う場面は少なくありません。受付の事実や経過が分単位で説明できないまま運用すると、初動の妥当性や是正完了の根拠が示しづらくなり、「言った言わない」や対応の不統一が実務上の不利益につながります。テンプレートを選ぶ・自事業所の運用に合わせて手直しするために、運営基準で求められる考え方と、5W1Hでの記録整理の型を押さえておくことが重要です。以下では、苦情受付票の判断材料として必須項目と運用上のポイントを示します。

目次

訪問介護の苦情受付票とは

苦情受付票の位置づけと介護保険上の根拠

苦情受付票(苦情受付簿・苦情記録票)は、利用者・家族等からの申出(不満、指摘、是正要求など)を事実と経過として残し、事業所としての判断・是正・再発防止につなげるための記録です。指定居宅サービス等の運営基準(いわゆる「運営基準」)では、事業者に苦情に対して適切かつ迅速な処理に努めることが求められ、苦情受付票はその実施状況を説明する中核資料になります(運営基準の「苦情処理」条項として整理されます)。

また、実務では「受付した以上、誰が・いつ・何を聞き取り、どのように社内で調査し、どう回答したか」を示せる形にしておくことが重要です。参照事例の考え方として、苦情の電話等を受けた段階で、申立内容を5W1Hで押さえ、裏付けの有無も含めて記録していく整理が示されています。

苦情受付票を「公的に説明できる記録」にするための基本観点
  • いつ(受付年月日・受付時刻、事象の発生日)を分けて記録します。
  • どこで(訪問先、事業所内、電話・来訪など応対場所)を記録します。
  • 誰が(申出者、利用者、関与職員、受付担当者)を特定します。
  • 何が(どのサービス・どの行為・どの説明が問題か)を具体化します。
  • どのように(どの手順で起きたか、どの場面で不満が生じたか)を残します。
  • 裏付け資料の有無(例:サービス提供記録、業務記録、写真、物損があれば現物等)を確認して記録します。

苦情受付票を単なるメモで終わらせず、上記のように説明可能性(監査・苦情対応・紛争化への備え)を意識して整えることが、コンプライアンスとリスク管理の両面での基盤になります。

相談受付票との違いと兼用時の整理

相談受付票は、問い合わせ・希望・変更依頼など、日常的な連絡を記録する色合いが強い一方、苦情受付票は、提供したサービスに関して不満・異議・是正要求が示された場合に、事業所として調査・判断・回答までを残すための記録です。

様式を兼用する場合でも、運用上は「相談→苦情へ切替わる瞬間」を曖昧にしないことが重要です。参照事例では、苦情対応が窓口以外へ分散すると対応が不統一になりやすいため、窓口を一本化し、窓口以外は原則応対しない整理が示されています。訪問介護でも、兼用票を使うなら「受付ルート・担当・エスカレーション先」を固定しておくと、監査時に説明しやすくなります。

兼用帳票にする場合の区分・運用ルール
  • 区分欄に「相談/苦情/その他」を設け、受付時点の区分をチェックで残します。
  • 苦情に該当した時点で、サービス提供責任者・管理者へ報告するルール(誰に、いつまでに)を明文化します。
  • 受付窓口を一本化し、窓口以外への突然の来訪等は「窓口へ案内する」定型対応に統一します。
  • 相談として開始しても、途中で不満・是正要求が明確化したら「苦情へ切替」欄に切替日時・切替理由を記録します。

『苦情』として正式記録に切り替える線引き|要望・相談・事故報告と分ける判断基準

要望・相談は「サービス提供の調整や希望の表明」にとどまることが多いのに対し、苦情は「提供した(または提供すべきだった)サービスについての不満・異議・是正要求」が含まれます。線引きでは、申出者の言い回しよりも、争点(権利侵害・契約上の不履行・接遇・安全配慮違反など)の有無を軸に整理すると、ブレが減ります。

また、申出の真偽や緊急性の見極めには、参照事例が示すとおり5W1Hでの聴取が有効です。訪問介護であれば「いつの訪問か」「どのサービス区分(身体介護・生活援助等)か」「担当者は誰か」「申出者は誰か」「何がどう問題なのか」をまず揃え、そのうえでサービス提供記録等の裏付けと突合していきます。

事故報告との区分は、身体的被害・財産的損害の発生があるか、医療受診や物損の発生があるかを中心に判断し、必要に応じて事故報告書と苦情受付票を別立てで作成して、感情面の経過(怒り・要求の変遷)と事実経過(事故の状況)を混同しないように管理します。

記録切替の判断に使える具体基準(実務用)
  • 申出に「約束と違う」「説明を受けていない」「不適切な言動があった」など是正要求が含まれれば苦情として扱います。
  • 身体影響や体調悪化の訴えがある場合は、まず事実を5W1Hで聴取し、裏付け(受診状況等)の有無も確認して記録します。
  • 不当要求の疑いがあっても、受付時点では「申出内容」「口調・態様(電話時の様子)」も含め、客観情報として残します。
  • 苦情内容に合致しない点が多い場合は、事実確認の段階で「疑義がある理由」を根拠とともに記録します。

無料テンプレートの見方

無料テンプレートの構成とダウンロード案内

無料テンプレートを使う場合は、入手経路よりも「運営基準上求められる説明に足りる項目が揃っているか」「現場が迷わず書けるか」を先に確認します。参照事例の社内用様式では、受付年月日が「年 月 日 時 分〜 時 分」のように分単位の時間帯まで取れる設計になっており、訪問介護でも同様に、受付時刻・応対開始〜終了のレンジを残すと、迅速性の説明がしやすくなります。

ブロック 入れておきたい具体項目(例) 監査・説明での意味
受付情報 受付年月日、受付時刻(分)、応対開始〜終了、受付方法(電話・来訪・その他) 初動の迅速性・記録の真正性
申出者情報 氏名、続柄、連絡先(自宅・勤務先・携帯など区分) 連絡の確実性・本人確認
苦情内容 5W1Hでの整理、申出者の言葉(引用・要約区分) 争点の特定・誤解の防止
タイプ分類 正当クレーム/不当クレーム/その他(初期判断) 対応方針の説明、窓口の統一
交渉経過 時系列(年月日・時刻)で複数枠 「言った言わない」予防、経過の透明性
結論・是正 回答日、回答方法、是正完了日、再発防止、管理者確認 再発防止の実効性
テンプレート選定時に見ておきたい必須ブロック

テンプレートは「そのまま使う」より、訪問介護で必要になる確認欄(訪問日、担当者、サービス提供記録との突合欄、ケアマネ連携欄など)を足して、自事業所の運用手順と一致させておくことが重要です。

訪問介護で最低限入れる記入項目

苦情受付票は、受付事実の証拠であると同時に、調査・判断・回答の根拠資料でもあります。参照事例の様式にある「クレーム受付年月日」「受付担当者(部署・氏名)」「応対方法(来訪・電話・その他)」「交渉経過(時系列に記載)」といった枠組みは、訪問介護でも監査対応に直結します。

最低限入れるべき記入項目(訪問介護向け)
  • 受付年月日・受付時刻(分まで)・応対開始〜終了時刻(可能なら)を記録します。
  • 受付担当者(役割と氏名)、報告先(サービス提供責任者・管理者)を記録します。
  • 受付方法(電話/面談/来訪/ケアマネ経由/その他)と応対場所を記録します。
  • 申出者の氏名・利用者との続柄・連絡先(自宅/勤務先/携帯など区分)を記録します。
  • 苦情対象の訪問日・サービス内容・担当訪問介護員(ヘルパー)・関係職員を特定します。
  • 苦情内容は5W1Hで整理し、申出者の言葉(原文に近い形)と要約を区別して書きます。
  • 裏付け資料の有無(サービス提供記録、業務記録、写真、物損なら現物等)を確認して記録します。
  • 初期対応(傾聴、謝意・お詫びの範囲、次の連絡予定)と、社内調査に切り替えた旨を記録します。
  • 交渉経過は時系列で残し、誰が誰に何を伝えたかを1行で追える形にします。
  • 対応結果(回答内容、回答日、回答方法)、是正措置、再発防止策、是正完了日、管理者確認を記録します。

監査で説明しやすい受付票にする追加欄|受付時刻・初動判断・是正完了日の残し方

監査では「結局どうしたか」だけでなく、「いつ着手し、どの経過を踏み、どこで完了と判断したか」が問われます。参照事例の様式は、受付時刻を「時 分」で取り、交渉経過も「年月 日 時 分〜 時 分」の枠を複数持つ設計です。訪問介護の苦情受付票でも、この考え方を取り入れると、初動と管理者判断の説明が通りやすくなります。

追加すると監査説明が楽になる欄(実務で効く順)
  • 受付時刻(分)と応対開始〜終了(時 分〜時 分)を残し、初動の迅速性を示します。
  • 初動判断(緊急度・安全性・訪問要否の一次判断)と判断者(管理者等)を記録します。
  • 事実確認の計画(誰に、何を、いつ確認するか)を「社内調査」欄で可視化します。
  • 是正完了日を「決定日」ではなく「現場で是正が完了した日」として記録します。
  • フォロー確認日(再発有無の確認、申出者の納得状況)を別欄で残します。
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苦情の受付から記録まで

受付・記録・報告の基本フロー

苦情対応は、現場の個別対応ではなく、事業所としての統一手順で回す必要があります。参照事例では、窓口以外が応対すると不統一になりやすいことが示されており、訪問介護でも「受付窓口(担当)」「管理者・サービス提供責任者へのエスカレーション」を固定しておくと、対応のブレが減ります。

受付・記録・報告の基本フロー(訪問介護)
  1. 受付担当者は傾聴を優先し、申出者の言葉をできるだけそのままメモします。
  2. 受付時点で5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・どのように)を揃え、訪問日や担当者等の特定情報を確認します。
  3. 裏付け資料の有無(サービス提供記録、写真、物損なら現物等)を確認し、入手見込みも記録します。
  4. その場で結論を出さず、「社内で調査し、改めて連絡する」旨を伝え、連絡予定(いつ頃・誰から)を記録します。
  5. 速やかに苦情受付票へ清書し、受付時刻(分)と応対開始〜終了の時間帯も残します。
  6. サービス提供責任者・管理者へ第一報し、緊急性が高い場合は書面より先に口頭で共有します。
  7. 管理者等が調査指示と対応方針の骨子を決め、交渉経過(時系列)として更新します。

管理者確認とフォローアップの進め方

管理者確認では、受付票の体裁よりも「事実と評価が混ざっていないか」「時系列が欠けていないか」「誰が責任者として対応するか」が要点です。参照事例でも、責任者が前面に立ち「私が責任者として対応する」と整理することで、相手の「社長を出せ」等の要求に引きずられず、組織としての一貫性を保つ考え方が示されています。

管理者確認で最低限点検する項目
  • 受付年月日・時刻(分)・応対方法(来訪/電話/その他)・受付担当者が埋まっているかを確認します。
  • 申出内容が5W1Hで整理され、申出者の言葉と事業所の推測が分離されているかを確認します。
  • 交渉経過が「年月日・時刻」で連続しており、空白期間の理由が説明できるかを確認します。
  • 対応責任者を明確化し、窓口一本化(担当以外は応対しない)を職員へ指示します。
  • 是正完了日とフォロー確認日が記録できる設計になっているかを確認します。

フォローアップは、是正措置の実施後に「申出者がどう受け止めたか」「同様の不満が再発していないか」を確認し、その確認日と結果を追記して完了とします。

その場で解決した口頭苦情でも残すべきケース|再発性・身体影響・第三者関与で見る基準

口頭で収束したように見えても、後日の認識違いや再燃が起きやすい案件は記録化した方が安全です。参照事例では、電話時の口調や内容の整合性も判断材料となり得ることが示されており、訪問介護でも「口調・態様」を客観情報として残すことで、後から対応の妥当性を説明しやすくなります。

口頭でも受付票に残すべき典型ケース
  • 同種の申出が繰り返されている、または再発が予見される場合は記録します。
  • 体調悪化・身体影響の訴えがある場合は、5W1Hで聴取し、裏付け(受診状況等)の有無も含めて記録します。
  • ケアマネジャー等の第三者が関与している場合は、後日の齟齬防止のため経過を時系列で残します。
  • 申出者の口調が著しく威圧的で、要求がエスカレートする兆候がある場合は、窓口一本化のうえで記録を厚くします。

訪問介護の記入実務

苦情受付票の記入例と書き方

記入では、第三者が読んでも同じ結論にたどり着けるように、申出者の言葉/確認事実/評価(判断)を分けて書きます。参照事例が示す5W1Hの取り方は、訪問介護でもそのまま使えます。

記入の型(そのまま写せる書き分け)
  • 申出内容は「利用者(家族)は『○○』と述べた」とし、断定語や評価語を事業所側で足しません。
  • 5W1Hとして「いつの訪問か/どのサービスか/担当者は誰か/どの場面か」を先に埋めます。
  • 裏付けは「サービス提供記録で○時○分の訪問開始を確認」など、根拠資料の種類を明記します。
  • 交渉経過は「年月日 時分〜時分」で区切り、誰が誰に何を伝えたかを1行で追記します。

また、「自宅へ来て謝罪してほしい」等の要求が出た場合でも、安易に訪問を約束せず、社内調査のうえで改めて連絡する整理が安全です(参照事例でも、訪問そのものに大きなリスクがあるため、内容の正当性と危険性の見極めが前提とされています)。

訪問介護で多い苦情類型と初動の注意

訪問介護で多い苦情は、時間管理、家事援助の質、接遇、説明不足、物損・安全配慮などに集約しやすいです。初動では、内容の正否を即断せず、参照事例のとおり5W1Hで基本情報を揃えることが最優先になります。

類型別の初動で押さえる確認ポイント(5W1Hに落とす)
  • 時間遅れ:いつの訪問で何分の遅れか、連絡の有無、前後の訪問予定との関係を確認します。
  • 家事援助の質:どの作業(調理・清掃等)のどの結果が不満か、事前の合意内容(指示)を確認します。
  • 物損:どの物がいつどの場面で破損したか、写真等の裏付けの有無を確認します。
  • 接遇:どの発言・態度が問題と受け止められたか、申出者の言葉で記録し、推測で補いません。

加えて、要求が過大化している兆候(責任者を出せ、謝罪に来い等)がある場合は、窓口一本化と責任者対応の原則を徹底し、現場ヘルパーが単独で交渉を抱えないようにします。

事実と感情が混ざる申立ての書き分け方|利用者の言葉・職員確認・未確認事項の残し方

苦情の文章は、感情表現が強いほど、記録側が「事実っぽく」書いてしまいがちです。ここを崩すと、監査・紛争時に説明が難しくなります。参照事例では、内容の整合性が取れない場合はクレーム自体を疑う余地があるとされており、訪問介護でも「未確認の段階では断定しない」整理が重要です。

区分 書き方のルール 記入例(形式)
利用者・家族の言葉 引用・伝聞で書き、事業所の評価語を足さない 「家族は『説明がなく不安だ』と述べた」
職員確認(客観) 記録・帳票・聞き取り等で確認できた事実のみ 「サービス提供記録で○月○日○時○分開始を確認」
未確認事項 疑義のポイントと確認予定を明記し断定しない 「遅延連絡の有無は未確認、担当者へ確認予定」
申立てを3区分で残す書き方(受付票の欄設計の考え方)

この3区分を徹底すると、感情に巻き込まれず、調査の進捗も受付票上で可視化できます。

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苦情記録と帳票の管理

苦情受付票とマニュアル・記録簿の関係

苦情受付票は、単発の紙ではなく、苦情対応マニュアル(手順)と苦情処理簿(一覧管理)とセットで運用して初めて機能します。参照事例には「クレーム対応報告書(社内用)」のように、受付情報・タイプ分類・交渉経過を一体で持つ設計があり、訪問介護でも同様に、個票(受付票)と一覧(処理簿)を整合させると説明可能性が高まります。

3点セットで整合させるポイント
  • マニュアルに「受付担当」「管理者報告」「記録更新(時系列)」「完了判断(是正完了日・フォロー確認日)」を明記します。
  • 受付票は「受付年月日・時刻(分)」「応対方法(来訪/電話/その他)」「交渉経過(年月日 時分〜時分)」を持たせます。
  • 処理簿は、受付票の主要項目(受付日、申出者、概要、タイプ、対応状況、完了日)を転記し、未完了を追跡します。

保管期間と個人情報の管理ルール

保管と個人情報管理は、運営指導・監査で見られやすい領域です。保管期間についてには介護保険法令の具体年限は示されていないため、本稿では年数を断定せず、自治体の指導(指定権者の運用)に従って起算点と保管方法を整える前提で整理します。

一方、個人情報の漏えい等が疑われる場合の整理として、参照資料の図表では「発生日・発覚日・事実経過」「漏えい等した個人データの項目(住所、電話番号、メールアドレス等)」「原因」「二次被害の有無」「本人への対応」「再発防止策」等が報告・本人通知の検討項目として示されています。苦情受付票そのものが漏えい時の報告書ではありませんが、受付票を含む帳票管理では、このような観点で安全管理措置と記録の整備が必要です。

帳票保管・個人情報管理で最低限決めておくこと
  • 保管責任者と閲覧権限者(管理者・サービス提供責任者等)を定め、持ち出し・複写のルールを統一します。
  • 紙は施錠保管、電子はアクセス制限を前提にし、閲覧ログ等の運用も検討します。
  • 漏えい等が疑われる場合に備え、発生日・発覚日・事実経過、漏えい項目(住所・電話番号等)、本人対応、再発防止策を整理して残せる体制にします。

個人情報の記載を絞る判断軸|家族連絡先・他事業所名・医療情報をどこまで書くか

苦情受付票は、情報が多いほど良いわけではなく、解決と説明に必要な範囲に絞ることが重要です。参照資料の「漏えい等した(おそれのある)個人データの項目」として「住所、電話番号、メールアドレス等」が例示されているとおり、連絡先情報は漏えい時の影響が大きいため、受付票への記載も必要最小限に留めます。

記載を絞るための判断軸(必要性・関連性)
  • 家族連絡先はキーパーソン1名を原則とし、「自宅・勤務先・携帯」等の区分は必要な範囲に限定します。
  • 他事業所名・ケアマネ名は、連携・調整に直接必要な場合のみ記載し、単なる言及は省略または役割で記録します。
  • 医療情報は、苦情の事象に直接関係する範囲(例:体調悪化の訴えがあり受診の有無を確認する等)に限定します。
  • 住所・電話番号等の記載は、連絡に必要な項目に留め、不要な欄をテンプレートから削除することも検討します。

事業所の監査対応を整える

指導監査で見られやすい帳票運用の点

指導監査では「帳票があるか」だけでなく、「運用として回っているか」が問われます。参照事例の社内様式には、応対方法(来訪・電話・その他)や交渉経過(時系列の複数枠)が明示されており、訪問介護でも、受付票と処理簿に時系列の連続性があることが監査対応の基本になります。

監査で指摘されやすいズレと、帳票での予防策
  • 受付票と処理簿で受付日・概要・完了状況が一致しない場合は、転記ルールと確認者を決めます。
  • 応対方法が曖昧(電話なのに面談扱い等)だと説明が崩れるため、「来訪/電話/その他」を固定選択にします。
  • 交渉経過に空白があると放置と見られやすいので、「調査中」「回答待ち」等も年月日・時刻で更新します。
  • 再発防止策が精神論に見える場合は、手順変更やチェック項目追加など、運用変更として記載します。

スタッフ周知とチェックリスト連動の方法

再発防止策は、文書で決めただけでは定着しません。には「初動対応チェックリスト」として、事実関係の確認、表示の取りやめ等の検討、公表要否、顧客対応・マスコミ対応、当局対応といった「チェックの観点」を並べて落とし込む例が示されています。訪問介護でも、苦情対応で決めた是正策を「日常の確認項目」に変換して、現場の行動に落とすのが有効です。

苦情の是正策をチェックリストに落とす手順
  1. 受付票の再発防止策を「現場の具体動作」に分解します(例:遅延時の事前連絡、物損時の写真保存等)。
  2. 分解した動作を、訪問前・訪問中・訪問後のどこで実施するか(タイミング)に割り付けます。
  3. サービス提供責任者会議やヘルパー会議で、受付票の事実経過(時系列)とセットで周知します。
  4. 日常チェックシートに追加し、実施確認を残します(できれば管理者等が定期点検します)。
  5. 次回の苦情処理簿レビューで、同種苦情の再発有無を確認し、必要なら手順を更新します。

よくある質問

小規模な訪問介護事業所でも苦情受付簿は必要ですか?

必要です。規模にかかわらず、苦情受付・処理の体制整備と、経過が説明できる形での記録が求められます。小規模ほど、特定職員が個別に抱え込みやすいため、参照事例が示す「窓口以外は応対しない」という発想を応用し、受付窓口(担当)を固定して記録と報告の流れを一本化すると、監査でも説明しやすくなります。

小規模事業所で最低限整えるべき運用
  • 受付窓口(担当者)を定め、窓口以外は原則として個別交渉に入らないルールにします。
  • 受付票に「受付担当者(役割・氏名)」と「応対方法(来訪/電話/その他)」を必ず残します。
  • 交渉経過は時系列で更新し、管理者が責任者として対応を引き取る形を明確にします。

口頭の苦情もすべて記録する必要がありますか?

「すべて」を機械的に義務と断定するのではなく、少なくとも、後日説明が必要になり得る口頭苦情は記録する運用が安全です。参照事例でも、電話の内容に加えて口調が判断材料になり得るとされており、口頭対応で終えた場合でも「何が起き、どう収束し、再発防止として何を変えたか」を残せると、監査・紛争化の双方に備えられます。

口頭でも記録化を優先すべき目安
  • 体調悪化など身体影響の訴えがある場合は、5W1Hと裏付けの有無を含めて記録します。
  • 同様の申出が繰り返される場合は、再発性の観点で記録します。
  • 申出者の口調が著しく攻撃的で要求が過大化しそうな場合は、窓口一本化とセットで記録します。
  • 第三者(ケアマネ等)関与の案件は、認識ズレ防止のため時系列で記録します。

苦情受付票の保存期間はどのくらいですか?

介護保険サービスの記録に関する「保存期間(年数)」の一次情報が示されていないため、本稿では年限を断定しません。実務としては、指定権者(自治体)の指導や、事業所が準拠する運営指導の考え方に従い、「起算点(サービス完結日等)」と「保管方法(施錠・アクセス制限)」を明確にして運用してください。

一方で、帳票には住所・電話番号等の個人データが含まれ得るため、保管中の安全管理が重要です。漏えい等が疑われる場合に備えて、参照資料が示すように「発生日・発覚日・事実経過」「漏えい項目(住所、電話番号、メールアドレス等)」「原因」「二次被害の有無」「本人対応」「再発防止策」等を整理できる体制も合わせて整備しておくと、リスク対応力が上がります。

ケアマネジャー経由の苦情はどう記入しますか?

ケアマネジャー経由の場合は、受付ルートを明確にし、伝聞情報と確認事実を分けて残します。参照事例の様式にある「応対方法(来訪/電話/その他)」の発想を使い、訪問介護では「受付方法(ケアマネ経由)」を固定選択にしておくと、後からの説明が簡単です。

ケアマネ経由の記入と対応の流れ
  1. 受付票の受付方法に「ケアマネ経由」を明記し、申出内容は「ケアマネからの申出(伝聞)」として記録します。
  2. 内容は5W1Hで整理し、いつの訪問・どのサービス・担当者など特定情報を揃えます。
  3. 裏付け資料(サービス提供記録等)と突合し、職員確認欄に客観事実を追記します。
  4. 交渉経過(年月日・時刻)として、ケアマネへの中間報告・最終回答の日時と内容を残します。
  5. 是正完了日とフォロー確認日まで記録し、完了判断を管理者が確認します。

訪問介護の苦情受付票への対応で次にすべきこと

訪問介護の苦情受付票は、無料テンプレートを入手すること自体よりも、運営基準上の説明に足りる項目と、事業所内の統一手順が噛み合っているかが重要です。とくに、5W1Hでの整理と、受付時刻を分単位で残す設計(応対開始〜終了のレンジを含む)は、初動の迅速性や経過の連続性を示すうえで実務効果があります。次のアクションとしては、受付票・処理簿・マニュアルの3点セットで転記ルールと管理者確認の観点を揃え、窓口一本化とエスカレーション先を明文化してください。あわせて、帳票に含まれる住所・電話番号等の個人データの扱い(閲覧権限、保管方法、持ち出し・複写)を決めておくと、監査と漏えいリスクの双方に備えやすくなります。個別案件の線引きや訪問判断、法令解釈が絡む場合は、指定権者の運用確認や専門家への相談も前提に進めてください。



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