財務

ゼロゼロ融資の返済が厳しい… 3つの公적支援と借換手続きの要点

経営リスクナビ編集部

ゼロゼロ融資の返済が本格化し、今後の資金繰りに不安を抱えている中小企業の経営者も多いのではないでしょうか。売上回復の遅れや物価高が重なり、返済が困難になると事業継続そのものが危うくなる可能性があります。しかし、返済負担を軽減するための借換保証制度や金融機関との交渉など、利用できる選択肢は複数存在します。この記事では、ゼロゼロ融資の返済が難しい場合の具体的な3つの対処法と、利用可能な公的支援制度について、手続きの流れや注意点を含めて解説します。

ゼロゼロ融資の返済と現状

ゼロゼロ融資制度の概要を再確認

ゼロゼロ融資は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者に対する、実質無利子・無担保の資金繰り支援策です。政府系および民間の金融機関を通じて実施され、多くの中小企業や個人事業主を支えました。

この制度の仕組みは、信用保証協会が元本の返済を保証し、国や自治体が当初の利子を補給するというものです。最長5年間の元本返済据置期間を設定できましたが、据置期間が終了すると通常の融資と同様に元本と利息の返済義務が生じます。倒産抑制に大きな効果があった一方で、過剰債務を抱える企業が増加する一因ともなりました。

現在は新規の申し込み受付を終了しており、多くの企業が返済を開始する段階へと移行しています。

ゼロゼロ融資制度の主な特徴
  • 新型コロナの影響を受けた事業者向けの実質無利子・無担保の融資制度
  • 政府系・民間金融機関を通じて実施
  • 信用保証協会が元本を保証し、国や自治体が利子を補給する仕組み
  • 最長5年間の元本返済据置期間を設定可能
  • 据置期間終了後は、元本と利息の返済義務が発生
  • 現在は新規の申し込み受付を終了している

返済開始のピークと企業の動向

ゼロゼロ融資の返済は、すでに多くの企業で始まっており、今後も大きな波が訪れると予測されています。

返済開始のピーク時期
  • 一次ピーク: 2023年夏から2024年春
  • 最終ピーク: 2026年4月から2026年9月(据置期間を最大5年に設定した企業)

返済が本格化する中で、コロナ禍の打撃から収益が回復しきれず、倒産に至る「ゼロゼロ融資後倒産」が急増しています。特に、飲食店や建設業など、コスト高の影響を強く受ける業種でその傾向が顕著です。

業績を改善させて計画通りに返済を進める企業がある一方で、過剰債務から抜け出せずに事業継続を断念する企業も増えており、企業の二極化が進んでいます。

返済困難になる理由とリスク

資金繰りを圧迫する主な要因

ゼロゼロ融資の返済が困難になる背景には、複数の要因が複合的に絡み合っています。

資金繰りを圧迫する複合的な要因
  • 売上回復の遅れ: コロナ禍からの回復が想定より進まない
  • コストの増加: 円安や物価高による原材料費、深刻な人手不足による人件費の高騰
  • 金利の上昇: 金融政策の変更に伴う企業向け貸出金利の上昇
  • 返済負担の開始: ゼロゼロ融資の元本返済と利払いの開始による新たな現金流出

これらの要因が重なることで、手元資金が急速に減少し、資金ショートの危機に直面する企業が増加しています。

返済の遅延が招く経営リスク

返済の遅延は、事業継続そのものを危うくする深刻な事態を引き起こします。一度返済が滞ると、事態は段階的に悪化していきます。

返済遅延から法的措置までの流れ
  1. 金融機関からの督促遅延損害金の発生
  2. 期限の利益の喪失による融資残高の一括返済請求
  3. 信用保証協会による代位弁済の実行
  4. 信用情報機関への事故情報の登録(ブラックリスト入り)
  5. 預金口座、売掛金、不動産などの財産差し押さえ
  6. 事業継続が困難となり、法的整理や倒産に至る

特に、代位弁済が行われ信用情報に傷がつくと、新たな資金調達はほぼ不可能になり、経営は一気に厳しい状況へ追い込まれます。

借換と返済猶予(リスケジュール)のメリット・デメリット比較

返済が困難になった場合、金融機関に相談できる主な手段として「借換」と「返済猶予(リスケジュール)」があります。それぞれに一長一短があるため、自社の状況に合わせて慎重に検討する必要があります。

手法 メリット デメリット
借換 ・毎月の返済額を軽減できる<br>・新規の運転資金を確保できる可能性がある ・審査に時間がかかる<br>・新たな保証料や金利負担が発生する
返済猶予(リスケジュール) ・即効性があり、当面の資金流出を止められる<br>・手続きが比較的早い ・信用情報に影響する場合がある<br>・期間中は新規融資が極めて困難になる
借換と返済猶予の比較

返済負担を軽減する3つの対処法

対処法1:コロナ借換保証制度を活用する

コロナ借換保証制度は、ゼロゼロ融資の返済負担を軽減するために国が設けた支援策です。複数の融資を一本化し、返済計画を立て直すことを目的としています。

コロナ借換保証制度のポイント
  • ゼロゼロ融資等を新たな保証付き融資で借り換える国の支援策
  • 保証限度額は1億円
  • 返済期間は最長10年、うち最長5年間の据置期間を再設定可能
  • 国による保証料補助があり、事業者の負担が軽減される
  • 利用には売上減少などの要件を満たし、経営行動計画書の作成が必要
  • 融資実行後、金融機関による継続的な伴走支援が義務付けられる
  • 原則として2024年6月末で新規受付を終了し、後継制度へ移行している

対処法2:経営改善サポート保証を利用する

経営改善サポート保証は、抜本的な事業再生や経営改善を目指す中小企業を対象とした保証制度です。コロナ借換保証が終了した後も利用可能な選択肢となります。

経営改善サポート保証(経営改善再生支援強化型)のポイント
  • 経営改善や事業再生に取り組む中小企業向けの保証制度
  • 利用には認定経営革新等支援機関の助言のもと事業再生計画の作成が必要
  • 保証限度額は2億8000万円
  • 返済期間は最長15年、うち最長3年の据置期間を設定可能
  • 国による保証料補助や、要件を満たせば経営者保証を免除する仕組みがある
  • 単なる延命ではなく、抜本的な収益力改善を目的としている

この制度は、専門家の支援を受けながら事業を再構築するための強力な手段となります。

対処法3:金融機関と返済条件を変更する

返済条件の変更、通称「リスケジュール」は、金融機関と直接交渉して資金繰りの危機を回避する直接的な手段です。一時的に元本の返済を減額または猶予してもらい、事業を立て直すための時間を確保します。

返済条件変更(リスケジュール)の進め方と注意点
  • 金融機関と直接交渉し、一定期間の元本返済を猶予してもらう手法
  • 交渉は借入のあるすべての金融機関に、同時に同じ条件で申し入れるのが原則
  • 資金繰り表経営改善計画書を提出し、返済再開の見通しを具体的に示す必要がある
  • 金融庁も金融機関に柔軟な対応を要請しているため、実行の可能性は高い
  • 条件変更中は新規融資が原則不可能になるため、最終手段として検討すべき

支援制度利用時の手続きと注意点

相談から保証実行までの基本的な流れ

各種支援制度の利用には、計画的な準備と手続きが必要です。資金が尽きる前に、余裕をもって行動を開始することが重要です。

支援制度利用の基本的な流れ
  1. メインバンクや税理士などの認定支援機関に現状を相談する
  2. 自社の課題を分析し、経営行動計画書や事業再生計画書を作成する
  3. 必要書類を添えて金融機関へ正式に申し込む
  4. 金融機関と信用保証協会による審査が行われる
  5. 保証承諾後、金融機関から融資が実行される
  6. 実行後は計画に基づき経営改善を進め、金融機関へ定期的に進捗を報告する

申し込みから融資実行までには数か月を要する場合もあるため、早めの相談が不可欠です。

経営行動計画書を作成する際の要点

経営行動計画書は、金融機関や保証協会に対して自社の再生可能性を説明するための最も重要な書類です。客観的なデータに基づき、説得力のある内容に仕上げる必要があります。

経営行動計画書に盛り込むべき要点
  • 現状分析: 事業概要、外部環境、自社の強み・弱み(SWOT分析)
  • 財務課題: 決算書に基づく財務指標の分析と課題の明確化
  • 将来目標: 計画終了時に目指す具体的な状態(定性・定量目標)
  • 行動計画: 目標達成のための具体的なアクションプラン(数値目標を含む)
  • 計数計画: 行動計画に基づく収支計画と返済計画
  • 作成の姿勢: 金融機関や専門家と対話し、実現可能性の高い内容に仕上げることが重要

申請前に金融機関へ確認すべき事項

制度利用の申請を進める前に、金融機関の担当者と認識をすり合わせ、不明点を解消しておくことが円滑な手続きにつながります。

事前に金融機関へ確認すべき重要事項
  • 借換の対象となる融資の範囲(プロパー融資を含むかなど)
  • 借換後の保証料率や貸出金利の具体的な見積もり
  • 経営者保証を免除できるかどうかの条件
  • 融資実行後の伴走支援で求められる報告内容や頻度
  • 制度利用の前提として、既存の借入に延滞がないか

特に、返済を延滞していると制度利用は困難になるため、支払いが滞る前に相談することが大前提です。

金融機関との交渉を円滑に進めるための準備と心構え

金融機関との交渉を成功させるには、客観的なデータに基づく説明と、経営者の真摯な姿勢が不可欠です。

交渉を成功させるための準備と心構え
  • 正確な情報開示: 直近の試算表や資金繰り表など、現状を隠さず提出する
  • 客観的な根拠: 希望的観測ではなく、具体的な数値に基づいた改善策を示す
  • 当事者意識: 資金繰りが悪化した原因を分析し、経営者としての責任と再建意欲を示す
  • 専門家の活用: 税理士や中小企業診断士などに同席してもらい、計画の客観性を高める

金融機関は支援のパートナーです。信頼関係を築くためにも、誠実な対話を心がけましょう。

よくある質問

Q. すでに返済を延滞した場合の対処法は?

返済を延滞している場合、新たな借換保証などの審査通過は極めて困難になります。まずは直ちに金融機関へ連絡し、延滞理由と現状を正直に説明した上で、返済猶予(リスケジュール)を申し入れてください。無断で延滞を続けると、財産差し押さえなどのリスクが急激に高まります。並行して、事業再生の専門家にも相談し、抜本的な対策を検討すべきです。

Q. 借換の審査で特に重視される点は?

審査では、提出された経営改善計画の実現可能性が最も重視されます。売上回復やコスト削減の具体策に説得力があり、それによって生み出されるキャッシュフローで借入金を返済できることを、数値で示す必要があります。また、過去の返済実績や税金・社会保険料の支払い状況、そして経営者が金融機関の伴走支援に協力的に取り組む姿勢も評価の対象となります。

Q. 複数のゼロゼロ融資の一本化は可能か?

はい、借換保証制度などを利用して、複数の民間金融機関からのゼロゼロ融資や他の保証付き融資を一本化することは可能です。これにより、返済管理が容易になります。ただし、日本政策金融公庫などの政府系金融機関のゼロゼロ融資は制度が異なるため、民間の融資と直接一本化することはできません。それぞれに対応した制度で個別に手続きを行う必要があります。

Q. 借換後の保証料や金利はどうなりますか?

借換後は、実質無利子だったゼロゼロ融資と異なり、金融機関への利息信用保証協会への保証料が新たに発生します。金利は各金融機関の規定に基づき、保証料率は国の補助で低く抑えられますが、企業の財務状況によって変動します。月々の元本返済額が減っても、利息と保証料を含めた総支払額が増加する可能性もあるため、事前のシミュレーションが非常に重要です。

まとめ:ゼロゼロ融資の返済が困難になる前に早めの対策を

ゼロゼロ融資の返済が困難になった場合、国の借換保証制度の活用や、金融機関との返済条件変更(リスケジュール)が有効な対処法です。いずれの方法でも、自社の財務状況を正確に分析し、説得力のある経営改善計画書を作成することが交渉の前提となります。資金繰りが悪化する兆候が見られたら、一人で抱え込まず、まずはメインバンクや顧問税理士といった身近な専門家に相談することが第一歩です。返済の遅延が発生してしまうと、利用できる制度が限られ、事態の打開が非常に難しくなります。この記事で紹介した制度や手法は一般的なものですので、自社の具体的な状況に合わせた最適な解決策については、必ず専門家のアドバイスを受けてください。



Baseconnect株式会社
サイト運営会社

本メディアは、「企業が経営リスクを正しく知り、素早く動けるように」という想いから、Baseconnect株式会社が運営しています。

当社は、日本最大級の法人データベース「Musubu」において国内1200万件超の企業情報を掲げ、企業の変化の兆しを捉える情報基盤を整備しています。

加えて、与信管理・コンプライアンスチェック・法人確認を支援する「Riskdog」では、年間20億件のリスク情報をAI処理、日々4000以上のニュース媒体を自動取得、1.8億件のデータベース等を活用し、取引先の倒産・不正等の兆候の早期把握を支援しています。

記事URLをコピーしました