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監査報告書の意見不表明文例|記載位置と開示対応の判断軸

経営リスクナビ編集部

監査報告書の意見不表明は、監査人から提示された文言をどう読めばよいか、そして自社の開示・ガバナンス対応にどこまで波及するかを短期間で判断しなければならない場面で直面しやすい論点です。読み違えたまま放置すると、意見区分と根拠区分、継続企業の前提、会社法手続(計算書類受領後4週間を経過した日等の合意期日まで/受領後1週間以内)や金商法開示の説明が噛み合わず、追加説明や修正対応の負荷が増えます。監査報告書の構成上「どこに何が書かれ、何が書かれていないのか」を押さえることで、意見不表明の理由・影響の整理と、有価証券報告書等での整合確認の観点を具体化できます。以下では、意見不表明の判断材料として文言の読み方と確認ポイントを示します。

目次

監査報告書の意見不表明とは

意見不表明の意味と監査意見での位置付け

意見不表明は、公認会計士・監査法人が監査意見(適正/限定付適正/不適正)を形成するための十分かつ適切な監査証拠を入手できず、財務諸表等が適正かどうかを判断できないとして「意見を表明しない」結論を示すものです。単に判断を先送りする選択肢ではなく、監査手続の実施や証拠入手が重要な範囲で成立しなかったことを対外的に明示します。

実務上は、会社側の事情(調査の未了、資料の不存在・未提出、システム不備、海外拠点の記録の欠落など)により、監査人が予定していた手続を完了できない場合に生じます。例えば、海外子会社の取引に不適切な会計処理の疑義があり第三者調査を要するものの、期日までに事実認定が完了せず、売上や在庫など主要科目の実在性・評価の検証ができない、といったケースが典型です。

なお、上場会社で問題となりやすい内部統制監査については、適正意見の前提として、内部統制評価が「全体として適切に実施されていること」および不備が「財務報告の信頼性に重要な影響を及ぼすまでには至っていないこと」といった考え方を、会計監査人と事前に十分協議することが重要と指摘されています。監査証拠が得られない状況が長引くと、財務諸表監査のみならず、内部統制監査も含めて監査意見形成の前提が揺らぐ点に注意が必要です。

無限定適正意見・限定付適正意見・不適正意見との違い

意見不表明は、財務諸表の良否を評価する意見ではなく、評価の前提となる監査証拠が不足して結論に到達できないことを示します。一方で、無限定適正意見・限定付適正意見・不適正意見は、監査証拠に基づき、表示の適正性について何らかの判断を示します。

区分 監査人が示す性質 主な読み方
無限定適正意見 重要な点において適正と判断 財務諸表利用の前提が基本的に成立
限定付適正意見(除外事項付) 一部に限定して問題があるが全体は概ね適正と判断 除外事項の範囲・金額的影響・広範性を確認
不適正意見 重要かつ広範な虚偽表示があると判断 虚偽表示が立証され、全体の信頼性が否定された状態
意見不表明 十分かつ適切な監査証拠が得られず判断不能 監査手続の未完了・検証不能の範囲と原因を確認
監査意見区分の実務上の読み分け

実務では、「誤りがある(又はあると判断できる)」場合は限定付適正や不適正になり得ますが、「誤りの有無や影響を監査として検証できない」場合は意見不表明になりやすいです。したがって、同じく市場インパクトが極めて大きいとしても、

不適正意見と意見不表明の差(監査人の到達点)
  • 不適正意見は虚偽表示の存在を監査証拠により判断した結論です。
  • 意見不表明は監査証拠が不足し、虚偽表示の有無も含め判断できない結論です。

という観点で読み分けることが、リスク評価(不正の立証段階か、調査・検証体制の崩壊か)の起点になります。

監査報告書の構成と文言の置かれ方

監査報告書の記載項目と監査意見の位置

意見不表明の監査報告書では、利用者が最初に結論を把握できるよう、意見区分に「意見を表明しない」旨が明確に置かれる構成になります。通常の報告書で「財務諸表が適正に表示していると認める」旨が記載される位置に、十分かつ適切な監査証拠を入手できなかったため意見を表明しない、という趣旨の文言が置かれます。

会社法領域の計算書類監査でも、会計監査人の監査報告には、意見の区分として「無限定適正意見、除外事項を付した限定適正意見、不適正意見」に加え、「意見がないときはその旨およびその理由」を記載する枠が予定されています(会社計算規則の枠組み)。このため、意見不表明は例外的であっても、様式上は「書ける場所がある」ものとして整理されており、結論の重さが形式面からも担保されています。

意見不表明で併記される理由と影響の読み方

意見不表明の読み方で最重要なのは、「意見を表明しない」という結論そのものよりも、直後に続く根拠(理由)区分の具体性です。ここには、監査人がどの監査証拠を入手できず、どの手続が完了できず、どの科目・領域が検証不能となったのかが書かれます。利用者側は、この区分を根拠として、財務数値のどこが「誤っている」以前に「確認できない」のかを把握します。

加えて、会社法の監査役等の監査報告(実務上「監査報告書」と呼ばれることが多いです)では、記載事項として「監査のため必要な調査ができなかったときは、その旨およびその理由」が挙げられています(監査報告の記載事項としての整理)。したがって、会計監査人側の意見不表明が出た局面では、監査役等側の監査報告においても、調査不能・情報制約が生じた事実を、どの範囲・理由で記載するのかが実務論点になります。

根拠区分で確認すべき観点
  • 監査証拠が不足した対象(科目、拠点、取引類型、期間)が特定されているかです。
  • 不正疑義・内部統制の無効化・資料の信頼性低下など、原因が類型として整理されているかです。
  • 監査手続の未実施・未完了が、財務諸表全体に「広範」かどうかの説明があるかです。

2020年3月期以降の新様式でどこを見ればよいか|冒頭意見・根拠区分・継続企業注記の切り分け

2020年3月期以降の新様式では、少なくとも次の三者を別物として切り分けて読むことが重要です。

新様式で分けて読む3区分
  • 冒頭の意見区分は監査人の結論(意見不表明である事実)を示します。
  • 意見不表明の根拠区分は結論に至った理由(監査証拠の不足・手続未了の内容)を示します。
  • 継続企業の前提に関する区分は資金繰り等により事業継続に重要な不確実性があるかを示します。

また、継続企業の前提に関しては、前期まで注記していたが当期は注記しない場合、前期に存在した重要な不確実性が当期に解消または改善されたかを慎重に判断するという監査手続上のポイントが整理されています。意見不表明の局面では、調査未了・証拠不足と継続企業の論点が同時に走ることがあり、

実務上の誤読を避けるポイント
  • 「意見不表明=必ず継続企業注記」とは限らず、両者は区分も論点も異なります。
  • ただし資金繰りや契約条項の抵触などで重要な不確実性があれば、継続企業の区分で別途評価・記載されます。

という整理で確認すると、開示文書全体の読み違いを減らせます。

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会社法の意見不表明文例

計算書類の監査報告書で使われる典型文例

会社法監査(計算書類等)において会計監査人が意見不表明とする場合、会社計算規則が予定する「意見がないときはその旨およびその理由」の枠に沿って、監査証拠の不足により意見形成の基礎が得られないことを明示する文章構成になります(会社計算規則126条の記載事項として整理されています)。

会計監査人の監査報告(会社計算規則126条)に予定される記載枠
  • 会計監査人の監査の方法およびその内容です。
  • 計算関係書類が会社の財産および損益の状況をすべての重要な点において適正に表示しているかどうかの意見(無限定適正意見、除外事項を付した限定適正意見、不適正意見)です。
  • 意見がないときはその旨およびその理由です。
  • 追記情報です。
  • 会計監査報告を作成した日です。

文言としては、監査人側が「十分かつ適切な監査証拠を入手できなかったため意見を表明しない」といった形で、理由とセットで記載するのが読みやすい型になります。実務対応では、定型句の有無だけでなく、どの計算書類(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、注記表、附属明細書)に影響する制約かを、根拠記載から特定する視点が必要です。

連結計算書類での文言差と確認ポイント

連結計算書類が対象の場合、意見不表明の射程は親会社単体にとどまらず、連結グループ(連結子会社・持分法適用会社を含む)に及びます。文言上も「連結計算書類に対する意見を表明しない」旨となり、どの構成会社・どの領域で監査証拠が不足したかが、根拠区分でより重要になります。

単体と連結の比較で確認する観点
  • 連結計算書類のどの構成会社(海外拠点を含む)に起因する制約かです。
  • 単体計算書類でも同様に意見不表明か、単体は意見が出ているかです。
  • 連結の主要科目(売上、棚卸資産、のれん、現預金など)に広範な検証不能が及んでいるかです。

また、連結財務諸表等の構成要素として、連結貸借対照表、連結損益計算書および連結包括利益計算書、連結株主資本等変動計算書、連結キャッシュ・フロー計算書、注記(セグメント情報等を含む)といった整理が一般に前提となるため、根拠記載が「どの構成要素に強く波及しているか」を切り分けて読むことが、原因究明と是正計画の精度を左右します。

会社法の監査報告が届いた直後に誰が何日以内に動くか|特定取締役・特定監査役への通知順序

会社法側の実務では、会計監査人の監査報告を受けた後、特定取締役・特定監査役が所定の期限を逆算して動く必要があります。参照される実務整理として、会計監査人は、計算書類を受領した日から4週間を経過した日等の合意期日までに、特定監査役および特定取締役に監査報告を通知するとされています。その後、特定監査役は、通知を受けてから1週間以内に監査役会の監査報告を作成し、特定取締役へ通知する義務がある、という時間軸で整理されています。

受領直後の通知・作成の基本フロー(期限のある部分)
  1. 会計監査人が計算書類受領後「4週間を経過した日等の合意期日まで」に特定監査役・特定取締役へ監査報告を通知します。
  2. 特定監査役が通知受領後「1週間以内」に監査役会の監査報告を作成し特定取締役へ通知します。

意見不表明のような重大事案では、監査役等の監査報告における記載事項として「監査の方法およびその内容」「会計監査人の方法または結果を相当でないと認めたときの記載」「重要な後発事象」「会計監査人の職務遂行体制に関する事項」「監査のため必要な調査ができなかったときの記載」「監査報告を作成した日」等が整理されている点も踏まえ、会計監査人報告との整合(どこまで前提とし、どこを自ら記載するか)を早期に詰める必要があります。

有価証券報告書の意見不表明文例

財務諸表監査での典型文例と構成

金融商品取引法に基づく有価証券報告書では、独立監査人の監査報告書において、意見区分で「意見を表明しない」旨を明記し、その後に理由(根拠)を置く構成になります。開示書類として投資家保護の機能を担うため、監査範囲の制約内容と、監査証拠が入手できなかった事情の説明が、監査報告書の中心要素として読まれます。

実務上、財務諸表監査と内部統制監査が並走する会社では、内部統制監査で適正意見を得るための条件として、内部統制評価が「全体として適切に実施されていること」「財務報告の信頼性に重要な影響を及ぼすまでには至っていないこと」という考え方が示されており、これらについて会計監査人と事前に十分協議しておくことが重要とされています。財務諸表監査で意見不表明が出る局面では、内部統制側の前提も崩れていることが多く、監査報告書・有価証券報告書の双方で、原因と影響の記載に齟齬が出ないよう注意が必要です。

さらに、上場企業等の有価証券報告書や大量保有報告書等が開示されているサイトとして「EDINET」が紹介されているとおり、実務では過去の開示事例(監査報告書の記載のされ方、添付資料の整理)を参照して、同種事案の開示粒度を確認することが行われます(URLが提示されていないため、リンクは付しません)。

四半期レビューの結論不表明との違い

四半期レビューの結論不表明は、通期監査の意見不表明と比べ、前提となる保証水準と手続の深さが異なります。レビューは監査より限定的な手続(質問、分析的手続など)で行われるため、結論の文言も「監査意見を表明しない」ではなく、「結論を表明しない」と整理されます。

ただし、四半期時点で監査証拠の不足や不正疑義が解消できず結論不表明となる場合、通期に向けて阻害要因を除去できなければ、通期でも意見不表明に至るリスクが高まります。特に、第三者委員会調査などの事実認定が期末までに間に合わない状況では、レビュー段階の制約が通期まで持ち越されやすく、管理部門としては「手続の種類が違う」ことを踏まえつつも、警戒レベルは引き上げて対応する必要があります。

有報・半期・四半期で開示タイトルをどう分けるか|TDnetの公開項目選択を誤りやすい場面

適時開示の実務では、書類種別に応じて、開示タイトル(公開項目)を整合的に選ぶ必要があります。参照される実務整理では、

書類別に整理される開示タイトルの考え方(例示)
  • 通期で意見不表明の場合は「公認会計士等の監査意見の不表明に関するお知らせ」を選択します。
  • 半期や四半期で結論不表明の場合は「四半期レビューの結論不表明に関するお知らせ」を選択します。

といった区分が示されています。ここで「公認会計士等の異動」や「決算発表の延期」など、別の開示項目と混同すると、修正開示対応が必要になることがあります。実務としては、開示の題名だけでなく、監査報告書の結論(意見不表明/結論不表明)と理由区分の内容が、開示文面・有価証券報告書・監査報告書で一貫しているかを、法務・IR・経理・監査対応の横断で確認することが重要です。

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意見不表明となる要因と影響

監査証拠の不足や不正疑義が生む判断過程

意見不表明に至る要因は、重要な領域について十分かつ適切な監査証拠が入手できないことに尽きます。背景としては、不正疑義、内部統制の無効化、記録・証憑の欠落、海外拠点へのアクセス制約、第三者調査の未了などが重なり、監査人が合理的に手続を完了できなくなる構図が多いです。

また、従業員不祥事が発生した場合、財務数値への影響だけでなく、内部統制システム(リスク管理体制等)が適切に構築・運用されていなかった点が問題となり、監査役等の監査報告の記載事項として「内部統制システムの整備についての決定および内部統制システムの運用状況につき相当でないと認めるときは、その旨およびその理由」に該当し得る、という整理も示されています。監査証拠不足が単発の資料未提出に見えても、実際にはガバナンス・統制の構造問題に波及していることがあり、意見不表明の理由区分を読む際は「証拠不足の直接原因」と「統制上の根本原因」を分けて把握することが有効です。

上場会社と非上場会社で異なる主なリスク

上場会社では、意見不表明が出た場合の市場インパクト(監理銘柄・整理銘柄の指定等)に加え、資金調達・取引継続への影響が同時に現実化しやすいです。非上場会社でも、金融機関との契約条項(期限の利益喪失など)や取引先の与信判断に直結し得ますが、上場会社はディスクロージャー制度の下で、対外説明の量と速度が一段上がります。

参照される実務整理の中には、上場維持コスト等のデメリットから「最近は、デメリットを嫌って上場を廃止することもある」といった指摘もあり、意見不表明は単なる決算論点にとどまらず、資本市場との関係(上場維持の意思決定)にも波及し得る事象です。したがって、上場・IPO準備企業では、監査対応と並行して、資金調達方針、主要ステークホルダー対応、社内の危機対応体制を同時に組み直す必要が生じやすいです。

限定付適正意見で踏みとどまる場合との分かれ目|監査範囲の制約か虚偽表示かで見る判断軸

限定付適正意見と意見不表明の分岐は、問題が「限定的」で、監査人が監査証拠により影響を合理的に評価できるか、それとも監査範囲の制約が「広範」で、監査意見の基礎そのものが成立しないかにあります。

会社法の整理でも、会計監査意見として「無限定適正意見、除外事項を付した限定適正意見、不適正意見」が予定される一方で、「監査のため必要な調査ができなかったときは、その旨」が記載事項として区別されています(会社計算規則122条1項の枠組み)。この対比は、実務上の判断軸(意見として言える段階か、調査不能として整理すべき段階か)を理解する助けになります。

実務での判断軸(開示を読む側の観点)
  • 影響が特定の科目・取引に限定され、代替手続等により検証できるなら限定付に寄りやすいです。
  • 主要科目や複数領域に波及し、代替手続も成立しないなら意見不表明に寄りやすいです。
  • 金額の大小だけでなく、財務諸表の主要区分を横断して信頼性が崩れているか(広範性)を確認します。

意見不表明を受けた実務対応

取締役会と管理部門が直ちに確認する事項

意見不表明を受領した直後は、法定期限・契約条項・ガバナンス手続が同時並行で動くため、取締役会と管理部門は論点を即時に棚卸しし、優先順位を付けて対応します。会社法側では、会計監査人から特定監査役・特定取締役への通知が「計算書類受領後4週間を経過した日等の合意期日まで」と整理され、特定監査役の監査役会監査報告の作成・通知が「受領後1週間以内」と整理されています。したがって、開示対応だけでなく、株主総会スケジュールや監査役会運営も、期限から逆算した実務設計が必要です。

初動で一覧化して確認する論点
  • 会社法手続の期限(会計監査人通知の合意期日、特定監査役の1週間期限)と総会日程への影響です。
  • 金商法開示(有価証券報告書・決算発表等)の提出・公表スケジュールと遅延リスクです。
  • 借入契約等の財務制限条項や期限の利益条項への抵触可能性です。
  • 監査人が示した「意見不表明の根拠」のうち、会社側で短期に解消可能なものと中長期対応が必要なものの切り分けです。

開示文書で整合させる有価証券報告書の確認点

有価証券報告書本体(リスク情報、経緯説明、注記等)と、独立監査人の監査報告書(意見区分・根拠区分)で、理由や影響の記載が食い違うと、当局対応・投資家対応の両面で追加負荷が発生します。

また、監査役等の監査報告は、会計監査人の会計監査報告を前提として内容を確認する方法で記載される、という整理が示されており、会計監査人報告の記載事項(会社計算規則126条)を踏まえて作られます。したがって、意見不表明が出ている場合には、

整合性チェックの実務ポイント(会社側が読むべき接続部)
  • 会計監査人報告の「意見がないときはその旨およびその理由」と、有価証券報告書のリスク・経緯説明の因果関係が一致しているかです。
  • 監査役等の監査報告の記載事項のうち「必要な調査ができなかったとき」の記載が、会計監査人報告の制約と矛盾していないかです。
  • 継続企業の前提に関する注記の有無を変更する場合、前期の重要な不確実性が当期に解消・改善したと言える根拠が社内で説明可能かです。

を最低限のチェックリストとして持つと、部門間でのすり合わせが進めやすくなります。

監査人・法務・経理で先に揃える3資料|未入手証憑一覧、時系列、再発防止案の作り分け

意見不表明の解消(再監査・翌期監査の正常化を含む)には、監査人が「何が足りないのか」を特定でき、会社が「いつ何が起きたのか」「どう直すのか」を説明できる状態を、早期に作ることが必要です。

先に揃える3資料(役割分担の例)
  • 未入手証憑一覧は経理が中心となり、監査人が求める資料・証憑の未入手状況を科目・拠点・取引単位で可視化します。
  • 時系列は法務が中心となり、発生から発覚、調査着手、社内意思決定、対外開示までの経緯を整理します。
  • 再発防止案は管理部門横断で、内部統制システム(リスク管理体制等)の整備・運用が相当と言える状態への改善策を設計します。

特に、監査役等の監査報告の記載事項として「会計監査人の職務の遂行が適正に実施されることを確保するための体制に関する事項」や「監査のため必要な調査ができなかったときは、その旨およびその理由」等が整理されていることを踏まえると、上記3資料は会計監査対応にとどまらず、監査役等側の記載・説明責任の基礎資料にもなり得ます。

よくある質問

意見不表明の監査報告書が出ると必ず上場廃止になりますか

意見不表明が出たからといって、直ちに自動的に上場廃止が確定するとは限りません。一方で、上場企業にとっては市場からの信用に直結し、監理銘柄・整理銘柄といった取扱いが問題となり得るため、実務上は最重度のシグナルとして扱われます。

また、意見不表明の局面では、監査役等の監査報告でも「監査のため必要な調査ができなかったときは、その旨およびその理由」等の記載論点が生じ得ます(監査報告の記載事項としての整理)。市場対応(適時開示)と会社法対応(株主総会・監査役会)を同じ時間軸で進める必要がある点で、上場維持の可否以前に、初動体制の良否がその後の選択肢を狭めたり広げたりします。

意見不表明と不適正意見はどちらが重いと考えるべきですか

実務上は、意見不表明と不適正意見はいずれも、財務報告の信頼性が重大に損なわれた状態を示すため、同等に重いと扱われやすいです。ただし、監査人が到達した判断の性質は異なります。

読み分けの要点
  • 不適正意見は虚偽表示が重要かつ広範に存在すると判断した結論です。
  • 意見不表明は十分かつ適切な監査証拠が得られず適否判断に到達できない結論です。

会社法の様式整理でも、意見(無限定/限定付/不適正)と「意見がないとき」の記載枠が区別されている(会社計算規則126条の記載事項)ため、意見不表明は「監査が成立しなかった」側面がより強い結論として読むのが実務的です。

中小の非上場会社でも意見不表明の監査報告書は出ますか

非上場会社でも、会計監査人設置会社など監査を受けている場合は、意見不表明が出ることがあります。会社法監査の枠組みでは、計算書類等に関する監査意見として「計算関係書類が会社の財産・損益の状況をすべての重要な点において適正に表示しているかどうか」の意見が求められる一方で、「監査のため必要な調査ができなかったときは、その旨」を記載する整理もあります(会社計算規則122条1項の記載事項)。つまり、上場か否かにかかわらず、調査不能・証拠不足が重大であれば、意見不表明の文言が選択され得ます。

また、会計監査人がいない会社であっても、監査役は監査報告で上記の適正表示について意見を述べることが求められるとされており(会社計算規則122条1項2号の整理)、資料・証憑管理や内部統制の整備が不十分な場合には、監査の遂行や説明に支障が出やすい点に注意が必要です。

四半期レビューで結論不表明だと通期監査意見に影響しますか

四半期レビューの結論不表明は、通期の監査意見に影響する可能性が高いです。レビュー段階で発生している監査証拠不足や調査未了が、期末までに解消されなければ、通期でも同様に監査意見を形成できない状態が残るためです。

加えて、継続企業の前提に関する注記について、前期まで注記していたが当期は注記しない場合に「前期に存在していた重要な不確実性が当期に解消または改善されているか」を慎重に判断するという監査手続上のポイントが整理されています。四半期で結論不表明となる状況では、資金繰りや契約条件の悪化も同時に進むことがあるため、通期に向けては「証拠不足の解消」と「継続企業の前提の評価」を並行して前倒しで進める必要があります。

監査報告書の意見不表明への対応で次にすべきこと

意見不表明は、結論(意見区分)だけでなく、直後の根拠区分に書かれる「監査証拠が不足した対象・原因・広範性」を起点に、開示と社内手続の整合を組み立てる必要があります。会社法側では、会計監査人の通知が「計算書類受領後4週間を経過した日等の合意期日まで」、特定監査役の対応が「受領後1週間以内」と整理されているため、監査役会運営・株主総会日程・開示準備を同じ時間軸で逆算することが実務上の分かれ目になります。有価証券報告書・監査報告書・監査役等の監査報告で、理由と影響の説明が噛み合っているかを横断で点検し、必要に応じて監査人・法務・経理で未入手証憑、時系列、再発防止案の3点を先に揃えると論点が収束しやすくなります。個別事案では事実関係や制約の範囲により結論が変わり得るため、監査人や社内外の専門家と早期に論点整理を行うことが重要です。



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