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脆弱性攻撃の国内企業事例|手口・業種別に学ぶセキュリティ対策

経営リスクナビ編集部

近年の巧妙化する脆弱性攻撃に対し、自社のセキュリティ対策に不安を感じていませんか。サプライチェーン攻撃やランサムウェアの高度化により、従来の対策だけでは事業継続を脅かす深刻な被害に直結するリスクが高まっています。具体的な被害事例を知ることは、自社が優先すべき課題を特定する第一歩です。この記事では、国内企業の脆弱性攻撃の最新事例を業種・手口別に解説し、そこから学ぶべき実践的なセキュリティ対策を紐解きます。

目次

近年のサイバー攻撃の主要トレンド

サプライチェーンの弱点を狙う攻撃の増加

近年のサイバー攻撃では、セキュリティ対策が強固な標的企業へ直接侵入するのではなく、取引先や関連会社など、防御が手薄になりがちな組織を踏み台にするサプライチェーン攻撃が急増しています。大企業が自社の防御を固めても、子会社や業務委託先などのセキュリティ体制に隙があれば、そこから社内ネットワークへの侵入を許してしまいます。実際に、取引先の中小企業が攻撃され、システムで連携している大企業へ被害が波及する事例が多数報告されています。

サプライチェーン攻撃には、主に2つの形態があります。

サプライチェーン攻撃の主な形態
  • ビジネスサプライチェーン攻撃: 業務委託先や子会社を侵害し、そこから標的企業へ繋がるネットワークや共有システムを経由して侵入する。
  • ソフトウェアサプライチェーン攻撃: 広く利用されるソフトウェアの開発元を攻撃し、正規の更新プログラムに悪意あるコードを混入させて配布する。

このように、自社だけでなく、取引先や関連会社を含めた事業の供給網(サプライチェーン)全体でセキュリティ対策を徹底することが不可欠となっています。

ランサムウェア攻撃の二重恐喝化と高度化

身代金要求型ウイルス「ランサムウェア」による攻撃は、単にデータを暗号化するだけでなく、事前に窃取した機密情報を公開すると脅迫する「二重恐喝」へと手口が高度化・凶悪化しています。従来の攻撃では、企業はバックアップデータからシステムを復旧することで身代金の支払いを拒否できました。しかし、現在の攻撃者は事業停止という圧力に加え、情報漏洩による社会的信用の失墜をも武器にしています。

攻撃者は侵入後、企業の内部ネットワークを長期間にわたり探索し、財務データや顧客の個人情報といった価値の高い情報を外部サーバーへ転送します。その後、システム全体を暗号化して機能を停止させ、窃取したデータの一部を暴露サイトで公開し、支払期限を設けて金銭を要求します。このため、バックアップの取得だけでは情報漏洩の脅威を防ぐことができません。侵入を早期に検知し、データが外部に持ち出される前に通信を遮断する多層的な防御体制の構築が不可欠です。

VPN機器などリモートワーク環境の脆弱性悪用

リモートワークの普及に伴い、外部から社内ネットワークへ安全に接続するためのVPN(Virtual Private Network)機器などに存在する脆弱性を狙ったサイバー攻撃が増加しています。多くの企業が急遽リモートワークを導入した結果、VPN機器のファームウェア(機器を制御するソフトウェア)を最新の状態に保つといった運用管理が追いつかず、既知の脆弱性が放置されているケースが多いためです。攻撃者は、インターネット上に公開されている脆弱な機器を常に探索しており、発見次第それを悪用して社内ネットワークへ侵入します。

国内の事例でも、保守用の遠隔接続機器の脆弱性が原因でランサムウェアに感染し、大規模なシステム障害を引き起こしたケースが頻発しています。また、盗み出された接続用のIDやパスワードが闇市場で売買され、別の攻撃グループによって悪用される事態も発生しています。この脅威に対処するためには、外部接続機器の修正プログラムを迅速に適用するとともに、多要素認証の導入による認証強化や、不審なアクセスの常時監視が不可欠です。

【業種別】国内企業の脆弱性攻撃被害事例

製造業:工場の生産停止と供給網への波及

製造業では、サイバー攻撃が工場の生産設備を制御するシステム(OTシステム)にまで及び、工場の稼働停止やサプライチェーン全体に甚大な影響を及ぼす事例が相次いでいます。工場のデジタル化(DX)が進む一方で、OTシステムのセキュリティ対策が情報システム部門の管理外になりやすく、攻撃者にとって格好の標的となっているためです。従来は閉鎖的なネットワークで運用されていましたが、生産性向上のために社内情報システムなどと接続された結果、新たな侵入経路が生まれています。

国内大手自動車メーカーの事例では、部品を供給する取引先企業がランサムウェア攻撃を受け、部品の発注システムが停止しました。その結果、国内の全工場が操業停止に追い込まれました。この攻撃は、取引先の子会社が利用していた遠隔接続機器の脆弱性が起点となっており、直接の標的ではなかった大企業が巨大な経済的損失を被る結果となりました。

別の国内大手飲料メーカーの事例では、社内ネットワークがランサムウェアに感染し、製造拠点と物流センター間のデータ連携が停止しました。これにより出荷指示が処理できなくなり、長期間にわたって一部商品が供給不能となりました。製造業は複数のシステムが密接に連携しているため、一箇所の障害が全体の流れを止める致命的な影響を及ぼします。情報システムだけでなく、工場の制御システムも含めた包括的なセキュリティ対策と事業継続計画(BCP)の策定が急務です。

IT・情報通信業:顧客情報の漏洩とサービス停止

IT・情報通信業へのサイバー攻撃は、大規模な顧客情報の漏洩や社会インフラであるサービスの停止に直結するため、極めて影響が甚大です。これらの企業は、多数の利用者の個人情報や通信記録といった価値の高いデータを大量に保有しているため、攻撃者から執拗に狙われる傾向にあります。システムの脆弱性を突く攻撃や、外部委託先の管理不備を突く侵入など、手口も多岐にわたります。

国内の大手通信サービス企業の事例では、同社が運営するクラウドサービスがサイバー攻撃を受け、大量の通信履歴が漏洩する事態が発生しました。情報通信インフラの基盤を揺るがすこのような事案は、利用者のプライバシーを著しく侵害し、企業の信頼を根底から覆します。

また、ファイル転送サービスを運営する企業の事例では、ソフトウェアの未知の脆弱性(ゼロデイ脆弱性)を悪用され、サービスを利用する多数の企業から機密情報が窃取されました。この事案は、一つのITサービスへの攻撃が、サプライチェーンを介して数千社に及ぶ顧客企業へ一斉に被害をもたらした点で深刻です。ITサービスを提供する企業は、自社システムが社会に与える影響を深く認識し、設計段階からのセキュリティ確保と、継続的な監視・脆弱性対応を行う重い責任を負っています。

流通・小売業:ECサイト経由の情報流出被害

流通・小売業では、オンラインショッピングサイト(ECサイト)を標的としたサイバー攻撃により、顧客のクレジットカード情報や個人情報が大量に流出する被害が後を絶ちません。ECサイトは決済情報を直接扱うため、攻撃者にとって換金性の高い情報を効率的に窃取できる格好の標的となっています。

国内のECサイトの事例では、システムの脆弱性を突かれて決済アプリケーションが改ざんされ、顧客が入力したクレジットカード情報がそのまま攻撃者のサーバーに送信される「Webスキミング」と呼ばれる攻撃が発生しました。この手口は顧客やサイト運営者が気づきにくく、被害が長期化しやすい特徴があります。この事案では1万件以上のクレジットカード情報が漏洩した可能性が指摘され、企業は多額の損害賠償や信用の失墜といった事業存続に関わる危機に直面しました。

別の通信販売事業者の事例では、業務委託先に付与した管理者アカウントが不正利用され、ランサムウェア攻撃を受けました。これにより基幹システムが停止し、大規模な物流の混乱が生じるとともに、数十万件の顧客情報が漏洩しました。ECサイト運営企業は、システムの脆弱性診断を定期的に実施し、決済情報を自社サーバーで保持しない仕組みの導入や、外部委託先のアクセス権限の厳格な管理など、多層的な防衛策を講じる必要があります。

医療・インフラ分野:社会機能の麻痺リスク

医療機関や社会インフラを担う分野へのサイバー攻撃は、個人の生命や健康、社会生活の維持に直接的な脅威を与える、極めて深刻な問題です。これらの組織は機微な個人情報を大量に保有する一方、システムの更新が難しく、セキュリティ対策への投資が遅れがちな状況を攻撃者につけ込まれています。

国内の総合医療センターの事例では、関連事業者を経由して病院の基幹ネットワークにランサムウェアが侵入し、電子カルテシステムを含む院内システム全体が停止しました。これにより、新規患者の受け入れや手術が長期間にわたり不可能となり、地域医療に甚大な影響を及ぼしました。システムの完全復旧まで数ヶ月を要し、復旧費用は十数億円に上るとされています。

医療現場では人命救助が最優先されるため、システムの稼働を止めて更新作業を行うことが困難な場合が多く、結果として脆弱性が放置されやすい構造的課題があります。しかし、ひとたびシステムが停止すれば医療機能そのものが崩壊するため、医療機関はサイバーセキュリティを事業継続における最重要の経営課題と位置づけなければなりません。侵入を前提としたネットワークの分離や、確実に復元可能なバックアップ体制の構築など、医療提供体制を維持するための事業継続計画(BCP)の見直しが急務です。

【攻撃手口別】代表的な攻撃の概要と事例

ランサムウェア攻撃:事業継続を脅かす二重恐喝

ランサムウェア攻撃は、企業の事業継続を最も深刻に脅かすサイバー攻撃です。近年は、データを暗号化する前に機密情報を窃取し、身代金を支払わなければ情報を公開すると脅す「二重恐喝」の手法が主流となり、被害をより致命的なものにしています。

攻撃の一般的な流れは以下の通りです。

二重恐喝型ランサムウェア攻撃の手順
  1. VPN機器の脆弱性やフィッシングメールなどを利用して社内ネットワークに侵入する。
  2. 内部で権限を拡大しながら長期間潜伏し、価値の高い機密情報を特定して外部へ転送する。
  3. データの窃取完了後、ランサムウェアを実行してシステム全体を暗号化し、業務を停止させる。
  4. 暴露サイトで情報公開を予告し、「データの復旧」と「情報公開の停止」を条件に身代金を要求する。

被害企業は事業停止と情報漏洩という二重の危機に直面します。さらに、システムの復旧を困難にするため、バックアップデータ自体を破壊する手口も一般化しています。この脅威に対抗するには、侵入を防ぐ対策に加え、内部での不審な活動を早期に検知する仕組みや、ネットワークから隔離された安全なバックアップの確保が不可欠です。

サプライチェーン攻撃:取引先を踏み台にする侵入

サプライチェーン攻撃は、標的企業へ直接攻撃するのではなく、セキュリティ対策が手薄な取引先や関連会社を経由して間接的に侵入する高度な攻撃手法です。大企業に比べて中堅・中小企業は予算や人材が限られるため、防御の隙を突かれやすい傾向があります。

この攻撃には、主に以下の二つの形態が存在します。

サプライチェーン攻撃の主な形態
  • ビジネスサプライチェーン攻撃: 業務委託先や子会社を侵害し、そこから標的企業と接続された正規のネットワーク回線や共有システムを経由して侵入する。
  • ソフトウェアサプライチェーン攻撃: 広く利用されているソフトウェアの開発元や配信サーバーを攻撃し、正規の更新プログラムに悪意のあるコードを仕込み、それを適用した多数の企業を一斉に攻撃する。

企業は自社だけでなく、取引先を含めたサプライチェーン全体のリスク管理を行う必要があります。取引先との契約でセキュリティ要件を明確化し、定期的な監査を行うことや、導入するソフトウェアの安全性を継続的に監視する体制の構築が求められます。

ゼロデイ攻撃:未知の脆弱性を突く奇襲的手法

ゼロデイ攻撃とは、ソフトウェアなどに存在する脆弱性が発見されてから、開発元が修正プログラムを提供するまでの無防備な期間を狙って実行されるサイバー攻撃です。防御側が脆弱性の存在を認識しておらず、有効な対策がない状態で行われるため、検知システムをすり抜けて侵入を許してしまう極めて危険な攻撃です。

修正プログラムが公開された日を1日目(ワンデイ)と数えるのに対し、それより前に行われることから「ゼロデイ」と呼ばれます。特定の企業や政府機関を狙う標的型攻撃で用いられることが多く、企業はパッチを適用するという基本的な対策が取れないまま攻撃にさらされます。

ゼロデイ攻撃を完全に防ぐことは原理的に困難ですが、被害を最小限に抑える対策は可能です。外部からの不審な通信を遮断するWAF(Web Application Firewall)の導入や、システム内部での異常な挙動を検知する仕組み(EDRなど)を導入し、万が一侵入された場合でも即座に活動を封じ込める体制を整えることが現実的な防衛策となります。

Webアプリの脆弱性攻撃:SQLインジェクション等

Webアプリケーションの脆弱性を突く攻撃は、企業の公開サーバーから顧客の個人情報やクレジットカード情報を大量に窃取する古典的かつ依然として強力な手法です。オンラインサービスやECサイトのプログラムに不備があると、攻撃者は不正な命令を送り込んでシステムを不正に操作することが可能になります。

代表的な攻撃手法には以下のようなものがあります。

代表的なWebアプリケーションへの攻撃手法
  • SQLインジェクション: Webサイトの入力フォームにデータベース言語(SQL)の不正な命令を注入し、データベースを不正に操作して情報を窃取・改ざんする。
  • クロスサイトスクリプティング: 脆弱なサイトに不正なスクリプトを埋め込み、訪問したユーザーのブラウザ上で実行させ、個人情報などを盗み出す。
  • OSコマンドインジェクション: Webサーバーに対してOSへの命令を不正に実行させ、システムを乗っ取る。

これらの攻撃を防ぐには、開発段階で安全なプログラミング(セキュアコーディング)を徹底することが根本対策となります。それに加え、Webアプリケーションファイアウォール(WAF)を導入して外部からの不正な通信を遮断する多層防御や、専門家による定期的な脆弱性診断の実施が不可欠です。

事例から学ぶ企業のセキュリティ対策

技術的対策:脆弱性管理と迅速なパッチ適用

技術的セキュリティ対策の基盤は、自社のIT資産に存在する脆弱性を正確に把握し、修正プログラム(パッチ)を迅速に適用することです。サイバー攻撃の多くは既知の脆弱性を狙っており、基本的な保守作業の徹底で大部分を防ぐことができます。

脆弱性管理は以下のステップで進めることが重要です。

脆弱性管理の基本プロセス
  1. IT資産の把握: 社内で利用している全てのハードウェア、ソフトウェア、クラウドサービスを網羅的に管理台帳に登録する。
  2. 脆弱性情報の収集と評価: 日々公開される脆弱性情報を収集し、自社の資産に影響があるかを評価する。
  3. 修正プログラムの適用: 業務への影響を検証した上で、計画的かつ迅速に修正パッチを適用する。
  4. 適用状況の管理: パッチの適用状況を一元的に管理し、未適用の資産がないか継続的に監視する。

パッチ管理を自動化するツールの導入や、直ちに適用できないシステムを一時的に保護する仮想パッチの活用も、迅速な対応を実現するために有効な手段です。

技術的対策:侵入を前提としたEDR等の導入

高度化するサイバー攻撃に対し、従来の「侵入を水際で防ぐ」境界防御だけでは不十分です。「侵入は起こり得るもの」という前提に立ち、侵入後の被害を最小限に抑える対策への転換が不可欠です。その中核となるのが、PCやサーバーなど端末(エンドポイント)の動作を監視するEDR(Endpoint Detection and Response)の導入です。

EDRは、端末上の不審な挙動を検知し、攻撃の兆候を早期に発見します。攻撃が検知されると、管理者に警告を発するとともに、感染した端末をネットワークから自動的に隔離し、被害の拡大を封じ込めます。さらに、監視範囲をネットワークやクラウド環境まで広げたXDR(Extended Detection and Response)は、複数の情報をAIで相関分析し、より高度な攻撃の全体像を可視化します。

ただし、これらのツールは導入するだけでは機能しません。大量のアラートを分析し、真の脅威に対応するためには、専門知識を持つ人材による24時間365日の監視運用体制が不可欠です。自社での構築が難しい場合は、専門企業が監視を代行するマネージドセキュリティサービス(MSS)の活用が現実的な選択肢となります。

組織的対策:インシデント対応体制の構築と訓練

サイバー攻撃被害の拡大を防ぐには、技術的対策に加え、組織としての迅速かつ的確な対応が不可欠です。平時からインシデント対応専門チーム「CSIRT(Computer Security Incident Response Team)」を設置し、有事の際の役割分担や連絡体制を明確に定めておく必要があります。

CSIRTには、情報システム部門だけでなく、以下の部門を含めた横断的な体制が求められます。

CSIRTを構成する主要な部門
  • 情報システム部門: 技術的な調査、復旧、封じ込めを担当する。
  • 法務部門: 法的義務の確認、関係省庁への報告、契約関係の整理を行う。
  • 広報部門: 顧客や取引先、メディアへの情報発信を管理する。
  • 経営層: 事業継続に関わる重要な意思決定を行う。

整備した体制やマニュアルが実戦で機能するかを確認するため、具体的なシナリオに基づいた実践的な訓練を定期的に実施することが極めて重要です。ランサムウェア感染などを想定した机上演習は、潜在的な課題を洗い出し、組織全体の危機対応能力を高めます。また、高度な調査が必要となる場合に備え、外部の専門機関と平時から協力関係を築いておくことも重要です。

セキュリティ投資を「コスト」でなく「事業継続投資」として判断する視点

企業経営において、サイバーセキュリティへの支出を単なるシステム運用の「コスト」と見なすことは極めて危険です。サイバー攻撃による被害は、直接的な経済損失だけでなく、企業の社会的信用を失墜させ、事業の存続そのものを危うくします。したがって、経営層はセキュリティ対策を、事業継続性を担保し企業価値を守るための「投資」として明確に位置づける必要があります。自社の事業環境におけるリスクを客観的に評価し、有事の際に被る損害額と対策費用を比較した上で、経営戦略として必要な資源を主体的に割り当てる姿勢が求められます。

インシデント公表の判断基準とタイミングの見極め方

インシデント発生時の対外公表は、被害拡大の防止と企業の社会的責任を果たす上で非常に重要です。特に、個人情報の漏洩など二次被害のおそれがある場合や、社会インフラに関わる重大な影響がある場合は、調査の途中であっても判明している事実を速やかに公表することが求められます。公表のタイミングを誤り、外部からの指摘で発覚した場合、隠蔽体質を疑われ、風評被害を増大させることになりかねません。事前に公表基準や手順を定め、法的義務に基づく関係機関への報告と並行して、透明性のある情報を適切な時期に発信する経営判断が不可欠です。

脆弱性攻撃に関するよくある質問

そもそも「脆弱性」とは何ですか?

脆弱性とは、コンピューターのOSやソフトウェアなどに存在する、プログラムの設計ミスや設定不備によるセキュリティ上の欠陥のことです。この欠陥を悪用されると、攻撃者によってシステムを不正に操作されたり、機密情報を盗まれたりする可能性があります。建物の「鍵が壊れたドア」や「施錠されていない窓」に例えられ、サイバー攻撃の主要な侵入経路となります。ソフトウェア開発元は脆弱性を修正するプログラム(パッチ)を提供しますが、利用者がそれを適用するまではシステムが無防備な状態に置かれるため、迅速なパッチ適用がセキュリティ対策の基本となります。

サイバー攻撃を受けた際の初動対応は?

サイバー攻撃の被害が疑われる場合、被害拡大を防ぐための迅速な初動対応が極めて重要です。以下の対応を直ちに行ってください。

サイバー攻撃発覚時の初動対応手順
  1. ネットワークからの隔離: 感染が疑われる端末のLANケーブルを抜く、またはWi-Fiを無効にし、ネットワークから物理的に切り離す。
  2. 証拠の保全: 自己判断で電源を切ったり再起動したりしない。メモリ上の攻撃の痕跡が消え、原因究明が困難になるため、電源を入れたまま維持する。
  3. 専門チームへの報告: 速やかに情報システム部門やCSIRTなどの専門対応チームへ報告し、指示を仰ぐ。

平時から、誰が、何を、どのように行うかを定めた初動対応マニュアルを整備し、組織内で周知しておくことが、有事の際の混乱を防ぐ鍵となります。

中小企業でも高度な対策は必要ですか?

はい、企業規模にかかわらず高度なセキュリティ対策は必須です。「自社は狙われない」という考えは非常に危険です。その理由は以下の通りです。

中小企業に高度な対策が必要な理由
  • 無差別攻撃の標的: 攻撃者はセキュリティが手薄な企業を狙って無差別に攻撃を仕掛けており、中小企業は格好の標的となっている。
  • サプライチェーン攻撃の踏み台: 大企業の強固な防御を突破するため、取引先である中小企業がサプライチェーン攻撃の侵入経路として狙われる。
  • 加害者になるリスク: 自社が侵害されると、取引先に被害を拡大させる「加害者」となり、損害賠償や契約解除など事業存続に関わる事態に発展する。

サイバー攻撃は、もはや対岸の火事ではなく、すべての企業が直面する経営リスクです。事業継続のためにも、水準の高い対策を講じる必要があります。

インシデントの公表に法的義務はありますか?

はい、情報の種類や被害規模によっては法律で報告や通知が義務付けられています。特に改正個人情報保護法では、個人の権利利益を害するおそれが大きい情報漏洩等が発生した場合、企業は個人情報保護委員会への報告と、漏洩の対象となった本人への通知が義務化されています。

報告義務が生じる主なケースは以下の通りです。

個人情報保護委員会への報告が義務付けられる主な事態
  • 要配慮個人情報(病歴、信条など)が含まれる漏洩
  • 不正アクセスなど、不正な目的による漏洩のおそれがある場合
  • 漏洩した個人データの件数が1,000件を超える場合

これらの義務を怠ると行政処分や罰則の対象となるため、法務部門と連携し、定められた期間内に速やかに対応する必要があります。

脆弱性診断とはどのようなサービスですか?

脆弱性診断とは、専門家が企業のWebサイトや情報システムに対し、攻撃者の視点から疑似的な攻撃を行い、セキュリティ上の欠陥(脆弱性)がないかを調査するサービスです。システムの開発段階や公開前に実施することで、情報漏洩などのリスクにつながる弱点を事前に発見し、修正することが目的です。診断には、ツールで網羅的に検査する「自動診断」と、専門家が手動で高度な分析を行う「手動診断」があります。新たな脆弱性は日々発見されるため、一度だけでなく定期的に診断を受け、システムの安全性を継続的に確保することが重要です。

ランサムウェアの身代金は支払うべきですか?

いいえ、身代金は支払うべきではありません。警察庁をはじめとする国内外の法執行機関や専門機関は、一貫して支払わないよう呼びかけています。その理由は以下の通りです。

身代金を支払うべきでない理由
  • データが復旧する保証がない: 金銭を支払っても、攻撃者が復旧キーを渡す保証は全くない。
  • サイバー犯罪の助長: 支払われた身代金は、犯罪組織の新たな活動資金となり、さらなる被害を生み出す。
  • 再攻撃のリスク増大: 一度支払いに応じると「支払う企業」としてリスト化され、繰り返し標的にされる危険性が高まる。

身代金の支払いを検討するのではなく、速やかに警察に相談するとともに、事前に確保した安全なバックアップデータからのシステム復旧に全力を注ぐべきです。

まとめ:脆弱性攻撃の最新事例から学ぶ、実効性のあるセキュリティ対策

本記事では、サプライチェーン攻撃、二重恐喝型ランサムウェア、リモートワーク環境の脆弱性を突く攻撃など、近年の主要な攻撃トレンドと国内企業の被害事例を解説しました。これらの事例から、従来の境界防御だけでは不十分であり、「侵入は起こり得るもの」という前提に立った多層的な防御体制が不可欠であることがわかります。セキュリティ対策を単なるコストと捉えるのではなく、事業継続性を担保するための重要な「経営投資」と位置づけ、自社の事業リスクに見合った対策を講じることが経営層には求められます。まずは自社のIT資産と脆弱性を正確に把握し、インシデント発生を想定した対応体制(CSIRT)の構築や、実践的な訓練に着手することをお勧めします。万が一インシデントが発生した際は、自己判断で対応せず、証拠保全を最優先に専門チームへ報告することが重要です。本記事で解説した内容は一般的な対策であり、個別の状況に応じた最適な対応については、セキュリティ専門家へ相談してください。


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