弥生会計のデータでExcel資金繰り表を作成する手順|データのエクスポートから作成・運用まで解説
弥生会計で日々の会計処理は行っていても、将来の資金繰り予測や銀行提出用の資料作成には、より柔軟なExcelを活用したいとお考えの中小企業経営者や経理担当者の方も多いのではないでしょうか。会計ソフトのデータをどのように抽出し、実用的な資金繰り表に落とし込めばよいか、具体的な手順に迷うこともあるかもしれません。この記事では、弥生会計から会計データをエクスポートし、Excelで精度の高い資金繰り表を作成する一連の手順を、データの整理から計算式の設定、銀行提出時のポイントまで網羅的に解説します。
弥生会計からExcelへ資金繰りデータをエクスポートする手順
資金繰り表の作成に不可欠な会計データを特定する
資金繰り表を作成する第一歩は、弥生会計に記録された会計データの中から、現金の動きに直接関連する科目を正確に特定することです。損益計算書は発生主義で利益を計算しますが、資金繰り管理では、実際に現金が入出金するタイミングを捉える現金主義の視点が不可欠です。帳簿上の利益と手元の資金のズレを把握するために、特に以下の貸借対照表科目の残高推移が重要となります。
- 現金及び預金
- 売掛金、受取手形
- 買掛金、支払手形
- 未払金、未収入金
- 借入金
また、損益計算書には表れない借入金の元本返済や設備投資といった、財務活動や投資活動による現金の動きも漏れなく抽出する必要があります。
弥生会計の「残高試算表」をExcel形式で出力する方法
弥生会計には、会計データをExcelファイルとして出力する機能が標準で備わっています。以下の手順で、資金繰り表の基礎となる「残高試算表」のデータを出力します。
- 弥生会計のメニューバーから「集計」内の「残高試算表」を選択し、「月次・期間集計」画面を開きます。
- 資金繰り表の対象としたい期間(例:対象月の一ヶ月間)を指定します。
- 画面上部にある「Excel」ボタンをクリックし、出力設定画面を表示させます。
- 必要に応じて出力形式(新規ブックへの書き出し等)を選択し、エクスポートを実行します。
取引先ごとの売掛金残高など、より詳細なデータが必要な場合は、補助科目の内訳が出力される「補助残高一覧表」を選択すると便利です。毎月の作業効率を考慮し、定型フォーマットにデータを貼り付ける運用ルールを定めておくとよいでしょう。
エクスポートしたExcelデータの事前確認と整理
弥生会計からエクスポートしたExcelデータは、資金繰り表で計算するために事前の整理作業が必要です。出力されたデータには、計算の妨げとなる余分な情報が含まれていることが多いため、以下の手順でデータを整えます。
- タイトル行や空白行、合計行など、計算に不要な行を削除します。
- セルが結合されている場合は解除し、1つのセルに1つのデータが収まるようにします。
- 科目名や金額が正しく表示されているか、貸借の合計が一致しているかを確認します。
- 金額のマイナス表示が「△」や「▲」になっている場合、Excelの計算式で認識できるよう「-」形式に置換します。
このデータクレンジング作業を行うことで、関数を使った自動計算が可能な、クリーンなデータリストを作成できます。
エクスポート前に弥生会計側で確認すべき仕訳・科目設定
Excelでの作業を効率化するためには、元データとなる弥生会計側の入力ルールを整備しておくことが極めて重要です。エクスポートを実行する前に、特に以下の点を確認してください。
- 「諸口」勘定の整理:複合仕訳で「諸口」が多用されていると、資金の具体的な動きが追えなくなります。摘要欄などから内容を判断し、適切な勘定科目に振り替えておきましょう。
- 資金繰り区分の設定:弥生会計の資金繰り項目設定機能を利用している場合、各勘定科目が「経常収入」「経常支出」「財務収支」など、適切な区分に紐づけられているかを確認します。
- 経過勘定の摘要入力:未払金や未収入金といった経過勘定の仕訳を入力する際は、摘要欄に決済予定日を記録するルールを徹底すると、将来の入出金予測の精度が高まります。
Excelで資金繰り表を作成する基本手順
資金繰り表の基本的な構成項目(営業収支・財務収支など)
Excelで資金繰り表を作成する際は、現金の動きを性質ごとに分類し、体系的に整理します。一般的に、以下の3つの区分で構成されます。
| 大区分 | 主な内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 経常収支 | 本業の営業活動による現金の増減(売上回収、仕入支払、経費支払など) | 「営業収支」とも呼ばれる。この区分がプラスであることが重要。 |
| 経常外収支 | 設備投資や固定資産の売却など、投資活動による現金の増減 | 「投資収支」とも呼ばれる。 |
| 財務収支 | 金融機関からの借入や返済、増資など、財務活動による現金の増減 | – |
表の構造としては、まず「前月繰越現金」を最上段に置き、そこに各収支の合計額を加減算して、最終的に「翌月繰越現金」を算出します。この流れを月ごとに横に展開することで、将来にわたる資金の推移を可視化します。
弥生会計の勘定科目を資金繰り表の項目へ対応させる
弥生会計の発生主義データを、資金繰り表の現金主義の項目へ変換するには、勘定科目と資金繰り項目のマッピング(対応付け)が必要です。損益計算書の数値をそのまま転記するのではなく、貸借対照表の関連科目の増減を考慮して、実際の現金の動きを計算します。
- 売上収入:当月の売上高に、売掛金や受取手形の「期首残高」を足し、「期末残高」を引くことで、実際に回収した金額を算出します。
- 仕入支出:当月の仕入高に、買掛金や支払手形の「期首残高」を足し、「期末残高」を引くことで、実際に支払った金額を算出します。
- 非資金費用:減価償却費や各種引当金繰入額など、現金の支出を伴わない費用項目は、資金繰り表の計算から除外します。
この変換ロジックをExcel上で定義し、どの勘定科目をどの資金繰り項目に反映させるかのルールを明確にすることが重要です。
残高試算表のデータから各項目へ数値を転記する方法
弥生会計から出力したデータを資金繰り表に反映させる作業は、手入力ではなくExcel関数を活用して自動化することが推奨されます。手作業による転記は、入力ミスや計算漏れの原因となります。
`SUMIF`関数や`VLOOKUP`関数(または`SUMIFS`、`XLOOKUP`関数)を使い、データシートから勘定科目名をキーにして、対応する数値を資金繰り表の各セルに自動で集計・転記させます。例えば、当月の売掛金回収額は、「前月末売掛金残高 + 当月売上高 - 当月末売掛金残高」といった計算式をセルに設定します。
借入金の元本返済額のように、試算表の増減だけでは把握しきれない項目については、別途、返済予定表などを参照して手入力で補足する場合もありますが、基本は数式による自動転記を目指しましょう。
月初残高や翌月繰越など、基本的な計算式を設定する
資金繰り表の根幹となるのは、現金の残高を時系列で連鎖させる計算式です。以下の基本式を設定することで、表全体が連動して機能します。
- 当月の月初残高:「=(前月の翌月繰越残高のセルを参照)」と設定します。
- 当月の収支合計:経常収支、経常外収支、財務収支の各合計値を計算します。
- 当月の翌月繰越残高:「=月初残高 + 経常収支計 + 経常外収支計 + 財務収支計」と設定します。
この計算の連鎖により、数ヶ月先の資金状況を予測し、資金ショートのリスクを早期に発見できます。さらに、残高がマイナスになった場合にセルの色が変わるよう条件付き書式を設定したり、資金繰り表上の月末残高と実際の預金残高を比較する検算用セルを設けたりすると、視認性と正確性が向上します。
弥生会計の標準機能とExcelを使い分けるメリット
弥生会計の強み:会計データの正確性と網羅性
弥生会計の最大の強みは、日々の仕訳入力に基づいた会計データの正確性にあります。会計システム内で完結しているため、手作業による集計ミスや計算ロジックの誤りを心配する必要がありません。
- データの信頼性:会計帳簿と直結しているため、元となる数値の正確性が担保されます。
- 作業の効率性:実績資金繰り表機能などを使えば、実績値を自動で集計でき、時間を大幅に短縮できます。
- 分析の容易性:過去の会計データが蓄積されているため、前年同月比などの比較分析が容易に行えます。
Excelの強み:柔軟なシミュレーションとフォーマットの自由度
一方、Excelの最大のメリットは、予測におけるシミュレーションの柔軟性と、目的に合わせたフォーマットの自由度の高さにあります。会計ソフトの定型的な出力にとらわれない、自由な分析が可能です。
- 柔軟な将来予測:「売上が20%減少した場合」など複数のシナリオを想定した資金繰り予測を簡単に作成・比較できます。
- 自由なレイアウト:金融機関指定の様式や、経営会議で強調したい指標に合わせて、行や列を自由に追加・編集できます。
- 多様なグラフ表現:資金推移をグラフ化するなど、視覚的に分かりやすい資料を自由に作成できます。
データ連携による精度の高い資金繰り予測の実現
実務において最も効果的なのは、弥生会計とExcelのそれぞれの強みを活かしたハイブリッドな運用です。具体的には、過去から直近までの実績値は弥生会計からエクスポートした正確なデータを使い、翌月以降の予測値はExcel上で事業計画などに基づいて入力します。
この方法により、確かな実績に基づいた精度の高い資金繰り予測が可能になります。実績と予測を一つの表で管理することで、予実差異の原因分析も容易になり、予測精度を継続的に改善していくPDCAサイクルを回すことができます。
銀行提出など目的に応じた資金繰り表作成のポイント
内部管理用と外部提出用(銀行融資など)で異なる視点
資金繰り表は、誰が、何のために見るのかという目的によって、作成する視点や粒度が異なります。内部管理用と外部提出用の違いを意識することが重要です。
| 項目 | 内部管理用 | 外部提出用(銀行融資など) |
|---|---|---|
| 目的 | 日々の支払管理、資金ショートの防止 | 返済能力の証明、事業の継続性の説明 |
| 管理単位 | 日次、週次など細かい単位 | 月次、四半期、年次など中長期的な単位 |
| 重視する点 | 全ての口座の正確な入出金実績と予定 | 経常収支の黒字基調、事業計画との整合性 |
| 情報量 | 詳細で網羅的 | 全体像が把握できるよう要約されている |
銀行融資で評価される資金繰り表の記載内容とは
金融機関が融資審査で資金繰り表を見る際、最も重視するのは「返済財源の確実性」です。つまり、本業の儲けで借入金をきちんと返済していけるかという点です。以下のポイントが評価されます。
- 経常収支がプラスで推移しているか:本業の営業活動だけで、安定的に現金を創出できている状態が理想です。
- 現実的な計画であるか:賞与支払いや納税、季節的な資金需要など、予測可能な多額の支出が計画に漏れなく織り込まれているかを確認されます。
- 融資の必要性と効果が明確か:融資によって資金不足が解消され、その後どのように経営が安定するのか、というストーリーが一目で理解できることが求められます。
売上・経費の予測値には具体的な根拠を示す
銀行に提出する資金繰り計画の信頼性を高めるには、予測数値に客観的で具体的な根拠を示すことが不可欠です。希望的観測ではなく、裏付けのある計画であることを説明できるように準備します。
- 売上予測の根拠:受注済みの契約書、確度の高い商談リスト、過去の季節変動データなど。
- 経費予測の根拠:人員計画に基づく人件費、リース契約書、過去の実績値など。
- 入出金サイトの整合性:売掛金の回収サイトや買掛金の支払サイトが、実際の取引条件と一致しているか。
これらの根拠資料を別途用意し、質問された際に速やかに提示できるようにしておくと、説明の説得力が増します。
資金繰り改善策をセットで提示し融資担当者の納得度を高める
もし資金繰り表上で資金不足が見込まれる場合、単に融資を依頼するだけでなく、企業としての自助努力(改善策)を併せて示すことが非常に重要です。経営改善に真摯に取り組む姿勢を示すことで、融資担当者の信頼を得やすくなります。
- 役員報酬の一時的な減額
- 遊休資産(不動産、有価証券など)の売却
- 不採算事業からの撤退や規模縮小
- 広告宣伝費や交際費などの経費削減
- 取引先との支払サイト延長や入金サイト短縮の交渉
これらの改善策を計画に織り込み、融資の必要性を論理的に説明することで、融資担当者の納得度を高めることができます。
Excelでの資金繰り表運用における注意点
手入力による転記ミスや数式エラーのリスク
Excelによる資金繰り管理は自由度が高い反面、ヒューマンエラーが起こりやすいというデメリットがあります。入力ミスや数式エラーは、経営判断を誤らせる致命的な原因になりかねません。
- リスク:手入力時の桁間違い、合計範囲の指定漏れ、数式の参照ズレなど。
- 対策:入力セルと計算式セルを色分けする、数式が入ったセルはシートの保護機能でロックする、検算用の数式を設けて常にチェックするなどの工夫が必要です。
定期的なデータ更新と予実管理の重要性
資金繰り表は、定期的に最新の情報を反映し続けることで、その価値を発揮します。一度作成しただけで放置してしまうと、計画と現実が乖離し、資金ショートの予兆を見逃すことになります。
毎月、試算表が確定したタイミングで実績値を入力し、計画との差異を分析する「予実管理」を行いましょう。なぜ差異が発生したのかを検証することで、翌月以降の予測精度を高め、経営環境の変化に迅速に対応できるようになります。
ファイルのバージョン管理と属人化の防止策
複数人でExcelファイルを扱う際には、「どのファイルが最新版かわからない」といったバージョン管理の問題や、「作成者しか計算ロジックが分からない」という属人化の問題が生じがちです。
これらの問題を避けるため、以下のようなルールを徹底することが重要です。
- ファイル名に日付を入れるなど命名規則を統一し、共有サーバーの特定のフォルダで管理する。
- 複雑な関数やマクロを使用する場合は、その内容を説明する手順書やコメントを残す。
- 担当者が交代しても引き継ぎが可能なように、できるだけシンプルで分かりやすい構造を心がける。
よくある質問
弥生会計のどのバージョンでもデータのエクスポートは可能ですか?
弥生会計の主要なデスクトップ製品(やよいの青色申告、弥生会計 スタンダード、プロフェッショナルなど)や、クラウド版の「弥生会計 オンライン」では、残高試算表などのデータをExcelやCSV形式でエクスポートする機能が標準で搭載されています。ただし、非常に古いバージョンや特殊な製品では機能が異なる可能性があるため、お使いの製品のヘルプメニュー等でご確認ください。
作成したExcelの資金繰り表フォーマットは自由にカスタマイズできますか?
はい、可能です。Excelで作成する最大のメリットは、フォーマットを自由にカスタマイズできる点にあります。自社の管理しやすいように項目を追加したり、部門別の収支内訳を設けたりと、実態に合わせて柔軟に変更できます。ただし、銀行提出用として作成する場合は、日本政策金融公庫などが公開している標準的な様式を参考にすると、説明がスムーズに進むことが多いです。
資金繰り表はどのくらいの頻度で更新するのが理想的ですか?
企業の状況によりますが、基本は「月次」での更新となります。毎月の月次決算が完了したタイミングで実績を反映し、将来の予測を見直すのが一般的なサイクルです。ただし、資金繰りが厳しい状況にある企業や、日々の入出金が非常に多い業態の場合は、より短い「週次」や「日次」での管理(日繰り表の作成)が必要になることもあります。
Excelの関数を使うと、どこまで計算を自動化できますか?
`SUMIFS`関数や`IF`関数などを組み合わせることで、会計データからの数値の転記、集計、繰越計算といった定型的な作業の大部分を自動化できます。さらにマクロ(VBA)を活用すれば、エクスポートされたファイルの整形からデータ転記までをワンクリックで実行することも可能です。ただし、自動化の仕組みが複雑になりすぎると、メンテナンスが困難になるため、実用性と管理のしやすさのバランスを取ることが大切です。
まとめ:弥生会計とExcelの連携で、精度の高い資金繰り管理を実現する
本記事では、弥生会計の会計データを活用し、Excelで実用的な資金繰り表を作成する手順を解説しました。重要なのは、弥生会計が持つ会計データの正確性と、Excelが持つ予測シミュレーションの柔軟性という、両者の強みを活かすことです。弥生会計から残高試算表をエクスポートし、発生主義の勘定科目を現金主義の項目へ正しく対応付けることが、精度の高い資金繰り管理の第一歩となります。Excelでの作成は自由度が高い反面、数式エラーや属人化のリスクも伴うため、関数を活用した自動化とチームで共有できる運用ルールの整備が不可欠です。まずはこの記事を参考に、過去の実績データから資金繰り表を作成し、自社の現金の流れを正確に把握することから始めてみましょう。その上で、将来の計画を盛り込み、銀行提出などの目的に応じた説得力のある資料へと発展させていくことが、安定した経営基盤の構築につながります。

